オーディオ日記 第40章 はじめに音楽ありき(その8)2017年6月1日


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PCオーディオにおいて愛用してきたVoyageMPDであるが、ここのところ随分と長いことバージョンアップがされていなかった。シングルボードコンピュータであるALIX3D2が次世代の APU1C、APU1D に代替わりし、こちらをベースにした lightMPD のユーザーが増えたことも関係があるものと思う。当方はシングルボードではなく、普通のPCをベースとして使っているが、このVoyageMPDは所謂GUIを持たないCUIのLinux OSなので、非常に軽くまたそれ故に音的にも優位性があると考えている。JPLAYにおけるWindows Serever/Coreモードと同様であると云った方が現在では判り易いか。

このVoyageMPDが本当に久々(2年ぶり)に 0.11.0にバージョンアップ された。不思議なことに「サイレントリリース」との但し書きがあるし、さらに限定的なテストしかしていないと、、、やはり時代の趨勢、流れには逆らえないものなのかもしれない。リリース情報ではリアルタイムカーネル(4.1.6 Kernel -rt for MPD)である。ただし、MPD自体は0.19.12と最新ではない。MPD( Music Player Daemon )は最新では既に0.20.8がリリースされており、0.20以降であれば SoX によるサンプリングレート変換処理においてマルチスレッド(並列処理)も可能になっているのにこれは一体何としたことか。多少落胆する。

それでも現在使用している0.10.0との比較も兼ねて早速試してみたことは云うまでもない。Linux周りは本当にちょっと時間経過するとコマンドなど忘れてしまうことばっかりなので、一応自分なりの導入手順書を作成してあり、それに沿って実施。ダウンロードはサイトの関係か遅いのだが、その後のインストール、設定など30分もかからない。

限定的なテストしかしていない、ということでバグだらけ?という心配も無くはないのだが、幸いにもそのようなことはなく、特段の問題はない。ただ、肝心なのは音であるが、一聴した限りでは以前のバージョンとの差をほとんど感じない(駄耳なので判らない?)。安心材料ということで最新版にしておくか、旧版を使い続けるか、これは悩ましいところ。しばらく様子を見て、安定性に問題が無ければ新しい方を使う、という考え方で良いのかもしれない。

2~3年ほど前にはPCオーディオの世界で一世を風靡した(?)VoyageMPDのこの状態にはちょっと寂しいものを感じる。機能的に劣るとか、音質的に劣るとか、そういうことでは無いにもかかわらず、やはりここにも流行り、廃りの世界があって昨今のJPLAYの流れに押されてしまっているのだろうか。あるいはCUIベースのLinuxという敷居の高さが多少なりとも関係あるのだろうか。

(閑話休題)

自分にとっての「納得の音」というのはそうそう簡単には得られない。永きチャレンジと葛藤があって、少しづつ自分の理想に近づいてくるものなのかもしれない。

現状はいろいろな意味で自分の考えてきた機器構成における再生スタイルの「総仕上げ」という段階にあるのだろうと思っている。どこまで行っても絶対の音などないのかもしれないが、いろいろな音楽を心地良く聴けることが何よりありがたいと感じる。特に、最近の調整結果による仕上げ的な現在の音ではナチュラルな録音のクラシック系の音楽においてはもう音楽そのものに身を委ねるだけ。ある意味では幸せな時間を過ごせるようになってきている。

我がオーディオにおいては、この「納得の音」が出た、というのは一晩限りで翌朝には儚い夢に終わっていることが幾度となくあった。それは大いなる勘違いだったり、気の迷いだったり、特定の音源に依存していたり、と理由は様々であるが、その僥倖は決して長続きはしてくれなかったのだ。だから、ちょっといい音が出た、となってもそうそう簡単には信じないし、それがちゃんと継続してくれなければ評価には値しないものと考えてきた。だが、、、今回は少し違う。微細な設定を弄ることも無く多様な音源を聴きながら、何日も同じ感触を得ている。

機器や設定に関するいろいろな取捨選択、試行錯誤があってやっと辿り着いたとも云えるだろうか。4wayマルチの設定では、非常に多くのファクターを決めていかねばならないので、右に行ったり、左に行ったり正に右往左往していたと思う。各ユニットの受持ちの周波数帯域、レベル設定、位相、タイムアライメント、スロープ特性と基本はその5種類なので、本来それほど多様なものではないのかもしれないが、ひとつひとつを吟味して、聴き較べ、自分なりの判断をして最終的な「音楽再生」の満足度を上げなければならない。これらの設定の中には相反するファクターもあり、また自分の判断基準の未熟さ、曖昧さもあってなかなか答えを出せずにいた。

測定によって、音の良し悪しが捉えられる訳ではないのだが、どのように自分の部屋で再生が行われているのかを客観的に把握し、分析することはできるので、大きな一助になる。この測定というステップも大変重要であるのだが、その結果をどのように設定にフィードバックし、望む方向の音に設えていくのか、ということが一番肝心なのだと思う。もちろんこれも最初は手探りなのだが、徐々に「こつ」というものも掴めてくるのかもしれない。

あれやこれや右往左往しながらも、高域における指向性を広げるというアプローチ、低域の質感(結果としての音楽の支え)を改善する低域用アンプのブリッジ化、などこのところの詰めの対応が功を奏したように思え、やっとこの永き葛藤から脱して安息の領域に近づけたよう。自分の求めるオーディオとしての理想を言葉にすることはなかなかに難しいのであるが、敢えて最近の自分の価値判断を表現するとすれば、

・密度感は音像に、広がりはホールエコー、リバーブにそれぞれ具現化されていなければならない。
・音はリアリティを伴っていなければならないし、また溶け合っていなければならない。
・質感は繊細さと刺激的なもの、両方をあるがままに表現出来ねばならない。
・音楽自体や楽器や声の響き、音色を楽しめるような再生でなければならない。

ということになるだろうか。あくまでも理想高く、ということではあるが、、、

人間の耳の敏感さには驚くことも多いのであるが、自分が微細な違いを的確に聴き分けられる耳を持っているとは到底思えない。いい音をたくさん聴かせていただき、その中から少しづつ自分の理想を紡いでいき、それを何とか実現することを模索してきた。今まで自分自身でその実現を危ぶんできたことも事実。余命幾許の中でこれは辿り着けないんじゃないかと、、、

だが、ここにやっとひとつの光明が見え始めた、と云って良いと思う。扉を叩け、開け、そして求めよ、さらば得られん! 幸せな音は確かに存在する。朧げながらも少し見えてきた。そしてそこまで、あと数歩か。


4way構成の設定備忘録(2017年6月1日更新)
項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
パワーアンプでの
入力絞り
dB -6.0 0.0 -12.0 -12.0
設定値
SP側での
アッテネーション
dB 0.0 0.0 -12.0 0.0
(L-PAD抵抗)
DF-55の
出力設定
dB 0.0 0.0 +1.7 +5.0
Analog Att
OFF
スピーカーの
出力(想定)
dB 91.0 90.0 87.7 86.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

250
250

1400
1400

4000
4000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-12 12-12 12-24 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm 25.0 55.5 0 34.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Rev Norm Norm JPLAY
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない


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