オーディオ日記 第31章 夢の中へ(その14) 2012年12月2日


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デジタル入力の再考の続きとして、デジタルイコライザ(DG-48)を試してみた。我が家の常用機種のデジイコは廉価なBEHRINGER DEQ2496であるが、DG-48にて周波数特性の測定ならびにイコライジングの是非などをテストしてみた。デジイコによる周波数補正では、システムの基本的な「音質の改善」とはならないことは認識しているが、周波数特性を整えることの効果はあるので、機器の違い、補正機能による音の差なども確認してみた。また、デジタルソースに対するアップサンプリングについて、AudioGateの新バージョン(PCMtoDSD変換など、変換エンジンが新しくなったもの)を試しつつ、リアルタイムアップサンプリングの音について、これも我が家の定位置であるVoyageMDPとの比較を行ってみた。

イコライザのテスト風景:


まずは我が家のスピーカーの周波数状況であるが、リスニングポジションにて測定した結果が以下の画像1(左チャネル)、画像2(右チャネル)である。左右のチャネルとも共通して80Hzと220Hzあたりに-6dB程度のディップがある。また、右チャネルのみ1.6KHz付近に若干のピークがある。その他の帯域にはあまり大きな暴れは無いので、裸で聴いても気になる点は少なく(贅沢を云えばキリがないが)まあまあかもしれない。40Hz以下、16KHz以上については、当然ながら音圧レベルが落ちているが、この辺りの帯域はリスニングポジションでの測定でもあるので、あまり神経質になる必要がないとは思うが、20Hz~40Hz についてはもう少し充実させたいな、と考えている。やはり最低域(40Hz 以下)については、音楽のボトムエンドを支える帯域でもあるので、できればしっかりと充実させたいと思う。ただし、イコライザ補正により良質な質感の低音を得ることは15インチウーファであってもかなり困難なので、20~40Hzのフラット化には相当良く出来たサブウーファの導入が不可欠かもしれないと考えている今日この頃である。

画像1.左チャネルの周波数特性(80Hzと220Hz付近に谷がある):


画像2.右チャネルの周波数特性(低域は左と似ているが1.6KHz辺りにピークがある):


周波数測定の結果に基づき、フラットへの補正を行うためのイコライザカーブが以下の画像3(左チャネル)、画像4(右チャネル)である。このイコライザカーブは厳密にフラットを求めているものではなく軽度の補正であるが、補正後の周波数特性は画像5(左チャネル)、画像6(右チャネル)のように、かなり揃った状態となる。
(注記)DG-48は周波数補正に際して、厳密な補正(COMPLETE)を行うか、中間的(MIDDLE)なレベルとするか、軽度(LITE)にとどめるか選択することが出来るので、LITEを選択している。

画像3.左チャネルの補正カーブ:


画像4.右チャネルの補正カーブ:


画像5.左チャネルの全体状況(周波数特性はLiteレベルの補正後):


画像6.右チャネルの全体状況(周波数特性はLiteレベルの補正後):


自動補正によるイコライザカーブでは、最低域(40Hz 以下)、最高域(18KHz以上)を大きく上昇(限界値の+12dBまで)させているが、このような補正はそもそも音質を損なうし、スピーカーの能力を超えた補正になってしまう恐れがあるので好ましくないと当方は考えている。また、個々の周波数領域においても音質面からあまり大きな補正は行わないようにしている。そのため、自動生成されたイコライザカーブを参考にしながら、手動の設定にて近似的な設定としたものが、画像7である。この設定はイコライザ機能のみを使用してマニュアルで行うのであるが、前述のように補正量は控えめ(最大でも+3dBまで)にしており、また、最低域、最高域の補正は実施していない。

画像7.測定結果を参考に設定したマニュアルの補正カーブ(最低域と最高域は敢て補正せず)


さて、このイコライザカーブによる再生音であるが、とにかく自然なバランスと感じられて、気になるような帯域はほぼない。もちろん20Hzから40Hz辺りについては、それほどの不足感がある訳ではないが、周波数特性の測定結果が頭の中にインプットされているのでもっと充実させたいな、とは思ってしまう。

さて、次のポイントは、イコライザを通した場合の音質と使用せずにダイレクト接続(USB DDCからデジチャンへ)した場合の音質の差である。最近は音の純度、鮮度、透明感というものを非常に大切にしており、滲み、混濁を伴うような対応は出来れば一切排除したい。従い、周波数特性を整えることによる普遍的な音楽再生の音と、純粋かつダイレクトな音とどちらを取るか、という難しい問題に直面する。抑えた周波数補正であっても、イコライザを通す弊害は歴然と存在する。最近になって開眼した音は、「音像がしっかりと密度高く存在しており、その音像からオーラのごとく響き(エコー感、ホール感)が四方八方に飛び散る」というものである。これはこのところいろいろと勉強をさせていただいている milonさんからの受け売り であるが、このような音はやはりイコライザを介すると微妙なものであるが故に損なわれてしまう。

どう折り合いを付けるか、本当に悩ましいのであるが、録音の最上のものはやはり余分な機器を排しストレートに聴くべきであろう。また、多様な録音レベル(中程度あるいはそれほどではないものを含む)のものを楽しんで聴くためには、周波数補正をしておく方がやはり(気分的に安心できるのか?)リラックスできてベターと思う。そのような使い分けであるが、音源に応じてイコライザのオン・オフで良いかとなると、そもそもイコライザを接続構成に入れて経由した音ではベストとは云えないので、はなはだ面倒くさいのではあるが、二系統の接続ルートを用意しておかねばならない。結局のところ気合を入れて聴く場合はイコライザを介入させない接続、となる。

