<<    >>

母の声を背に

一瞬にして倒壊した家屋。
くずれた屋根瓦、屋根板、土壁。 建物の下のわずかな空間に 
上向きに倒れている母を見つけた。
顔中血だらけで 
横を向くこともできず
「肩のあたりをおさえつける物を のけて−」
という母の声が聞こえた。
だが、どうにもできない。

火が回ってきた。
最後の別れの言葉をかわして
私は逃げた。