Queen | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★☆ 入門度:★★ 評価:★★★★ |
Released in 1973 [1] Keep Yourself Alive (May) [2] Doing All Right (May/Staffell) [3] Great King Rat (Mercury) [4] My Fairy King (Mercury) [5] Liar (Mercury) [6] The Night Comes Down (May) [7] Modern Times Rock'N'Roll (Taylor) [8] Son And Daughter (May) [9] Jesus (Mercury) [10] Seven Seas Of Rhye (Mercury) Bonus EP [1] Keep Yourself Alive (De Lane Lea Demo, Dec 1971) [2] The Night Comes Down (De Lane Lea Demo, Dec 1971) [3] Great King Rat (De Lane Lea Demo, Dec 1971) [4] Jesus (De Lane Lea Demo, Dec 1971) [5] Liar (De Lane Lea Demo, Dec 1971) [6] Mad The Swine (June, Dec 1972) |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Produced by John Anthony and Roy Thomas Baker |
「Hot Space」でクイーン初体験、「Greatest Hits」で打ちのめされるというちょっと変わった入り方をした僕は「ファースト・アルバムから聴いてみよう」と決意し、次に手にしたのがこのアルバム。当時は何が良いのかサッパリわからず、強いて挙げれば[5]が印象に残った程度。今思えばそれも仕方がない。僕がクイーンに惹かれていた理由は、わかりやすいメロディ、煌びやかなギター・オーケストレーション、美しく力強いコーラスの素晴らしさだったのだから。それらがこのファースト・アルバムではまだ完成していないのだからピンと来なかったとしても無理はない。後のクイーンを考えると音はシンプルで派手さに欠け、後のアルバムを聴いてからだと、当時掃いて捨てるほどあった英国産ハード・ロック・グループに聴こえてくる。しかし、当時の他のグループを聴いてからこのアルバムに戻ると、やはり華やかでドラマチック、サウンドも当時比較されていたレッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、イエスよりも一世代新しい感覚があるのも確か。つまり、ハード・ロック・グループとしてクイーンが好きという人にとっては名盤になり得る内容でもあり全アルバムの中でも独自のポジションにあると言える。作り込みが甘いのは、スタジオが空いたときに急に呼び出されて録音するというあまり恵まれていない環境だったということもあって仕方がない。それでも楽曲の質は高いし、この頃のフレディの声は艶があって他に得がたい魅力がある。ブリティッシュ・ロック特有の湿り気、叙情性といった当時の日本で愛好された要素に溢れた1枚。(2007年3月12日) ボーナスEPについて。 [1]-[5]は71年に録音されたデモ・テープで、ブートレグ「In The Begining」などでお馴染みの音源、しかしブライアン所有の12インチ・アセテート盤から起こしたというその音質は当然ながら大幅に向上しており、アルバム・バージョンとは異なる無加工気味のタイトな音(特にドラムの音が生っぽい)で楽しめる。もちろん詰め切れていないところは全体に見られ、正規アルバム・バージョンの完成度と比べるべくもない。それでもライヴ感あふれる演奏はロックバンドとしてのありのままの姿に近い演奏と言えるもので、ファースト・アルバムが好きな人なら聴いて損はないはず。ベースラインがまるで異なることによってストレートなノリのロックとなっている[1]、実はこの曲のみそのまま本アルバムに採用された[2](ただし音は無加工でソリッド)、シンプルな音作りで演奏がまだ拙い[3]、アルバムではスペイシーに展開される中間部を泥臭くロック的に演奏する[4]、よりライヴに近いワイルドさがありつつもまだ手探り感漂う[5]、シングル"Headlong"のカップリング曲として日の目を見ていた[6]という構成。未だに信じられないのは[6]が72年の曲だということで、1stアルバムの他の曲とは質の異なる穏やかでポップな佳曲。アルバムに収録されなかったのはハード・ロック然とした他の曲と合わなかったからではないと思える。(2011年3月26日) |
Queen U | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★★ 入門度:★★★ 評価:★★★☆ |
Released in 1974 [1] Procession [2] Father To Son [3] White Queen [4] Loser In The End [5] Ogre Battle [6] Fairy Feller's Master-Stroke [7] Nevermore [8] The March Of The Black Queen [9] Funny How Love Is [10] The Seven Seas Of Rhye Bonus EP [1] See What A Fool I've Been (BBC Session, Jul 1973 -Remix 2011) [2] White Queen (As It Began) (Live at Hammersmith Odeon, Dec 1975) [3] Seven Seas Of Rhye (Instrumental Mix 2011) [4] Nevermore (BBC Session, April 1974) [5] See What A Fool I've Been (B-Side Version, February 1974) |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Produced by Roy Thomas Baker |
クイーンを最初から聴いてやろうと思い立ち、ファースト・アルバムの次に聴いたのがこの「QueenU」。アナログ日本盤「Greatest Hits」には[10]が収録されていなかったので全曲初めて聴く内容ばかり。あえて内容と書いたのは、NHK-FMで放送していた75年のハマースミス・オデオンでのライヴ、通称クリスマス・コンサート(現在は「A Night At The Odeon」でオフィシャルリリースされている)で当然このアルバムからの曲を演奏していて、それを録音して何度も聴いていたから。世間一般ではかなり評価が高いこのアルバムだけれど、僕にとってはもっとも聴かないアルバムの部類に入る。というか、昔はそんなに一般に評価されていなかったように思う。ヒット曲、有名曲は入っていないしアルバムじたいもそれほど売れていない。僕の記憶では80年代後半に、当時人気絶頂だったガンズ・アンド・ローゼスのアクセル・ローズが、最も好きなアルバムを「QueenU」と言い出してから急に評価が高まったような気がする(アクセルは本当にクイーンが好きなようで東京ドームのライヴで曲の合間にいきなり"Sail Away Sweet Sister"を口ずさみはじめたりしていた)。このアルバム、アナログで言うところのB面は確かにスゴイ。当時のフレディの持っていた才能が炸裂している。[5]〜[9]まで一気に聴かせる構成と疾走感は他のアルバムでは聴けない唯一無二の世界。このB面の印象に加えて、ジャケットの写真が後々までクイーンのイメージとして度々引用されたことも彼らの代表作というイメージを与えているのかもしれない。では、なぜ僕はあまり好きでないのか。理由は3つある。1つ目。前作から格段に進歩しているとは言え、後のクイーンを考えるとコーラスやギターのサウンドがまだ完成しきっていないこと。このアルバムまでの曲は、当時のライヴと聴き比べても違和感が少なく、言い換えるとスタジオ・バージョンもライヴもさほど差がない、つまり過剰に加工されたあの「音」になっていないことを物語っている。これはまだ16トラックの機材を使っていたからという事情もあるでしょう。2つ目。A面の曲が弱い。デビュー・アルバムで既に良質な曲を提供していたブライアンの曲、ロジャーの曲がどういうわけか弱い。3つ目。