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TOP mook 動物ジャーナル 動物ジャーナル71・動物行政に関するアンケート・報告

■ 動物ジャーナル71 2010 秋  

  動物行政に関するアンケート・報告

動物虐待防止会

 
はじめに

 当会は二〇〇四年三月に実施したアンケートで「この世界」初めてとなる設問を盛り込みました。
 それは、殺される動物さんの年齢による区別の有無とその数です。意図は、子犬子ねこの数に注意を払い、不妊手術(注)の有効性を導き出そうというものでした。
 繁殖制限によって殺処分はくい止められる筈、という確信は、その結果により充分以上に得られましたので、当会としても実行の具体化を計画しましたが、実現に至らず、手術費補助金の支出にとどまったこと、先の『動物ジャーナル70』に述べた通りです。
 今回のアンケートでは、同様の質問に加え、自治体での不妊手術取組み状況も訊ねました。自治体の不妊手術実施が不可能ではないと、長崎県森山町に関する報道で知り、行政が積極的に関れば繁殖もくい止められると考えることは今も変っていません。
 全体として、明るいきざしは少し見えたように感じます。以下、集計結果をご報告します。
 なお、送付先は、総数一〇六(都道府県47、政令指定都市19、中核市40)。一〇一通の回答を得ました。

アンケート用紙の校正ミスについて

 最初にお詫びしなければならないとは恥ずかしい限りですが、[1殺処分について A昨年度]の後の(  )内、2009年とすべきところを2010年としてしまいました。
 送付先自治体から、問合せや確認の電話があり、余計なお手間をかけましたこと、この場をかりておわびいたします。申し訳ありませんでした。
 ホームページ上ですぐ訂正できましたのがせめてもの心やりでした。

(注)不妊手術(95年秋号 通巻11号より転載)
 動物虐待防止会は、繁殖制限を表現する語として「不妊手術」一語で十分と考え、この語のみを使用しています。
 現在一般的には、繁殖制限手術を指して「不妊去勢」(手術の語なし)が用いられています。
 多分欧米語の訳語として二種類が定着したものかと思いますが、古代文化国家で発明された漢字は、より勝れた機能を持ち「妊」一字が自動詞(はらむ)も他動詞(はらませる)も表すこと可能なのです。つまり両性に適用できます。
 その上、ヒト医学界では、例えば「目立ち始めた男性不妊」(毎日新聞92年4月30日)などと使われています。そして私情を交えることを許されるなら「去勢」という語の持つ暴力的感触(司馬遷の例を持ち出すまでもなく)が私は嫌いです。
 不妊手術を必要悪と考える私は、せめて言葉の暴力だけでも避けておきたいと思っています。

「殺処分の数及び方法」一覧表

アンケート回答のまとめ

1 殺処分に関する項

A.殺処分数は一覧表の通りです。
 回答用紙から一覧表に書き写す作業はつらいものでした。合計や比率を出すことにもためらいを覚え、今回は数字に興味をもつ人の「料理」に任せます。
 おとな・こども(限界は九十日・九十一日・百八十日と三種ありましたが一括しました)の
区別をしている自治体はずっと増えたようです。前回がほぼ44%だったのに比し、今回は約77%、殊に中核市で顕著です。取扱いはきめ細かになっていると思われます。
 前回と際立って異なる数字があります。子犬です。ゼロの自治体が11市、一桁の数が9市ありました。後の質問[殺さないための施策一つ]で、多くが譲渡促進・不妊手術奨励を挙げた傾向の反映でしょうか。
 それにひきかえ、依然として子ねこの数の多いこと、数で申せば四桁の連続です。やはり後の[不妊手術]に関する回答に、ねこ限定の助成がかなりあるのに、現状はその不徹底を示しているようです。

B.殺す方法も、一覧表に記入しました。
 炭酸ガスが圧倒的多数です。炭酸ガス不使用は、北海道・新潟県・横浜市・熊本市・秋田市・旭川市・船橋市・下関市の八自治体でした。
 炭酸ガスと麻酔薬両方を挙げたところもあります。数で言えば、全自治体のほぼ四分の一になります。使い分けその他の内容は、※印を付け、一覧表右端の備考欄に記しました。
 麻酔ガスは、当然下関市。青森県・秋田県にも一部導入されました。
 その他の方法として記入された内容は、麻酔薬と筋弛緩剤併用が多く、けれどもその「与え方」は様々でした。一覧表右端に記入。(誌面の都合上、備考もその欄に合せましたので、●は方法内容、※が備考内容と、お読み分け下さい。)

