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コマンドを使う(1)



「発言保留」というコマンドは厭なものである。行使する側にいるとき、ずっとそのことを思って
いた。要請があった際は、別にいいのである。要請のないコマンド行使というのは、私の場合
3度ほど経験があるが、少なくとも「プライバシー侵害 真っ黒」などというものは、案外と少ない
ものである。

「灰色」なのである。灰色なら保留ではないかという叱責が飛んできそうだが、困るのは「白」
でも「灰色」ではないかと一度考え出すと、もうきりがなくなってくるという面がある。

FSHISOの20番会議室を活動の拠点にしていたTAC氏という会員がいた。今でも、時々ふっ
と私は氏のことを思い出すことがある。20番会議室を、何がなんでも閉鎖しなければいけな
い理由など、今となっては、さほどなかったような気もするし、そんなことをしなくてもよかった
のではないかと、思ったりもする。申し訳ないことをしたという思いが、今日では強い。

ある会員の発言に、TAC氏に向けられたものがあった。その最後に #高橋のバカ、というよ
うなことだったか、そういう発言で締めくくられていた。当時、TAC氏は、他の会議室でも攻撃
されていたという記憶がある。そのTACという会員の実名が「高橋」なのではないかと思い、
それも、よくよくスペルを考えれば、そのような可能性を考えるのは、奇怪といえば奇怪な話
で、しかしもう、自分の中に一度、刷り込まれた根拠というものは、なかなか消えてはくれな
い。このとき、私は少しだけれど、うろたえた。

結果は100パーセント「白」であった。そこでの高橋というのはジャイアンツの高橋外野手なの
である。おそらく、試合か何かでチャンスに凡退したか、エラーでもしたのか、そのふがいなさ
に対して「高橋のバカ」と書かれたものであった。以来、私は、テレビでこの選手をみるたびに
そのことを思い出すし、どうにも好きになれなかったりもする。あのとき、高橋が期待に応える
活躍をしていれば、少なくとも、このことで私は悩むことなどなかったのだ。かなり八つ当たり
に近い感情である。

転ばぬ先の杖ならよかったではないかということには、当人はならないもので、こういうときは
フォーラムを巡回するのに何とも気まずいものがあった。場も本人もシラけてしまうのである。

ティモ氏の場合は、その反対である。私は自信をもって、保留を拒否した。本気で保留するに
当たらないと当時、確信していたのである。私が確信したせいでもないだろうが、SYSOPも当
初は、私の見解に同意したものだから、話はどんどん拗れていく。最終的に当該発言は自己
削除されたのだが、自分の尺度で、妙なスパルタみたいなことを、とりわけプライバシーにつ
いてやってはいけない。

イストラン氏の保留のときも、これまた騒動になった。こちらもtty氏は「ありがとうございます」
などと当初、書いている。イストラン氏とのやりとりで、ご本人も納得したかにみえたのだが、
このときにWAKEIさんと私は、いわゆる運営というものについて、初めて議論らしい議論をし
たと思う。簡単に言えば、迷惑メールに対する会員の対応措置の問題であった。私はこのと
きのWAKEIさんの発言「花田とtty氏がそう考えていることはわかったが、その根拠を示して
欲しい」と要請されたとき、ぞくっとしたことを今でも覚えている。「それはプライバシーの侵害
である」と書いた途端に、長い長い議論が始まった。議論の末の自分の誤りというものは、
いつまでたっても忘れるものではない。過ちを過ちとして訂正するというのは、大事なことで
もある。

3年前の暑い暑い夏の日の出来事であった。

保留しなくてよい発言があった。保留して妥当な発言もあった。間違いもあったし、どれだけ
批判されようとも、間違っていないものについては、貫いた。今のFSHISOは、幸いにして、プ
ライバシーを巡っての深刻な問題というのは、存在しないように思える。それはやはりネット
ワークというものの、場の進化ということもあるだろうし、nifty-IDという識別制度というものが
果たしている役割も大きいと思う。匿名であって匿名ではないというものだからだ。








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