クイーンの曲はメンバーの誰が書いたかすぐに分かるほど強い個性がある。僕にとってクイーンは4人の個性の交じり合いが魅力であって、わざわざソングライター別にA面とB面を分けたことが良い結果を生んでいるとは思えない。世間で評判が良いからといって、このアルバムを手にした人が「クイーンってこんなもんなんだ」と思ったとしたらちょっと残念。初期のクイーン・サウンドが完成するのは次作(ロジャーは「クイーン・サウンドが完成したのは Queen U」と発言していますが)。(2018年11月20日) ボーナスEPについて。 [1][4] は「On Air」で聴けるものと同じ、[2] は何度もBSなどで放送されているクリスマス・コンサートの音源、[3]は歌抜きバージョン、[5]は[1]の正規スタジオ録音("Seven Seas Of Rhye"シングルB面用)とマニアにとっては目新しさに乏しい。[1]はリミックスが施され、スタジオ・テイク[5]よりも格段にワイルドで生々しく聴きごたえたっぷり。[3]はイントロ前のカウントからエンディングあとのチャットまでしっかりと収録されているところにわずかながら価値あり。[4]はコーラス少な目で後半にドラムとギターが加えられるところが違っている。次のアルバムのボーナス・ディスクにも収録されているクリスマス・コンサート音源は、現在は「A Night At The Odeon」で1ステージすべて公開されているけれど、当時は小出し商法のネタで使われていて不誠実に思ったものだった。(2018年11月20日) |
Sheer Heart Attack | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★☆ 入門度:★★★★★ 評価:★★★★★ |
Released in 1974 [1] Brighton Rock [2] Killer Queen [3] Tenement Funster [4] Flick Of The Wrist [5] Lily Of The Valley [6] Now I'm Here [7] In The Lap Of The Gods [8] Stone Cold Crazy [9] Dear Friends [10] Misfire [11] Bring Back That Leroy Brown [12] She Makes Me (Stormtrooper In Stilettoes) [13] In The Lap Of The Gods ...revisited Bonus EP [1] Now I'm Here (Live At Hammersmith, Dec 1975) [2] Flick Of The Wrist (BBC Session, Octover 1974) [3] Tenement Funster (BBC Session, Octover 1974) [4] Bring Back That Leroy Brown (A cappella Mix 2011) [5] In The Lap Of The Gods ...Revisited (Live At Wembley, July 1986) |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Produced by Roy Thomas Baker |
津軽じょんがら三味線のようなギター・リフ(?)のハードなイントロからフレディがファルセットで鋭く切れ込む。なんという発想。なんという非常識。尚、この[1]は能天気カップル(ファルセット部は女子の語り)の歌と思わせて最後にオチがあるというブライアンのユーモア・センスを窺い知ることもできる1曲。それに続くのがフレディ・ワールド全開ポップの[2]。こうも極端に違う曲を強引に並べてしまうことが、そしてそれを納得させてしまうところがクイーンの凄さ。初の24トラック録音機材を駆使することでコーラスはよりゴージャスに、ギター・オーケストレーションはより華やかになり、ここにあのクイーン・サウンドが完成した。[3]からのメドレー形式は、アイディアはとうの昔にビートルズがやっているけれど、個別の曲の落差の大きさを違和感なくつなげているという点では1枚上手。[7]の過剰さはこの時期のクイーンならではの狂気。珍しくジャム・セッションをそのまま発展させたと思われる[8]は、ハード・ドライヴィングかつスリリングなハード・ロックで、しかしこんな曲でも華やかさが失われることはない。続くフレディとジョンのポップセンス溢れる曲が2曲続いてアルバムの幅を広げ、[9]の英国フォーク風で脱力、最後はドラマティックに歌い上げるフレディらしい曲で派手に締める。ブライアンの入院で、当初は他の3人だけ制作されたという過程のハンデをまったく感じさせないバンドとしての一体感も見事。次作と合わせてもっとも煌びやかなサウンドを持つグループ最高傑作であると同時に個性的ハード・ロック・アルバムとしても珠玉の1枚。それにしても1年で2枚もアルバムをリリースし、これだけの進化を遂げていることには舌を巻くばかり。(2007年3月14日) ボーナスEPについて。 [1]はクリスマス・コンサートをから収録。[2][3]は後にリリースされた「On Air」と同一音源。[4]はヴォーカルとコーラスだけを抜き出したもの。目まぐるしく構成されたコーラスをよりわかりやすい形で聴ける面白みがあるとはいえ、何度も聴くようなものではない。[5]は「Live At Wembly」からの拝借でここに入れる意義はとくに感じられず、曲数の帳尻合わせに使われているように思えてしまう。このアルバムのボーナスEPは価値が低い。(2018年11月20日) |
A Night At The Opera | ||
![]() 曲:★★★★☆ 演奏:★★★★ 入門度:★★★★ 評価:★★★★☆ |
Released in 1975 [1] Death On Two Legs [2] Lazing On A Sunday Afternoon [3] I'm In Love With My Car [4] You're My Best Friend [5] '39 [6] Sweet Lady [7] Seaside Randezvous [8] The Prophet's Song [9] Love Of My Life [10] Good Company [11] Bohemian Rhapsody [12] God Save The Queen Bunus EP [1] Keep Yourself Alive (Long-Lost Retake, June 75) [2] Bohemian Rhapsody (Operatic Section A cappella Mix 2011) [3] You're My Best Friend (Backing Track Mix 2011) [4] I'm In Love With My Car (Guitar & Vocal Mix 2011) [5] '39 (Live at Earls Court, June 77) [6] Love Of My Life (South American Single June 79) |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Produced by Roy Thomas Baker |
恐らく代表作として最も認知されているであろう4枚目のアルバム。しかし「Greatest Hits」に収録されているのが2曲だけという事実からもわかるように有名曲がいくつも入っているわけではない。また、本人たちがそう発言していることもあってコンセプト・アルバムとして認知されているけれど、ピンク・フロイドのようにアルバム1枚に統一されたテーマがあるわけではなく曲同士の結びつきがあるわけでもない。クラシック・ピアノの要素を拝借した導入からパワフルに転じる[1]から間髪入れずにヴォードビル調の軽快な[2]へという流れは前作同様、他のグループにはあり得ない構成で、以降、最後まで異種異様な曲が連なってめまぐるしく展開し続ける。つまり、曲が自立していてもアルバムを通して聴くことですべての印象を作り上げているところこそがこのアルバムの魅力。コーラスとギター・の重ね方は「これでもかっ!」というほど過剰であり、それが全編に貫かれていることで統一感を出している一方、曲そのものはかなりバラエティ豊かで散漫という見方もできる。音楽的にはハード・ロック色が薄まりビートルズのような汎用ロックになってきているのが特徴。個人的には少々作り込みすぎと思うけれど、その結果が至上の名曲[13]であるのならば否定することなどできないというものだ。余談ながら、国歌がアルバムの最後に入って何の違和感もないところにロックが自国文化であるということを見せつけられる。