△ 「迷い子なカミサマ」シーン30


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熊耳 「あ〜、久しぶりにしんどかった〜…」
平泉 「熊さん、かっこよかったっす。」
熊耳 「あざっす。」
あきら 「あれ?でも、最後の銃声は誰の…」写真

ポールの後ろから銃を持った新島が出て来る。その後ろから川藤も。

川藤 「さすが新島副長。銃の腕は健在ですね。」
新島 「はい。」
ランゼ 「新島さんかっこい〜!」
ミルキー 「我々の元祖みたいな人だもの。」
あきら 「あ!潜水艦のクルー!」
幸恵 「潜水艦?」
あきら 「さっき、僕の心の海に入って調査してたのは彼らです。」
幸恵 「心の海?」
あきら 「えっとあの…後で説明します。」

川藤の後ろから新垣が出て来る。一升瓶を見て。

新垣 「ここにアモンを封印したんですね!」
ポール 「はい。」
新垣 「閻魔様お願いです!こいつらを地獄に送って下さい!」
閻魔 「いえ、地獄ではなく天国に送ります。」
新垣 「天国?なぜですか?!こいつらは…」
閻魔 「魔族は地獄では苦しみません。」
新任神様 「天国の幸せな光景が何よりの苦痛。」
川藤 「新垣、ここは神様にお任せしよう。」
新垣 「…はい。」
川藤 「今晩飲みに行こうか!」
新島 「いつもじゃないですか。」
川藤 「俺のおごりだよ。」
新島 「じゃ私も。」
ポール 「では是非うちの店で。」
新島 「予約お願いします。」
ポール 「はい。」

魔族に乗っ取られていた3人、目を覚ます。

石倉 「あれ?どうしたんだ?」
あきら 「師匠!納谷さん!」
平泉 「鈴木!」
熊耳 「良かった無事で…」

スーザンが目を覚ます。

スーザン 「あいたたた…」
ミルキー 「スー!」

ランゼ、スーザンに抱きつく。

ランゼ 「スーちゃ〜ん!」
スーザン 「おいおいどうした?」
ランゼ 「良かった〜元に戻って!」
スーザン 「元にって?…私何かになってたの?」
ランゼ 「うん。さっきまでラスボスだった。」
スーザン 「ラスボス?」
新任神様 「後は空間を修復して皆さんを元の世界に返すだけですが…」写真
閻魔 「その前に、あきらさんに会わせたい人がいます。」
あきら 「え?」

御船と朝倉に連れられ、帽子を深々とかぶった神道が出て来る。

あきら 「誰です?」
朝倉 「帽子を取りなよ。」

神道、帽子を取る。

あきら 「あ…」
幸恵 「道浩(みちはる)…?道浩じゃない!」
あきら 「父さん…」
平泉 「父さん?」
朝倉 「あきら君の死んだ父親だよ。」
神道 「二人とも…元気そうで…」
幸恵 「あんた!どれだけ人に迷惑かけたと思ってんの?!」
神道 「ごめん、姉ちゃん…」
幸恵 「謝るのはあきらにでしょ!」
神道 「…あ…あきら…ホントに申し訳なかった…」
幸恵 「あきら、ぶんなぐるんでしょ、やっちゃいな。」
神道 「そうしてくれ…殴られて当然だ…」
あきら 「説明して欲しい…」
神道 「え?」
あきら 「説明を聞いて、納得できなかったら…殴る。」
神道 「…わかった。今のお前なら信じてくれるかもしれないが…実はお前のかあさんは…異世界から迷い込んだ人間だったんだ…。」
あきら 「え?!」
幸恵 「トワさんが、異世界の人だった?」
神道 「突然僕の目の前に現れた。彼女を元の世界に返そうと奔走したがだめだった。結局そのまま一緒に暮らすようになって…あきらも生まれて幸せな時間を過ごしていた。しかしある日突然、トワは、目の前の空間に吸い込まれるように消えてしまった。」
新任神様 「恐らく、元の世界に帰れたのでしょう。」
神道 「私はどうしても彼女を取り戻したかった。仕事を辞め、その手の研究家と名乗る人間や、自分が異世界から来たという人間に会うために世界中を旅した。ほとんどがインチキな情報だったが、数年に一度、わずかな瞬間にだけ異世界への穴が開く場所があるという情報を聞き行ってみた。そこが…」
幸恵 「ハワイ島のキラウエア火山?」
神道 「ああ。そこで2年ほど待ったある日、本当に空間の穴が現れたんです。ところがちょうどその日に火山が噴火してしまい…」
新任神様 「命を落とされた。」
神道 「結局トワにも会えず、あきらも一人ぼっちにしたまま、私は死んでしまった…あきら…すまん!本当に申し訳ない!許してくれ…」
あきら 「…」
神道 「…そうだよな。こんな酷い父親…許して貰えるわけないよな…さ、おもいきり殴ってくれ…」
幸恵 「あきらはもう許してるよ。」
神道 「え?」
幸恵 「っていうか、元々あんたを憎んでなんかいなかった。むしろ、今ここで会えた事を喜んでる。」
あきら 「ぼくは別に…」
幸恵 「ごめん。あんたの気持ち、読めちゃうんだ、今。」
神道 「あきら…」
あきら 「なんでだよ。」
神道 「え?」
あきら 「なんでそこまで家族を想ってるのに。財布に写真も入れてなかったんだ。」
神道 「それは…」
幸恵 「入れてたんだね。」
あきら 「え?」写真
幸恵 「財布じゃなく、そこに。」

幸恵、神道の胸ポケットを指さす。神道うなずき、胸ポケットからあきらとトワの写った写真を出す。

幸恵 「肌身はなさず、死ぬ時まで…」
神道 「ああ…」
幸恵 「あきら、お父さんと少し話を…」
あきら 「今は何も話す事はない。」
幸恵 「あきら…」
あきら 「父さんがみんなに迷惑かけたことは間違いない。だからここでゆっくりその罪を償ってくれ。僕が死んでここに来るまで。」
神道 「え…?」
あきら 「その時じっくり、話をしよう。」

神道、微笑み

神道 「…わかった。ゆっくり待とう。」

あきら、頷く。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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