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button  魅惑のフル・ファッション

Full−Fashioned Stockingsとは、「体の形にぴったりあうように編まれたストッキング」です。普通は、ナイロン100%の編み地を脚に後ろで縫い合わせたストッキングのことを言います。フル・ファッションの特徴は後ろに一直線に伸びた縫い目、シームがあることです。フル・ファッションの魅力の一つは、このシームの存在ですが、それだけではありません。このページでは、いただいた画像を中心にフル・ファッションの魅力をお話ししてみたいと思います。

フル・ファッションとシームレスを並べてみました。どう印象が変わりますか?

 

ffs

backline seamless ffs seamless

左から二つめは、フル・ファッションではなく、伸縮性のあるナイロン・ポリウレタンのストッキングに後ろのラインをつけたものです。私はバック・ラインと呼んで区別しています。これはこれでステキですが、何か違うと思いませんか?

フル・ファッションは、ナイロン100%で、伸縮しない編み方で作られています。私はノン・ストレッチと呼んでいますが、これが混紡のストッキングにはない透明感を生み出しています。単にラインがあるだけなら柄物のパンティ・ストッキングと変わりませんが、この透明感こそが、フル・ファッションの魅力で、これでシームもシャープに引き立ちます

 

フル・ファッションのディティール

1.シーム

シーム

フル・ファッションの魅力の第一は、やはり後ろにすっと伸びたシームのラインです。

このシームはもともと製造上の都合で生じたもので、技術革新によりシームのないシーム・フリー(後にシームレス)のストッキングが製造されるようになると、日本では過去の遺物として忘れ去られ製造されなくなりました。しかし、欧米では今でも少数ではありますが作られ続けています。

このようなラインはパンティ・ストッキングや網タイツにもありますが、フル・ファッションのシームの美しさはシャープさにあると思います。透明度が高い、透き通った編み地だからこそシームのラインが際だちます。

シームの印象は色によって変わります。黒はもっともシャープな印象で、私は女のプライドを象徴しているように思います。肌色は、女性らしい優美さの中にすっきりとした縦のラインを演出すると思います。

ただ、シームのラインをまっすぐに保つにはそれなりの心配りが必要です。

 

 

 

 

 

 

2.かかと

 

poimted
cuban

フル・ファッションのかかとは左のように、アキレス腱のところまでシームに沿って補強がなされています。

ここの処理には何種類かあります。画像左のようにてっぺんがとがっているものを「ポイント(ポインテッド)・ヒール」と、画像右のようなてっぺんが角になっているのを「スクエア・トップ(キューバンCuban・ヒール)と言います。

この他、何種類かあります。

ポインテッド・ヒール
スクエア・トップ・ヒール
 

3.つま先とかかとの補強

フル・ファッションのような超薄手ははその性質上つま先やかかとの補強は必須となります。補強がつま先からかかとまでつながっています。
最初にフル・ファッションに足を通した時は、足裏へのシームの当たりが気になって、何かを踏んでいるような気がしたものです。場合によってはふくらはぎや太ももの裏にもシームの跡が残ります。そういう点では今の方が進化していると言えるでしょう。
画像はどちらもHarmony Point です。




フル・ファッションのつま先比較画像です。Schiaparelli(S)とCervin(C)Aristoc(A)とFalke(F)です。

S
S
S
C
C
C
A
A
A
F
F
F

 

フル・ファッションのブランド

下は現在私がストックしているフル・ファッションの一部です。Gerbe、Cervinは古いパッケージです。他は既に製造していません。

sonota













フル・ファッションとシームレス



シームレスは1955年にアツギが発売し、一般化したのは60年代に入ってからだそうです。このADは50年代中頃に女性週刊誌に載っていたもので、フル・ファッション業界がシームレスに脅威を感じていたことをうかがわせます。
梶山季之の小説に、発売当初のシームレスをいかに売るかを描いたものがあります。いつの時代でも悩みの種である「脚を細く見せる」ことで、シームの存在はこの点で有利だったわけです。これを覆すにはイメージ戦略が必要でそこに注目されたのが、当時の花形職業スチュワーデス(CA)でした。これが功を奏してシームレスに転換した「堀木ナイロン」の株を上げるのに成功したという筋です。
実際にフル・ファッションにしがみついた会社は撤退を余儀なくされました。ただ、それが私たちにとって良かったのかどうかは分かりません。


