オーディオ日記 第31章 夢の中へ(その15) 2012年12月19日


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スピーカーならびにデジチャンの各種セッティングがひと段落している状態であるが、「小人閑居シテ不善ヲナス」の言葉通り、ちょっと遊んでみたくなった。デジチャンにはデジタルディレイの機能が付いており、これをあれやこれやと活用せぬ手はない。基本のセッティング確定まではDF-55が持つAutoDelay機能(クロスオーバー、スロープ特性に応じて自動的にDelayを調整してくれるもの)を低域、中域に使用し、高域のみにマニュアル設定(それも厳密ではなく)を行っていた。パルス特性などを計測する方法は不勉強なため自家薬籠中ではないが(探せばその辺りの計測が可能なソフトウエアもありそうなのだが)、まあ、まずは聴感を頼りに少し弄ってみようかと考えた次第。

さて、このディレイを弄ることによって、聴感上どのような変化があるのか再確認・把握することから始めなければならない。最初にツィータの前後位置を動かすようにディレイ設定を変えてみた。ほぉ~、面白い! ツィータにディレイを加える(位置を後ろにずらす)ことによって(当然ながら?)高域の存在感が変化する。感覚的には微妙というより以外にも顕著。従来はツィータのレベル設定で高域の感触を探っていたのだが、出力レベルを変えずに、高域の聴こえの状態を変化させることが出来る訳だ。当方のリボンツィータはエンクロージャーの上に乗せているスタイルなので、若干であれば前後位置をずらすことができるが、設置上の制約と見栄えから、あまり大きく変化はさせられない。然るに、このディレイ(設定をマイナスにすれば前に出すことも可能)により自由に仮想位置をコントロールできる。考えようによってはこれは「危ない機能かも」と思いつつも、ついつい実験してみる。

リボンツィータとホーンドライバーがやはりユニットの性格や振動盤素材から微妙に音色の溶け合わない感じがあったのであるが、このディレイの調整により結構解消できる(率直に云えば多分に自己満足の世界と思うが)ことが判った。ツィータが出しゃばるのを避けるために出力レベルを落とすと雰囲気や音の広がりが寂しくなるが、ディレイによってこの出力レベルを下げずに重なり具合を調整してみた。最初はえいや、で15cm後方としていた設定をまずは大きく後ろに振ってから音楽を聴きつつ、徐々に前に出して来るというやり方である。当然ながら、後ろにしすぎると帯域の不足感が出てくる。前に出しすぎれば存在感が強くなる。結局音楽が自然に聴こえるところがベストポイントなのであろう、ということであれこれ試行錯誤した結果、仮置きの設定値として17cmとした。従来の設定は15cmだったので2cm後ろとなったのであるが、まあ、2cmであるが、違うといえば違う(様な気がする)。もしかすると、このディレイ設定により出力レベルやクロスオーバー周波数もまた影響を受けてしまう可能性もあるのだが、あまりやりすぎると泥沼に嵌ってしまうので、ここは自重した方が良かろうと思いつつ。

さて、ツィータの仮置き設定ができると、次に低域を考えてみたくなるのはやはり人情というものであろうか。闇雲に弄る前に少し方針を考えてみた。要は、どのような音にしたいのか、である。円形ホーンは多少指向性がきついようなので、音を少しふわっと広げたいということや低域と中域の音の溶け合い不足(高次のスロープ特性を使うとその傾向が出る)、低域の密度感が今ひとつ、など、纏まって来たと云っても多少は不満点も残っている訳で、その辺りをこのディレイ設定で何とかできるものであろうか? 音を良くする特効薬などない、とは百も承知であるが、まずは実験してみなけりゃこれも始まらない。さて、ツィータは17cm後ろであるが、ウーファーは?一般論的に云えば「低域は遅れがち」である。まして15インチウーファー、振動盤は他のユニットに比すればかなり重い。理論で考えれば音は遅れてくるであろう。DF-55のディレイ設定はマイナス値の設定により当該ユニットを「前に出す」ことが出来る。効果が本当にあるか?まずは少し大きめの-25cmに設定して聴いてみた。おおっ、良くなったかどうか別にしてこれも割りと変化がある。ツィータと同じような変化が感じられるではないか。低域も思った以上にである。これはやばい!泥沼の予感が走る。調子に乗ってさらにずいっとウーファーを前に出すと当たり前なのであるが「音楽が破綻」する。こりゃ、やはり厳密は測定機がないと駄目だと「判っちゃいながら」あれこれ試してみる。おやおや、-17cm辺りが低域の押し出し感、求めていた密度感が塩梅良いようである。ちょっと出し過ぎかもしれないがドライバーとウーファーの音の溶け合いも何となく良いような、、、これは錯覚ではないか。プラシーボではないか。自問する。試聴を繰り返す。幸いにもと云うか不幸にもとなるか、DF-55には設定のメモリー機能があるので、切り替えての機器比べが簡単に出来てしまう。

中域はホーンであるため、その特性上音源位置が明確には定まらない。従って、中域の位置を基準にして、高域、低域の前後位置調整(ディレイ設定)を行うべきであるが、最初はツィータとドライバーの位置調整、次にウーファーとドライバーの位置調整と個別に行った結果としてツィータとウーファの位置が前述のように34cmも離れることになってしまった。これは絶対ヤバイはず。もう一度冷静になって、低域、高域を同時に調整しつつ不自然にならないよう試聴を繰り返して設定し直した。結果としてツィータ8cm後方、ウーファー12cm前方に落ち着いた。前後位置としては34cmから20cmに縮小となった訳である。いつもリファレンスとしている曲を片っ端から聴いて確認する。顔がほころぶ。全然計測もしていないので、改めて計測したとなれば穴にも入りたくなるようなパルス特性となっている設定かもしれない。それでも各ユニットの出力レベルを調整していないにも係わらず、今までに比すればツィータの存在感が更に薄くなり、低域の押し出し・密度感が上がったようにも感じてしまう。つくづく阿呆だな、と思う。やれやれ、ディレイ設定というおもちゃで、やっと落ち着いたマルチの設定が「振り出しに戻る」ということにならなければ良いのだが、やはり危険な予感が。


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