△ 「あげぞこ先生」シーン14


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字幕「居酒屋『非常識』」
店の前に浜崎が現れる。

浜崎 「あ〜っもう!ホント頭来る。飲まずにいられるかっつの。お?居酒屋『非常識』?ちょうどいいじゃん。」

浜崎、店に入る。

浜崎 「すみませ〜ん。」写真
高見沢 「は〜い!」

奥から高見沢が出て来る。

高見沢 「いらっしゃい。お一人?」
浜崎 「はい。大丈夫ですか?」
高見沢 「どうぞどうぞ。この後団体さんが来ますけどいいかしら?」
浜崎 「も、ぜんぜんいいです。あ、おトイレいいですか?」
高見沢 「どうぞどうぞ、そっちの奥です。」
浜崎 「お借りしま〜す。」

浜崎、トイレにハケる。そのあと畑を先頭に上底、福来兄弟、内田が店に到着。

「こんばんは〜。」
高見沢 「いらっしゃい!」
「ちょっと早かった?」
高見沢 「大丈夫大丈夫。どぞどぞ。」

みんな挨拶しながらゾロゾロ入って来る。

「こちら、今日から赴任した上底さん。」
上底 「上底です!宜しくお願いします!」
高見沢 「今入院中の高見沢龍之介の母です〜。」
上底 「え?そうなんですか?」
高見沢 「稲子と申します。親子共々宜しくお願い致します〜。」
上底 「稲ちゃんっすね。こちらこそ宜しくっす。」

浜崎、トイレから出て手を洗っている。

高見沢 「校長先生達は?」
「今日もつれなかった。」
高見沢 「たまには教え子の顔、見に来てほしいのに。」
上底 「教え子なんすか?」
高見沢 「ええ、中学の時、御船先生にいじめから救って頂いたんです。」
上底 「ほお、副校長もやるなぁ。」
高見沢 「え?」
「そ〜言えばどお?龍之介君は?」
高見沢 「御陰様で明日退院です。」
「あぁそれは良かった〜。あ、でもあれよね、退院したら警察の事情聴取よね。」

浜崎、ドアを開けて出ようとするが、また閉めて耳をすます。

福来 「今度の刑事はまたとんでもなくいけ好かない奴ですよ。」
高見沢 「あら、そうなの?浜崎にサス。
浜崎 「まずい。これはまずいよ!この店、敵の巣だったよ…。ああもうどうしよう!ドアの向こうヴェロキラプトルうじゃうじゃじゃん!何このシチュエーション?ホラー映画?貞子?シャイニング?あああ…落ち着け紗綾。きっと脱出の方法はあるはず。取りあえずここに居れば安全よ。」

瀬名が入って来る。

瀬名 「こんばんは。」
上底 「おお!ユリっぺキターーッ!。」
浜崎 「おうわっ!さっきまで聴取してた瀬名ユリじゃんか〜っ!これは来る!きっと来る!」
瀬名 「おトイレ借りまーす。」
高見沢 「どうぞぉ。」
浜崎 「ほら来たあ!なんでいきなりピンチかなぁっ?!」

瀬名、ドアを開けようとするが開かず

瀬名 「あれ?誰か入ってる?」
高見沢 「あ、そうだ、先に来てたお客さんだ。」
「え?先客いたんだ。」
高見沢 「うちのトイレ使って。」
瀬名 「あ、いいですいいです。化粧直そうとしただけだから。」
浜崎 「あぁ…助かった…。でもこれからどうしよう…」
上底 「でもさ、超能力者の学校って言ったらさ、あのなんだっけ?魔法の学校の。」
福来 「ハリーポッター?」

浜崎、耳をそばだてる。

上底 「そうそう、あれみたいに超能力者を育てる学校がいいよな。なんつったけ?あの学校…グリフィンドール?」
浜崎 「なにっ?」
福来 「まあ、逆ですよね。我々は子ども達に、いかに超能力を使わずに生活するかを教えてるわけですっからね。」
上底 「やっぱ使い方教える方がかっこいいよなぁ。ほら、あれなんつったけ?あの青いのとか出て来るやつ。」
福来 「青いの?」
直也 「アバター?」
上底 「違う違う。え〜っと…あれだよ…」
浜崎 「落ち着け紗綾。気持ちはわかるが我慢だぞ。こんな事で飛び出したら元も子もないぞ。」
上底 「あ、思い出したよ!あれだよXマン!あれにもエスパーの学校出て来るじゃん!」
浜崎 「ううっ!我慢しろ!我慢しろ!紗綾!」
上底 「あいつかっこ良かったよな!ほら、なんかこんな爪みたいの出て来る奴。なんつったけ?」
浜崎 「耐えろ!耐えるんだ!紗綾?」
上底 「あのほら、ヴァイオリンみたいな名前の。えっと、ヴァ…ヴァ…」
浜崎 「うう〜っ!耐えろ〜っ!」写真
上底 「ヴァファリンだ!」

浜崎、耐えきれず飛び出す!