C.持込み人立会いの有無について
「立会わせる」は皆無でした。
 理由について訊ねましたが、記入のないところが、都道府県で10、政令市で7、中核市で4。この21自治体からはこの質問がシャットアウトされた観があります。
 そもそも何故この質問をしたか、意図は『動物ジャーナル70』5ページに記したのですが、「持込み人に最後まで責任を負ってもらうため。立会わないで済むというのは甘やかしであろう」と考えているからです。終生飼養を標榜するならば、最終段階を人任せにさせるべきではありません。動物と暮すのがどういうことか、しっかり考えさせる好機・絶好の教育の機会だと、行政には熟考してほしいものです。

 理由不記入は右の21自治体に加え、県へ委託しているため当然不記入が政令市・中核市合せて17市、処分そのものを外部(獣医師会を含む)に委託している3県市、以上合せて41自治体でした。
 残り60自治体からの回答を以下に整理してみます。理由を二つ挙げられたところもありますので、回答数は六十を超えます。

☆制度的な理由
○規定がない・「指針」に基づく 4
○公開しない・情報公開対象外 5
○所有権放棄後だから 2
○必要ない 2
☆物理的理由
○収容日と処分日のずれ 17
○収容・処分の場所が別々 4
☆対人的理由(対策)
○危険防止 7
○感染予防 1
○立入り禁止・お断り 2
○受入れ体制不備 1
○感情への配慮 2
☆持込み人の状況
○要望がない 2
○希望者へは獣医院を紹介 1
☆立会いに替る対応あり
○殺処分説明・ビデオを見せる 1
○悪質者には現場で指導 2
○家族探しの努力を厳しく確認 1
☆動物の今後を考えて  
○譲渡など生存の可能性がある 6
○遺棄される虞れあり 1

 先に述べましたが、最終段階に責任を持たせようとする考えは圧倒的少数と思われました。
 殺処分が当り前のこととなって久しく、業務遂行機関としては仕方ないのかもしれませんが、変革を望みたいものです。

D.同一人の複数回持込みへの対処
 この質問は「不妊手術を怠っている人」及び「ブリーダーの引取り制度悪用」を想定し、前項と同じく甘やかしの懸念があったためでした。
 予想に反し、厳しい対処が多かったのは嬉しい限りです。二〇〇〇年時の動管法改正論議の際、自民党環境部会にオブザーバー出席しましたが、そこで出された現場からの意見として「引取らなければならない」を「引取ることができる」に変えてほしいと伝えられました。残念ながら、この件は置去りのままです。今回の法改正ではどういう要望が出されているのでしょうか。余談に及びましたが、厳しい対応にはこの苛立ちの反映を感じました。
 同一人の複数回持込みをリピーターというスマートな言葉で表現したくありません。その行為は軽く流されてよいものではありませんので、ここでは「複数回持込み人」としておきます。

 記入なしが3府県3市。前項のように「県へ委託」とするところでも記入された市があり、引取り作業現場の努力を想像しました。回答総数一〇一から不記入6を除き、95の回答を整理します。内容が二つに分れるものがありましたので、合計数は95を超えます。
○複数回の事例なし 4
○引取らない・受付けない 4
○正当理由以外引取らない 13
○今回のみとする 4
○再考を促す 2
○身分証等提示を求める 1
○記録を残し、後に状況確認 1
○状況確認・現地調査も 3
○経緯聴取、厳しく指導 26
○不妊手術を指導 36
○不妊手術を誓約・報告させる 3
○譲渡を斡旋する 2
○対策はない 1
○法令違反以外問題無し 1
 以上簡単なまとめにしましたが、回答用紙に書込まれた文言のニュアンスを盛込めないのをもどかしく思います。また、「経緯聴取、厳しく指導」には、単純に「指導」との記入から、聴取内容の仔細な説明まで、幅広い様相があったことをお断りしておきます。
 不妊手術の指導徹底が40近くの数であること、対象動物が子猫と推量されますし、これだけの数字が出るならば、行政が具体的・積極的に踏み出すべきではないかと考えさせられます。

