インプラント

外科的問題点

 手術中(特にフィクスチャー埋入手術)は感染や外科的な外傷を加えないよう、十分注意する必要があります。以下に手術中および手術後に考えられる問題点・偶発症を挙げます。

 

手術中に起こりうる偶発症

 上下顎ともに歯槽骨損傷骨折火傷が考えられます。器具の操作が乱暴であったり、注水やドリルの回転数が適切であるか、常に注意する必要があります。

 上顎では上顎洞(=じょうがくどう)や鼻腔底(=びくうてい)への穿孔に注意する必要があります。粘膜を穿孔すると、術後に鼻出血が起こります。また、そのまま手術を続けてしまうと、上顎洞や鼻腔へインプラントを迷入させてしまいます。

 下顎では下歯槽管(=かしそうかん)への穿孔に十分注意する必要があります。下歯槽動脈からの出血や知覚麻痺を起こします。
 小臼歯部頬側ではオトガイ神経の損傷や切断による知覚麻痺に注意する必要があります。
 大臼歯部舌側ではオトガイ下動脈やオトガイ下静脈のループの損傷や切断による大量出血に注意する必要があります。頬舌側で注意する部分は、あらかじめ剥離を十分に行うことが大切です。


 

手術後に起こりうる偶発症

 歯槽骨の感染が起こった場合、オッセオインテグレーションは得られません。インプラントを除去しなければなりません。可能であれば、治癒後にもう一度インプラントを埋入します。
 粘膜で感染が起こった場合、創面が開いたり、瘻孔(=ろうこう ; 歯肉にできる膿の逃げ道のあな)ができたりします。感染を除去し、創面は再縫合します。増殖性のインプラント周囲粘膜炎がみられた場合は除去します。
 上顎洞が感染した場合、急性上顎洞炎(=きゅうせいじょうがくどうえん ; 急性の蓄膿症)となることがあります。インプラントを除去し、治療を行う必要があります。
 神経が損傷した場合、知覚麻痺となります。軽度であれば、知覚が回復する場合もあります。

 

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最終更新2013.1.10