8
どさん、と音がして、オレたちは地面に放り出された。
「痛ててて……。ん? ここは、どこだ?」
オレが立ち上がって辺りを見回すと、マリーも立ち上がった。
「どこなの、ここ〜!? 何かの部屋? ……すごい、本がいっぱいあるわ……」
オレたちがいたのは、木でできた高い建物の中だった。シグザール城の尖塔よりも高いその建
物の中には、壁中に本棚が据え付けられていた。オレは言った。
「すごいな……天井が見えないや……全部上まで、本が積んであるのか……?」
そのとき。
オレの背後でどさどさと、何かが落ちる音がした。驚いて振り返ると……。
「う、うわああああ〜! そんな! 僕、戸締まりを忘れちゃったのかな? ど、ど、どうしよ
う〜〜〜〜! また姉様にネミの森の大樹に吊されちゃうよ〜! い、嫌だッ! 屍食い烏につ
つかれるのは嫌だよ〜〜〜〜〜〜!」
そう言って、本を落として泣き崩れた少年がいた。少年は緑色の帽子に緑色の服を着込んでお
り、年の頃、十四、五歳といったところだった。オレは本を拾ってやりながら言った。
「おい、落ち着けよ……。なあ、教えてくれ、ここはどこなんだ?」
少年は、大きな青い目をさらに大きくしてオレを見た。長い尖った耳が、金色の髪の間からの
ぞいている。
……あ、こいつ……エルフだ。
オレは気がついて、咄嗟に身構えた。しかし、少年はそんなオレの様子に構わず、おずおずと
言った。
「……あ、あ、あの、ここがどこか知らないということは、あなた方は……このサジエスの大樹
の書庫を狙いに来た賊ではないのですね?」
少年のその物言いがおだやかで、こっちに危害を加えそうにはなかったので、オレは剣にかけ
た手を引っ込めた。それと同時に、マリーが甲高い声を上げた。
「きゃあああああああっ! サジエスの大樹ぅ〜!? あはは、怪我の功名極まってる感じね!
じゃあ、ここが、エルフの大賢人、サジエスの書庫なの〜〜〜〜〜!」
エルフの少年は、そのマリーの勢いに気圧されて、後退りした。
「……サジエスは、僕の義兄様です。僕はミリューといいます。今、義兄様はここにいらっしゃ
らないので、僕がここの本の管理をまかされているのです」
マリーは、すでににこにこしながら、本棚の本を数冊引き抜いていた。
「あたしはマリーっていうの。錬金術師よ。こっちはルーウェン。……ねえ、自己紹介もすんだ
ところで、本、借してもらうわね〜! やったあ! これで、クライスのやつを出し抜いて、イ
ングリド先生をうならせる知識を手に入れられるのね〜! え〜っと、……え? ない……。こ
の本、何も書いてないわ、真っ白よ〜!? この本も……こっちの本も! あ、こっちも! ど
の本にも、何も書いてないじゃない、どうしてよ〜〜〜〜〜〜!?」
ミリューは静かに言った。
「この書庫の本には、すべて‘時間鍵’がかかっています……。邪悪な意志をもった者に、知識
を盗まれないためです」
マリーは言った。
「ねえ、ちょっと読むだけでいいのよ、お願い、ミリュー! 一瞬その鍵を開けてくれないかし
ら?」
ミリューは首を横に振った。
「……駄目です。この鍵は特別な力でかけられています。これを外せるのは、サジエス義兄様だ
けなのです……。義兄様は、今、とても遠いところに行かれていて……あと五十年は帰ってこら
れません」
マリーは涙目になった。
「そ、そんな〜! 他に鍵を開ける方法はないの!? ……せっかくここに来たのに」
ミリューは薄く微笑んだ。
「方法は……あるにはありますが……その方法を用いるならば、僕はあなた方と戦わなければな
りません」
「へ? どうしてよ……?」
マリーが言うと、ミリューは、手の中に光の玉を浮かび上がらせた。それと同時に……額を覆
っていた金色の髪がふわりと浮き上がり、そこには……七色に輝く石が現れた。
「……‘時間鍵’は、僕の護っているこの宝珠、‘時間の果実’の力でかけられているのです。
……サジエス義兄様以外には……僕を殺すしか、ここの本にかけられた鍵を開ける方法はありま
せん……!」
ミリューの額の七色の光は次第に書庫の中を旋回し……まばゆいばかりの明るさになった。オ
レは、再度剣の柄に手をやった。そのときだった。
「バカにしないでよねッ!」
大声で、マリーが怒鳴った。
「え?」
ミリューは、口をぽけっと開けてマリーを見た。その瞬間、光は消え失せた。マリーは、ミリ
ューに言った。
「あのねえ、そりゃ、あたしはここにある本を読みたいわよ! でもねえ、あんたみたいな、ど
う見たってあたしよりちっちゃい子どもを殺してまで、読みたくなんかないの! 分かった!?」
ミリューは呆然とした顔でマリーを見ていたが、やがて笑い出した。
「……え〜っと、たぶん、あなたは僕よりお若いと思いますよ? 僕、今年で百五十歳ですか
