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TOP mook 動物ジャーナル バックナンバー 動物ジャーナル62・とつぜん ねこが消えたとき

■ 動物ジャーナル 62 2008 夏

  とつぜん ねこが消えたとき

── 保健所は捕獲するか

動物虐待防止会


 当会ホームページにはいろいろな相談が寄せられること、折々、また前回「ホームページへの相談から」と題する報告でも述べましたが、最近「面倒をみていた外猫数匹が姿を消した。何日か前、箱のようなものを持って猫を探しているそぶりの人を見かけたので、捕獲されたのではと心配している。特に、保健所が捕獲することについて知りたい」という趣旨のメールが入りました。
 ふつう「ねこがいなくなった」と聞くとすぐ、猫捕り出現か!と反応してしまいますが、近頃は「捕獲、不妊手術、もとに戻す」善意の活動も多くなり、また、違法的な「駆除」もあつかましく行われているとのこと。
 こういう状況下で、別次元の「保健所の捕獲」はどのように実行可能なのか、しっかり把握することも必要と考え、当会調査部(おおげさですが。近時成立しました)がまとめましたので、ここに提供いたします。 なお、読者諸兄姉の疑問・異論・補足などをお寄せ下さい。実例を挙げていただけると余計説得力が増し「全国の保健所ウォッチング」が完成されるかもしれません。よろしくお願いいたします。

保健所はどういう時にねこを捕獲・収容するか

  飼えなくなったからと自分で持込む不届者は論外として、飼主不明のねこを、土地・家屋の所有者が自ら捕まえて持込むケースと、保健所が依頼を受けて出動するケース、おおむねこの二つのパターンがあります。
 ただし、ねこは、狂犬病予防法の対象外ですから、保健所が出動するには一定の要件が必要です。その主なものは、
(1)私有地や自宅の縁の下などに、生れたばかりの仔ねこが居て困っている。
(2)食品衛生法を遵守する必要がある工場や倉庫などにねこが住みついている。
(3)飼主のいないと思われるねこが、社会通念上我慢の限界を超えていると判断せざるを得ない状況を生み出して、近隣住民が困っている。 大体このような理由があった場合、地域によって、保健所が収容(捕獲)を行うことがあります。しかしながら、やはり地域にもよりますが、昔に比べて、保健所のねこ捕獲収容は格段に減っていると考えられます。
 また第一のケース、私人が捕獲して保健所に持込んだ場合、常識的に考えれば、飼育者の飼育放棄ではないかと、職員が注視する筈ですが、どこまで熱心に、どのような対応をしたか等の詳細は、正直なところ分りません。

収容されたねこはどうなるか

 保健所の管理下に置かれた動物は、命あるものとして養育され、新しい家庭が探されるべきですが、ねこの場合、犬に比べて新しい飼主の見つかる可能性が絶望的に低いのが現状です。
 譲渡先がなければ殺されることになります。
 ねこの譲渡率が低いことを、自治体の努力が足りないためと主張する人もありますが、一概にそうとも言えません。
 要は市民の意識の問題であり、「犬は芸をする」「主人に忠実だ」けれども、ねこには「そういうところがない」として受入れてもらえない。昔から言われていた「犬は人間から受けた恩を一生忘れないが、ねこは三日で忘れる」という印象を、いまだに拭いきれていないためかもしれません。
 また、ねこの繁殖力が旺盛なことも、譲渡率の分母を大きくしていると考えられます。

殺処分を前提にした捕獲収容は違法

 所有者不明、すなわち鑑札や迷子札のない犬の場合は、狂犬病予防法により捕獲→殺処分となることが多いのですが、ねこの捕獲を直接許す法律は、事実上存在しません。条例についても、捕獲そのものを良しとしている自治体はおそらく少ないと思われます。
 何故かというと、処分を前提とした捕獲が「動物愛護法」に抵触する可能性があるためです。 実際に、千葉県の或る地域で、捕獲を行おうとした市に県がストップを掛けた例があります。
 現に、保健所が出動を要請されるケース、前述(2)(3)の場合でも、ねこによる被害の度合を客観的に評価することが必要で(例えば、工場の変電室に入ってしまい、事故につながりかねないとき、別の法規等を拠り所にして捕獲する)、結果としてそのねこが殺されることになるとしても、慎重に考慮されている筈です。(あまい?)
 というわけで、「保健所としては殺処分を前提とした捕獲収容は、できれば行いたくないと考えている」と見てよろしいかと思います。 ちなみに、保健所の出動が要請される条件として挙げた前述(1)(2)(3)全てに関りますが、こういう状況になってしまう背景の一つとして、無責任な給食者の存在があります。
 ただ食べさせるだけで繁殖制限の努力をしない、ねこの居ついている場所の管理者や周辺の人々との関係を上手に保てない等々、ねこが嫌われる要因をつくり出しているのがこの種の給食者であり、結局はねこが迫害されるのだという点に気がつかないようで、これをどうするか、関係各機関の精一杯の努力をお願いしたいところです。

捕獲されたかどうか確かめるには?

