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TOP 活動報告「イヨマンテに関する質問書簡」に対する道庁からの返信

「イヨマンテに関する質問書簡」に対する道庁からの返信

先に、イヨマンテ禁止通達撤回について、北海道知事へ質問書簡を送り、それを『動物ジャーナル59』に掲載しました。

 書簡送付は十月末、返事が来ませんでしたので、十一月末に催促状を出し、十二月五日付の返書が十二月十日着信。A四判六枚で、返事本体は二枚ですが、関連資料四枚も同封されていましたので、以下のページで、まずお目にかけます。

 なお、当会よりの質問内容を念のため要約しておきます。

1 知事は中田氏書簡の「父君の感想」をどう感じたか。また、この証言内容は既知のものであったか。
2 一九五五年の通達以後の開催の実態は?
3 開催されたイヨマンテの内容は?
4 学術研究であった場合の、報告書はどこにあるか。
5 観光目的の場合の主催者の記録。
6 通達撤回後の開催に際し、「正当な理由で適正に行われる限り」(動愛法・基本指針)の「適正に」の具体的解釈は?

では、お心しずかに、返書をごらん下さい。
(画像をクリックすると大きくなります)

P1
P2
P3
P4
P5
P6

 ややこしい文書の苦手な方のために、道庁からの簡単明瞭な返書(質問状は伊藤祥子氏発信)を写しておきます。
[前文略]通達「熊祭りについて」(30畜第471号)では、生きた熊を「公衆の面前に引き出して殺すこと」は廃止されなければならないと指摘していますが、イオマンテ自体は是認しており、開催にあたり届出や許可は必要ありませんでした。

 このため、各地域のアイヌの人たちが個々にイオマンテを開催しており、ご質問の小熊の調達方法や死体の処理方法といった具体的な内容について、当方では把握しておりませんのでご理解いただきますようお願いします。
[後略]
 さて、びっくりなさったかと思います。茫然、でしょうか。一九五五年の通達が今回の返書によれば、「公開の場での殺戮禁止」であり、私どものもっとも重大視している「熊を殺すこと」には及んでいなかったのでした。

 そして、その通達がイヨマンテそのものを禁止したものでなかった以上、当会書状2から5までの質問は「誤解」」に基づくものであり、意味をなさないものでありました。なぜ「誤解」が生じたか。それは報道を鵜呑みにした結果で、一次資料=一九五五年通達本文を求め、熟読しなかったからです。ここにはメディア・リテラシー問題が派生します(後述)。

 イヨマンテが禁止されていなかったということは、熊の殺害は続けられていた。熊にとって、公開の場であろうとなかろうと、恐怖と苦しみの末の絶命に、違いのある筈はありません。前回掲出・中田氏書簡中の「父君の感想」の内容は綿々と続いていたわけです。なんということか。

 道庁返書によれば、
[一九九五年通達}(P3)の「生きた熊を公衆の面前に引き出して殺すことは…廃止されなければならない」と、[二〇〇七年通知](P5ページ)「ヒグマを絶命させる等の行為が公開で実施された場合に…動愛法に抵触すると指摘されるおそれがあるので留意されたしとしたこと」
とは同趣旨であり、方針の転換ではない、とのことです。

 では、公衆の面前での殺害がなぜ実行不可かというと、
[通達]では「(公衆の)同情博愛の精神にもとる」
[通知]では「(公衆が)動愛法抵触を指摘することになるから」
であり、ヒトへの配慮しかありません。

 つまり、イヨマンテに参加・見物する人たちが熊に対して憐れみの気持を抱き、苦痛を感じる。または、こういう殺し方は愛護法で許されているの?と疑問をもち、いたたまれなくなる。こういう思いをさせることからヒトは保護されなければならない。という趣旨でありましょう。
 儀式関係者のみの場では、如何ようの殺害法もお構いなしとしている。と解釈できます。
 [通達]の文面は、言われるように、アイヌ民族の尊厳への配慮を欠いたものであり、廃止されて然るべきものであったと当会も考えます。しかしながら、「父君の感想」内容が存続されるならば、それに対して非をとなえ続けます。「それとこれとは別」なのですから。

 この後は、イヨマンテ主催者が「賛否両論が国内外にある」(基本指針)(P4・P5)をどう捌いていくか、見守りたいと思います。




メディアリテラシー

 一般的にはマス・メディア(TV・新聞・雑誌など)の発信する情報に対する、受け手側の判断・分析能力、という意味で使われます。最近はインターネットや携帯電話によって受信される情報の取り扱いも含めて、この問題を論じることが増えています。

 今回の「イヨマンテ禁止通達撤廃」報道に関して言えば、共同通信社07年4月28日付配信が各紙に掲載されたものと思われますが、この配信は「アイヌ民族の伝統儀式であるイヨマンテを“生きたクマを殺す野蛮な行為”として“事実上禁止”されていた一九五五年通達を北海道庁が52年ぶりに撤廃した」と報じています。

「動物を利用した祭礼儀式」に関する環境省の公式回答があったことと、地方文化・少数民族固有文化の見直し機運が高まっていることを象徴する事例としての配信と思われますが、限られたスペースの記事としても相当に乱暴であると言わざるを得ません。私たちの「思い」と道庁の「回答」が噛み合わないのも、この報道を介したものであった点に一因があります。

 マス・メディアの報道は客観性や中立性に立脚したものとされていますが、実際は「当局の発表」やメディアとパイプのある一部関係者からの取材のみで書かれたものも多いことを常に念頭に置く必要があります。

 つまり、マス・メディアの報道に接して、即刻それを信用するのは危険であると常に意識していなければなりません。「新聞に書いてあるから真実だ」「テレビに出てたから偉い」などと思いこむ純情は捨てるべきであり、更に、情報の送り手を手玉に取る猛者さえいることを認識すべきでしょう。特に動物保護界には「動物!」でヒートする多数の存在をいいことに、猛者が活動しやすくなっています。ご注意を。