ら!」
マリーは驚愕の表情を浮かべた。
「へ? ひゃ、ひゃくごじゅっさい〜〜〜〜! 嘘でしょう!?」
ミリューは、くすくす笑いながら言った。
「本当です! ……あなた、とても面白い方ですね! 分かりました。あと五十年したら、もう
一度ここにいらして下さい。お義兄様にお願いして……本の閲覧を許可してもらいますから!」
マリーは、にっ、と笑った。
「分かったわ! じゃあ、必ず来るから、覚えててね!」
ミリューは言った。
「はい! じゃあ、約束の印に……え〜っと、そうだ、あなたのその首についている飾りを貸し
てください! 外さなくて結構ですから」
マリーは、言った。
「いいけど……どうするの?」
ミリューは微笑むと、口の中でなにやら呪文を詠唱しながら、手をマリーの首の石にかざした。
ミリューの手の平からは、七色の光が発せられ、その光は……石の中に吸い込まれていった。
「これでいいです! 僕の力の一部をこの石の中に入れておきましたから……。この次来るとき
には、この石を持っていてください。森に仕掛けた罠にかからず、まっすぐにここに来られるは
ずです!」
マリーがそれを聞いて、ありがとう、と言ったときだった。奥の方から、鈴を振るような女性
の声が響いてきた。
「……ミリュー、ミリュー!」
ミリューは青ざめた。
「ね、ね、姉様〜!」
女性の声は続けて言った。
「……ねえ、ちょっとこっちに来て手伝ってくれないかしら、ミリュー! はぁ〜、私って駄目
ね〜……。サジエスが帰ってくるまでに、髪ぐらいは自分で結えるようになっておこうと思って
毎日練習しているというのに……また、こんがらがってしまいましたわ。……ねえ、ミリュー!
こっちに来て、私の髪をほぐすのを手伝ってくれないかしら〜?」
「はい、ただ今参ります、姉様!」
ミリューは気を付けの姿勢をとって、大声でそう言うと、オレたちに向かって言った。
「……ご、ご、ごめんなさい! 姉様が呼んでいるので、すぐ行かないと! とりあえず、お二
人を大樹の外に出して差し上げますから、後はマリーさんの石の指し示す方角に歩いていってく
ださい! 必ず外に出られますから!」
そう言って、ミリューは大慌てで呪文を唱え始めた。
瞬く間に、オレたちは大樹の根本に立っていた。
9
マリーは光に顔をしかめながら言った。
「……この木の中に、あんな本が詰まってるなんて……想像できないわね〜?」
そう言って、マリーは木の根本にどさっと座った。
「おい、行かなくていいのか、マリー?」
オレは、マリーの横に腰掛けながらそう言うと、マリーは、ん〜? と言って、木にもたれか
けた。
「……どうせ、急がないからいいわよ。それより、昨日ほとんど寝てないから、眠くって、もう
……」
マリーは、そう言って、大きく欠伸をした。オレはうなずいて、木の幹にもたれかけた。
「ま、そうだな。ここならウォルフも出ないし……。少し、休んでいくか……」
マリーは言った。
「ねえ、ルーウェン、あと五十年経ったら、またあたしの護衛して、一緒にここに来てくれる?」
オレは言った。
「……それまで生きてるかな、オレ……?」
マリーは大きな欠伸をした。
「だ〜いじょうぶよ! あんたみたいな、無駄に元気なだけが取り柄のヤツ、そう簡単にくたば
るわけないでしょう〜! ね、約束よ……?」
「ああ。じゃあ、約束だな」
そう言って、オレはうなずいた。
大樹にもたれて上を見上げると……枝の間から、まぶしい光が雨のように降ってきた。それは
きらきらと輝いて、オレたちの間を舞っていた。オレは、まるで自分が職人に形を作られたばか
りの壺になって、金色の顔料をたっぷりとふきつけられているみたいだな、と思った。
横を見ると、マリーはすでに眠っていた。
再び上を見上げると……澄んだ青空が木々の間から見えた。
「……静かだな」
つぶやくと、自分の声が森の中に吸い込まれていった。本当に静かだった。この森には、鳥や
獣の気配すらない。ただ、太陽の光だけが澄んだ音をたてて、あちらこちらに乾燥した日だまり
を作っていた。オレも、少し眠くなって大きく欠伸をした。
うとうとしながら、ふと、脈絡もなく、故郷の村を思い出した。村にいたころは、いつもどう
いう風景を見ていたんだろう? そんなことを考えた。
覚えているのは、山間の村の景色だ。
あのころ、世界は山のところで途切れていた。その先に何があるのか、いつもそんなことを考
えながら眺めていると、山の稜線の上からは、強い風に煽られた雲が、よく上がっていった。
いつか村を出たかったけど、でも、こんな形で出ることになるなんて、思っても見なかった。
第一、もう、村はない。ヴァイツェン村という名前の村は、もうないんだ。
どうしてだろう?
