△ 「スパイシー・エージェンツ」シーン3


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暗闇の中、声が聞こえる。

「おはよう麻美君。今日の指令だが、朝起きて歯を磨き朝食をとり着替えて仕事へ出かけてくれ。例によって君、もしくは君のメンバーが寝坊をし、あるいはクビにされても、この時計は一切関知しないからそのつもりで。尚、この目覚ましのスヌーズは5回目なので自動的にリセットされる。」
ミー(声) 「う〜ん…5回目…5回目……スヌーズ5回目?!!やばい!寝坊した!!」

明転するとスパイ映画のテーマ曲が流れ、中央からミーが飛び出して来る。ウィダーインゼリーをくわえ、スーツの上着に片袖だけ通し、片方の靴がちゃんと履けていない状態で一度上手にハケる。
照明が変わり大通り。上手からミーが走り出て来る。手を挙げてタクシーを止めようとする。

ミー 「止まって!止まって下さい!だめだ人乗ってる!電車電車!(スマホを出し)駅すぱあと駅すぱあと!よし!ギリ行けそう!」

下手に走り去る。同時に中央から納谷由紀夫が手帳に何か書きながら出て来て、タクシーに気づく。

納谷 「タ、タクシー!タクシー!」写真

が、目の前をタクシーが通り過ぎる。タクシーに手をかざし

納谷 「あぁ…行っちゃった…」

ブレーキ音。タクシー、少し先で止まる。

納谷 「あ、とまった…の、乗ります!」

納谷、下手に走り去る。照明、上手半分になり通勤電車内。客が何人か乗って来る中、
金沢瀬里が人ごみに押されて入って来る。

金沢 「うわああ、あ、すいません。あ、ごめんなさい。」

なんとかつり革につかまるが、ぎゅうぎゅう詰め。

金沢 「ううう、つぶされる…」

照明、下手半分になり駅前の路地。下手から息を切らし横っ腹を押さえたミーがよろよろ出て来る。

ミー 「(ゼエゼエ言いながら)うう…こんな時に…横っ腹が…」

中央からバイクのヘルメットを持った松木夕陽が出て来る。

松木 「お?彼女、大丈夫?」
ミー 「あ、はい、大丈夫です。」
松木 「お腹痛いの?」
ミー 「大丈夫です。」
松木 「あれぇ?!」
ミー 「は?」
松木 「君、カワウィーね!!」
ミー 「ありがとう、さようなら。」
松木 「急いでる?」
ミー 「急いでます、さようなら。」

電車の発車ベルが鳴る。

ミー 「あ、うそ、電車出ちゃう!」
松木 「良かったら今から僕のバイクで…」
ミー 「しつこい!!」

ミー、松木に回し蹴りをくらわす。

松木 「ぶほっ!!」

松木、倒れる。ミー、横っ腹を押さえる。

ミー 「いったたた…朝っぱらからナンパとか勘弁してよもう…」

電車が走り出す音。

ミー 「あ〜乗り遅れた〜初日なのに終わった〜…(ハッとして)いや終わってない。斯くなる上は!先生、ごめんなさい!(両手を上げ)はあっ!!」

ヒュウという風の音。照明上手半分に変わる。電車内。ミーは金沢の足元に移動し立ち上がる。

ミー・金沢 「うわあ!!」
ミー 「やった成功!これで間に合う〜!…あいたたた…」
金沢 「(唖然として)…え?あの、え?あ、あなた今…」
ミー 「しーっ…」
金沢 「しーっ…」
ミー 「お願い小田急線。今日だけは遅延しませんように…」

金沢、ミーをチラ見して。

金沢 「…まさか…この子…」写真

照明、下手だけに変わり、電車内の人々が上手にハケる。路上に倒れていた松木が起き上がる。

松木 「いててて…彼女〜、中々素敵な蹴り持ってるじゃ〜ん…って、消えたね。忽然とね。ん?まさか彼女…(下手に目をやり歩き出す)あ、そこの彼女、そのバイクカッコいいでしょ?俺のなんだ。良かったら乗ってかない?」

と、言いながら下手にハケる。暗転。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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