△ 「トワの宇宙」シーン1


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字幕 地球軍宇宙巡洋艦 スター・フライト・ワン
手前に衛生兵のデビット・リー一等軍曹。高台には彼を地球で待つ妻のデイジー。
彼女の打つメールをデビットが読んでいる。

リー 「『ダーリンが戻って来るまで後一週間。待ち遠しくて待ち遠しくてたまりません。早くあなたの声が聞きたぁい。ハート。』くううっ〜」写真

今度はデビットが打ちながら読む。

リー 「『もうすぐ、もうすぐ。僕も君の声が早く聞きたいよ。後少し我慢我慢。アイ・ラブ・ユー・ハニー。ハート。』送信っと。あぁ…デイジー…。」

その横のベッドに横たわるトワが呻き出す。

トワ 「うぅ…」
リー 「あぁ…」
トワ 「うううっ」
リー 「あぁ…あっ?!(通信)隊長、彼女がお目覚めです。」
レパード 「(通信・声のみ)すぐ行きます。」
トワ 「おはよう…ございます…」
リー 「お!しゃべった!…おはよう。どこか具合の悪いところは?」
トワ 「…ボ〜っとしてます。」
リー 「そうだろうね。」
トワ 「病気は…ジニアスは…?」
リー 「大丈夫ですよ。今は注射一本で進行を止められるんです。もう接種したから心配ありません。私はデビット・リー。この部隊の衛生兵、お医者さんです。」
トワ 「お医者さん…」
リー 「じゃ、ちょっと質問していいかな?無理して答えなくてもいいからね。」
トワ 「はい。」
リー 「お名前は?」
トワ 「瀬名トワ。」
リー 「生年月日は?」
トワ 「2005年7月11日。」
リー 「カプセルのデータ通りだ。」

サユリ・レパード少将、部屋に入って来る。

レパード 「お待たせ。どう?」
リー 「ものすごく意識がはっきりしています。データの確認もクリアです。」
レパード 「良かった。」
リー 「それよりコード認証は?」
レパード 「それがまだなのよ。」写真
リー 「三日も待たせるなんて珍しいですね。もしかして遂に『救世主』発見ですかね?」
レパード 「まさか。多分例の降下殲滅作戦の直前でバタバタしてるせいでしょ。(トワの傍らに来て)こんにちは。」
トワ 「こんにちは。」
レパード 「瀬名トワさんで間違いないかしら?」
トワ 「はい…(レパードの顔を見て驚き)堤先生!」
レパード 「ツツミ?」
トワ 「良かったぁ…あれからまだ何年も経ってないんですね…。」

レパードとリー、目を合わせる。

レパード 「トワさん。ごめんなさい。私はツツミという人ではないの。」
トワ 「え?でも…」
レパード 「きっとそっくりなんでしょうね。私はサユリ・レパード。この部隊の隊長よ。」
トワ 「隊長…」
レパード 「目覚めたばかりで気持ちも体調も整っていないでしょうが、落ち着いて聞いてほしいの。今はね、西暦2222年。あなたは200年間眠っていたのよ。」
トワ 「西暦2222年…200年間…」
レパード 「そう、200年間。」
トワ 「200年…」
レパード 「200年。」
トワ 「200年…200年…」

暫し沈黙。

トワ 「200ねんっ?!!!」

トワ、暴れ出す。

レパード 「注射お願い!」
リー 「はい!」

リー、トワに注射を射つ。トワ、瞬時に落ち着く。

リー 「大丈夫ですかね?」
レパード 「心配ないわ。逆に安心した。」
リー 「え?」
レパード 「この状況をまともに受け入れられないってことは、正常ってことよ。」
トワ 「…ここは…どこ…?」
レパード 「う〜ん…簡単に言えば宇宙ね。ここは宇宙船の船内。」
トワ 「宇宙船…」
レパード 「場所は土星と木星の間。」
トワ 「土星と木星…」
レパード 「一ヶ月前に土星のタイタンっていう衛星であなたのカプセルをみつけたの。」
トワ 「タイタン…」
レパード 「これからあなたを火星のメディカルセンターに連れて行く途中よ。」
トワ 「みんなは…?」
レパード 「ん?」
トワ 「みんなはどこ?」
レパード 「みんなって?」
トワ 「愛ちゃん、ケイちゃん、ミーちゃん…」
レパード 「トワさん。あなたと同じ患者さんのカプセルはね、今宇宙のあちこちに散在しているの。まだ発見されてない物も沢山あるけど、もう何年も前に見つかった物もある。発見されても既に亡くなっている方も…。整理するのには時間が必要。薬が効いてくるわ。もう少し眠ってなさい。」

トワ、眠りにつく。レパード退室。

(作:松本仁也/写真:はらでぃ)

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