Happy Hour~南の島とダイビングとノスタルジー~

Licensing Tour

海外ライセンス取得ツアー
南の島でダイバーになろう

南の島でダイバーになろう

 安全に楽しく、そしてダイブセンターやダイブショップを使ってスキューバダイビングを楽しむには、講習を受けてCカードを取得する必要があります。管理人がダイバーになった1990年代は日本国内でCカードを取ろうとすると、何やかんだで10万円以上の出費が必要でした。折しも世間は格安航空券や伝説の旅行雑誌「AB-ROAD」の全盛期、高嶺の花だった海外旅行は庶民のところまで降りてきていました。

 ダイビングも全盛期で、大小の旅行会社が国内、海外のダイブショップと提携して、様々なダイビングツアーを売り出していました。その一つが海外、主にグァムやサイパンなどの南の島でライセンス(Cカード)を取るツアーで、たくさんの旅行会社から売り出されていました。

 ダイビングの講習は指導団体にもよりますが、学科講習、限定水域(プール)での練習、海洋実習となっていて、スムースにいけば3日くらいで修了します。往路午前、復路午後の飛行機でグァム、サイパンならレギュラーパターンの3泊4日でギリギリですが、学科講習を日本で済ませてしまえば、現地の夜はのんびりできます。

 費用の方も、ツアー代金とダイビング講習料、必要機材のフルレンタル込みで、時期にもよりますが日本で取るより安く、管理人が参加した3月末でもツアー代は9万円弱でした。だったら海外旅行で、しかもテレビで見たイメージどおりのきれいな海でCカードを取りたいと思うのが普通で、とても人気がありました。

 もちろんいいことずくめではなく、天候の影響で海洋実習ができなかったり、体調不良により講習が受けられなかったりしてCカードが取得できなくても、返金はありません。それでも多くの人が南の島でダイバーになるためにグァムやサイパンなどに出かけていきました。

サイパンの場合、スケジュールはこんな感じでした。

1日目 日本からサイパンへ、夕方からオリエンテーションと学科講習(2日目に学科講習と試験を行い、3日目から実習のパターンもあります)
2日目 午前:オリエンテーションとダイブショップが提携しているホテルのプールで限定水域(プール)で基本スキルの練習
午後:オブジャンビーチかラウラウビーチにいって、海洋実習を2本実施、その後学科講習と学科試験
3日目 午前:オブジャンビーチかラウラウビーチにいって、海洋実習を2本実施、無事終了すれば事務手続きをして終わり。
午後:フリー
4日目 サイパンから日本へ、さあ、明日から日本や世界の海でどんどん潜ろう!

管理人が体験したツアー:準備編

 旅行雑誌AB-ROADに載っていたツアーから2~3問い合わせをして、「マリンキッズツアー」という旅行会社のダイビングライセンス取得ツアー、4泊5日に申し込みました。そのときにいろいろと相談をして、①指導団体はPADIのコース、②学科講習は日本で済ませる、③4日目がフリーになるので早速ファンダイビングをする、ことにしました。

 出発の2週間くらい前に東京のマリンキッズのお店に行って学科講習を受けました。当時はe-ラーニングなどなかったので、セクションごとにその場でビデオを見て、講義を受けて、ミニテストの繰り返しを丸1日して、最後に試験を受けて修了でした。機材はフルレンタル付でしたが、3点セットは自分のものを持った方がいいということで、「限定カラー」とか「特価品」という言葉につられて、その場で購入しました(格安ツアーですから、機材販売で補おうという、ダイビング業界のからくりです。でもそのとき購入したフィンは今も使っています)。

管理人が体験したツアー:出発日編

 当時はサイパンには直行や経由でたくさんの飛行機が飛んでいて、航空会社や出発時刻を自分の都合や料金で選ぶことができました。このときは、ノースウエスト航空の午前便で3時間半、サイパンの午後3時にはホテルに着いていました。
 このとき滞在したホテルは、ガラパン地区の前回のサイパン旅行で泊まった「第一ホテル(現、フィエスタリゾート&スパ)の南側にある「レミントン・クラブ(今はなくなってしまったようです)」でした。1階がレストラン兼バーになっていて、部屋も豪華ではないですがこぎれいなホテルでした。

 まだサイパンでの講習が始まってもないのに、4日目のファンダイブの申し込みをしようと、あらかじめ調べておいたCLMCに電話をしました。とにかく日本語の話せる人を呼んでもらって…英語でうまく言えるかな…ドキドキ…、相手が電話に出ると「 Hello ! 」という前に相手から「もしもし」といわれて拍子抜け、当時のサイパンは日本人観光客がたくさんだったので、日本で紹介されているようなところは普通に日本語だったんです。

