トップページ > ページシアター > よそびと診療所 > シーン10 【公演データ】
上手サス。白衣を着た里桜が立っている。
里桜 「あ〜こうなったらもう何でもいい!とりあえず好奇心の赴くままに行動する事に決めました。私はあの事故で出血多量で死にかけていた所をノノ先生の手術と特殊な血液の輸血のお陰で、ここまで回復したとか。その血液が自分の血液と完全に入れ替わるまでの約半年、この診療所で過ごす事になりました。まだ意識が戻らない親友のゆっこは心配ですが、大丈夫だというノノ先生の言葉を信じ、まずはロッサさんに連れられ、院内の見学です。」
全体明かり。院内の廊下。里桜、ロッサ、アトラ、モントが院内を見ている。何人かの患者が行き来している。
アトラ 「外見は小さな診療所なのに、中はべらぼうに広いね。」
モント 「光学トリックだよ。」
里桜 「ドラえもんの道具みたい…」
ロッサ 「元々この診療所は大型の医療宇宙船なの。」
里桜 「宇宙船?ホントにUFOじゃん…」
ロッサ 「ほとんど地下に埋まってて、頭の一部が地上に出てる感じ。」
里桜 「この人たちみんな異性人…?どうみても地球人だけど…」
ロッサ 「環境に合わせて地球人の姿になった者や、我々の様に元々地球人と変わらない姿の者もいる。」
異星人、荒川、炭原(たんばら)、作業服姿のTD(てぃーでぃー)の3人が近づく。
ロッサ 「あら、荒川さん、炭原さん、こんにちは。」
荒川・炭原 「こんにちは。」
里桜 「あれ?どこかで見た様な子ども……」
ロッサ 「子どもじゃないわよ。」
アトラ 「ローバー星人。」
モント 「見た目は子ども。」
荒川 「中身は異星人。」
里桜 「うわぁ〜もうあれじゃないか…」
ロッサ 「検査の方は?」
荒川 「これからです。」
ロッサ 「宜しくお願いします。」
荒川、炭原、TDがサムズアップ。
荒川 「失礼します。」
荒川、会釈して去る。みんなも会釈。
里桜 「お大事に。」
ロッサ 「患者さんじゃないわよ。」
里桜 「え?でも今、検査とかって…」
ロッサ 「この診療所、つまり宇宙船の検査。彼らは修理屋さんなの。」
里桜 「修理屋?てっきり探偵かと…」
ロッサ 「ちなみにあの作業服来たやつは作業用アンドロイド。」
里桜 「あ、アンドロイド?!あれが?!もうなんでもありだな…」
そこに見覚えのある女子高生ミオ、ハナ(眼鏡女子)、カンナ(車椅子)の3人が現れる。
里桜 「あれ?あの子たち。」
ロッサ 「お知り合い?」
里桜 「い、いえ、近所でよく見かける女子高生で…」
アトラ 「ガット星人ですね。」
里桜 「ガ、ガット星人?って、あの子たちほんとに異星人だったの?!」
ロッサ 「そう、女子高生は借りの姿で実はうちのスタッフ。3人とも薬作りのプロよ。」
里桜 「え〜っ?!医療関係者なんですか?!あ、でも一人車いすの子が…」
ロッサ 「ええ、足の病気でね。今入院中。」
カンナ 「やっぱり私…手術…怖い…」
ミオ 「心配ないよカンナ。きっと成功するよ。」
カンナ 「でも、もし失敗して、私が死んだら…」
メルが現れる。
メル 「死ぬわけないっしょ!ノノが手術するんだから!」
ミオ・ハナ・カンナ 「メル姐さん!」
里桜 「姐さん?」
ロッサ 「昔あの3人を我々が助けてあげて以来、慕われてるのよ。」
メル 「そんな手術なんて、ノノならお茶の子ゾウゾウ!」
ミオ・ハナ・カンナ 「サイサイ。」
メル 「それな。」