どうして、空の色はどこでも同じなのに、王様たちってのは、地面の上に線引きをしたがるん
だろう? オレたちは、ただ、その場所で暮らしていただけだったのに。
……そうよね〜。でも、ま、国境線が引かれているから、そこを超えて出ていってやろうって
気にもなるんじゃない?
マリーがの声が、ふいにオレの頭の中に響いてきた。少し驚いて見ると、マリーは目を閉じた
ままだった。
……オレ、口に出して言ってたのかな、無意識のうちに?
そう、オレが考えると、マリーの首にぶらさがった石が、ぱあっと七色に光った。
な〜によ、ぶつぶつ言って……。
マリーの口は動いていなかったけど……声が、やっぱり頭の中に聞こえてきた。
石の力なのか……?
そう考えると、マリーの声は言った。
そうみたいね。あたしは寝てるけど、でもあたしの意識は寝てない。この場所は、いつもあた
したちが生活してるのと、ちょっと次元が違う場所にあるの。そのせいもあるわ。……ねえ、少
し話しましょう、ルーウェン? 普段のあたしは、きっと覚えてないだろうけど、でも、話がし
たいの。
夢かな、とオレは思った。
夢じゃないわよ、とマリーの声は言った。
オレは息を吐き出すと、ゆっくり頭の中でマリーに話しかけた。
……そうだな……。あんた、何の話がしたいんだ、マリー?
別になんでも……。あんたのことを話してよ、ルーウェン?
オレか……。別にオレは、たいしたことはやってないさ。
嘘。ずっとその歳で、一人で生きてきたんでしょ? それってすごいことじゃない?
……それ、あんたに話したこと、あったか?
話してないわ。でも……見えるの。いい村ね、ルーウェンの故郷。
……もう、ないんだ、その村。
……知ってるわ。でも、あんたのご両親なら、生きてる。
どうして分かるんだ、マリー?
どうしてだか分からないけど、でも分かるの。きっと、この石の力のせいね? それともこの
場所のせいなの? ……どこにいるのかまでは、分からないけど……。
そうか。じゃ、そうなんだろうな。……オレも、それを信じるよ。なあ、マリー?
何、ルーウェン?
あんたは、卒業しても、ずっとザールブルグにいるつもりなのか?
分からないわ。でも、多分、一度は街を出る。世界中を見て歩きたいの。まずは、イングリド
先生の故郷のケントニスに行くつもりよ。
……遠いな。
遠くないわ。
……オレもいつかどこかに落ち着いて、家族を持つときなんか、来るのかな?
そうね。……いつか、来るわ。
いつだ?
……分からない。でも、いつか、必ずよ。
その場所は、どこなんだ?
……それも分からない。でも、どこか、……この空の下の、どこか。
なあ、マリー……?
「マリー?」
ふいに、マリーの声は途切れた。オレは彼女の顔をのぞき込んだ。今のは……幻聴だったのか?
そんなことを考えた。
風が吹き、彼女の睫毛がそよそよと揺れていた。それと一緒に、金色の巻き毛が顔の周りをう
ねるようにして揺れた。見ていると、ひどく不思議な感じがした。オレは、しょっちゅうこんな
風にマリーの護衛をして街の外に出ているけど、でも、マリーのことは何も知らない。ふと、そ
う思った。いや、オレだってマリーにとっては、きっとそうだ。オレも……故郷の村がなくなっ
たことなんて、話したこともなかった。
「……マリー?」
再び呼んだが、返事がなかった。マリーは、ん、と言って勢いよく首を横に向け、そのまま、
ずるりと木の背もたれから落ちそうになった。
「おっと……!」
オレは慌てて、マリーの肩を支えて元の位置に戻してやった。たぶん、それだけのことだった、
はずだった。
次の瞬間、
「うん……?」
マリーがそう言って目を開けたとき、オレは、自分が彼女に口付けていることに気がついて、
慌てて顔を離した。
「……あ、わ、悪い! えっと、ごめん、ごめん! ……マリー?」
しどろもどろになりながらオレが言うと、マリーは、そのままオレを見るともなしに見て、そ
のまままた、目を閉じてしまった。
……何だ……寝ぼけてたのか……?
オレは、どくどく言っている心臓の上に片手を当てて、ほっとため息をついた。
何であんなことしたんだろう?