日本のメーカーはいつ頃までフル・ファッションを製造していたのでしょう。今現在製造販売しているところは無いようです。ストッキング大国としては残念なことです。
もちろんインポートに頼らざるを得ませんが、ごく僅かとは思いますが、今でもフル・ファッションを支持する人がいます。
とは言っても知り合いを除いてはいているのを見たのは僅かに二回です。それもずいぶん前の事です。
一回は結婚式場でした。だいぶたるんでいたのではき方をご存じなかったのでしょう。それでもフル・ファッションを選んでいるのは嬉しい感じがしましたしました。もう一回は新宿駅のコンコースですれ違った時でした。
熱処理で「シーム」を付けたものは見かけることがありますが、フル・ファッションとは透明感が全く異なります。(透明感ということであればノン・ストレッチのシームレスもすぐに分かります。)

私もかつては年に一二度くらいは足を通したものですが、さすがにストックが少なくなり特別な時のために取っておくようになりました。

円安でインポートは手が出しづらくなっています。さてどうしたものでしょう。財務省はまだまだと言っているようですが。


黒と肌色

ル・ファッションで人気のある色は黒です。シームの効果が一番発揮されるからでしょう。一方で印象が強すぎる危険もあります。
そもそも黒のストッキングは、はく側、見る側にとって肌色とは異なり様々な強いイメージがあるようです。
薄さによっても、厚手の黒よりは薄手の黒の方がインパクトが強く、アグレッシブな印象があると思います。シームが加わればその効果は倍加すると思います。
それからヒールの印象もあると思います。左は「ポイント・ヒール」つまり上が尖っているタイプです。他に「スクエア・トップ」などがあることはWEBページに書いたとおりです。私はポイント・ヒールが好きですが、できれば小さい(低い)方が1サイズや2サイズの人にはバランスがとれると思います。(画像は2サイズをはいています。



肌色だとヒールやシームは黒ほど目立たないのでシームレス感覚ではけると思います。中でも、Gerbe Gazelle は編み目がきれいで好きな色です。
左の画像は、上のパッケージ画像にあるイタリア製 Carolina BLOCH です。ポイント・ヒールですがじっくり見ないとわからないかもしれません。

最近は色が少なくなってしまいました。グレーなどもサポートにはない都会的な垢抜けた印象になります。
Aristoc Harmony Point の'Gentle Smoke' は肌がきれいに見えますし、シルエットを整える効果もあります。黒とともに好きな色です。

下はアリストックのハーモニー・ポイントの色のバリエーションです。左から、アリュール、ジェントル・スモーク、スレート・グレイ、そして黒です。私の持っているすべての色です。
どれもきれいです。特に
 ジェントル・スモークは他にはない色の効果があり、脚線を引き立ってくれます。

aristoc


簡単ですが、フル・ファッションの魅力をご紹介してみました。

でも、一つだけ、そして一番大事なことは語り尽くせません。はきごこちです。

縮むことでフィットするサポート・タイプとは全く違ったフィット感。例えると、「脚にはまる」「堅さ」「カスタム・メイド」「幼い頃父親に抱かれたような安心感」などなど。どれも言い得て妙だと思いますが、やはり肌で体験しないと本当のところは分からないと思います。

シームレス・ストッキングでも、フル・ファッションの透明感を持つ物もありますし、ノン・ストレッチのシームレスはフル・ファッションに近いフィット感があります。でも、やっぱりフル・ファッションでないとその感触は分かりません

どうぞ一度体験してみてください。

tentation
 
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