浜崎 「うわあああああ!ウルヴァリンだああああ!ヴァファリンは頭痛薬だろがあ!それにグリフィンドールは寮の名前だ!学校の名前はホグワーツだろうが!元よりハリーポッターは魔法使いだ!超能力者じゃねえぞ!それに何だ?てめXマンって言ったな?Xメンだろうが!複数形だろうがあ!しかもエスパーじゃねえ!ミュータントだ馬鹿野郎!舐めんなコラあああ!!」

浜崎、ぜえぜえ言っている。みんな唖然として見ている。服部が入って来る。

服部 「遅くなりました。…え?」

服部、良くわからない空気に立ち止まる。浜崎、上を向いて目をつぶり

浜崎 「いいんだ…スッキリしたから…。殺せ…」

一度暗転、しばらくして明転するとみんないい感じにできあがっている。瀬名と浜崎が大笑いしている。

瀬名 「ハハハハ!何だあ、紗綾ちゃん、話してみたら中々いいやつじゃん!」
浜崎 「ユリ姐も中々いい人っすね!」
瀬名 「あの御厨とは雲泥の差だわ。」
浜崎 「あいつと一緒にしないで下さい!」
瀬名 「だよね、だよね。」

畑は机に突っ伏して寝ている。上底、福来兄弟、内田は服部の話を愛想笑いで聞いている。

服部 「本当なんだって。本当に末期癌がスッと治っちまったんだって。霧原晶って子だ。本当に凄い子だった。教師を続けられたのもあの子のお陰なんだ。」
浜崎 「でも姐さんの能力、すごいっすね。鼓膜じゃなくって体で聞くとか、こうやって話してるのもあれでしょ?テレパシーって事でしょ?」
瀬名 「そうよ〜。」
浜崎 「すげっす。マジすげっす。」
瀬名 「まだあるよぉ。すげーの。」
浜崎 「え?なんすかなんすか?」
瀬名 「稲子さん、あれやってもいいすか?」
高見沢 「お、出た!どうぞどうぞ。」
瀬名 「本当は稲子さんに失礼なのよこれ。折角美味しいもん作ってくれた人には失礼なんだけど、さて、これ何だ?」
浜崎 「キュウリのお漬け物。」
瀬名 「これを紗綾ちゃんの好きな物に変えます。」
浜崎 「え?え?なにそれ。」
瀬名 「紗綾ちゃんヤングコーン好きって言ってたよね?」
浜崎 「うん!大好き大好き!」

瀬名、浜崎の肩をポンとたたく。

瀬名 「はい変わった。」
浜崎 「え?変わってないよ?」
瀬名 「食べてみ。食べてみ。」
浜崎 「え?」

浜崎、食べる。

浜崎 「ん!何これ?!ヤングコーンだ!」
瀬名 「私、味覚操作ができるの。」
浜崎 「味覚操作って?え?味を変えられるの?!すご〜い!」
瀬名 「ちなみにね、私もヤングコーン大好きなの。」
浜崎 「ほんとですか?なんか合いますね!」
服部 「どんなけんかも一言「やめて」って言うだけで止めちまうすごい女の子がいてさ、その子の口癖が「何か私にできる事ないですか?」でさ、看護士になりたいって言ってたけどどうしてるかなぁ。すごいと言えば、高校で担任やってたクラスに野球部の女子マネージャーがいてな。そいつの奇抜なアイディアで野球部がなんと甲子園に行ったんだよ。」
上底 「それ、どこかで聞いた事あるな。」
服部 「僕も奇抜な横断幕作って甲子園に応援に行ったっけなぁ。奇抜と言えば、いっつも妙な事ばっかりやってる奴がいてさ。「漫才師になったら?」って勧めたら本当にその道に進んじゃっってね…」
瀬名 「一ついたずらしちゃったんだ。」
浜崎 「え?御厨さんにですか?なになに?」
瀬名 「あの人の大好物ってカレーでしょ?」
浜崎 「そうです!よく知ってますね?」
瀬名 「でね、今朝その味覚を変えといたんだ。」
浜崎 「え?何に?」

瀬名、浜崎に耳打ち。

浜崎 「…ええっ?!ウンコぉ?!」
瀬名 「コラコラ!大きい声で言うなって!」
浜崎 「カレーがウン…あ!さっき御厨さん、この島にもCoCo壱があったって喜んでたけど、それじゃ今頃…」
瀬名 「地獄を見ているかもね。」写真

瀬名、浜崎不適に笑う。畑、急に起きて

「さて、宴もたけなわではありますが、明日も早いですし、今日はここでお開き!」
みんな 「お疲れさまでしたあ!」

みんなフラフラとハケて行く。

高見沢 「ありがとうございました。お気を付けて。またどうぞ。」
上底 「服部ちゃんわりーけど泊めてくんない?」
服部 「いきなり初日から?」
上底 「部屋まだなんもないからさ。」
服部 「しょうがないなぁ…」

全員ハケて照明が変わる。

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

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