そう考えながら、額の冷や汗をぬぐった。
それから、ああ、そうか、と思った。好きなんだ。
オレはきっと、ものすごく、彼女が好きなんだ、と思った。
そう考えると、幸福なような、不幸なような、ひどく複雑な気持ちがした。
混乱している頭を落ち着けるために大きく息を吐き出すと、また、木の枝の間を風が吹き抜け
ていった。
10
ザールブルグの街に戻ってから、数日が経った。
オレは、調合品を依頼しに、マリーの工房に行った。工房の前まで来た瞬間、すごい勢いで扉
が開き、叫び声がした。
「うわあ〜〜〜〜〜〜!」
声の主は、クライスだった。クライスは外に走り出してくると、工房の前の石畳の上で、見事
に転んだ。ヤツのかけていた銀縁の眼鏡が勢いよく吹き飛んで、路上に落ちて、こん、と跳ねた。
それと同時に、マリーの怒鳴り声が響いてきた。
「二度と来ないでッ! この嫌味男〜ッ!」
声と一緒に、クライスのすぐそばに花瓶が飛んできた。花瓶は、石畳の上で大きな音をたてて
割れ、粉々にはじけ飛んだ。オレは……しばらくの間、驚いて見ていた。クライスは、路上に這
い蹲って何か手探りで一生懸命探している。
あ。
眼鏡、か。
そう思って、オレは慌ててヤツの眼鏡を拾うと、手渡した。
「……ありがとう、ございます」
そう言って、クライスは眼鏡をかけると、ローブについていた埃を、ぱんぱん、と軽くはたい
た。それから、口をへの字に結んだまま、やれやれ、といった風に首を少し横に振った。オレは
クライスに言った。
「あんたも大変だな……。アカデミーの先生に、マリーのお目付をするように言われてるんだ
ろ?」
クライスは、オレの顔を見た。近くで見ると……、ちょっと女の子みたいにキレイな顔だな、
とオレは思った。
「マルローネさんが、そう言っていたのですか?」
クライスに言われて、オレはうなずいた。
「あ、ああ! 噂はよく……。ごめん、だから、あんたのこと、結構よく知ったつもりになっち
ゃってさ」
クライスは、ふう、と息をついて眼鏡の位置を直した。
「……他に、何か……、マルローネさんは、私について言っていましたか?」
オレは口ごもった。
「え? あ、いや、その……、う〜んと……」
クライスは、薄い笑みを浮かべた。
「結構です。……大方、予測はつきますから。では……」
そう言って、帰りかけたクライスを、オレは思わず呼び止めた。
「あ、ちょっと待ってくれ!」
クライスは、振り返って怪訝そうな顔をした。
「……何か?」
オレは、慌てて言った。
「いや、オレ、……詳しい事情はよく分からないけど、でもさ、マリーは……ああいうヤツだか
ら、その……。たぶん、本当に嫌いだったら、視界にも入ってないし、話題にものぼらないと思
うよ……って、……余計なお世話かもしれないけど……?」
クライスは、少し驚いた顔でオレを見ていたが、やがて、少しだけ口元を緩めた。
「……さんに……」
ぼそり、とクライスは言った。よく聞こえなくて、オレが、え? と言って聞きかえすと、ク
ライスは、フッ、と笑った。
「マルローネさんに、お伝えください。……イングリド先生にはよしなに言っておきましたから、
後顧の憂いなく、卒業試験の準備にかかってください、と。……それでは」
クライスはそう言って、くるり、と踵を返すと、工房を後にした。それからオレは……開けっ
放しになっていた工房の扉から、そっと中に入った。工房の中は……機材や薬液が散乱し、ひど
いことになっていた。その中で……、マリーは向こうを向いて、ブツブツ言いながら壊れた陶器
の破片を拾い集めていた。
「……や、やあ、マリー……!」
オレが恐る恐る声をかけると、マリーは振り返った。
「ルーウェン! ……なぁに? また、調合品の依頼?」
オレはうなずいた。
「そうだったんだけど……、ひどい状態だな? 調合品、依頼しても大丈夫なのか……?」
マリーは、ゴミ箱の中に、拾い集めた破片をどさどさとぶちまけると(いつもながら、豪快な
掃除だよな)、笑いながら言った。
「大丈夫よ! 大切な機材とか、高い機材とかは割ってないから! ……あ〜んなヤツに、貴重
な機材をぶつけたら、もったいないもん!」
オレはマリーに尋ねた。
「……あんなヤツって……クライスのことか?」
マリーは、その大きな目を一層大きくした。
「へ? 見てたの、ルーウェン?」
オレは苦笑しながら言った。
「ああ……。さっき、この工房の前でね」
マリーは、ふん、と言って腕組みをした。
「言っとくけど、あいつが悪いのよ〜! 珍しくこの工房に来たと思ったら、あたしが今やって
る調合の手順が間違ってるの、機材の扱いがなってないの、こんなことアカデミーに入学したて
の一年生でもできるだの、……ごちゃごちゃごちゃごちゃ、嫌味ったらしいことを、ネチネチネ