ハナ 「手術にはうちらも参加するし。全力で頑張るからさ。」
カンナ 「うん…わかった。私も頑張る。」
ミオ 「そうだ!差し入れ持って来たから部屋で食べよう!」
カンナ 「何々?」
ミオがチャオチュールを取り出す。
ミオ 「じゃーん。」
カンナ・ハナ 「チャオチュール!!」
里桜 「チャオチュール?!ってネコの…」
カンナ・ハナ 「食べよう!食べよう!」
里桜 「まじか…」
メル 「じゃあな、ブロッサム、バブルス、バターカップ。」
ミオ 「ミオです。」
カンナ 「カンナです。」
ハナ 「ハナです。」
3人メルに手を振りながらハケる。
メル 「頑張れよ〜。」
里桜 「今の名前の間違えは無理がないですか?」
ロッサ 「パワーパフガールズ。」
そこにスーツ、帽子、ステッキ姿の老紳士「ぬらり」が、帽子を被った青年を連れて現れる。
ぬらり 「皆さんごきげんよう。」
ロッサ 「あらぬらりさん。」
メル 「ぬらりの旦那〜!」
ぬらり 「メルさんお元気そうで。おや?人間のお嬢さんとは珍しい。」
里桜 「あ、初めまして。地球人の瀬名と申します。」
ぬらり 「ははは。私は異星人ではありませんよ。」
里桜 「え?地球人なんですか?」
ロッサ 「ちょっと違う。」
モント 「あ!わかった!この星の疑似生命体ですね!」
里桜 「疑似生命体?」
ぬらり 「こちらは?」
モント 「研修医のモントです。」
アトラ 「アトラです。」
ぬらり 「そうでしたか。…ん?」
モント 「え?何か?」
ぬらり 「…いえ、なにも。」
里桜 「あの、疑似生命体って言うのは…」
ロッサ 「ああ、所謂「妖怪」ね。」
里桜 「よ、よよよ、妖怪?!は?何?妖怪ってあの妖怪?!」
ロッサ 「関東の妖怪を統括されてるぬらりひょんさん。」
里桜 「ぬ、ぬらりひょん?!異星人だけでもお腹いっぱいなのに妖怪?!ああもう消化不良消化不良!」
メル 「胃薬やろうか?」
ぬらり 「今日は、河童たちの食中毒を治して下さったお礼に伺いました。」
里桜 「か、河童?」
かっ平 「先日は本当にありがとうございました。」
かっ平が帽子を取って頭をさげると、頭にお皿。
里桜 「うわ!皿?!皿?!」
メル 「元気になって良かったな!」
かっ平 「はい。」
里桜 「え、でも、治療できるんですか?妖怪を…」
メル 「できるよ。疑似生命体の治療は、地球の生態系とは別物だから御咎めなしだぜ。わかったきゃ?」
里桜 「わ、わかった様な…わからない様な…」
かっ平 「あのこれ、少ないですけどよろしかったら皆さんでお召し上がり下さい。」
かっ平、ロッサに小さな紙袋を渡す。
ロッサ 「あらあら、そんな、お気遣い頂かなくても。」
里桜 「もしかしてキュウリですか?」
かっ平 「いえ、シャトレーゼの「かりんとうまんじゅう」です。」
里桜 「なんだ…」
ぬらり 「今日は、ノノ先生は?」
メル 「これから外来だよ。」
ぬらり 「そうですか…実は少々気になる事があるのですが…また出直します。では失礼。。」
ぬらりとかっ平、頭を下げてハケる。里桜、混乱している。
ロッサ 「さ、そろそろ外来の時間ね。里桜さん大丈夫?」
里桜 「ちょ、ちょっと脳みそバグってますが…行きます。」
ロッサ 「じゃ、こちらに。」
メル 「まんじゅうくれ。」
ロッサ 「はいはい。」
ロッサ、メル、アトラ、モントがハケる。里桜、追いながら
里桜 「ああもう!宇宙人でも妖怪でも、どんと来いや!」
里桜がハケて暗転。
(作:松本じんや/写真:はらでぃ)