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1.サルコイドーシスとはどんな病気か? | ||||
サルコイドーシスは,肉芽腫という腫れ物が身体のあちこちにできてくる病気です。
(本当は,肉芽腫とは,顕微鏡レベルの小さなものですが,それが集まって結節ができるのです。)
悪性ではありません。出来てくる場所は,肺の入り口である肺門のリンパ節が一番多く(78%),
その他,眼(51%),肺野,皮膚,脳・神経系,表在リンパ節,唾液腺,心臓などです。
肺門のリンパ節に肉芽腫結節が出来ても,ほとんど症状はなく,健康診断の胸の写真でひっかかる程度です。
また,肺野(肺のなか)にできても,他の肺炎などの病気と違って,あまり症状がないのが特徴ですが,
ひどくなると,咳,痰,息切れなどが出てきます.眼にできると,眼のかすみ(霧視),飛蚊症などがでます。
皮膚にでることは,日本人では少ないのですが,赤く結節ができますので,顔面などにできると美容上問題が
ありますね。厚生省の定める難病ではありますが,大体予後のよい病気で,長くつきあっているうちに
段々と改善してくる病気です。
しかし,やっかいなのが心臓にサルコができた場合で,ひどい不整脈になって
ペースメーカーをいれざるをえなくなったり,慢性的な心不全状態になって,息切れがおこったりします。
病気の発生は,男性は20歳代に一つのピークがあるだけですが,女性は20歳代と40 歳代と,2つのピークが
あります。そして,中年以降に発生するサルコは肺や肺門以外のものが多く,とくに眼のサルコが多く,
若いときに発生した場合よりも長引きやすいといえます。どうして中年以降の女性に多いのか,これは
ホルモンのバランスによるものであることが大体わかってきています。重症の女性のサルコイドーシスに対して,
女性ホルモンの補充療法などが試みられています。
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2.サルコイドーシスの原因は? | ||||
今まで,サルコイドーシスの原因はともかくわからないとされていました。ヨーロッパでは,結核菌あるいは
結核菌の親戚の菌が原因であろうと考えている人が今でも多いのですが,これはほぼ否定的です。日本の科学者は
サルコイドーシスの原因がP. アクネスという,皮膚のニキビの原因となるどこにでもいるバイ菌だろうということを,
ほぼ明らかにしてきました。
私もこれが正しいだろうと信じていますが,世界中の科学者がこの菌をサルコの原因と
認めたわけではありません。しかし,詳しい菌の名前はともかく,ある種のバイ菌などが原因であろうことは,
ほぼ確かであるといえます。では,なぜ,どこにでもいる菌によって,ある人は発病し,ある人は発病しないのでしょうか。
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3.サルコイドーシスの発病とストレス | ||||
サルコの患者さんに,発病する前の状態を詳しくうかがうと,大きなストレスに悩んでいたり,自分ではストレス
と感じていなくても,生活上大きな変化がおこっていたり,あるいは,過労や非常に不規則な生活が続いていて身体に
変調をきたしていたり,という人がとても多いことに気がつきます。
ストレスという言葉は一般的には精神的ストレス
の意味で使われていますが,実際には,過労,不眠,運動不足,不十分な食生活などもすべてストレス(ストレスを
与えるものなので,正確にはストレッサー)と考えることができます。このようなストレス過多の状態がサルコの発病に
どうも深く関係しているといえます。
米国にもサルコの友の会があって,(米国全体で50 くらいあります。
米国では今,サルコの患者は日本と比べるとけた違いに多く,またさらに増加しているといわれています。)
その総代表者であるAnne. G. Taylerさん にうかがったところでは,米国のサルコ患者の97%が,発病前に何らかの
大きなストレス(結婚,家族,仕事などに関するものが多い)に悩んでいたとのことです。 このようなことは,最近は国際的なサルコイドーシスの学会でも報告されるようになってきています。 それでは,ストレスに悩むと皆,発病するのかというと,そういうわけではありません。個々人によって, 発病のしやすさが異なっています。この発病のしやすさを決める一つの要因が遺伝です。ガンもそうですが,発病しやすさ というのは,遺伝的にある程度きまっています。それから大切なのが,ストレスを個々人がどのように処理しているかと いう問題です。同じことがおこっても,Aさんは,クヨクヨと悩み一人で落ち込んでしまう。Bさんは,大したことじゃないと あまり気にしないか,あるいは悩みを発散してしまう。こんな場合に,どうもAさんのタイプが病気になりやすいということ がわかってきています。そして,私どもの調査で,サルコイドーシスの人は,Aさんのように,まじめで,感情を外に表さない タイプの人が多いことがわかってきました。真面目,几帳面,自己犠牲的,頑張りやで内的感情に気付かずに,ストレスを 解消できずに身体の中にため込んで,病気ををおこしやすいのだとわかってきました。 | ||||
4.なぜストレスがいけないのか? | ||||
人間のからだは,免疫系,内分泌系などが微妙にバランスをとりあって,調節されています。とくに免疫系は,
身体を外的から守る白血球の働きを活発にしています。これが変調をきたすと,免疫の力が落ちて,外的からの
攻撃に抵抗できなくなります。心身ともに爽快であるときには,脳からある種のホルモン
(「脳内革命」ではβ- エンドルフィンと呼ばれています)が出て免疫系と内分泌系が活性化されます。
ストレスで脳が疲れてくると,免疫系の働きが低下して,病気になりやすくなりますし,内分泌系(ホルモン系)
がおかしくなって身体にさまざまな変調をきたします。栄養不良や不摂生の人,ストレスの多い人が結核になりやすいことは
わりと知られている事実です。サルコイドーシスも同様の機序で外的であるバイ菌に上手に抵抗できず,あるいは
過剰に反応して,発病してしまうわけですが,ストレス過多の人は,防御力が低下して病気になりやすいのだと言えます。
「病は気から」という昔からの言葉が,証明されてきているのです。
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5.これからどのように病気とつきあえばよいのか? | ||||
サルコイドーシスに対する薬としてはステロイド(副腎皮質ステロイドホルモン)が有名です。
たしかによく効きますが,一旦この薬を使用すると,薬を中止にしたあとに再悪化する確率が高くなるのでできるだけ
使用しないようにしようとされています。(ただし,心臓サルコイドーシスの場合は例外で,早いうちにステロイドを
使用した方が良いという意見が多くなってきました。)眼の症状に対しても,点眼薬だけで,ステロイドの服用は
できるだけしないということです。
そうすると,多くの患者さんは何も薬の助けを借りずに闘病していくことになります。
どうすればよいのでしょうか。今までのお話から理解していただけると思いますが,自分自身の生活スタイルを変える
ことで,あるいは心のもちかたをかえることで,自分の身体の免疫系,内分泌系の力を強くして病気に対していくこと
ができるのです。
そのためには,こころをなごやかに保つこと,身体に無理をかけないことが大切だということがわかっていただける
と思います。同じことがおこっても,こころのもちかた一つで,とてもつらく悲しいことになったり,とるに足らない
ことになったりします。楽しいから笑うのではなく,笑っていれば楽しくなるという言葉があります。
積極的に自分の心をなごやかにしていくことが最も大切です。 今までのライフスタイル(生活習慣)を考えなおして,心をなごやかに保ち,適度の運動をして,暴飲暴食をせず, よく眠る。昔から言われている当たり前の言葉ですが,21世紀に向けて,人間が健康な生活を送っていくために, 最も大切な指針だと思っています。 | ||||
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