チネチネチネチネチネチ言って〜! ……あ〜もう! 思い出したら、また何だかムカムカして
きたわッ!」
オレは言った。
「まあ、でもさ、……ものをぶつけるのは、あんまりよくないと思うよ、マリー……?」
マリーは、ふぅ、と言って腕をほどいた。
「それだけなら、いつものことだから別にいいんだけどね……。あいつ、またしても人を馬鹿に
したことを言って!」
マリーは、頬を膨らませた。
「……あの嫌味男、‘この卒業試験目前の大切な時期に、イングリド先生との約束を破ってまで
外出して、なおかつ何の成果もあげられないとは、さすがは特別試験の問題児のやることは滅茶
苦茶ですね’、だの、‘結局、あんな冒険者風情といつもつるんでいるから、高度な研究が進まな
いんです’だの……。もう! この世の中で、自分が一番優秀だと思って、他人を馬鹿にしてる
のよ、根っからの嫌味野郎よねッ! やっぱりいらない花瓶をもう二、三個ぶつけておけば良か
ったわ!」
そう言って、マリーは、どさっ、と椅子に座った。
そうかなあ、とオレは思った。
……そんなに……悪いヤツには思えなかったけど。あ、そうだ。
「ところで、マリー?」
オレが言うと、マリーはオレの顔を見上げた。
「何?」
「クライスのヤツ……、何の用で来たのか、あんたに言ったのか?」
オレが尋ねると、マリーは、へ? と言って天井を仰いだ。
「あ、そういえば……嫌味以外に何も言ってなかったわ。あいつったら、何しにここへ来たのか
しら……?」
11
それから、冬が来て、春が来て、また夏になり……季節が一巡して、冬になった。その日、オ
レは飛翔亭で、冒険者仲間のミューと飲んでいた。最近はオレも場数を踏んでそれなりに強くな
ってきていて、以前ほど食うに困るってほどじゃなくなっていた。ミューは、銀色の短い髪を揺
らして、ジョッキの中のエールを飲み干すと、にかっと笑った。
「ルーウェンさ〜、最近、強くなったよね〜。最初に会ったころは、ぷにぷににも手こずってた
のにさ〜!」
オレは、頭を掻きながら言った。
「なんだよ……。さすがにオレでも、ぷにぷにくらいは軽く倒してたさ。あんたこそ……ザール
ブルグの冬は寒いって、文句ばっかり言ってた割には、もうすっかり慣れちまったみたいだな?」
ミューは、きゃははっ! と大口を開けて笑うと(何がそんなにおかしかったのかな?)、オ
レの背中をばんばん叩いた。オレは……おかげで飲みかけていたヴァイスビアーにむせて、咳き
込んでしまった。
「おい……、なにすんだよ……!」
オレはそう言ってミューの顔をにらんだが……、彼女は相変わらず、にかにか笑っている。…
…ミューは、酔っぱらうと、笑い上戸になるんだよな……。オレがそんなことを考えていたとき、
ぎいっと音がして、飛翔亭の扉が開いた。入ってきたのは、行商人風の中年の男だった。この店
には、仕事を探している冒険者だけじゃなく、酒や情報を売ろうと商売人も頻繁に出入りしてい
る。だから、最初は気にも留めていなかった。男はカウンターの前に立つと、手にしていた大き
な布の袋を、どさり、と床に置いた。
「やあ、ディオの旦那! 景気は、どうですかい?」
そう言って、男は分厚い生地で作られた帽子を脱ぐと、愛想のいい笑顔を浮かべた。ディオの
旦那は、前掛けで手を拭きながら言った。
「……どうしたもこうしたも、相変わらずさ。何の用だ、グスタフ? おまえさんが、遊びに来
たわけでもないんだろう? また、北方の珍しい酒でも仕入れてきたのか? 質が良けりゃ、い
つものように買ってやるぜ。上等な酒なら、うちはいつでも大歓迎だ。……ああ、そうそう。こ
の間は、フレアに土産をありがとうよ。あれはいい布地だったな。……さっそく服飾ギルドの腕
のいい職人に頼んで、ドレスに仕立ててもらったぜ。ついでに、揃いで布靴も作ってもらった。
……きれいな色で、フレアによく似合ってな、俺も嬉しかったぜ。フレアもあんたに、礼を言っ
ておいてくれって言ってたぜ。ま、これは俺の気持ちだ。飲んでくれ、グスタフ」
そのグスタフと呼ばれた商人は、ディオの旦那が注いでくれたエールを喉を鳴らして美味そう
に飲み干した。
「いやあ、美味い! 俺ぁ、ザールブルグに来たら、この店で一杯やるのが、何よりの楽しみで
ねぇ! ……ふう、いや、今日ここに来たのは、他でもねぇ。新しく、美味い酒を仕入れたんで、
こちらさんに、買い上げてもらおうと思ってね?」
そう言って、商人は足元の袋の中から酒瓶を一本取り出すと、たん、とカウンターの上に置い
た。
「ディオの旦那、ちょっと飲んでみてくださいよ、この酒……?」
ディオの旦那は……小さな利き酒用のグラスをカウンターの上に置くと、黒炭のような黒い色