E.殺さないための施策を一つ
 あえて一つだけとお願いしましたが、複数を挙げられた熱意に圧倒されそうでした。
 が、アンケート集計に単純化は付きもの、一つだけを選び出しました。記入された内容を無にしないよう、別の機会に活用させてもらいます。
 記入なしは、1府1市のみ。99の回答を得ました。重複は当然ありません。
○譲渡 53
○適正飼養の指導、啓発 12 
○終生飼養を指導 9
○聴取と説得 6
○もらい手探し他を説得 3   ○不妊手術奨励、費用助成 9
○返還促進の努力 3  
○引取り数の削減 2
○収容期間の延長 2

 譲渡事業は、外部と連携して達成されることも多いため、この数になっていると想像されますが、回答の中に一市「譲渡は最後の手段」と強い語気で表現されていたのが印象に残りました。触発されて考えてみますに、持込ませないための努力こそ第一の手段と言われているように思いました。
 それが、引取り数の削減というテーマになり、収容期間の延長を必要とし、返還促進の努力という行為に至るのかと思われます。ある市の逸走犬返還作業の詳細、成果を知らされ、救命の誠意に脱帽!でした。持込まれた場合への対処として、再考を促し、新しい家族を見つける等を助言するのも引取り減につながります。数字にすれば、合せて10となります。
 適正飼養、終生飼養、聴取と説得の三項は、記入の文字により分けましたが、「適正飼養」には「終生飼養、繁殖制限その他」が含まれますし、「聴取と説得」の内容は「適正飼養」でしょう。合せて27の数が「啓発」の努力を第一にするとしています。
 不妊手術奨励・費用助成を掲げるところが9。
ほとんどが飼い主のいない猫に対する施策ですが、飼い主の有無にかかわらず、猫の繁殖力を問題視していると思われます。

2 不妊手術について

A.自治体での実施状況を訊ねました。
 自治体のサービスとして、引取りと殺処分は実行する、繁殖制限のそれには手を出さないのは何故か、以前から疑問に思っていました。先ごろ長崎県森山町の行政機関で実現されると報道された時、私どもは「西方から曙光がさした」と喜びを表明しました。03年のことです。その後、隠岐海士町で獣医師招聘の費用を行政が支出するという事例も知られ、更に喜びを大きくしました。
 このようなことから期待をつよく持ち、前回・今回のアンケートでしつこく訊ねたわけです。
 以下に回答の数字をしるします。

☆実施状況(総数一〇一)
○記入なし 5
○実施せず 79
○譲渡動物に実施している 12
○飼い主のいない猫に実施 3
○飼い主のいない猫に・検討中 2

☆実施しない理由(右実施せず79の回答)
○記入なし 16
○飼い主の責任だから 32
○職員・設備・経費の問題 21
○獣医院があるから 4
○獣医院/会と協働している 2
○補助金で対応している 1
○必要性を認めない 1
○実施には根拠が必要 1
○特に理由なし 1          
B.自治体・外部との共同で実施について訊ねましたが、おおむね傾向は右の項と同様でした。
 この項については[3 不妊手術費用の助成について]と共に、次回に報告します。

