「今日も、雨だわ」
加奈子は、窓際で頬杖をつきながらつぶやいた。
雨に濡れた庭を見るのは好き。地面は黒く光り、雨水が流れている。
その流れに雨粒が落ち、ピチャピチャと飛沫が上がっている。
庭の紫陽花の大きな葉にも雨粒が落ちる。その度に葉が揺れる。
紫陽花は、ガク紫陽花。
加奈子は、この花が好きだ。
「そうよね。梅雨なんだもの。雨の日が多いのはあたりまえね」
見ると紫陽花の葉には、小さなカタツムリ。
「デンデン虫々、カタツムリー……」
小さな声で口ずさんでみる。
昼間なのに薄暗い庭。雨音しか聞えない。
加奈子は、両方の手で頬杖をつきカタツムリを見つめた。
「カタツムリちゃん、あなたも一人なの。私と同じ…… 私ねー、
失恋しちゃったの……」
加奈子が最後に弘樹に会ったのは三年前なのに、日に日に
思いは強くなっていく。
もう、会えないのに……。
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