をしたその酒を少しだけ注いだ。そして……吊してあったランプの光の下で、くるくるとグラス
を回して、じいっと眺め、おもむろに口に含んだ。
「ほう……。ドンケルビアーか。……ずいぶんと、いいもんだな?」
商人は、嬉しそうに言った。
「やっぱり、分かりますかい、へへっ……。さすがはディオの旦那だ! いやね、この王都から
北東に行った小さい村で、最近い〜い酒をこしらえてるって話を聞いたんで、仕入れに行ったら、
噂に違わぬ出来でね! いやもう、こいつを王都に持っていったら、まっさきに、あんたの店に
置いてもらおうと思ったんですよ!」
ディオの旦那はうなずいた。
「……相変わらず耳が賢いな、あんたは。しかし、この酒、いい材料を使ってるな? ……ふむ、
麦だな。麦が、ここいらに生えているヤツと比べて、段違いにいい。おまえさん、どこでこの酒
を手に入れたんだ?」
商人は、得意げに言った。
「それが……驚かないでくださいよ、プフォルタ村なんでさ」
ディオの旦那は、驚いた顔をした。
「何だって? あの村は……土地が痩せていて、せいぜい芋やケシが少しばかり穫れるくらいの
もんだろ? ……麦なんざ、育たないはずだが……?」
商人は、笑いながら言った。
「それが、穫れるようになったんですよ、旦那! いや何、あの村には数年前から、ヴァイツェ
ン村から流れてきた連中が何人か住み着いていてね、そいつらが……土地を改良して、質のいい
麦を育てるのに成功したって話でさ」
ディオの旦那は目を丸くした。
「ほう、ヴァイツェン村か……。例の、ドムハイト王国との戦いでひどい目にあった辺りだな。
村はドムハイト軍にやられて、なくなっちまったって話だが……ふむ、だったら合点も行く。あ
そこは、山の上であんまりいい土地じゃなかったらしいが、その分、農民が土地を上手く改良し
たおかげで、昔はシグザール王国領内きっての美味い麦や酒が作られていた……。なるほどな」
そのときには、オレはすでに立ちあがって、商人の横に立っていた。オレは思わず、商人の肩
をつかんで尋ねた。
「旦那! その話、本当なのか? ……ヴァイツェン村の人間が住んでる村があるってのは!?」
商人は、驚いてオレの顔を見た。
「あ、ああ……本当だが……?」
ディオの旦那は、オレの顔を見て目を丸くした。
「……おい、ルーウェン、どうしたんだ? そんなに興奮して……あんたらしくもない……」
オレは、ディオの旦那に言った。
「あ、す、すまねぇ、ディオの旦那! でも、そのヴァイツェン村ってのは、オレの生まれた村
なんだ! ……もしかしたら、この旦那が言っていた村に、オレの両親がいるかもしれない!
なあ、グスタフさんとか言ったな、あんた、フィルニールって名前の夫婦がそこにいたかどうか、
覚えがないか?」
商人は、ようやく合点がいったのか、うなずきながら、オレに言った。
「フィルニール、ねえ……そういえば、そんな名前の夫婦がいたような……。たしか、小さい子
どもも連れていたが……?」
オレは聞き返した。
「子ども……? 歳は、いくつくらいなんだ?」
商人は言った。
「そうさねえ……。まだ、ごく小さい赤ん坊だ。まだ、ロクに歩けもしないくらいのな……。奥
さんが、いつもあやしながら畑仕事をしたり、麦を轢いたりしてたから、産まれてまだ一年もた
っちゃいないんだろうな?」
*
翌日は、とてもいい天気だった。オレは、以前からの約束で、マリーの護衛をしにヘーベル湖
に行った。今時期しか採れない、‘糊光の結晶’を採取するためだそうだ。オレの他の護衛は…
…ドナスターク家の令嬢、シアさんだった。
この人はマリーの親友だけど、マリーと正反対の性格をしている。いつもおっとりしていて、
おしとやかだ。ただ、とても身体が弱くて、いつも苦しそうに咳をしたりしている。どう見ても、
マリーの護衛をしているっていうよりは、マリーが護衛しているって感じだ。
ここのところしばらく、オレは彼女の姿を見なかった。事情を聞いたら、病気が悪化して、し
ばらく自宅から出られなったらしい。気の毒なことだ。オレも、特に取り柄があるほうじゃない
けど、でも、身体だけは丈夫で良かったといつも思う。だから、彼女がオレたちと同行するとき
は、オレはいつも気をつかって、率先してかばうようにしていた。だけど……。
今日は、びっくりした。
採取していて、オレたちは、いきなりものすごい数のぷにぷにに囲まれた。オレは、とりあえ
ず、病み上がりのシアさんを庇って気合をためようとした、そのときだった。
「いい加減にしてぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
背後から、絹を引き裂くような声が飛んできた。オレは、ぎょっとして振り返った。
「あ、前へ出るな!」
