△ 不等辺ワークショップ第9回 (2002/07/14)


トップページ > ワークショップ > 第9回

<前一覧次>

7月14日(日)、梅雨の合間の晴天に恵まれ、幸先の良い第9回不等辺さんかく劇団ワークショップ。リーダーはおなじみ林成彦、アシスタントは私、新人の山羽真実子。本日の参加者は8名、来た人から順に名簿に名前を書いてもらった。写真

今回の名簿はゲームと連結している。受付は、参加者に向かってまずこう聞く。
「あなたのご職業は何ですか。」
名簿には聞いたことも無いような職業の名前が並ぶ。参加者は前もってリーダーから職業を割り当てられているのであるが、自分の職業以外にどんなものがあるのかは知らされていない。ここで初めて他の人の職業を目にするのである。何度も言うが、聞いたこともないような、一風変わった職業ばかりである。しかも、参加者にはそれによって何が行われるのか知らされてはいない。期待に胸が膨らむ…。


写真
さて、一つ目のゲームは「野菜メドレー」である。
「どびん・ちゃびん・はげちゃびん」を元にして、発展させたものだ(第5回参照)。まずリーダーが任意に参加者を3名指名し、好きな野菜の名前を答えてもらった。
「トマト」「ナス」「キュウリ」。
 参加者はゆっくりと部屋の中を歩きながら3つの言葉をまわす。
「なるべく空間を大きく使って歩いてください。」と、リーダーが指示。
パスのやり方に一つだけルールを設けた。パスするとき、相手を指差すというものだ。そうすれば受け取った相手も自分がパスされたのだとわかりやすい。まずは導入編、難易度Aである。難易度B。今度は指差しをやめ、アイコンタクトだけでパスをする。慣れてくると一番近くにいるパスしやすそうな人を飛び越えて、その向こうにいる人にパスしたがるという遊び心に富んだ人も現れたりする。この段階になると、パス回しのリズムが崩れ始め、パスを出すのが上手な人、また逆に受け取るのが上手な人などの差が現れる。B段階もある程度慣れてくると、今度はチームを4人ずつの二つに分けた。少人数なのでうまくいき辛くなるかといえばそうでもなく、言葉はポンポンと一定のリズムで綺麗にパスされていく。やはり少人数の分、コミュニケーションを取る対象が少なく集中しやすいのだろう。ただ、やっている人は、パスを出してもまたすぐに回ってきてしまい、常に緊張状態にあって大変だったということであるが。難易度C。「トマト」「ナス」「キュウリ」を回す一方で、「1」「2」「3」を同時に回す。これは難しい。見ている方も訳が分からなくなってくる。当然2つの言葉を同時に受け取る人あり、いつの間にか一つ消えてしまうことあり、全員頭がこんがらがってゲーム終了。

写真
2つ目のゲームは「ペット・バトル」
3人対3人で行うサッカーのようなゲームである。まず、サッカーでいうゴールの代わりにペットボトルを置く。今回は椅子の上に置いた。対戦は3対3で行われ、内1人がオフェンス、2人がディフェンスとなる。オフェンスが相手チームのペットボトルを取ったらポイント。ペットボトルを倒したり、自分のチームのペットボトルに触ったりすると、相手チームのポイントとなる。そして最大のポイントは、オフェンスが誰なのか、お互い分からないということである。
何回か練習し、最終的にチーム分けをしてトーナメントを行った。「トマト」チームにはリーダーも入り、マツモト、ハシモト。「ナス」チームはフクダ、タニグチ、ナガヨシ。「キュウリ」チームはハセガワ(ひ)、ハセガワ(い)、ナガタ。一見「トマト」チームが一番強そうだが、結果は…「ナス」チームの圧勝であった。オフェンスは相手チームに知らされないが、大体分かってくるものらしく、いかに早くオフェンスの目星をつけるかが勝負の鍵となる。その点で、作戦タイムにどこよりも時間を費やした「ナス」チームの作戦勝ちだったようだ。

写真
3つ目のゲームは「ペンキ屋」
これは、「あいうえお」ゲームの応用である(第5回参照)。「あ」から順番に会話をつないでいく。「アルバイト何してるの」「イタリアレストラン」「うそ、どこで?」「恵比寿」「おしゃれだね」などなど。「ペンキ屋」はこれを応用し、「ペンキを塗る」という動作をしながら「あいうえお」で会話するというものである。写真
まず、4隅に椅子を置き、長方形の部屋を想定する。一つの壁に一人が位置し、片手にペンキ缶、片手にハケを持ってその壁をひたすら塗る。会話の内容は何でも良い。そのシチュエーションに合ったものでも良いし、全く関係のないことでも良い。また、会話を発する人の順番も決めず、思いついた人がつないでいく。ただし、同じ人が2回続けて発言してはならない。また、これにBGMがつく。1チーム目はエルガーの「威風堂々」。厳かに、しかしどこかけだるげに会話が進んだ。2チーム目は渡辺美里の「My Revolution」。曲が変わった途端にオーバーオールと路地裏が見えた(アシスタントの主観)。曲一つでシチュエーションが生まれ、また動作が加わることで会話に広がりができ、ちょっとした芝居のようになって、見ているほうも楽しめるゲームでした。

