△ 「インヴィジブル・ファイア」シーン9


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暗闇で声が聞こえる。(角田、らくすけ、めい、せんた、めぐみ声のみ。)

角田 「ダメだ!火をつけちゃダメだ!」
めぐみ 「え?だれ?」
らくすけ 「火は絶対だめだ!」
めい 「そんなことしたらますます会えなくなっちゃうよ!」
めぐみ 「会えなくなる?」
せんた 「だめだ、もう僕らの声が届いていないんだ…」
めぐみ 「なに?…なんなの?」写真

明転すると麻耶の膝枕で寝ている。急に目が覚め起き上がる。

めぐみ 「うわああ!」
麻耶 「おお!気づいたか、大丈夫?」
めぐみ 「…え、ええ、なんか変な夢を…みなさんは?」
麻耶 「みんな無事よ。ちょっと感電したけどね。」
めぐみ 「え?私も?」
麻耶 「そう、めぐみちゃんも感電。」
めぐみ 「えぇっ、電気を操る能力者なのに感電しちゃったんですか私?」
麻耶 「多分、私たちを守るために瞬間的に電気を集めちゃったみたいよ。」
めぐみ 「え?私が?」
麻耶 「ありがと、助かった。」
めぐみ 「いえ、全然無意識なので…」

上底とエミリが入って来る。

上底 「おお、めぐちゃん目覚めたか。」
めぐみ 「はい。コンピュータの方は?」
瀬名 「こっちはけっこうやられました。」
めぐみ 「え?」
瀬名 「大丈夫、ハードは全部ダメになったけど、データはバックアップしてたので無事です。」
めぐみ 「良かった…」

御厨が入って来る。

上底 「御厨ちゃんどうだった?」
御厨 「いやあ、本庁内の半分近くのコンピューターがお釈迦らしい。」
上底 「うわあ…」
麻耶 「中々スパイシーね…」
瀬名 「警察のデータは?」
御厨 「まだ調査中。連絡待ち。」

里子が愛を連れて入って来る。

里子 「愛ちゃんが到着です。」写真
「皆さんお久しぶりです!」
上底 「お久しぶりぶり!」
「ぶりぶりです!」
御厨 「連絡取れないんで心配してたぞ。」
「すみません。色々あって…」
麻耶 「うちの新人。」
「あ、電気を操る…」
めぐみ 「はい。宜しくお願いします。」
麻耶 「緊張してる?」
めぐみ 「え、ええ、魔族の人も初めてなので、でも全然イメージ違いました。」
「角でも生えてると思いました?」
めぐみ 「いえいえそんな…」
里子 「心の優しい魔族もいるのよ。」
めぐみ 「デビルマン的な。」
「的な。」
里子 「そちらが今回の助っ人の瀬名エミリさん。」
瀬名 「初めまして。魔族のデータだけが不足しているので是非ご協力を。」
「ええ。あら?でも確か、お母様とうちの父は知り合いだったと思いますが?」
瀬名 「え?…初耳です。」
上底 「愛ちゃんは体ごと電子の世界に入れるんだよね?」
「魔族なら入れます。超能力者にもできる人が一人いるって聞きましたが。確かアメリカに。」
めぐみ 「え?!ほんとですか?!」
上底 「ああ、まあ、いるっちゃいるけど…」
御厨 「さて、この面子でこの先どうする?」
上底 「角っちの救出はできなかったけど、情報収集はかなりできたんじゃ?」
里子 「とにかく整理しましょう。」
瀬名 「ええ、まず消防隊から。」
里子 「あの三人はアバターではなく、強い妖気を持った妖怪でした。」
麻耶 「電子の中に住んでいる妖怪って事?」
里子 「ええ間違いなく。何者かはわかりませんでしたが、電気系の妖怪は結構いるのでその仲間かと。」

後ろにせんた、らくすけ、めいが出てくる。

上底 「名前は、リーダー的な男がせんた、細身の男がらくすけ、女がめい。」
めぐみ 「せんたが通信していた指揮官らしい存在が姫。」

『姫』と書いた人形が出て来る。角田も出て来る。

里子 「この4人は角田さんの知り合い。そして角田さんは自分の意志で彼らを手伝っている。」
上底 「操られている感じではなかったね。」
麻耶 「でもみんな姫の意志に従ってるようでした。」
瀬名 「姫の正体が知りたいですね。」