オレがそう言ったのも聞かず、シアさんは、凄まじいスピードでぷにぷにの群れの中に突っ込
んで行った。
オレは、目がおかしくなったのかな、と思った。
でも、それは真実だった。
オレの目の前では、あのおしとやかで病弱なシアさんが、目にも留まらぬ速さでぷにぷににハ
タキをかけていた。ぷにぷには……彼女のハタキにかけられて、またたく間に苦悶の表情を浮か
べて消滅していった。
「……う、嘘だろ……?」
オレがつぶやくと、マリーはにこにこしながら言った。
「すご〜い、シア! あたしがあげたエリキシル剤が効いたのかしらね?」
シアさんは、振り向くと笑顔で言った。
「うふふ……、恥ずかしいわ……。最近、何だか身体全体に、力がみなぎってくる感じがするの
よ……」
*
夜になった。
オレは野営の焚き火の番をしながら、ぼんやり考え事をしていた。
……親父とお袋が、生きてるかもしれない。
おまけに、兄弟までいるかもしれないんだ。
そう思うと、胸の辺りが、ひどくざわざわした。行かなくちゃいけない。とにかく、確かめて、
話はそれからだ。
ふいに、シアさんがオレの横にやって来て、すとん、と座った。
「ごくろうさま、ルーウェン」
彼女はそう言って、にっこりと笑った。
「マリーは、寝てるのか?」
オレが聞くと、シアさんはうなずいた。
「ええ。もう、ぐっすりよ」
オレは、焚き火に木の枝をくべながら言った。
「あんたも寝なよ……。 まだ、病み上がりなんだろ? 見張りは、オレとマリーが交代でする
からさ」
シアさんは、微笑んだ。
「いいのよ、そろそろ私が火の番をするわ……。マリーの護衛に来ているんだもの、それぐらい、
やらせてちょうだい?」
そう言って、シアさんは、華奢な白い指で薪を持った。
「あ、それはちょっと太すぎるから……後で割って使……うわっ!」
オレがそう言い掛けた瞬間、シアさんは、まるで小枝でも折るかのように軽々と、自分の腕の
三倍の太さはあろうかという薪を、ばきん、とへし折った。
「……これで、ちょうどよくなったかしら?」
そう言って、シアさんは微笑んだ。
「…………いい、よ」
オレが呆然としながらそう言うと、シアさんは、くすっと笑って薪を火に放り込んだ。
「マリーがね、私の病気を治すために調合してくれたお薬を飲んでから……私、すごく身体の調
子がいいの。うふふ……健康って、いいわね?」
……ちょっと健康になりすぎたんじゃないかな、とオレは思った。いや、病気なのよりはいい
ことなんだろうけど、でも……まあ、いいか……。
「ねえ、ルーウェン?」
ふいに、彼女が言った。
「何だい?」
オレが燃えている木の枝を棒でひっくり返しながら言うと、彼女はオレを見て、ゆっくりと口
端を引き上げるようにして笑った。
「……何か、悩んでることでもあるの?」
え? と言ってオレはシアさんの顔を見た。大きな緑色の瞳が……オレの顔をのぞき込んでい
る。まいったな、とオレは思った。この人に嘘をついちゃ、駄目だ。
「……あのさ、オレ……ザールブルグを、出ようと思ってるんだ」
シアさんは、そう、と言ってうつむいた。
「マリーには、言ったの?」
オレは首を横に振った。
「言おうかどうか、迷ってる」
シアさんはゆっくりと、三つ編みからはみ出した横髪をかき上げた。
「……事情が、あるのね?」
ああ、とオレは言った。
そう、と彼女は言った。
それきり……何も聞かなかった。
12
ザールブルグに帰ってきてからも、オレは、マリーに街を出ることを言うべきかどうか、しば
らく迷っていた。
北東方面に行く馬車は本数も少ない上、雪が積もれば止まってしまう。今日の夕方の馬車で出
発しよう、と決めて身支度をした。馬車止めまで行く途中、マリーの工房の前を通りかかったが、
……やっぱり、工房の扉を叩くことができなかった。
開け放された窓からは、煙が出ていた。驚いて、中を見ると……マリーがクライスと何やら言
い争っていた。傍らには、あきらかに失敗したらしい、真っ黒になった産業廃棄物が散乱してい
た。どうやら、マリーはクライスに調合の手順について、お説教をされているらしい。オレは口
の中で、元気でな、とつぶやくと、足早にそこを立ち去った。
武器屋に寄って挨拶をすると、武器屋の親父はたいそう残念がって、お別れに歌を歌って聞か
せるぜ! と言っていたが、オレは丁重に断った。それから、飛翔亭に寄った。ディオの旦那は、
ほらよ、ルーウェン! と言って、黒パンとシャリオチーズの大きな塊が入った紙包みをオレに
手渡した。
「こんなもんしかなくってすまんが、餞別だ。道中、腹が減ったら、食ってくれ」
そう言って、ディオの旦那は、にやっと笑った。
「旦那、……ありがとう」
オレが言うと、旦那は人差し指で、軽く口ひげの辺りをこすりながら言った。