(2006年9月16日) 30周年アニバーサリー・エディションについて。この特別版は最新リマスターのCDとDVDの2枚組で構成されている。CDについては過去のものと比較して音質が良くなったという印象はない。一方のDVDはDVD-VideoながらDTSの96KHz/24bit で収録されており、マスタリングをし直したことにより音質の向上が目覚しい。過剰なオーバー・ダ ビングによる煌びやかなサウンドが、5.1chミックスでより映える。5.1chミックスそのものは、以前より輸入盤で発売されていたものと若干異なり、これまで聴こえなかった音がより聴こえるようになった。また、曲に合わせて用意されているさまざまな70年代の映像が観られるのも楽しい。反面、アールズ・コート公演やハイドパークのクリアな映像を観てしまうとブートレグの粗悪な画質がうらめしいというか、こんなに綺麗な映像があるならオフィシャルでさっさと出してくれよ、と思ってしまう。(2007年3月12日) ハイレゾ音源収録用としてブルーレイ・オーディオでも発売された。30周年盤からの音の作り直しはなく、DTS-HD Master AudioとリニアPCMでそれぞれ96KHz/24bitと、現在望みうる最上のスペックで収録されている。音はよりクリアになって実際の音質も最上級。ただし30周年記念盤の映像はなく、クリアになりすぎたギターサウンドが厚みと雑味を奪ってしまった感もある。(2014年3月9日) ボーナスEPについて。 [1]はハリウッド・レコード盤「Queen」で既にお披露目されていた音源。なぜこの曲がこのアルバムのボーナストラックとして収録されているのか不思議に思ったけれど、75年に再録音されたものだからだということらしい。確かに75年ころのライヴ演奏に近いパワフルなスタジオ録音に仕上がっていて、バンドの成長を感じ取ることができる。[2]はオペラ部分のコーラスのみを取り出したもので、これにより複雑に構成されたコーラスのありのままの姿がわかりやすくなっている。でも、こんなものを何度も聴きたいと思う人はいない。[3]は冒頭にフレディのカウントが入っていて雰囲気があるとはいえ実態はリード・ヴォーカルを抜いただけ、[4]はベースとドラムを抜いただけのもので共に曲として楽しめるものではないけれど、各楽器のパートがよりわかりやすいというそれなりの発見はある。[5]はオフィシャル化されていないことでも有名な77年アールズコートの音源で、それを最高の音質で聴ける。[6]は「Live Killers」とまったく同じもの。リマスターされているのか少し音質が向上している。前作から引き続き、全体にボーナストラックとしての魅力に乏しく、初期のレア音源はまだまだたくさんあるはずなのに既成曲の部分的なトラックの抜き出し/トラック外しでお茶を濁すのはいただけない。(2011年3月26日) |
A Day At The Races | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★★ 入門度:★★☆ 評価:★★★★ |
Released in 1976 [1] Tie Your Mother Down [2] You Take My Breath Away [3] Long Away [4] The Millionaire Waltz [5] You And I [6] Somebody To Love [7] White Man [8] Good Old Fashioned Lover Boy [9] Drowse [10] Teo Torriatte (Let Us Cling Together) Bonus EP [1] Tie Your Mother Down (Backing Track Mix 2011) [2] Somebody To Love (Live At Milton Keynes, June 1982) [3] You Take My Breath Away (Live In Hyde Park, September 1976) [4] Good Old Fashioned Lover Boy (Top Of The Pops July 1977) [5] Teo Torriatte (Let Us Cling Together)(HD Mix) |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Produced by QUEEN |
「A Night At The Opera」の続編的とされているこのアルバムは70年代のアルバムの中でもっとも特徴を表現するのが難しく、またこのアルバムをクイーンの最高傑作とする人もほとんどいないという、非常に立ち位置がはっきりしない1枚として扱われている。理由はいくつかあると考えられるけれど、前作の続編というには結構印象が違うことが最大の理由に思える。「Sheer Heart Attack」や「A Night At The Opera」のような畳み掛けるような勢い、めまぐるしい展開は影を潜めギターやコーラスのオーヴァーダビングも前2作と較べると抑え気味。つまり過剰なまでの派手派手しさが薄れ(彼等にしては)やや落ち着いた音の感触になっているところが変化点。いつもは異彩を放つロジャーの曲 ([9]) までもがスローで大人しいこともそんな印象を強くする一因になっている。前2作は曲の長さもさまざまで、それは表現の自由を求めた結果だったように思えるものの、このアルバムは3〜5分の曲が10曲並べられているだけという常識的な作りになっているところも平凡な印象を強くさせる。これは初めてセルフ・プロデュースしたことが影響したのかもしれない。ただし、曲単体のクオリティは高い。クイーン流ブギの傑作[1]、ピアノの弾き語りによるフレディならではのネットリした歌い方での美しいバラード[2]、クラシックをバックグランドに持つフレディでしか作り得ない独自のポップ・センスを持つ[4]、ジョンの人柄そのまんまの和み系ポップス[5]、ゴスペル風コーラスを模した[6]、どっしりとした重厚さが珍しいヘヴィ・ロック[7]、音程を外さずに歌うのが相当難しいのにそれをまったく感じさせないフレディらしさ前回の軽快なポップ[8]などは代表曲と言っても差し支えないクオリティ。録音、曲、サウンドにどこか湿り気を帯びた英国製ポップ/ロック・グループらしさが溢れていたアルバムはこれにて終了。次作より、クイーン流にアメリカナイズしたサウンドに変わって行く。(2006年9月16日) ボーナスEPについて。 [1]はブライアンのカウントから収録されているリード・ヴォーカル抜きバージョン。[2]は「Queen On Fire」からという手抜き。[3]はロクな音質のものがないながらブートで入手可能なハイドパーク・コンサートからで、これが大げさでなく驚愕の高音質で収録されている。歌い方をかなり崩しているビデオ「レア・ライヴ」収録の77年ヒューストン公演とは違って、ここではオリジナルのメロディに忠実に歌っているところが聴きどころ。[4]は「Greatest Video Hits」に収録されていたもの。[5] は日本だけのベスト盤「ジュエルズU」に収録されていたもので、個人的にはクリアさが部分的に前面に出ていて不自然に感じるが、それは従来の音を聴きすぎているからなのかもしれない。マニアにとっては[3]だけが聴きどころ。(2011年3月26日) |
News Of The World | ||
![]() ![]() 曲:★★★★☆ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★★ 評価:★★★★★ |
Released in 1977 [1] We Will Rock You [2] We Are The Champions [3] SHeer Heart Attack [4] All Dead, All Dead [5] Spread Your Wings [6] Fight From The Inside [7] Get Down, Make Love [8] Sleeping On The Sidewalk [9] Who Needs You [10] It's Late [11] My Melancholy Blues Bonus EP [1] Feelings Feelings (Take 10, July 1977) [2] Spread Your Wings (BBC Session, October 1977) [3] My Melancholy Blues (BBC Session, October 1977) [4] Sheer Heart Attack (Live In Paris, February 28 1979) [5] We Will Rock You (Fast) (Live In Tokyo, November 1982) |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Produced by QUEEN |
