△ 「心海のサブマリナー」シーン6


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上。腰掛けて落ち込んでいる倉内。左手には包帯。看護士の瀬名心海(せなここみ)が入って来る。

瀬名 「倉内君。」写真
倉内 「あ、ここみ先輩。」
瀬名 「銃で撃たれたって聞いてびっくりしたよ。」
倉内 「かすり傷です。」
瀬名 「あーあー、包帯いじったでしょ。」

瀬名、倉内の手を取って、ずれた包帯を直す。竹内が入って来て二人に気付き、様子見ている。

瀬名 「はいOK。」
倉内 「すみません。」
瀬名 「危険な仕事だと思うけど、ここの常連にだけはならないでね。」
倉内 「はい。」
瀬名 「お大事に。」

瀬名、ハケる。倉内、瀬名の去った方をずっと見ている。

竹内 「かわいい子じゃん。」

倉内、めちゃ動揺。

倉内 「竹内さん。」
竹内 「まさかナース狙いでわざと怪我したとか?」
倉内 「違いますよ!高校時代の部活の先輩なんです。でもなんか、今日は元気ないような…」
竹内 「へぇ。部活って何やってたの?」
倉内 「演劇部です。」
竹内 「演劇?あんたが?うそだぁ。あんたみたいに動揺がすぐ顔に出る奴が演劇って…」
倉内 「わかってますよ、向いてなかったから辞めました。」
竹内 「なるほど。で、警察官は向いてるんだ。」
倉内 「…竹内さん、キツいです…」
竹内 「ほら、すぐ顔に出る。」
倉内 「だから彼氏が出来ないんですよ。」
竹内 「うるさい!」

竹内、倉内の頭をはたく。

倉内 「痛っ!すぐ手が出る。」
竹内 「大丈夫、今年のクリスマスまでには彼氏できるから。」
倉内 「なんですかそれ?」
竹内 「占い師に言われた。」
倉内 「占い?」
竹内 「バカにすんの?」

殴るポーズ。

倉内 「やめて下さいよ。一応ケガ人なんですから。それより…川口さんは?」
竹内 「弾は貫通してたんで思ってたよりは…」
倉内 「そうですか…。撃たれた青年は?」

竹内、クビを横に振る。倉内、ため息。

竹内 「もろ心臓に命中してたからね。でもその弾、自分で撃った弾だったって。」
倉内 「え?」
竹内 「撃った弾が鉄骨に跳弾して、自分の胸に。運の悪い奴よね。」

川口が出て来る。川口は肩にギブスをつけている。

倉内 「川口さん!」
川口 「おお、倉内、大丈夫か?」
倉内 「僕は全然…。本当にすみませんでした。」
川口 「謝るのはこっちの方だ。あじとの前で物音なんかたてちまって…全ておれのせいだ。すまなかった。」

本庁の刑事、浜崎真矢登場

浜崎 「やってくれたわね、川口くん。」写真
竹内 「浜崎警視。」
浜崎 「あんたみたいに賢い刑事がとんでもないドジ踏んでくれたもんね。普通なら懲戒免職よ。」
川口 「ええ。死者を出してしまった事は事実ですから。」
浜崎 「それがただ担当外されただけですって?あんた上にどんなコネもってんのよ?」
川口 「聴取はこれからですんで…」
浜崎 「頼むから、うちらに所轄の尻拭いなんかさせないでくれる?」
川口 「…申し訳ない…」

浜崎、出て行く。

倉内 「あの人が浜崎警視。」
川口 「今回の事件の本庁担当。で、おれと同期の出世頭。」
倉内 「そうなんですか?」
竹内 「いくら本庁さんでもあの態度は…」
川口 「仕方ない。あいつの顔にも泥塗っちまったからな。それより、小澤は銃を持ってまだ逃走中だ。後は頼む。」
倉内 「え?」
竹内 「川口さんだけ担当外されたの。」
倉内 「まさか僕らをかばって…」
川口 「代わりに二人に頼みがある。」
竹内 「なんです?」
川口 「これはおれがずっと追っていた件だ。できれば上に気付かれない様に捜査の状況を逐一知らせてほしい。」
竹内 「わかりました。任せて下さい。」
川口 「すまんな。さて、聴取か。される側は初めてだ。行って来る。」
竹内 「はい。」

川口、去る。竹内、倉内うなずき、ハケる。

(作:松本じんや/写真:はらでぃ)

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