消防隊の3人と角田、ハケる。

瀬名 「愛さんの情報も聞かせて下さい。」
里子 「実は今回の件で、お父さんの石倉さんもお呼びしたんですが、海外旅行中で連絡が取れなくて…」写真
「で、私からも父に連絡しようとしてたんですが、全然つかまえられなくて…」
めぐみ 「愛さんのお父さんも優しい魔族って事ですよね?」
「ええ、浅草で妖怪や超能力者の学校の校長やってます。私もそこの教師です。」
上底 「ちなみに愛ちゃんのパパの本名はメフィストだよ。」
めぐみ 「メ、メフィスト?!めちゃめちゃ有名な魔族じゃないですか!!」
「ええ、まあ、」
めぐみ 「なんだか凄すぎて腰が抜けそう…。」
御厨 「結局連絡がつかなかったんだな?」
「ええ、ところがその後、スマホから父の匂いがして、父を探しにスマホから電子の世界、サイバースペースに入ったんです。」
めぐみ 「凄い…」
「匂いを辿って行ったところ、あの消防士たちに会い、角田さんも出て来て邪魔されました。」
御厨 「角田は石倉さんの居場所を知っているのか?」
「いえ、角田さんも消防士たちも知らないようでした。でも確かに匂いがしたんです。」
里子 「それって、まさかとは思うけど…」
めぐみ 「え?なんですか?」
「ええ…姫の正体は…私の父である可能性も…」
めぐみ 「え?!」
上底 「それがマジならとんでもない事だぞ。」
麻耶 「確かメフィストはこの世で最強の結界を作れる魔族ですよね。」
里子 「もし角田さんとタッグを組んだら、2人でもネットの世界を征服できちゃいます。」

後ろに石倉と角田も出て来てバロムクロス。石倉、角田、去る。

御厨 「ネットを征服するってことはつまり…」
上底 「実質世界を征服できちまうな…」
めぐみ 「そんな!角田さんも石倉さんもそんな悪い事しようとする人なんですか?!正義の妖怪と優しい魔族じゃないんですか?」
里子 「もし2人がネットの世界を快く思っていないとしたら?」
めぐみ 「え?」
麻耶 「ネットを利用した人間の悪事を無くす事は、2人にとって正義って事になる。」
めぐみ 「え…でも…愛さん…」
「もちろんこれは推測だし、そうでない事を祈るけど…」
瀬名 「視野には入れておいた方がいい推測ですね…」

御厨と上底の2人のスマホに、ほぼ同時着信音。

御厨 「おっと失礼。」写真
上底 「失礼。」

2人、舞台の面まで来て、それぞれ同時に話す。

御厨 「公安8課、御厨。」
上底 「上底で〜す。」
御厨 「はい…そうですか…はい…はい…」
上底 「ほいほい…そっか、そうだよね。」
御厨・上底 「え〜っ?!そんなことに?!」
御厨 「…わかりました。ありがとうございます。」
上底 「それなんとか…ならないっすよね…了解です…」

2人とも通話を切り溜息。

里子 「上からでしたか?」
御厨 「ああ。」
里子 「警察のデータは?」
御厨 「無事だったが、被害が大きかった事と、データ流失の危険があることから、今回の捜査は…」
麻耶 「まさか中止?」
御厨 「いや、その逆だ。」
麻耶 「え?」
御厨 「公安だけでなく、政府が本腰を上げる。ペンタゴンも動き出した。」
めぐみ 「ペンタゴンって…アメリカ国防総省ですか?!」
里子 「みんなネット征服にビビり始めたってことね。」
瀬名 「我々はどうすれば?」
御厨 「捜査は続行できるが、もうこの場所は使えん。」
麻耶 「パソコンほとんどやられましたからね。」
御厨 「そこで本部をダブの日本支部に移す事になった。」
めぐみ 「え?そうなんですか?」
御厨 「今の電話はその件だろ?上底。」
上底 「あ、ああ、そうなんだけど…」
麻耶 「どうしたの?急に顔色変わったみたいだけど。」
上底 「いや、実はダブのアメリカ本部から助っ人が来る事に…」
めぐみ 「アメリカから助っ人?!いいじゃないですか!」
上底 「いや、でも、ちょっとヤバイやつで…」
麻耶 「ヤバイやつ?」
上底 「ああ…どうしよう…」
御厨 「とにかくここは引き払ってダブの日本支部に引っ越しだ。」
瀬名 「それまでに私もシステムを作り直します。」
里子 「お願いします。」

みんなハケ出すとゆっくり暗転。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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