さて、ちょっと違うレベルの実験となるが、DG-48上のこのマニュアルのイコライザーカーブを近似値的に廉価なDEQ2496に移したらどのような音となるのであろうか。また、その差はあるのだろうか。デジイコ単体の音を評価するのは至難と思うが、せっかく両機種があるのでやってみようと思う。画像8は同様のイコライザカーブをDEQ2496で設定したものである。当然ながら、両機種では周波数のポイント数が異なる(DEQ2496は31ポイント、DG-48は64ポイント)ので、全く同じにすることはできないため、あくまでも近似値の設定である。

画像8.DG48と相似のイコライザカーブをDEQ2496で作成したもの:


さて、その結果であるが、当方の駄耳では残念ながら両機種の差を明確には捉えられない。どちらもリーズナブルな音を聴かせてくれる。これは補正量が少ないことに起因しているのか、ほぼ同様のDSPチップ(Analog Devices社製)を使用していることによるものなのか、はたまた当方の耳が悪いのか、率直に云って理由は判らない。ちなみにイコライザの入出力は両機種ともデジタルで行っており、テストの音源は24bit/96KHzのもの。穏やかなレベルの周波数補正を行うのであれば、イコライザとしての機能や音質についてはDEQ2496でも充分かもしれないと思う。

その他DG-48についての雑感を記しておこう:

1.周波数測定が非常に簡単で楽ちんである。(また測定の精度非常に高い。比すればDEQ2496はかなりプアーである)
2.RCA同軸のデジタル入力は96KHzまでしか対応していない(192KHzはHS-Linkのみ)ので、これはDEQ2496と同レベル。今後を考えるとこれには不満が残る。
3.HS-Linkケーブルは、通常のLANケーブル(カテゴリ7)を使用したが、音質的にも特段問題はなかった。(規格自体はLANケーブルとは若干異なるものであるが、そもそも互換性がある規格である)
4.設定等の操作はやはり次の機種ではPCから行うようにすべきであろう。(小さい画面だし、機器に噛り付いて行うのは少しつらい。ただし、ソフトウエアのサポートの問題などありそうだが)

さて、次にアップサンプリングの件である。

AudioGateでDSD音源を192KHz出力させてみたところ:


アップサンプリングについては、その効果の有無について過去にもいろいろと議論されていると思うが、最近はPCMをDSDに変換した上でD/A変換する、というアップサンプリング(とは最早云わないかも?)の究極のスタイルも登場し始めており、大いに興味のあるところ。我が家ではまだDSDに対しては本格的な対応が出来ていないのであるが、AudioGateによるアップサンプリング(96KHz、192KHz)が非常に安定しており、秀逸と感じたので、改めてテストしてみた。AudioGateの新バージョンはPCのソフトウエア処理でPCMからDSD変換をしてくれるのであるが、DSDのDACはKORGの専用のものしかサポートしていないので、ここではPCMのアップサンプリングのみの比較試聴である。

ちなみに我が家の定位置であるVoyageMPDに関して云えば、
1.ALIX3D2ベースのVoyageMPDはCPUが非力のために44.1KHzから96KHzであってもアップサンプリングで安定した音質を得るには難がある。96KHzでCPU使用率が70%前後となるせいと思う。192KHzの対応も機能的には可能であるが、音質的には現状では問題外のレベルとなってしまう。
2.ある程度のCPUパワーのあるPCベース(我が家の再生専用PCはDual Core2.6GHz)では96KHz、192KHzへのアンプサンプリングともに安定している。従い、アップサンプリング(96KHz)させて聴くような場合は、PCベースのVoyageMPDを使用している。ただし、192KHzへアップサンプリングした音は残念ながらAudioGateに劣っていると感じた。これはやはりサンプリングレートコンバータモジュールの差だと思う。

使用したUSB DDCはJAVS X-DDCであるが、これはWindows環境でASIOドライバーが標準サポートされているので、AudioGateでも全く問題なく稼動する。新しい変換エンジン(サンプリングレートコンバータ)がかなり効果があるものと思われるが、44.1KHzを192KHzへアップサンプリングしたAudioGateの音はとても良い。また、DSD音源を192KHzへ変換して聴くことも可能であり、これは大変ありがたい機能である。この音はNativeのDSDとは比較していないが、全く以って「イケテル音」である。う~む、DSD音源からPCM変換してこの音が聴けるならPCMでも十分ではないか、とも思う。しかしながら、この音が良いだけに、44.1KHzをDSD変換した音がどうしても聴きたくなってしまう。
(注記)このテストはQuad CPUのPCで行ったが、CPU使用率は楽勝の状況で負荷はあまり高くなかった。なお、AudioGateの「環境設定」にてリアルタイム変換処理を「高品位」の設定とすることが肝要である。

ただし、単体プレーヤとしてAudioGateを考えた場合、楽曲ファイルの選択やプレイリスト、リモコン操作など、全般的な使い勝手はVoyageMPD+mPODに全く敵わない。やはりこのAudioGateは音楽再生専用機ではなく、デスクトップ、ノートとしても使うPCでの再生ソフトウエアなのであろう。しかしながら、このように強力な「変換エンジン」は他のソフトウエアでも見習って欲しいと思う。


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