バッハ・カンタータコンサート


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[2011年10月10日 記]
 2011年5月15日、 プラハはルドルフィヌムのドヴォルジャークホールで、バッハのカンタータ6曲から成るコンサートを聴いた。もう5ヶ月も経つが、記憶に残っている。とはいえ何年も経つと忘れるかもしれないのでそろそろ書こう。ヨーロッパで聴くバロックのコンサートは、忘れたのでなければ2回目だが、またまた素晴らしかった。ちなみに1回目は約8年前にブラティスラヴァで聴いた 「Bratislava Camerata Academicaコンサート」である。
 その8年前のときと共通する感想であるが、大変溌剌として歯切れがよい。 思えばネヴィル・マリナー率いるアカデミー管弦楽団が登場したときも少しそれを感じたし、 トレヴァー・ピノックが現れたときにも大いにそれを感じた。今回も指揮者はエアロビクスのインストラクターさながら、喜びいっぱいの表情で身振り手振り激しく指揮していた。目をつぶって聴いていても元気いっぱいという感じだったが、この指揮者の場合視覚的効果も著しい。カラヤンやシノーポリのような威厳のある指揮ぶりとはまた違った気っ風のよさがある。
 ただし視覚的にカッコいいことは不可欠のことではない。フランス・ブリュッヘンもとてもメリハリのある音楽を作るが、単調にランニングしているような彼の指揮ぶりを見たらそれが減ずるかというと、特にそういうわけではない。ブリュッヘンと同じく指揮棒を持たないスベトラーノフもカッコいい方ではないと思うが、その清々しく流麗な音楽を聴けば関係ない。
 おっと話を戻そう。もう一つすごく感心したことがある。それはソプラノの独唱者だ。2時間唱いっぱなしなのに全く平気で余裕のある音楽作りをしている。そんなの当たり前なのかもしれないが、起伏があり表現も多様な古典派やロマン派以降の音楽と異なり、バロックは基本的に休みがとれない。それなのに、元気いっぱいの指揮者に負けず劣らずエネルギッシュで、かつ繊細で味のある唱いっぷりで、全ステージを全うした。この歌手への拍手はひときわ大きかった。
 バッハはやはり偉大だ。バッハというとおそらくカンタータよりは他のジャンルの方がよく聴かれると思うが、カンタータは素朴にして充実した構成感もあり、次々と多様な曲想が現れて楽しい。カンタータだけでもバッハの偉大さを思い知らされる。言葉がわからないので飽きるかと思ったら、全く飽きなかった。

演奏者:
マルティナ・ヤンコヴァ(ソプラノ)Martina Jankov (soprano)
コレギウム1704 Collegium 1704
コレギウム・ヴォカーレ1704  Collegium Vocale 1704
ヴァーツラフ・ルクス(指揮者)Vaclav Luks (conductor)

曲目:
世俗カンタータおよび教会カンタータSecular and sacred cantatas
ヨハン・セバスチャン・バッハ作曲 BWV 207, 202, 110, 51, 82, 214

Johann Sebastian Bach: "Vereinigte Zwietracht der wechselnden Saite", BWV 207
(Marcia and First Chorus from drama per musica)
Johann Sebastian Bach: Weichet nur, betrubte Schatten, BWV 202
Johann Sebastian Bach: "Unser Mund Est voll Lachens", BWV 110 (first chorus)
Johann Sebastian Bach: Jauchzet Gott in allen Landen, BWV 51
Johann Sebastian Bach: Ich habe genug, BWV 82
Johann Sebastian Bach: Tonet ihr Pauken, erschallet Trompeten, BWV 214




[2011年10月10日 記]


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