 今からCカードを取って、いきなりのダイビングだということを伝えると、「うちではちょっと…」と丁寧にお断りされ、「講習を受けるダイブショップに引き続きファンダイブを申し込んだ方がいいですよ」という今になれば至極当然と思える答えが…、当時はただただかっこいいCMLCのボートに乗ってダイビングをしたいという思いだけで申し込もうとしていました。恥ずかしながらまだダイバーにすらなっていない世間知らずですから、今思えば無謀なことを考えていたものです。

管理人が体験したツアー:2日目編

 朝早く、同じガラパン地区にある「シーショア」というダイブショップのスタッフが迎えに来ました。ライセンス取得ツアーは旅行会社と現地のダイブショップが提携して実施しているので、今回はシーショアで講習を受けることになります。ちなみに学科講習のインストラクターと実習を行うインストラクターは別のインストラクターになるのですが、同じPADIのプログラムを使うので、問題はありません。

 持ち物や機材を確認して、まずは限定水域(プール)でのスキル練習を行います。フィンキックをするたびに不安定になる体が、慣れるに従ってだんだんと水中でも安定してきました。体験ダイビングの時もやった水中でマスクに水を入れて出したり、体験ではやらなかったウエイトの着脱をしたり、2人だけの生徒なので、うまくできればどんどんと練習が進みます。

 ホテルのレストランでランチを済ますと「午後は海に行きま~す」。えっ、もう海に潜るの!車で20分くらい移動して「ラウラウビーチ」に到着しました。もードキドキです。

 海がきれ~い、嘘です、そんな余裕はありませんでした。水深10mくらいでしょうか、インストラクターのデモンストレーションと同じことを順番にやっていきます。スキル練習が終わると、残った時間は水中ツアーです。ここまで来ると周りを見る余裕が出てきて、ラウラウビーチはクマノミがたくさんいたポイントなので、初心者にもわかりやすいいろいろな種類のクマノミを見て回りました。

 1本目を終えて水面休憩、約1時間後に2本目も同様にスキル練習をしてから水中ツアー、そして1日目の実習が無事終了しました。ホテルに戻って、外に夕飯を食べに行って、バタンキューでした。

管理人が体験したツアー:3日目編

 今日もラウラウビーチにいって午前中に海洋実習を2本行って、ショップに戻ってランチかと思いきや「以上で修了になります、申請書を書いて、では、これがカードが届くまでのTemporary card(仮カード)です。」えっ、もう終わり?これでダイバーなの?あらかじめ講習スケジュールを確認していなかったので、なんかあっという間に終わってしまった感じでした。

 明日のファンダイビングの確認をして、近くのレストランでお昼を食べて、ホテルまで送ってもらうと、後はフリーです。ライセンス取得ツアーだけなら以上で全日程が終わり、後は日本に帰ってCカードが届くのを待つだけになります。

管理人が体験したツアー:4日目編

 せっかくなので(無謀にも)ボートダイビングを申し込んでしまいました。シーショアさんは自前のボートを持っていない(というか、当時サイパンでボートを持つのは大変でした)ので、別のショップのボートに相乗りさせてもらいます。港に着くとなんとあのCMLCのボート「エメラルド号」に乗ってダイビングをすることになりました。

 1本目はB29ポイント、そしていきなりジャイアント・ストライドでエントリー、そりゃもうドキドキです。ここはちょっと流れがあって、初心者にとっては一生懸命フィンキックをしなければならずヒヤヒヤでしたが、しっかりとプロペラの残骸などを確認してきました。

 ボートの上でランチを食べて、2本目のポイントはディンプル、カスミチョウチョウウオの群れで有名なところです。透明度はよく、ガイドがウツボのジローさんと遊んでるところやたくさんの魚を見て結構楽しんでいた自分がいました。港に戻って、ホテルに送ってもらい、後はフリー。ダイビングは終わってしまいましたが、まだまだサイパンを楽しめます。

管理人が体験したツアー:最終日編

 飛行機の出発は午後なので、お昼過ぎまでまだまだサイパンを楽しめます。第一ホテルを通り抜けて、マイクロビーチで寝転んだり、最後の買い物をしたりゆっくりと過ごすことができます。日本への到着は19時頃、当時のサイパンは短い日程でも現地滞在時間が長いツアーパターンもありました。

