ぶどう膜炎とは
1.ぶどう膜とぶどう膜炎
 虹彩・毛様体・脈絡膜は連続した組織で,まとめてぶどう膜と呼びます。 ぶどう膜炎とはぶどう膜の炎症です。炎症の部位によって以下のように 呼ぶことがあります。

 炎症が虹彩と毛様体だけにある場合,前部ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎) と呼びます。網膜と脈絡膜を合わせて網脈絡膜と呼ぶことがあります。

 虹彩や毛様体の炎症がわずかで網膜と脈絡膜の炎症が主体である場合, 後部ぶどう膜炎(網脈絡膜炎)と呼びます。網膜に炎症が起こると炎症は 隣接する脈絡膜にも波及し,炎症が脈絡膜に起こると網膜にも拡がります。 したがって実際には,後部ぶどう膜炎も網膜炎も同じ意味になります。

 ぶどう膜全体と網膜に炎症がある場合は汎(はん)ぶどう膜炎と呼びます。

2.ぶどう膜炎の種類
 ぶどう膜炎には多数の種類があり, わが国で知られているものだけでも 40種類以上あるほか,ぶどう膜炎のうちの, どの種類かを診断できないものも 30〜40%あります。ぶどう膜炎の種類によって病気の特徴, 経過, 治療法などが 異なります。

3.ぶどう膜炎の経過
 ぶどう膜炎には原因不明のものが多く, 2〜3週間で簡単におさまって以後は 再発しないこともありますが,再発を繰り返すものや,慢性のものも少なくありません。 慢性のものはなおりにくく,何年にもわたって長期の治療が必要なものもあり, 治療が困難なもの,完全には治癒しないものもあります。

 短い期間で視力が低下してしまう人もあれば,長い間病気がなおらなくても 視力があまり落ちない人もあります。さまざまな治療を行っても,網膜の障害や 合併症のために視力の低下や失明を防げぬこともあります。病気の経過をあらかじめ 推測することは困難な場合も少なくありません。治療の時期が遅れたり, 副作用を恐れて治療が十分でなかった場合には,視力が回復しなくなることもあります。

定期的に診察を受け, 薬を指示どおり使用することが視力低下を防ぐ基本です。

ぶどう膜炎の自覚症状
 ぶどう膜炎の症状は,眼球のどの部位に異常があるか, どの程度の異常があるかによって異なります。ぶどう膜炎のおもな症状には, 以下のようなものがあります。

1.眼のかすみ,視力低下:
炎症によって前房や硝子体がにごる(混濁)ために起こる症状です。炎症による 網膜の変化や,合併症 (白内障, 緑内障) によることもあります。

2.黒いすす,虫,蚊,よごれのようなものが見える(飛蚊症 ひぶんしょう):
硝子体のなかに にごり(硝子体混濁)があるときの症状です。

3.しろめの充血:
虹彩や毛様体の炎症が強いときに見られます。

4.眼の痛み:
虹彩や毛様体の炎症が強いときや, 眼圧が急上昇したときに起こります。

5.見ようとするところが見えない,視野の中心が見えない:
視野の中心の像がうつる黄斑に炎症や障害が起こったときの症状です。

6.物がゆがんで見える,小さく見える,色調が変わって見える:
黄斑付近の網膜に浮腫(はれること) や網膜剥離 (網膜と脈絡膜の間に水がたまる) があるときに起こる症状です。

ぶどう膜炎と眼の変化
1.前房と硝子体が濁(にご)る
 ぶどう膜の炎症によって,正常なら透明な前房と硝子体が濁ります。 このため視力が低下し,患者さんにも濁りが見える (自覚症状の2) ことがあります。

2.網膜の炎症と浮腫
 網膜の炎症が起こると,その部分に境界の不明瞭な黄白色の斑点ができます。 黄斑の付近に炎症が起こると,炎症の程度に応じて視力が低下します。 良好な視力をもつのは網膜のなかでも黄斑だけであるため,視力が正常にまで 回復することは困難なことも少なくありません。

 網膜や脈絡膜の炎症のある部分がわずかで炎症が軽いと, 炎症が吸収されたあとは網膜や脈絡膜は正常に近い状態になります。 炎症が広い範囲に生じた場合や, 炎症が強い場合には, その部分の網膜や脈絡膜は 障害・破壊されます。このような部位は炎症が治癒しても変性(へんせい)と呼ばれ, その部位の網膜機能は失われます。

 炎症が強い場合には,炎症が起こっていない部位の網膜にも浮腫(はれ)を生じます。 網膜浮腫により,網膜機能は少しは低下します。炎症が軽快すれば,このような 網膜浮腫はなくなりますが,炎症が続いていると機能が回復しなくなり,網膜は変性します。


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