今では園児でさえ口ずさむほど日本でも浸透している[1]は、原始的なリズムと、喋り調でありながらしっかりとメロディを歌うヴォーカルだけの1分59秒間。最後のギターもむやみやたらと盛り上げようとしない大人なバランス感覚。単純なのに計算されている。単純なのに音楽は豊か。こういう曲は並のミュージシャンには書けない。気構えすぎても考えすぎてもできない。音楽をわかっていてセンスの良い人でないと作れない。まさに名曲というのにふさわしい。世の中に当たり前にあるものほど軽視され、そのありがたみがわからないもので、この曲を楽しむ人はいても感心したり感動したりする人がいないのは「世の中に当たり前のように存在している」からという理由に尽きると思う。複雑怪奇な展開や練りに練ったアレンジとコーラスで成立している"Bohemian Rhapsody"を世に送り出したグループが、このようなシンプルな曲を作りヒットさせることの偉大さに思いが至らないのも「世の中に当たり前のように存在している」からに他ならない。間髪入れずに続くクイーンのアンセム、いやこちらも浸透しすぎて勝者のアンセムとなった[2]につながる展開は、曲調に何の脈絡もないのにメドレーとして成立させてしまうクイーンの個性の成せる業なのに、それも今では当たり前のことになってしまって誰も感心しなくなっている。ロジャー流パンク対抗曲とも言える[3](もっとも曲が書かれたのは同名アルバムの時期)、ブライアンのヴォーカル(ピアノも)による落ち着いたポップソングの [4](こういう曲があるからクイーンは奥が深いのだ)、従来のジョンの曲よりも情感豊かな[5]、ロジャーの唸るヴォーカルと奇妙なウネリを持つリズムが印象的な[6]までのいわゆるアナログA面の展開は、曲ごとのカラーが余りにも違いすぎて脈絡がなく、それなのにやはり違和感がない。これは言葉にすると当たり前のことになってしまうけれど、クイーンがクイーンという音楽スタイルを確立していたからこその芸当だ。この振り幅の広さと懐の深さはビートルズをも上回っていると断言できる。しかも、前作よりも外(具体的にはアメリカ)を意識し始めたために、サウンドがシンプルになっているにもかかわらずクイーン以外の何者でもない音を作り上げているところがまた凄い。B面に入ってもそんなムードは続き、何をヒントにしたらこんな曲ができるのかと思わせるクールでヘヴィな異色作[7]、ややレイジーで実は初めてブルース色を表面に出した[8]、ジョンらしい素朴で小粋なポップセンスが全開の[9]、ストーリー仕立ての歌詞を持つブライアンらしいハード・ロックの[10]、あくまでもフレディ流にジャズ、シャンソンのヴォーカルを解釈した[11]と、その多彩さには舌を巻くばかり。しかも全体として「A Night At The Opera」とはまるで違うムードを持っているところがさらに素晴らしい。4人の演奏が円熟かつ充実しており、アレンジも実によく考えられているところも見逃せないところで、アルバムとしてもっと評価されていい1枚。(2006年9月16日) ボーナスEPについて。 [1]はハードにドライヴし、フレディが吼える、ブートレグにさえ収められたことのない驚きの未発表曲。スマイルの後からジョンがクイーンに加入する前の時期に書かれた曲とのことで、確かに初期クイーンの香りがするものの、77年録音のここではややドライなサウンドで仕上がったノリ一発という感じの気持ちいいハード・ロック。ボーナスEPを謳うのならこれくらい貴重なものを収めてもらいたい。[2][3]はBBCセッションからの音源で、古くからブートレグでお馴染みのもので、今では正規版「On Air」で聴けるため価値はない。[4]は映像とともに良質のマスターが残っているようで、曲単位ではこの日の演奏は初オフィシャル化(後に映画「Bohemian Rhapsody」サントラで"Fat Bottomed Girls"も公開)。79年のヨーロッパ・ツアーは「Live Killers」の元ネタなだけに他にも良質な残されているものと考えられる。[5]は82年11月3日の西武球場公演からで、過去にビデオでリリースされているため目新しくはない。DVD「Queen On Fire」のこの日の演奏は8曲収録されているけれど、この曲は含まれていない。少しずつ音源を出していくこの手法で喜ぶマニアはいない。(2018年11月20日) 40周年記念ボックスについて。 ハイライトは2つ。ひとつは、「News Of The World」のレコーディングセッションと77年全米ツアーのドキュメンタリーを収めたDVD(約55分)で、これまで部分的にしか見えていなかった映像が多く収録されている。モノクロ映像が多く、ひとつのパッケージ製品とするには弱いものの、ボックスセットに収録するのは妥当な判断。 もうひとつは、Disc 2 の Raw Seesions。全曲、曲が始まる前後のスタジオでのチャット、試し弾き、弾き残しを加えたセッション風の仕上げになっている。ただし、多くの曲の演奏部分は既にある程度仕上がっていてコーラスも重ねられており、厳密に言えばRawというよりは完成前テイクという趣のものが多い。 [We Will Rock You] ヴォーカルはほぼ完成版に近いメロディの別テイク。最後のギターソロはまだ仕上がる前の別テイク。 [We Are The Champions] ヴォーカルはほぼ完成版に近いメロディの別テイク。2コーラス目からブライアンのギターによるオブリガードがずっと付く(少々鬱陶しい)。最後のサビの繰り返しが2回分多くなっている。 [Sheer Heart Attack] 完成前のラフ・ミックスでリード・ヴォーカルなし。アレンジはほぼ完成版と変わらない。 [All Dead All Dead] 歌メロ、歌詞がほぼ仕上がった状態でフレディがヴォーカルを仮入れしたと思われるもの。本テイク用でないからこそのリラックスした歌い方が聴きどころ。 [Spread Your Wings] 歌メロ、歌い方がまだ未完成な状態での仮入れと思われるヴォーカルのテイク。 [Fight From The Inside] 歌詞、メロディが未完成な状態での仮入れと思われるヴォーカルのテイク。コーラスもなし。 [Get Down Make Love] これぞRaw Session。オーバーダブなしの恐らくは一発録り。ギミック無しのバンドの素の演奏が聴ける。 [Sleeping On The Sidewalk] 77年、2度め(すなわち「News Of The World」発売直後)の全米ツアーのごく初期のみに演奏されていたときのライヴ音源。スタジアムでのライヴに向いている曲とは言い難く、セットリストからすぐに外れたのも無理はない。リード・ヴォーカルはフレディ。シンプルな曲なだけに演奏はスタジオ盤とほぼ変わらない。 [Who Needs You] ジョンのラフなアコギと、まだ一部歌詞ができていない状態の歌にマラカスだけ加えて、とりあえず録っておきました風のリハーサルのようなテイク。 [It's Late] 恐らくバッキングテイクは本テイクと同じでリード・ヴォーカルが別テイク。ブリッジ部分以降のヴォーカル以外それほど大きく歌い方は違わない。ギター・ソロは別テイク。 [My Melancholy Blues] ヴォーカル別テイク。少し力の抜けた素朴な歌い方で、録り方のせいか声が生々しく目の前で歌っているかのよう。 しかしながら、音源的に見るべきものは上記ディスクのみ。この種のレコーディング・セッションを部分公開する企画は他のアーティストでもよくあるものだけれども、熱心なファンなら良くご存知の通り、舞台裏まで見てみたいというマニア心理を満たすためのものに留まる。曲としての完成度が高いはずがなく、繰り返して聴きたくなるようなものではない。まあ、それをわかって楽しむものではありますが。その他のディスクは、熱心なファンなら持っていて当然のものばかり。Disc 1は2011年のリマスターと同じ、Disc 2は以下のように既発のものばかり。 [1] Feelings Feelings(Take 10, July 1977) → 2011年リマスターのボーナス・ディスクに収録済み [2] We Will Rock You (BBC Session) [3] We Will Rock You (Fast) (BBC Session) [4] Spread Your Wings (BBC Session) [5] It's Late (BBC Session) [6] My Melancholy Blues (BBC Session) → [2]-[6] は「On Air」に収録済み。 [7] We Will Rock You (Backing Track) [8] We Are The Champions (Backing Track) [9] Spread Your Wings (Instrumental) [10] Fight From The Inside (Instrumental) [11] Get Down, Make Love (Instrumental) → [7]-[11] は初公開。 [12] It's Late (USA Radio Edit 1978) → 初公開の超短縮バージョン [13] Sheer Heart Attack (Live in Paris 1979) → 2011年リマスターのボーナス・ディスクに収録済み。 [14] We Will Rock You (Live in Tokyo 1982) → 2011年リマスターのボーナス・ディスクに収録済み。 [15] My Melancholy Blues (Live in Houston 1977) → ビデオ「Rare Live」に収録済み。 [16] Get Down, Make Love (Live in Montreal 1981) → 「Live in Montreal」に収録済み。 [17] Spread Your Wings (Live in Europe 1979) → 「Live Killers」に収録済み。 [18] We Will Rock You (Live at the MK Bowl 1982) → 「Queen On Fire: Live at The Bowl」に収録済み。 [19] We Are The Champions (Live at the MK Bowl 1982) → 「Queen On Fire: Live at The Bowl」に収録済み。 つまり、目新しいのは [7]-[12] のみ、しかも [7]-[11] は単なるカラオケ・バージョンで、 [12] はこんなのもありました的な無造作な切り刻み版。既発の音源でも入手困難ならともかく、21世紀に入って以降にリリースされた音源から多数流用しているばかりか、単に「News Of The World」収録曲であるという理由なだけで81年、82年の音源を入れたり、ライヴ音源の古典中の古典である「Live Killers」から流用したりしてお茶を濁すのはいかがなものかと思う。このボックスは、ブックレットを見ればわかる通り、77年という時代、特に全米ツアーに焦点を当てた企画と考えるのが妥当でしょう。2017年のアダム・ランバートとの全米ツアーの「News Of The World」を意識したビジュアルとセットリストも40周年だからこそのものであったはず。しかし、だからこそこのボックスには大きな欠落がある。77年ヒューストン公演は、これまでも(今回のDVDでも)部分的にまずまず良好な映像と音源が公式に公開されており、ブートレグでは1ステージすべてを観ることができる。画質があまり鮮明でないという問題はあるものの、荒っぽくもロック・バンドとして一番脂が乗った勢いのあるこの時期のステージを公開するとしたら、このボックスをおいて他になかったんじゃないだろうか。しかも今回、"Sleeping On The Sidewalk" ライヴ・バージョンの公開で、77年全米ツアーにまだ良質な音源があることもわかってしまった。こうした音源がこのボックスで公開されなかったことで、ブライアンとロジャーが存命のうちにそれらが日の目を見る可能性はほとんどなくなってしまったように思えてしまう。ブックレット(ただし収録音源のデータ詳細は書いていない)やおまけ類、LP、箱の存在感に魅力を感じている人には価値があるかもしれないけれど、映像や音源重視の観点において、このボックスの内容は物足りないと言わざるを得ない。ちなみに、77年ヒューストン公演はこのボックスセット発売前に、ほぼオフィシャルレベル言って差し支えない高画質化、高音質化されたブートレグが発売されている。発掘音源ボックス企画時にブートレグ市場に高音質音源が流出するのはよくあることで、この40周年ボックスでもヒューストン公演を収録する計画があって一旦はマスターテープを引っ張り出したのではないかと邪推してしまう。(2018年11月20日) |
Jazz | ||
![]() 曲:★★★☆ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★ 評価:★★★☆ |
Released in 1978 [1] Mustapha [2] Fat Bottomed Girls [3] Jealousy [4] Bicycle Race [5] If You Can't Beat Them [6] Let Me Entertain You [7] Dead On Time [8] In Only Seven Days [9] Dreamer's Ball [10] Fun It [11] Leaving Home Ain't Easy [12] Don't Stop Me Now [13] More Of That Jazz Bonus EP [1] Fat Bottomed Girls (Single Version) [2] Bicycle Race (Instrumental) [3] Don't Stop Me Now (With Long-Lost Guitars) [4] Let Me Entertain You (Live in Montreal, Nov 1981) [5] Dreamers Ball (Early Accoustic Take, August 1978) |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Produced by Roy Thomas Baker |
レコードの「News Of The World」の解説からの受け売りではあるけれど、どうしても触れておきたいことがある。70年代のクイーンのアルバムはレコードに針を乗せてから最初に出てくる一発目の音で聴き手を「おっ」と思わせる(受け売りはここまで)。「おおっ」ではなく「おっ」というところが重要で、わざとらしくなく最初から聴き手を惹きつけるというのは簡単にできそうで実は難しい。ひとことで言えば音楽センスの問題で楽器の練習をしたり音楽理論を学んだからといって身に付くものではない。このアルバムに関して言えば [1] は「えっ?」かもしれない。そしてその[1]があまりにもクイーンらしい。別にまじめにアラビア語でロックをしようとしているわけではない。「なんだか面白そう」という動機だけで作ってしまう単純さと行動力はクイーンにとって重要な核と言える部分。考えてもみて欲しい。"Bohemian Rhapsody"は本気でオペラをやりたかったのだろうか。"Somebody To Love"はゴスペルを、"My Melancholy Blues"はジャズやシャンソンをまじめにやりたかったのだろうか。まったくそんなことはない。ただ単に「こんなのやったら面白いんじゃないか」という発想でやっているのに過ぎず、悪く言えば遊びと軽蔑することができるとはいえ、その遊び感覚こそが常識破りな楽曲を生み出したのと同時に、遊びまでで留めていたからこそクイーンとしての音楽がブレることがなかった(「Hot Space」は本気でファンクをやってしまった)。さて、アメリカ市場を強く意識しはじめた彼らはここに来てプロデューサーのロイ・トーマス・ベイカーを呼び戻し、乾いたサウンドでアルバムを仕上げる。個人的には「ペンペン」と聴こえるスネア・ドラムの音に居心地の悪さを感じるものの、英国バンドらしくない軽さを印象付けているのも事実。曲は例によって多彩で[1][4]などの他の追随を許さないセンスを持った曲がありつつ、短い曲(ほとんどの曲が3分台)を並べて以前と比べると聴きやすくなっているのが特徴。ただし、ロジャーが「曲を多く詰め込みすぎた」と言っていたように全体のまとまり感はイマイチで曲によっては印象が薄いものもある。演奏は充実期真っ只中でグループとしてのグルーヴ感が溢れ出ていて素晴らしい。その最たる曲が[12]。フレディの流麗かつパーカッシヴなピアノ、ジョンの柔軟性に富んだベース、ロジャーの軽快なドラムのリズムが織り成すノリはクイーン以外では味わえないもの。尚、ジャズらしき曲は1曲もなく極めて良質な娯楽ロック・アルバムである。(2007年4月8日) ボーナスEPについて。 [1]は前半の長いギター・リフ部分を削ったシングル・バージョン。[2]はただのヴォーカル&コーラス抜きバージョン。[4]は「Rock Montreal」で既出と、これらの3曲はボーナス・トラックとしてまったく魅力がない。[3]は冒頭 からブライアンのギターが薄く重なるバージョンでロック色が乗り、ギター・ソロも違っていて新鮮。ただ個人的には、この曲はギターを不要と判断したところにクイーンの音楽センスの良さを感じているので、あくまでも番外編的な楽しみという位置付け。なお、映画「Bohemian Rhspsody」の "...revisited" バージョンはやはりブライアンのギターを乗せているけれどあちらは新録でこのボーナストラックとは別物。[5]はコーラスなし、アコギだけで素朴にフレディが歌っていて実に味わい深く、ボーナスEPの最大の収穫。(2018年11月20日) |
