TOP | ■ アピール | ■ 活動報告 | ■ GPCA-FAQ | ■ トピックス | ■ 出版案内 |
mook 動物ジャーナル | ■ Links | ■ 通信販売 | ■
ご連絡窓口 |

TOP mook 動物ジャーナル バックナンバー 動物ジャーナル98・我が国なりのパピーレモン法を考える

■ 動物ジャーナル98 終刊直前号

  米国の八週齢規制を考察し、我が国なりのパピーレモン法を考える

先進国検証グループ


「パピー」はご承知・子犬。レモンは中の良否が分りにくいところから欠陥品の例えに使われ、「レモン法」は特に欠陥車を対象にする消費者保護の法律の俗称となりました。従って「パピーレモン法」は子犬購入者保護の法律ということになります。

 我が国のメディアや八週齢信者は「米国は八週齢規制が導入されている」と主張しますが、これは直ぐにバレる嘘です。正確には「米国の○○州では八週齢規制を導入」と言うべきです。
 米国は合衆国ゆえに、州の権限が我が国の都道府県に比べて桁外れに強く、事情も異なるため、州ごとに八週齢規制の状況が異なります。
 八週齢規制を含め、動物愛護・動物実験関連法を、米国ではドイツ同様、農業担当省の米国農務省(USDA)が所管しており、確かに同省の連邦規則コード(動物福祉法動物と動物製品=9CFR2.1- Title 9-§2130)では医学研究施設を除いて八週齢規制をし、これを全ての州等は守らなければなりません。
 しかし現実として、連邦政府直轄のワシントンD?C?と五十州それぞれの州法が優先されています。
 例えば、バージニア、メイン、ウィスコンシンの三州は七週齢規制です。(バージニア州法Ann§3.2-6510、メイン州法ADC-01-001-§701-N、ウィスコンシン州法Wis.Stats §173.41-9)
 また、ワシントンD?C?等の二十六州には週齢規制がなく、オクラホマ州は14年に犬を痛めつけることのみならず、無免許営業で州に手数料を払わないパピーミルを州外に叩き出すとする、俗称ブラック・マーケット・ブリーダー法(SB 1712)を施行した際、八週齢規制を廃止しています。
 更に、週齢規制の対象が生体販売店やブリーダー限定なのか、それとも個人、法人、保護施設を含む全てが対象なのか、医学研究施設は除外するのか。違反した場合の罰金が一違反ごとなのか、違反を繰り返す毎に五千〜一万ドル(約五十〜百万円)を上限に罰金額が高くなるのか、違反常習者は免許を取消すのか、販売がダメなのか、親子引き離しや移動がダメなのか…。州等によって様々です。
 因みに米国北東部に位置し、全米有数のパピーミル地帯ゆえに「パピーミル東の都」だとマスコミに揶揄されてきたペンシルベニア州は、08年に法の抜本的見直しをしましたが、八週齢規制(州法PS §459-603)はあるものの、違反時の罰則に相当する法文が見当りません。同様にパピーミルで有名なミズーリ州も八週齢規制(州法2CSR30-9020)を実施していますが、罰則が事実上ありません。
 両州共に全米有数のパピーミル地帯で、八週齢規制があるのに違反に対する罰則がないことは、我が国の八週齢信者が有する「八週齢規制=ペンシルベニア州立大学獣医学部」的思考からすれば、何故だ!と納得がいかないことでしょう。ついでに申せば、多くの州が定める動物虐待の重罪規定を、ペンシルベニア州が定めたのはやっと昨年(17年)十月のことです(州法HB 1238)。
 また、もう一つ週齢信者を納得させられないと思われる点は、多くの州で、スイスと同じく、八週齢規制違反を軽犯罪としていることでしょう。違反=即免許取消しではありません。
 そもそも米国多くの州は、八週齢規制でパピーミルや不適切ペット店を根絶できるとは思っていないようで、これは米国の犬繁殖販売業界が「別の規制」即ち消費者保護に関する規制に猛烈に反対していることからも明らかです。
 そもそも米国にはパピーレモン法といわれる犬購入者を保護する州法があり、これにより購入後のトラブルに関して、販売側に一定の責任を課しています。
 つまり、我が国で販売側が提示する販売契約書ではなく、州政府等の公による法律が優先されるので、業者側に有利な主張は認められないことになります。