 日本に戻って2週間くらいすると、PADIアメリカから無事Cカードが届きました。今ではスキューバダイビング自体が下火になり、サイパンに日本人があまり行かなくなったこともあり、このようなダイビングライセンス取得ツアーは少なくなってしまいました(サイパンに限らずですが)。

 当時ライセンス取得ツアーを扱っていた小さい旅行会社や大手のダイブセンターすら廃業してしまったところが多く、あの頃の活気を知っている管理人としてはさみしい限りです。

他のショップでは…

 当時はライセンス取得ツアーが大盛況でしたから、大きいダイブセンターでは、インストラクターを何人も抱え、何人もの生徒を一度に教えていました。インストラクター、ツアー参加者双方にとっての関門は限定水域(プール)でのスキル練習です。ここをきちんと行ってうまくこなせば、海洋実習はそれほど難しくありません。

 本来は一つ一つのスキルを習熟するまで練習しなければなりませんが、ツアーなので時間が限られています。そこで、インストラクターによっていろいろやり方を変えて講習していました。ある大手では、インストラクターAはマスククリア専門、インストラクターBはレギュレーターのリカバリーとクリア専門といった具合にプールの外周に沿って並び、生徒はベルトコンベアのように順番にスキルを練習していくところもありました。

 それは極端な話としても、毎日たくさんのお客さんがCカードを取りに来るので、どうしても「こなして」いかなければなりません。当時の講習プログラムから1日目を「コンファ、ワン、ツー」2日目で「よん、ごーやって、サービスダイブ」なんていっていました。
 「コンファ」というのは午前に行う「Confined Water:限定水域(プール)での練習」のことです。「ワン、ツー」というのは、午後に行う海洋実習1と海洋実習2のことです。「よん、ごー」というのは、午前に行う海洋実習3と海洋実習5のことです。「サービスダイブ」というのは、2日目の午前で無事ダイバー認定を受けたら、午後特別料金でするファンダイブのことです(海洋実習3はオプションなのでツアーではあまりやりませんでした)。

 「よん、ごー、行ってきます」なんて使ってましたが、生徒にとって悲しい業界用語が「打ち上げ花火」です。
 プールでのスキル練習の中で、リタイアの原因となるNo.1は「マスククリア」です。ダイビングではレギュレーターを咥えて呼吸、つまり、口から呼吸して鼻はマスクに覆われているので鼻からは呼吸しないのですが、なれないとつい鼻呼吸をしてしまいます。通常であれば吸ってもマスクが「ピタッ」と張り付くだけですが、マスククリアではマスクの中に水を入れます。その水をつい鼻から吸ってしまうと苦しくて、顔を水中から出すために勢いよく立ち上がって「ブアー!」となります。その様子が「打ち上げ花火」のようだということで、こう呼ばれていました。

 カップルでCカードを取りに来て、彼氏の方がどうしてもマスククリアができずに、何度も打ち上げ花火を上げて、時間切れで残念ながらリタイアになったことがあります。彼女だけ余裕でCカードを取ったのですが、その後二人はどうなったのでしょうか…。
 日本のダイブセンターで時間的余裕がある中で講習を受ければ、もしかしたら彼氏もマスククリアができるようになり、一緒にCカードを取って、ダイビングが楽しめたかもしれません。まあ、海外ライセンス取得ツアーにはこういったリスクもあるということです。

 講習の生徒が続々来るので、管理人のようにCカードを取ってそのまま、または次に来たときにファンダイブをと思っても、忙しくてファンダイブは他のショップでやってくださいというところもありました。もちろんCカード保持者になったわけですから、他のショップでもダイビングができるわけですが、自分のスキルなどわかっているインストラクターと一緒に潜って、安心の中でもっとダイビングの楽しさを教えてもらいたい、縁あって講習を受けたショップと長くつきあいたい、と思うのはショップやインストラクターが気に入れば当然のことだと思います。ショップ側の姿勢としても「スキューバダイビングを楽しんでもらうためにCカードを取らせる」という本来の目的が忘れられ、修了生のフォローもせず利益率の高い講習ばかりするショップはどうかなと思いました。
 その後、ダイビングが下火になり、海外ライセンス取得ツアーの参加者も少なくなると、こういったショップはなくなっていきました。でも、ファンダイブもきちんとやっていたショップは、リピーターに支えられながら今でも営業を続けています。ダイビング業界に限らず、経営の仕方など考えさせられる事例です。

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