Live Killers | ||
![]() 曲:★★★★☆ 演奏:★★★★☆ 入門度:★★ 評価:★★★★ |
Released in 1979 Disc 1 [1] We Will Rock You [2] Let Me Entertain You [3] Death On Two Legs [4] Killer Queen [5] Bicycle Race [6] I'm In Love With My Car [7] Get Down, Make Love [8] You're My Best Friend [9] Now I'm Here [10] Dreamer's Ball [11] Love Of My Life [12] '39 [13] Keep Yourself Alive Disc 2 [1] Don't Stop Me Now [2] Spread Your Wings [3] Brighton Rock [4] Bohemian Rhapsody [5] Tie Your Mother Down [6] Sheer Heart Attack [7] We Will Rock You [8] We Are The Champions [9] God Save The Queen |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Produced by QUEEN |
79年のヨーロッパ・ツアーからセレクトしたクイーン初のライヴ・アルバム。あのコーラス、あのギター・オーケストレーションをライヴでどうやって再現するのか、という期待を持って聴くと恐らくガッカリする。スタジオで何度も重ね録りしたあのサウンドが再現できるはずもなく、初めて聴いたときにはずいぶガッカリした記憶がある。また、ファンなら良く知るところだけれど、フレディ・マーキュリーはライヴでは高音が出ない(ツアーを乗り切るために無理をしない)ために歌メロを大きく崩して歌うのもクイーンのライヴの特徴。フレディはノドのコンディションによって出来/不出来の差が激しいこともブートレグをいくつか聴くとわかってくる。一方でライヴだからこそわかるこのグループの魅力というのもある。ひとつはブライアン・メイをサウンドの中心としたオーソドックスな4ピース・ロック・グループとしての演奏力で彼らがテクニックを売りにしたグループでないのは改めて言うまでもないとはいえ、繰り返し聴けばツボを抑えたこの4人ならではのグルーヴ感があることに気づくはず。また、スタジオ録音では過剰なコーラスのよって、ともすれば隠れてしまっていた曲のメロディが浮き彫りになって改めて元の曲が持っている完成度に気づくこともある。ヨーロッパではオーディエンスの野太い声(男が多いから)による強力な後押しがあったこともこのアルバムを聴けば良くわかる。尚、メンバーが気に入ってないことも含め、このアルバムは必ずしもクイーン・ライヴのベストではない。79年に近い時期ということであれば「Rock Montreal」の方がお勧め。(2007年4月6日) |
The Game | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★★★ 評価:★★★★☆ |
Released in 1980 [1] Play The Game [2] Dragon Attack [3] Another One Bites The Dust [4] Need Your Loving Tonight [5] Crazy Little Thing Called Love [6] Rock It (Prime Jive) [7] Don't Try Suicide [8] Sail Away Sweet Sister [9] Coming Soon [10] Save Me Bonus EP [1] Save Me (Live in Montreal, Nov 1981) [2] A Human Body (B-Side of "Play The Game") [3] Sail Away Sweet Sister (Take 1 with Guide Vocal) [4] It's A Beautiful Day (Original Spontaneous Idea, Apr 1980) [5] Dragon Attack (Live at Milton Keynes Bowl, June 1982) |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Produced by QUEEN Co-Produced by Mack |
それまでのクイーンは、曲を4人で持ち寄って、アルバム・トータルを仕上げるやり方でレコーディング、アルバムを完成させてからシングルに向いている曲をシングル・カットする手法を取っていた。しかし、ここに来て違うプロセスでレコーディングが進められる。「Live Killers」をリリースして、次のアルバムを作るまでに時間的な余裕があったこともあり、まず[5][8][9][10]を録音して一旦レコーディングを中断。この時点でシングルとして[5]をリリース。短期英国ツアーを経てからその他の曲をレコーディングし、アルバムとして仕上げた。その結果完成したアルバムは、これまでにないほどアルバムとしてのまとまりに欠けるものとなった。とはいえ、元々クイーンのアルバム主義はピンク・フロイドのように1枚のアルバムにひとつのテーマを持たせるというコンセプトとは異り、ひとつひとつの曲は完結、通して聴いてストーリーを構築するというもの。そういった手法やアルバム至上主義はもはや時代遅れという潮流に従った結果、良い曲をただ10曲集めた、押し付けがましくないアルバムに仕上がった。ひとつひとつの曲は非常にコンパクトかつシンプル、トータルでもわずか35分ということも相まって通して聴いても実にアッサリと聴けてしまう。それでも個々の楽曲の質は非常に高くバラエティ豊か(それを支えるジョンのベースの柔軟さはここでも特筆モノ)、[3]や[5]のようにクイーンらしい新しい挑戦も抜かりなく、決して安易な商業主義に走ったわけではないのに、結果として全米で大ヒット。ヒットしたこと以外に話題にされることがないこのアルバムには実は珠玉の名曲が詰まっており、何より聴きやすいのが魅力でやはりクイーンでなければ作ることができないものになっている。僕個人としては、プロモーション・ビデオ制作時についでに撮影した写真でお茶を濁してしまったジャケットのせいで手抜き感が出ていることが印象を悪くしている気がしてしまう。尚、以前は入手可能だった輸入盤DVD-Audioでは5.1chミックスを楽しめる。もちろん高音質で音の分離はCDとは比較ならないほど圧倒的。[9]はミックス時にオリジナルのヴォーカル・トラック(というかロジャーのコーラス部分と思われる)が見つからなかったというクレジットの通り、差し替えられており、かなり違った印象になっている。(2007年1月14日) ボーナスEPについて。 [1]は「Rock Montreal」から。手抜きはやめてほしい。[2]は長らく CDでは入手できなかったロジャーの曲でCD Singles Boxでようやく初めて聴けて喜んでいたんだけれど、翌年にここに収録するのなら買わなきゃ良かったというのが本音。曲はいかにもシングルB面向けの緩さながら、コーラスも入ってそれなりにしっかり作ってある。[3]はごく初期のセッションのようでまだまだぜんぜん仕上がっていない。でも、そこが面白い。バンドの素の姿が見えるところがなんとも言えず、マニアなら絶対喜べる。[4]は「Made In Heaven」に収められたものの元ネタでフレディがピアノを弾きながら即興的に歌った曲だったことがわかる。この曲がこの時期のものだったというのには少し驚いた。[5] は「On Fire: Live At The Bowl」で既出。よりによってメドレーで演奏された曲を切り出して収録する意味がわからない。これなら入れない方がマシである。(2011年7月10日) |
