シャンカラは、8世紀に生まれ、しばしばインド最大の哲学者と呼ばれます。当時のインドは、民衆の間では神への信仰をもととするバクティ(信愛)が盛んとなり、また衰退期にあった仏教では、精緻な仏教論理学が展開されていました。そのような中にあって、シャンカラは仏教的色彩を帯び始めていたヴェーダーンタ学派を、本来のウパニシャッドの精神に立ち返るようにと、「我々の内なるアートマンと絶対者ブラフマンは同一であり、存在するのはブラフマンのみである」との不二一元論を提唱、大成していきました。

 しかし、シャンカラの興味は、完璧な自説を打ち立てることではなく、ゴータマ・ブッダと同様に、「現実の世界において輪廻の生存に苦悩している人々を救済すること」にあった、と前田専学博士(「ウパデーシャ・サーハスリー」岩波文庫)は述べられています。

 ここでは、右記の絵本に従って、伝説に満ちた「シャンカラの生涯」を追ってみたいと思います。自分にとって遠い存在であったシャンカラが、とても身近に感じられ、大切な一書となりました。

(なお、当ページの翻訳掲載は、ラーマクリシュナ・ミッションのご好意によるものであり、著作権は全てラーマクリシュナ・ミッションに属し、無断掲載は禁じられております。)


Published by:
The President.
Sri Ramakrishna Math.
Mylapore,Madras 600 004

<シャンカラを知るための参考文献>
「初期ヴェーダーンタ哲学史」
1-4巻
中村元、岩波書店
「シャンカラの思想」
中村元、岩波書店
「ヴェーダーンタの哲学」
前田専学、平楽寺書店
「ウパデーシャ・サーハスリー」
前田専学、岩波文庫
*なお、当サイト中の管理人による拙い「注」は、多くを上記の諸書に負っております。ここに深く感謝いたします。