インプラント

解剖学的注意点

 インプラントは骨があればただ打てるというものではありません。上下顎の解剖学的な構造により、制約を受けます。
 上顎では鼻腔(=びくう)と上顎洞(=じょうがくどう ; 副鼻腔のひとつ)の中に打つことはできません。
 また前歯部では切歯管(=せっしかん ; 鼻口蓋神経と顎動脈の中隔後鼻枝が入っている)に打つことはできません。
 下顎では下歯槽管(=かしそうかん ; 下歯槽動静脈、下歯槽神経が入っています)に打つことはできません。

 ブローネマルク・システムのスタンダードインプラントは長さ7mm、直径3.75mmです。パントモ(この項目の一番上のX線写真)で長さが十分でも、骨の頬舌的な幅や解剖学的位置により、制約や許容があります。
 上下顎ともに、骨頂部で4mmの幅がとれるところから長さを測定しなければなりません。横断断層撮影やコンピューター断層撮影(CT)により、確認することが大切です。これらの装置を医院に置いていない場合、置いてある病院に撮影を委託することも必要です。

 上顎で切歯管の唇側に骨が十分ある場合、あるいは犬歯部で鼻腔や上顎洞の唇側に骨が十分ある場合はインプラントを打つことが可能です。

 下顎では下歯槽管を圧迫しないよう、1〜2mmの緩衝域を設ける必要があります。

 すなわち、これらの解剖学的注意点を考慮した上で幅4〜6mm、長さ7〜9mmの骨がある部位が、インプラント設置可能な最低ラインになります。

外科、補綴およびメインテナンスを含めた設計

 インプラント間の距離が狭いと器具の操作に問題を生じたり、アバットメントの清掃が困難になったりします。しかし、本数が少なすぎても上部構造の過重負荷により、ブリッジやフィクスチャーの破折、あるいはオッセオインテグレーションの欠如を招いてしまうこともあります。
 隣接する天然歯の最大豊隆部とインプラントの中心軸までには、最小で3.5〜4mmの距離が必要です。
 部分欠損部にスタンダードインプラントを複数設置する場合、中心軸間の距離が7mm(インプラント間の距離が3mm)以上取れる範囲で、なるべく多く設置する必要があります。

 

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最終更新2013.1.10