3 不妊手術費用の助成について

 助成実施自治体を知らせてもらいました。
 これは、読者諸兄姉に「ふるさと納税」をお願いしたかったこともあり、詳細に記す予定でしたが、かなりの数、その条件も様々で、誌面が足りませんので次回まわしとし、自治体名を列挙するにとどめます。
 納税のお気持になられましたら、その自治体にお問合せ下さい。または、当会にお問合せ下されば、ご指定自治体の回答用紙により、ご説明します。
[不妊手術費用助成実施の自治体名]
( )内は自治体数
北海道(1)和寒町
茨城県(8)潮来市・境町・神栖市・鹿嶋市・つくば市・坂東市・東海村・行方市
栃木県(5)足利市・真岡市・大田原市・矢板市・芳賀町
群馬県(11)太田市・館林市・吉岡町・中之条町・東吾妻町・みなかみ町・玉村町・明和町・千代田町・大泉町・邑楽町
埼玉県(2)朝霞市・和光市
千葉県(9)市川市・浦安市・四街道市・旭市・匝瑳市・いすみ市・御宿町・袖ケ浦市・市原市
東京都(36)千代田区・中央区・港区・新宿区・文京区・台東区・墨田区・江東区・品川区・目黒区・大田区・世田谷区・渋谷区・杉並区・豊島区・北区・荒川区・板橋区・練馬区・足立区・立川市・武蔵野市・三鷹市・府中市・調布市・町田市・日野市・福生市・東大和市・武蔵村山市・多摩市・西東京市・利島村・御蔵島村・八丈町・小笠原村
神奈川県(10)秦野市・平塚市・厚木市・綾瀬市・寒川町・大磯町・開成町・真鶴町・愛川町・清川村
石川県(2)金沢市・かほく市
山梨県(6)甲斐市・中央市・昭和町・韮崎市・北杜市・笛吹市・市川三郷町・富士川町
長野県(8)須坂市・小布施町・高山村・上田市・東御市・長和町・青木村・松本市
静岡県(16)伊東市・三島市・裾野市・沼津市・清水町・長泉町・小山町・富士市・焼津市・藤枝市・島田市・掛川市・御前崎市・袋井市・菊川市・森町
愛知県(10)一宮市・春日井市・尾張旭市・江南市・岩倉市・小牧市・豊明市・日進市・三好町
三重県(24)桑名市・木曽岬市・いなべ市・東員町・菰野町・朝日町・川越町・四日市市・鈴鹿市・亀山市・松阪市・多気町・明和町・大台町・玉城町・南伊勢町・大紀町・度会町・伊賀市・鳥羽市・志摩市・尾鷲市・熊野市・紀宝町
大阪府(7)豊中市・吹田市・枚方市・茨木市・富田林市・寝屋川市・河南町
奈良県(6)橿原市・生駒市・平群町・三郷町・斑鳩町・王寺町
和歌山県(4)新宮市・橋本市・高野町・かつらぎ町
広島県(1)呉市
山口県(2)下関市・美祢市
徳島県(6)徳島市・佐那河内村・阿波市・石井町・神山町・海陽町
香川県(7)高松市・さぬき市・三木町・東かがわ市・丸亀市・綾川町・まんのう町
愛媛県(2)今治市・松前町
高知県(2)いの町・土佐市
福岡県(1)築上町
佐賀県(2)佐賀市・有田町
長崎県(3)佐世保市・壱岐市・川棚町
熊本県(2)大津町・嘉島町
大分県(1)佐伯市
政令指定都市
名古屋市、京都市、横浜市、神戸市、北九州市、川崎市、千葉市、さいたま市、堺市、新潟市、
相模原市(11市)
中核市
宇都宮市、富山市、鹿児島市、長崎市、高松市、松山市、横須賀市、船橋市、高槻市、柏市、
西宮市、尼崎市(12市)

おわりに

 次回持越し部分を残しながらで妙なものですが、回答者各位への感謝をこめて、ここに感想を述べます。
 先ず、アンケートの到着時刻についてですが、「着到速報」をホームページにアップする都合上、着信順を慎重に見ました。それによって、普通に考えるお役所時間=九時五時を超えて、朝八時台から夜も八時かなり過ぎまでの発信が相当あるのに気付き、負担をおかけしたのを申し訳ないと思ったことです。
 また、アンケート用紙上部、自治体や部署記入欄の「貴・ご・尊」が丁寧に消されていること、当会名に「様」を付して返されたこと、末尾の「協力ありがとう」も消してあったこと、等々、事務処理にも相応の気遣いありと、奥ゆかしく思い、うれしく思いました。
 なお、自治体の不妊手術費補助のお訊ねに対し市町村のホームページ紹介や、それぞれの一覧表を送られた中に、環境省監修『動物愛護管理事務提要』からの写しとのクレジット付のがあり、こういうものの存在は普通には知られていないものなので、情報として大変ありがたいものでした。なぜなら、ボランティア団体で、手術費助成の公・民団体リストを苦労して集め、広報しているところがあるからです。早速知らせてあげようと思っています。

 作業として、集計は神経をつかい、目も心も疲れました。けれども、何かの踏み台になれば嬉しいかぎりです。
 あらためて、回答者各位に御礼をしるし、この回を終ります。ありがとうございました。