 当会では有志により図上演習を行うことがよくあり、我が国で八週齢規制が施行された場合について議論した際、幾つかの事柄が浮び上りました。
 先ず八週齢規制をした場合、小規模業者は影響を受けるものの、資金が豊富な大手の生体販売業は生き残る可能性が高いことです。
 06年春先の長野県佐久ブリーダー事件の頃から、我が国でも小規模業者の経営破綻と、それによって起る崩壊の悲劇で世間の批判を受け、生体繁殖・販売=悪といった印象が定着しました。これは大手生体販売にとっても好ましいことではないが、八週齢規制によって小規模業者が淘汰されれば業界の浄化にもなり、顧客の抱え込みも望めます。
 次に、消費者保護に関する規制という点から見ると、
 昨今では消費者がモノをいうことが活発で、インターネット等で批判され、いわゆる炎上に至ると、企業には大きなダメージとなります。またクレームは業者の資本規模に関らず寄せられるため厄介です。
 仮に当会が大手の経営者なら、八週齢規制でビクともしなくとも、コストアップが避けられない消費者保護に関する規制強化は何としても避けたい。子飼いのメディアや自称専門家を使って八週齢規制で愛護諸氏を洗脳し、消費者保護に視線が行きにくいよう画策するでしょう。
 また次に、当会の図上演習で最も危惧されたのは次の諸点。法制化されたとして、限られた人員・予算で、どの様な形で八週齢規制違反を検知するのか/現実問題として繁殖台帳での証拠固めが可能なのか/犬購入者が八週齢規制違反に気付けるのか/等でした。結局のところ、食品の賞味期限偽装と同じく、内部告発か業者自らの告白に頼らざるを得ないという結論に達しました。
 更に、どの様に犬猫の絶対誕生日を確認するか。性善説を前提とし、不正を完全排除できないマイクロチップ制度では違反の立証が難しく、さりとて犬猫から「お誕生日は?」と聴取できるドリトル先生の雇用も不可能。その上ゴールが軽犯罪では、いわゆるコスパ(手間対効果)が悪過ぎ、無意味です。
 よって、我が国のマスコミや愛護諸氏、愛護関連の弁護士・法学者・議員らが強く主張し実現しても、八週齢規制が犬猫を幸せにするとは考えられません。
 では対案は?
 動愛法とは別に「我が国版パピーレモン法」をつくり、購入者を保護するのが最上と思います。その為には、馬等の愛護動物販売を規制する「家畜商法」との整合性をクリアする必要がありますが、結果として無慈悲な業者を淘汰し、大手にとっても生体販売が割に合わない商いだと認識させることになります。
 また、これにより自治体動愛担当の負担軽減が望めますし、全国の消費者相談センターが難儀する生体購入トラブル対応も、我が国版のパピーレモン法の下に行うことが出来る為、瑕疵担保責任を根拠にした現状に比べて負担軽減となることは間違いありません。
 尚、我が国版パピーレモン法策定に対して、業界として納得いかないのなら、米国同様、権利を行使して差別であると提訴する等、公の場で自らの主張を述べるべきで、これにより市民の多くが、この問題を認知する機会が増えるので好ましい。なぜなら動物愛護は愛護諸氏に特化した問題ではないからです。
 以上、一見、州ごとにバラツキのある米国の八週齢規制ですが、法改正作業は議員提案から始まり、公聴会、審議、採決、知事のサイン、そして施行に至るまでの過程が基本的に全てオープンであり、反対賛成の両派が、どのような表情・口調で意見を述べているかもネットの議会中継で確認が可能です。
 よって、完璧ではないにしても、米国の州それぞれの法制化の取組みは、「先進国って何?」で挙げた度胸あるボランティアの活動と共に「先進国に倣え」といえる点と、当会は考えます。