デジタル接続の経路に悩む(その3):
Aries S1からの出力方式は概ね定まったと思う。インピーダンス整合器を直付けして、AES/EBUにて出力させ、そこから75Ωのデジタルケーブルにてデジチャンへ入れるスタイルである。S/PDIFとの差異(AES/EBUとS/PDIFの信号振幅電圧の違いが関係しているものなのか結論は出ていない)はそれほど大きいものでもないが、やはり音楽の安定感がこの接続スタイルの方があるように思えてしまうのは気のせい以上だと思う。微睡みながら聴いていると心地良さの違いを余計に感じてしまうようだ。
直付けした整合器とケーブル:
ここは一応これでファイナルかな~と考え、更にNodeの接続に関してMUTECを使わない(断捨離)構成としてAries S1経由の接続を試してみたが、こちらは経路の選択肢が少ないので、割とシンプルな比較。結果としてはUSB接続が同軸ケーブルに比せば良さげとなった。ただし、Nodeからの音楽再生では電源I/Fと専用電源などの改善を行ってはいても、Aries S1単体の音を超えられない。不思議にも思うし、当然なのかも、とも思うけれど。Nodeの場合はUSB出力でMUTECにてリクロックさせた場合の音とAries S1経由とはほぼ差がないと云えるので、これならば断捨離構想も現実的となってきたと考えている。
USB入力に対するMUTECでのリクロッッキング処理とAries S1における演算処理の音へのインパクトについて、両機器の差は極僅差と認識しているが、ひとつ考慮しなければならない点は、MUTECへ外部入力しているマスタークロック(位相雑音は-111dB/1Hz)が我が家では「究極を考えた場合の望ましいレベル(-116dB~-120dB)」には達していないので、ここは改善の余地(そこでまやるか、ということは除外しても)はあるかもしれない。
総合的に考えれば、リクロックやデジタルプロセッシングという処理はそれのみでは劇的に音を良くするような「魔法の技術」とはならないので、機器としてのトータルな能力こそが本来重要と云えよう。この観点で判断すると単体のAries S1が持っている機器としてのポテンシャルは当方にとって納得のレベルであり、充分に高いと云って差し支えないと思う。
従ってこの先、デジタルトランスポート周りで更に音を煮詰めるには、
1.MUTEC MC3+USBを継続して使うなら、より低位相雑音のマスタークロックを導入する
2.Aries S1の評価結果をベースとして、より高品位な単体デジタルトランスポートを探す
という二つの選択肢が考えられるのだが、今後MUTECの後継モデル(注記)が出てくるのであれば1のスタイルもありかも、と思う。一方で、マスタークロックへの投資は直接デジタルトランスポートやデジチャンへ高品位のクロックを注入するという構成は取れないので、我が家ではMUTECの専属のような機器となってしまうことが課題となる(それ故に投資効率は今一つ?)。
(注記)MUTEC MC-3+USBは8年程経過した機器なのだが、流石にドイツ製らしく製品寿命が長くて未だに後継の製品のアナウンスは無い。もうそろそろ、とは思うのだけれど。
我が家での使い方や断捨離要件など条件をあれやこれや勘案すると、やはり2のデジタルトランスポート(ネットワークストリマー、あるいはストリーミングプロセッサー)の理想形をしっかりと選択した上で煮詰めていくことが好ましいかな~との結論になりそう。
現状であれば、かなり品位の高いクロックを内蔵したネットワークストリーマも散見されるので、今後の機器選択の方向性としてはこちらのアプローチの方が一般論的にも順当なんだろうと思う。ある意味では我が家で最後まで残っている課題(究極のデジタルトランスポート探し)でもあり、最上流となる機器の選択となるからには今までに蓄積してきた経験値も反映してベストな機器(それが何か?が問題なのだが、、)を導入したい。
ちょっと話は逸れるが、オーディオの「音」は総合力であって、今回のデジタル接続に関するような試行はどうしても枝葉末節なことだな~と思う点もある。本筋で考えれば大事なポイントは部屋とスピーカーを中心とした調整であることは揺るぎようもない。自分自身への反省を含めて云えば、特にデジタル周りでは比較的お手軽な電源系ノイズ対策やら光絶縁やら世のトレンドに振り回されているようにも思う。このような微細部分への取り組みは(その投下コストを鑑みれば)ちょっとした味変でもありそれなりの楽しみ方もあるが、このような小手先の対応だけて終着駅へ行き着ける訳ではない。
これらに取り組むことによる効果は実感できるものでもあるし、細部にも神は宿る、という真実を否定しているものでもない。ただ、オーディオの王道では無いことを忘れてはいけないのだと思う。単に音の比較や変化を楽しむだけでは何ら成長には繋がらないのだ。目指すべきは理想あるいは究極を志向した「音創り」であり、現状の出音の熟成を着実に図っていくことだと思う。
我が家でも(再生が一番難しいと思う)オーケストラがもう一息のところまでになってきたようにも思えている、、、けれどそうは云いつつも、オーケストラの芳醇な響きや音色のきめ細かさ、圧倒的なダイナミックレンジという観点を鑑みれば、トータルな音創りとして合格点に至っているとはまだまだ評価できない。目指すべき本来の道を踏みはずさず自らの心の中にある理想に向かうべきと、自戒を込めてここに記しておく。
(おまけ)
昨日達人宅にて
ダイヤモンド三兄弟
と
TAIKO Olympus Server
の構成による音を聴かせていただいた。さらに
Bliesma T34D
とBliesma M74Bの組み合わせも。語る言葉無し、王道はここにある、、、
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