Flash Gordon | ||
![]() 曲:★★ 演奏:★★★★ 入門度:★ 評価:★★☆ |
Released in 1981 [1] Flash's Theme [2] In The Space Capsule (The Love Theme) [3] Ming's Theme (In Court Of Ming The Merciless) [4] Ring (Hypnotic Seduction of Dale) [5] Football Fight [6] In the Death Cell (Love Theme Reprise) [7] Execution of Flash [8] Kiss (Aura Resurrects Flash) [9] Arboria (Planet of the Tree Men) [10] Escape From the Swamp [11] Flash To the Rescue [12] Vultan's Theme (Attack of the Hawk Men) [13] Battle Theme [14] Wedding March [15] Marriage Of Dale And Ming (And Flash Approaching) [16] Crash Dive On Mingo City [17] Flash's Theme Reprise (Victory Celebrations) [18] The Hero Bonus EP [1] Flash (Single Version) [2] The Hero(Oct 1980..Revisited) [3] The Kiss (Early Version) [4] Football Fight (Early Version,No Synths! -February 1980) [5] Flash (Live in Montreal, Nov 1981) [6] The Hero (Live in Montreal, Nov 1981) |
Freddie Mercury (vo, synth) Brian May (g, vo, synth) John Deacon (b, g, synth) Roger Taylor (ds, vo, synth) Produced by Brian May and Mack |
80年代中ごろあたりから、映画のサウンドトラックのアルバムが何枚もヒットした。その実態はヒット性の高い曲を集めて映画の挿入歌として、オムニバス・アルバムのように売るタイアップ企画であり、狙い通りヒット曲を量産、ひとつのビジネス・モデルとなった。その当時ほどお金の臭いがしないとはいえ挿入歌を集めたアルバムという点では現在の多くの映画サウンドトラックCDもなんら変わりはない。そして映画のサウンドトラックとはそういうものであるという認識は今ではすっかり定着している。このアルバムがリリースされた81年当時にはそのような挿入歌集という名のサウンドトラックという概念はなく、サウンドトラック=映画のシーンに合わせた作られた音楽であり、当然4分間の曲という形態であるはずもない。そんな時代にクイーンはサウンドトラックに挑戦した。つまり、スピルバーグの映画に音楽を提供しているジョン・ウィリアムスがしている仕事と同じことにロック・グループが取り組んだと言えば、いかにチャレンジングな仕事であったかということがわかってもらえるだろうか。そしてその音楽部分を集約したのがこのアルバム。いわゆる普通の曲が[1][18]だけなので通常のアルバムのように楽しめないのは事実であるものの、そのせいで駄作扱いするのは筋違いというものだ。あくまでも映画を観て、いかに音楽が効果的に場面を盛り上げているかという点で評価されなければならない。そしてクイーンは自分たちのスタイルで映画音楽を見事に作り上げた。ブライアンが誇りに思っているのもとてもよく理解できる。ただ、非常に痛いのは映画じたいが実に他愛のないB級SF映画であったこと。(2006年12月30日) ボーナスEPについて。 [1]はSEなどが違うシングル・バージョン。[2]はヴォーカルがダブル・トラックになっていたり、ギターの重なり方が違ったり、そもそもミックスがまったく違うなど、微妙な違いがいくつか発見できる別バージョン。[3][4]はスタジオ・セッションの音源が元になっており、シンセではなくフレディのピアノで演奏されている。映画用にできあがった曲よりも、こちらの方が生の空気が感じられて嬉しい(ブライアンのギターはオーバーダビングされている)。恐らくこのアルバム製作のために、このようなセッションが数多く持たれたはずで、もっと公開してほしいものだ。[5][6]は「Rock Montreal」からで完全に手抜き。(2011年7月11日) |
Hot Space | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★ 評価:★★★★★ |
Released in 1982 [1] Staying Power [2] Dancer [3] Back Chat [4] Body Language [5] Action This Day [6] Put Out The Fire [7] Life Is Real (Song For Lennon) [8] Las Palabras De Amor (The Words Of Love) [9] Cool Cat [10] Under Pressure Bonus EP [1] Staying Power [2] Soul Brother (B-side of "Under Pressure") [3] Back Chat (Single Mix) [4] Action This Day (Live In Tokyo, November 1982) [5] Calling All Boys (Live In Tokyo, November 1982) |
Freddie Mercury (vo, p, key) Brian May (g, vo, key) John Deacon (b, key) Roger Taylor (ds, vo, key) David Bowie (vo [10]) Produced by QUEEN and Mack Produced by QUEEN and David Bowie [10] |
僕はこのアルバムでクイーンに出会った。よりによって賛否両論というか否の方が多いこのアルバムが僕のクイーン・デビュー。当時、中学生だった僕は周囲のクラスメイトに影響され、キッス、レインボウ、スコーピオンズなどを聴きはじめ、いわゆるハード・ロックにのめり込みつつある時期だった。そんなときに聴いたこのアルバム。ハイ・トーンで力強いヴォーカル、シャープでカッコいいコーラス、速弾きよりもメロディが映える色彩豊かなギター、しっかりとしたメロディ、バラエティ豊かな曲調・・・それまでに聴いてきたハード・ロックとはまったく違うと感じつつも確かにロックのフィーリングがあり、そしてポップでもあるというのが僕の印象だった。クイーンらしくないとしてファンが離れたことで有名な本作は、しかし何の先入観も予備知識も持たずに聴いた僕の第一印象(上記)がクイーンの本質を捉えていたように、クイーンらしさがないということはまったくない。「クイーンは大袈裟でなければ」「オペラティックなコーラスがガンガン入っていなければ」「一体何回重ね録りしてるのかと思わせるほどのギ ター・サウンドで埋め尽くされていなければ」という旧来のファンの思い込みによるクイーン・サウンドの特徴は表面的なものでしかない。クイーンのアルバムすべてを知ってから改めて聴いてもこのアルバムは実にクイーンらしい。確かに表現方法はそれまでと違ってファンク/ソウル/R&Bの手法を取り入れたのは事実。それとて、常に変化し挑戦し続けることもクイーンらしさであることを理解していれば自然なことと受け入れられる。とまあ、これは僕の勝手な意見であって、このアルバムの曲はあまりライヴで演奏されなかったりベスト盤にも収録されなかったりで、当の本人たちすらあまり愛着を見せていないこともあってかほとんど話題にならないことは紛れもない事実。ファンクでも自分のスタイルで堂々とこなすフレディの才能満開の[1]、ファンクとハード・ロック・テイストを融合させた[2]、実は81年のツアーで"Keep Yourself Alive"のイントロに原型を披露していた[3]、最も冒険的なクール・ファンクの[4]、ロジャーのロックン・ロールをファンキーに仕上げた[5]、音作りはR&B/ファンクのトレンドに倣いながらブライアンらしいハード・ロックの[6]、フレディが珍しくストレートに自分の心情を歌う[7]、「手を取りあって」の南米版といえる[8]、全編ファルセットで歌い上げるソウルそのものの異色作[9]、いずれもこのアルバムでしか聴けないものばかり。しかも、アレンジやサウンド処理には細心の注意が払われ、そのセンスにはクイーンらしさを十分に感じ取ることができる。こんな完成度の高いアルバムはクイーン以外には絶対に作れないし、表面的なサウンドに囚われて拒絶してしまうには余りにも勿体ない。尚、ジャケットのデザインはフレディ。そしてロジャーはこのジャケットを「この色使い見てよ。最悪だろ?」と堂々とインタビューで言ってしまう。こんなところにこのグループが長続きした理由を感じてしまう。(2006年12月30日) ボーナスEPについて。 [1]は「On Fire: Live At The Bowl」で既出。またしても手抜き。[2]はいかにもシングルB面らしい6拍子のブルースにフレディのファルセットが冴える隠れ人気曲。後半のブライアンのタメたギターもいい。[3]は作者であるジョン自身が手がけた短いシングル・ミックスで音の処理が微妙に違う。[4][5]は82年西武球場の音源で、昔ビデオ化されていたときにも未収録だった初登場音源。(2011年7月11日) |
