長岡純子を悼む


風雅異端帳に戻る ♪  音楽の間に戻る ♪  詠里庵ホームに戻る
 1月18日、ピアニストの長岡純子が82才で急死した。

 ずっとヨーロッパに在住し活躍して来た人なので日本では非常に有名というわけではないが、頻繁にはないその帰国リサイタルに必ず行くほどの根強いファンがいるのは知っていた。そういうファン達こそこの文のような墓碑銘を書く資格があるのだろうが・・・
 そもそも外国で活躍する音楽家は少なくない。内田光子、秋吉俊子、永井幸枝、樫本大進等々。前二者は日本の音楽ファンにも名が知れているが、やはり日本での知名度がいまひとつという人も多い。しかしCDや放送で聴くその演奏たるや、本場で通用しているのだから当然のことであるが、すばらしい。
 ためしに15年前リリースされたベートーヴェンのソナタ第23、27、32番(SONY SRCR1696)を聴いてもらいたい。彼女が67才のときの演奏だが、「67才の人の」というただし書きは全く要らない。なんと力強い音楽。なんと深い精神性。なんと高くそびえる気風。このCD一つ聴いても、知る人ぞ知るという状況は、何か世の中おかしいのではないかと思ってしまう。そう言いながら、自分ももっと前からこの人を追いかけていなかったことを悔やんでいるのである。

 そして、年のことは関係ないとは書いたが、なんとこの人はつい先日日本でリサイタルを開いていたのだ。82才で! 
 私は、「自分も結構年だから、ピアノは若いころのようには弾けない」なんていう思い込みは、捨てた。そんな考えは、こういう人を前にして、恥ずかしい限りである。

[2011年2月3日 記]


風雅異端帳・目次に戻る ♪  音楽の間に戻る ♪  詠里庵ホームに戻る