「ま、オレも人の子の親だ。……あんたのご両親の気持ちもよ〜く分かるぜ。しっかりな?」
オレはうなずいて、そのまままっすぐに町外れの馬車止めまで向かう、つもりが、出口のとこ
ろで、ふいに、マリーとぶつかった。……最初に会ったときと同じように。
「ぅあっと、ゴメンナサイ!」
あのときみたいに、鼻を押さえながら彼女は言った。オレは少し驚いたけど……でも、気
取られないように、勤めて平静を装った。
「ちょうどよかった、挨拶しておこうと思ってたんだ」
彼女は、きょとん、とした顔でオレを見て言った。
「挨拶……?」
オレはうなずいた。
「ああ。オレ、……今までずっと、戦争で離ればなれになっちまった親を捜してたんだけど、こ
のあいだ、それらしい人がいるっていう話を聞いたんだ。それで、これから行ってみようと思う
んだ」
マリーは、その大きな目をさらに大きくして……何やら言っていたようだけど……オレは‘普
通に’するのに精一杯で、彼女が何を言っているのか、よく分からなかった。たぶん、元気でね、
とか、頑張ってね、とか、そんなことを言っていたんだろう。オレは慌てて言った。
「なぁに、また戻ってくるよ」
‘約束’が、あるしな。
それに、
「この街が」
いや、本当はあんたと一緒にいるときが、
「一番居心地がいいからね」
ああ、そうか、と思った。居心地がいいんだよ、あんたといるとね。だから……別れの挨拶が
しづらかったんだ。
楽しかった。すごく。
会えて良かった。元気で……って、もっとも、あんたにそれを言う必要もないかな?
色々言おうとしたけど、口がうまく動かなかった。オレが言えたのは、一言だけだった。
「じゃあな!」
そう言って振り返らずに店を出ると、すでに陽は沈みかけていた。
*
馬車に揺られて、数時間が経ったときだった。
辺りには家の明かりもなく、星は冷え冷えと冬の荒野を照らしていた。
……ルーウェン! 行ってらっしゃい!
突然、マリーの声がオレの頭の中に響いてきた。あの……サジエスの大樹の根元のときのよう
に。
オレは慌てて辺りを見回した。すると……馬車の後ろ、はるか向こうにマリーの金色の髪が、
何か動物の尻尾のように風に揺れ……消えた。その瞬間、誰かががくがくとオレの肩を揺さぶっ
た。
「お若いの、ほれ、起きなされ!」
ん? と言って目を開けると、馬車に乗り合わせたじいさんだった。じいさんは、しょぼしょ
ぼした皺だらけの目尻を引き上げると、オレに言った。
「プフォルタ村に行くんだったら、次の馬車止めで乗り換えたほうがいいんじゃろ?」
オレは、ありがとう、と言って大きく欠伸をした。
今のマリーの声は……やっぱり、夢だったのかな? いや、もしかしたら、本当にオレを送る
言葉だったのかもしれない。
そんなことを考えながら、オレは馬車の進行方向を見た。東に向かう馬車の先には、冬の朝日
が上りかけていた。荒野の赤茶けた地平線の上には、赤みがかった紫色の光が射し込んで来てい
た。その光は、オレの目を射抜き、白い息と溶け合って静かに揺れていた。
……必ず、ザールブルグに戻ってくるからな。
そう思いながらオレは、ゆっくり、冷たい空気を吸い込んだ。
〜fin〜
後書き
Cassis様に、222番を踏んでいただき、リクエストしていただいた作品です。お題は「ルー
マリ」でした。初挑戦で、いろいろと自分としては、実験的な部分が多かった作品です。
まず第一に、私はルーウェンのような爽やかなタイプって、普段あんまり書かないですしね
(笑)。私自身は、マリアトに関しては、カップリングは比較的無節操なので(主人公さえ幸せ
でいてくれればそれでいいんです(^^;)、クラマリもルーマリも分け隔てなく好きなんですが、
まあ、そういう半端者ですので……ルーマリ属性の方に、ご満足いただけたかどうか、大変に心
配しております。
書いてみて改めて思ったんですが、いい青年ですよね〜、ルーウェン……。アトリエキャラの
中でも境遇の悲惨さは一、二を争っていると思うのですが(^^;、めげずに明るく元気で(しみじ
み)。マリーは、まあ、ああいった人ですので(笑)、恋愛というよりは、男の子同士の親友の
変種のような関係を書きたかったのですが……難しかったです。また、これを書いていて、ハギ
レとしてクラマリネタも思いついたのですが、ルーウェン一人称のため、入れられませんでした。
こっちは後ほど、別ヴァージョンにおこして書きたいな〜、と思ってはおります(笑)。
なお、リリアト部屋の「時間の果実」とリンクしている作品ですので、宜しければ、そちらも
併せてご参照くださいますと、幸いです(2002年、11月)。
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