インプラント

オッセオインテグレーション

はじめに

 歯科用インプラントとは人工の歯根を骨の中へ埋め込み、その上へ歯を作る治療を指します。
 入れ歯が面倒だからインプラントにしたい…。確かにそれもいいでしょう。インプラントの埋め込みは成功するかもしれません。しかし長期的に管理していく ことは、入れ歯よりも大変です。インプラントとはどういうものか、正しく理解した上でインプラント治療とその他の治療を選択する必要があると思われます。  

オッセオインテグレーションとは

 一世代前のインプラントは下の図のような形をしていました(ブレードベント・インプラントといいます)。骨から抜き出ないような形をしています が、金属と骨の間を結合組織が取り囲んでしまいます。昔はこれを擬似歯根膜(=ぎじしこんまく)と呼んでいたのですが、正確には異物を結合組織が被包し、 排除しようとしているだけです。力が加わることにより、だんだん動揺が大きくなってきます。そのため、ブレードベント・インプラントは天然歯と連結する必 要があると言われていました。

 当然、長期的な成功率は低く(長期的な評価はほとんどされていないのですが)、Kapur(1989)は 下顎における5年後の成功率をブリッジにしたもので84.2%、インプラントの上に可撤性義歯(取り外しできる入れ歯。インプラントとの間に装置を組み込 み、外れにくくしている)にしたもので74%であると報告しています。しかし口腔内に残っていたから成功とはいえず、中程度以上の骨吸収がみられたものは 45%もありました。

 1952年、Branemark(ブローネマルク。正確には最初のaの上に小さな丸がつきます)はチタンと骨が結合することを偶然発見し、基礎実 験と動物実験を通して一定の条件下でチタンを骨に埋入したとき、強固な結合が得られることを知りました。1965年に初めて純チタン製のインプラントが臨 床応用されて以来、システムが整備されてきました。
 結合組織を介在することなくチタンと骨が直接結合する方式は、骨を表すラテン語のオス(os)と結合を表す英語のインテグレーション(integration)が組み合わされ、オッセオインテグレーション(osseointegration)と呼ばれています。

 現代のインプラントはこのタイプか、チタンの表面に特殊な処理をしたもので、オッセオインテグレーテッド・インプラントと呼ばれています。
 オッセオインテグレーテッド・インプラントの5年以上の長期的な成功率は、Adellら(1981)によると上顎で81%、下顎で91%です。

 オッセオインテグレーションはすぐにおこるのではなく、厳密には埋入後3〜4週でおこり、相対的な骨との接触率が高くなるのは3ヵ月後であると言 われています。埋入後数ヵ月は機能的な力がインプラントに加わらないようにする必要があります。そのためインプラント(根の部分)を骨に埋入後、歯肉で被 覆してオッセオインテグレーションがおきるまでの治癒期間を設けます(上顎で5〜6ヵ月、下顎で3〜4ヵ月)。
 その後、歯肉に穴を開け、インプラントの上の部分を連結するための二度目の手術を行います。一回の手術で上に出る部分まで立てる方法もありますが、機能的な力が加わる可能性を考えると疑問が残ります。詳しい手術方法は術式の項目で後述します。

 

インプラント各部の名称

 インプラントの構造は提供している会社により異なりますが、スタンダードなタイプ(ブローネマルク・システム)のインプラント各部の名称を示します。
 骨の中に埋入され、オッセオインテグレーションを司る部分をフィクスチャーといいます。二回法の手術では一回目に使用されます。下部構造とも呼ばれます。
 歯肉に出る部分をアバットメントといいます。これはアバットメントスクリューによりフィクスチャーとネジ止めされます。二回法の手術では二回目に使用されます。
 歯の形はゴールドシリンダーを含んで作られます。これはゴールドスクリューによりアバットメントとネジ止めされます。ネジ止めした上の部分はコンポジット・レジンなどで塞がれます。上部構造とも呼ばれます。

 

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インプラントの項目における参考図書(歯周病の講義で提示した以外のもの)

オッセオインテグレーテッドインプラントとその咬合(クインテッセンス出版株式会社)
ティシューインテグレイション補綴療法(クインテッセンス出版株式会社)
先端医療シリーズ1 歯科インプラント(先端医療技術研究所)
歯周病学(永末書店)


最終更新2013.1.10