 その地域を所管する保健所に問合せることが一番に必要でしょう。
 保健所には、出動の記録があるでしょうし、経過や処理の記録もあると思います。
 もし、保健所が捕獲したのでないと判明した場合は、他の可能性を考えなければなりません。 前述ねこ捕り=ねこ泥棒(ねこ密猟者ともいう)の跳梁、十数年前によくあった便利屋さんが町会等の依頼を受けて、一頭数千円で請負う捕獲、その他が考えられますが、これらの行為は明確に違法です。この疑いがあるときは、警察に頼るしかありません。
 また、都道府県から許可を得た有害鳥獣捕獲業者の活動もあります。当然合法的な捕獲です。が、ねこの捕獲は批判に晒されやすいので嫌がる、やりたがらないのが現状のようです。したがって、出動の頻度は低いと考えられます。
 それから、善意のボランティアさんが、不妊手術のために一時的に連れ去ることがあります。この場合は、周辺に「お知らせ」などのかたちで目的を説明していることもあり、近所の方に訊ねるのが早わかりでしょう。

悲劇を起させないために

 保健所出動の要件として挙げた三つの状況を仔細に見ますと、外で暮さざるを得ないねこたちの悲劇が浮び上ってきます。
 放置された仔ねこは母ねこが産み捨てたものか、育てたいのに叶わなくなったものか(事故死など)、或いは、迷惑とするヒトが単純に排除に動いたものか。(母ねこをどうした?)
 「仔ねこ」には、乳飲み子となんとか自分で食事ができる子、ヒトで言えば乳児と幼児くらいの差があると思いますが、譲渡可能になる段階まで、保健所が養育するかどうか、疑問とせざるを得ません。その証拠に、以前当会の実施した「殺処分に関する自治体アンケート」(『動物ジャーナル45・46』参照)では、仔ねこ処分数に目を覆いました。この状況は現在に至っても続いています。
 また、自活できるねこが快適?な居場所を選ぶのは当然の成行きで、そこに定期給食者が?勤務?しているとなれば、極上の住処となる筈。しかし外猫は外猫です。あたたかい家庭に恵まれず、不意の災難を避け得ず、「なにが極上か」と言われてしまうでしょう。
 こういう外暮しのねこのために、黙々と献身的にボランティア活動を続ける方々の存在は、ご承知の通りです。
 寒暖・天候にかかわらず、定時に給食する。時期を見計らって不妊手術を実施する。外暮しが無理と判断されれば我が家に収容する。新しい飼主さんを探す。書き始めればきりのない救助活動、
それを実行しておられる原動力は「処分回避」です。
 この方々の金銭的、精神的、肉体的負担は尋常ではないというのが現実です。
 驚いたことに、こういうボランティアさんとの連携を目ざし、自分の休日に、給食や手術のための捕獲活動に同行する保健所職員も僅かながら存在することを知りました。現状把握はまじめな職員にとって必要でしょうし、動物愛護法の精神や命の重さを日頃から真摯に考えていれば、公務員として当り前と言えますが、ごく僅かという点が残念です。
 逆に「厄介事はご免だタイプ」というべき職員もいます。市民からの情報提供や苦情に全く対応せず、したがって現況調査も一切行わず、逃げ口上のために、理解しているとは言い難い状態で動愛法を持ち出したり、本来職員の仕事であるはずの市民からの苦情対応を、電話一本でボランティアさんに丸投げしたり。近頃報道を賑わわせている公務員の怠惰=サボタージュは、この分野にもあったかと思わされます。
 結局、保健所という役所・機構も一人一人の人間から成り立っているわけで、個々の職員の資質如何により、外側=市民から見える現象が違ってくるということでしょうか。
 私たち市民からすれば、上等の資質を持った職員が保健所に満ち溢れてほしいと、切実に望んでいます。