「ヴァンパイア・ブリード」シーン3 「ヴァンパイア・ブリード」シーン3トップページ > ページシアター > ヴァンパイア・ブリード > シーン3 【公演データ】
暗闇の中、プロローグのひまわりとたんぽぽの会話が重なるように聞こえる。
最後は洪水の様に声が押し寄せ、爆発音とともにひまわりの絶叫。
ひまわり 「うわあああっ！！！」
急に辺りが明るくなる。ひまわりはベッドに半身を起こして息を切らし、辺りを見回す。
ひまわり 「ここは…どこだ？…いったい私は…」
瀬名典子登場。マグカップ片手にひまわりの姿を見て驚いている。
典子 「こりゃまいった。」
ひまわり、声に気付き、すかさずファイティングポーズ。典子も反射的にファイティングポーズ。
しかし、ひまわりは体に激痛が走り、ポーズを崩す。
ひまわり 「ううっ…！」
典子 「おいおい無茶だって。」
ひまわり 「誰だ？」
典子 「医者だ。」
ひまわり 「医者？…お前もヴァンパイアか？」
典子 「バカ言いな！！こちとら生粋の人間様よ！」
ひまわり 「人間だと？！！」
ひまわり、慌てて立ち上がり、典子に殴り掛かろうとするが体が言う事をきかず、へたり込む。
ひまわり 「ううっ…！」
典子、倒れ込むひまわりの腕を反射的につかむが、ひまわり、振りほどく。
ひまわり 「触るな！！」
典子 「こりゃまいった。ホントに１日でちゃんとくっついてるよ。」
ひまわり 「何？」
典子 「あんたの腕、昨日までは皮一枚でやっとくっついてた。」
ひまわり 「…私に何かしたのか？」
典子 「何にもしてない。つか何もできない。点滴射とうとしたって肌に針さえ通りゃしない。いったいどうなってんだ、あんたらの体は？」
ひまわり 「ここはどこだ？」
典子 「うちの診療所。」
ひまわり 「どうしてこんな所に…」
典子 「こんな所で悪かったね！…運びこまれたんだよ、昨日の夜。」
ひまわり 「運び込まれた？！…誰に？！」
奥から声
太陽 「先生！瀬名先生！どうですか彼女？！」
典子 「おいでなすった。」
姿を現したのは、宇宙服の男。
ひまわり 「うわあ！！」
ひまわり、剣を出す。
典子 「ちょっとあんたそんなもんどこから…。」
ひまわり 「うわあ！！」
ひまわり、剣をふりかざすと、宇宙服の男、マスクを外す。ひまわり、手を止める。
太陽 「良かった…やっぱり僕の思った通りだ…」
ひまわり 「…何だ貴様…宇宙人か？」
太陽 「え？ははは、これ宇宙服じゃないよ。僕は人間。名前は太陽。客間太陽。」
ひまわり 「…太陽？…」
太陽 「君…ヴァンパイアなんだろ？本物の。」
太陽、ひまわりの剣も気にせず、少しずつ近づいて行く。
ひまわり 「だったら何だ。」
太陽 「…感激だ…やっぱり本当にいたんだ…」
ひまわり 「感激？」
太陽、右手を差し出す。
太陽 「友達になって下さい！」
ひまわり 「？！！」
太陽 「僕、あなたみたいな人、ずっと探してたんです！」
ひまわり、うろたえ、次第に息が荒くなり、
ひまわり 「友達だ？…人間の分際で何をほざく…人間の…人間の分際でっ！！」
ひまわり、爆発する様に剣を振り回し、太陽の右手をかする。
太陽 「うっ！」
典子 「太陽！」
太陽 「大丈夫、かすっただけです。」
典子 「あんた病院で人殺す気？」
ひまわり 「黙れ！」
典子 「太陽、あれ買ってきた？」
太陽 「はい、でもあれは…」
典子、太陽の持って来た買い物袋をあさり、ひまわりが次の攻撃を仕掛けようとした瞬間、袋からニンニクを出し、ひまわりに向ける。
ひまわり 「うっ…」
ひまわり、へたり込む。
典子 「ほぉ。ホントに効くんだ。ニンニク。」
典子と太陽、気を失ったひまわりを再びベッドに寝かす。
太陽 「なんか悪い事しちゃったなぁ。」
典子 「殺されかけたのにのんきねぇ。」
太陽 「いや、ホントにかすり傷ですから。」
典子、太陽の傷を見る。
典子 「ほんとだ。」
典子、ポケットから絆創膏を出して太陽に渡す。
典子 「ほい。それにしても太陽。あんたとんでもない野良猫拾って来ちゃったみたいだね。」
太陽 「野良猫か。…何て言うんだろ？」
典子 「ん？」
太陽 「名前、何て言うんだろ？この子。」
典子 「起きたら聞いてみな。」
太陽 「そうだね。…いけね、薬飲む時間だ。」
太陽、ポケットをさがす。
太陽 「あ！しまった！」
典子 「何？」
太陽 「薬、家に忘れて来た。」
典子 「バカだねぇ。拾って来た野良猫の心配する前に、まず自分の体の心配だろ？」
太陽 「すぐ取って来ます！」
太陽，ハケる。典子、ニンニクを拾い、ひまわりを見つめ
典子 「ヴァンパイア…か。人生まだまだ面白い事が残ってんなぁ。」
暗転。
（作：松本仁也／写真：はらでぃ）
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