さて、ここまでは体と心をほぐすための余興である。5分間の休憩。BGMは山崎まさよし。
写真
最後のゲームは「就職ガイダンス」
そもそもの始まりは、リーダーが一冊の本に出会ったことにある。クラフト・エヴィング商会著「じつは、わたくしこういうものです」。これには16種類ほどの架空の職業が紹介されている。今回、参加者にはリーダーが16種のうちの一つを任意に割り当て、前もって本のコピーと、課題が郵送されていた。課題とは、「イメージすること」。具体的には、その職業について長所を10点、短所を10点考えること。これを用いて何をするかということは一切明かされていなかったので、様々な想像が飛び交っていたようだ。
写真
ゲームの開始と同時に、そこは800人の学生が待つ就職ガイダンスの会場となる。参加者はまず楽屋に通され、開始まで30分の猶予があることが伝えられる。そこで、一人でも多くの学生を獲得するために、最終的なアピールの準備を行うことになる。アピールタイムは5分。5分でより多くの学生の心を掴まなければならない。写真

30分後、司会(リーダー)の開会のことばの後、ガイダンスが始まった。地歴測量士、秒針音楽師、三色巻紙配達人、ひらめきランプ交換人、果実勘定士、時間管理人、月光密売人、バリトン・カフェ、選択士の順でパフォーマンスがすすんでいく(どんな職業かはご想像にお任せします)。「ひらめきランプ交換人」が国家公務員だったり、果実勘定士の事務所が新宿御苑の裏にあったり、皆かなり具体的に想像してきており、どれも魅力的な職業に仕上がっていた。5分のアピールが終わると、客席より質問を受け付ける。どれも興味のそそられる職業のようで、手が上がること上がること…。鋭い質問に、更にイメージが広がる。
さて、最後に人気投票を行った。自分はどの職業につきたいか、3つまで選んで手を挙げる。一番人気は「選択士」であった。2番人気は「果実勘定士」と「時間管理人」が同列だった。

全てのゲームを終了し、アフタートークで今回の感想を言い合った。思いのほか、「ペット・バトル」がおもしろかったという意見が多く、見ている以上にやるとおもしろいゲームなのだなと思った。最後にMVPとアシスタント特別賞が発表された。今回のMVPは、「ペット・バトル」でのファインプレーを買われ、タニグチさんに。アシスタント特別賞は「ペンキ屋」での特異なパフォーマンスと就職ガイダンスが光ったハセガワ(い)さんに贈られた。


写真
 ご参加ご協力くださったみなさん、ありがとうございました。お疲れさまでした。今回アシスタントのヤマハさんががんばってくれました。架空の職業、見本のために3つ分もガイダンスの準備をしましたもんね。はじめは「就職ガイダンスなんて、うまくやれるんかしゃん…」と意味もなく名古屋弁で思い悩んだ私でした。「おもしろそうだて。やってみよまいて」とヤマハさんは名古屋弁では言いませんでしたが、試しに考えてきてもらったガイダンスを見て、あまりにおもしろかったのでゴーサインを出せたのでした。その「地暦測量士」、魅力的な職業だと私は思うけどなぁ。人気投票では単独最下位(1票)だったんですよね。なんでかしゃん。
写真

 ペンキ屋の渡辺美里は偉大でした。あんなに劇的に空間が変わるなんて。半分冗談のつもりで用意した曲だったのに。私の目には「空き地の隅に倒れたバイク」が見えました。美里イリュージョンだ(?)。もし場所が稽古場ではなく舞台で、あれにきちんと灯りが当たっていたら、みなさん相当にカッコよかったはずですよ。や、もしかしたらセリフがあいうえお順に並んでいたことに気づかない観客だっているかもしれないし。さらなる発展も期待される、これはたのしみなゲームです。

写真
 あたまもからだもフル活用しましたね。してないかな? リーダーとしてもいいワークショップになったなぁとちいさな達成感すら覚えました。つぎも、そのつぎも、そのまたつぎも、いいワークショップをやりたいですね。

<前一覧次>


トップページ > ワークショップ > 第9回