The Works | ||
![]() 曲:★★★ 演奏:★★★ 入門度:★ 評価:★★☆ |
Released in 1984 [1] Radio Ga Ga [2] Tear It Up [3] It's A Hard Life [4] Man On The Prowl [5] Machines (Back To Humans) [6] I Want To Break Free [7] Keep Passing The Open Windows [8] Hammer To Fall [9] Is This The World We Created...? Bonus EP [1] I Go Crazy (B-Side of "Radio Ga Ga") [2] I Want To Break Free (Single Remix) [3] Hammer To Fall (Headbanger's Mix) [4] Is This The World We Created...? (Live in Rio, Jan 1985) [5] It' A Hard Life (It' A Hard Life, Jan 1985) [6] Thank Gos It's Christmas |
Freddie Mercury (vo, p, key) Brian May (g, vo, key) John Deacon (b, key) Roger Taylor (ds, vo, key) Produced by QUEEN and Mack |
僕がクイーンの新譜発売を待ったのはこのアルバムから。発売日には学校から急いで帰り、レコード・ショップまで自転車を飛ばして、予約してあったこのアルバムを取りに行ったことを今でも覚えている。「Hot Space」でハマり「Greatest Hits」で70年代のクイーン・サウンドもたっぷり聴き込んだ僕は、しかし不安でもあった。一体次はどんなサウンドになるんだろう。そして、発売前に MTV で何度も流れた[1]はまたしても新境地を開く曲になっていて、さすがという思いを抱いたのと同時にアルバムの方向性がますます予想できなくなっていた。その[1]はロジャー初のシングル(アメリカでは"Calling All Girls"がひっそりとシングル・カットされたことはあった)、しかもアルバムからのファースト・シングルというこれまでにない展開。全域エレクトロニクスとドラム・マシンを採用。しかもブライアンのギターは限りなくゼロという70年代サウンドとは程遠い曲で結構冒険している。[2]以降はブライアンのヘヴィなギターも入り、往年のクイーン・サウンドが復活。それでも、完全に逆戻りしなかったことは彼等の意地だったのか4人の純粋な志向だったのか。当時、何度ターンテーブルに乗せたかわからないこのアルバム、いかにもジョンらしいほのぼのポップ[6]に変わらぬ魅力を感じつつも今聴くことはほとんどない。というのはやはり「Hot Space」での商業的な失敗を取り返そうというネガティヴな気持ちがどうしてもあったように思えてしまう。[2] は "We Will Rock You"を、[3] は"Play The Game"を、[4] は "Crazy Little Thing Called Love"を連想させる。もちろん曲の構造じたいは異なるとはいえ、これはいただけない。そして最大の汚点は[9]。クイーンは徹底した娯楽バンドであり続けてきた。だから現実逃避して音楽に没頭できる。そういう意味ではディズニーランドやハリウッド映画となんら変わりないし現実的な歌でも架空のストーリーとして楽しめる気軽さがあった。直接的に政治や世相を嘆いたり社会的メッセージを歌うということとは完全に距離を置いた純娯楽バンドであることがクイーンの存在意義。後に、アパルトヘイト批判で公演が禁止されていた南アフリカでライヴを行ってしまったのもそんなノンポリの表れだったのに[9]でやってしまった。この1曲のせいで、「クイーンはつまらないメッセージ・ソングを1曲も歌わなかった素晴らしき娯楽バンド」と表現することができなくなってしまったのである。(2007年1月8日) ボーナスEPについて。 [1]はアップテンポのハードロックで、良い意味でノリ一発でできている曲。アルバムに入れることを最初から想定してなかったからこのような遊びができたのだろう。[2]はイントロと間奏が長いシングル・バージョン。[3]はイントロ前にドラムとギターを足し、エンディングでもアルバム収録バージョンにはないブライアンのソロを大フィーチャーした、よりハードロック的な仕上がりのミックス。12インチシングルとしてリリースされていた模様。[4][5] は Rock In Rio の音源で既発。[6]はこれまでベスト盤かシングル・コレクションでしか聴けなかったクリスマス・ソング。聴いたことがないのは[3]だけで、しかも単なるミックス違いでは物足りない。リマスター・シリーズの中で一番価値が低い。(2011年11月19日) |
A Kind Of Magic | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★☆ 入門度:★★ 評価:★★★ |
Released in 1986 [1] One Vision [2] A Kind Of Magic [3] One Year Of Love [4] Pain Is So Close To Pleasure [5] Friends Will Be Friends [6] Who Wants To Live Forever [7] Gimme The Prize [8] Don't Lose Your Head [9] Princes Of The Universe Bonus EP [1] A Kind Of Magic (Highlander Version) [2] One Vision (Single Version) [3] Pains Is So Close To Pleasure (Single Remix) [4] Forever (Piano Version) [5] A Kind Of Vision [6] One Vision (Live at Wembley Stadium, July 11th 1986) [7] Friends Will Be Friends Will Be Friends... |
Freddie Mercury (vo, p, key) Brian May (g, vo, key) John Deacon (b, key) Roger Taylor (ds, vo, key) [1] [3]-[5] [9] [11] Produced by QUEEN and Mack [2] [6]-[8] [10] [12] Produced by QUEEN and David Richards |
「The Works」で人気を取り戻したクイーン。しかしその状況は国によってかなり違っていた。大雑把に言うと地元英国および欧州では押しも押されぬ大物グループになり、一方で北米と日本では一気に過去のグループに転落。休養を挟んで取り組んだはずの「The Works」制作にはかなり苦労したと当時ロジャーはインタビューで語っており、グループの進むべき方向性がメンバーごとにズレてきていたことを窺わせていた。ギクシャクしたところが解消されないままに終えた「The Works」ツアー、しかしそんなときに出演したライヴ・エイドで絶賛を浴び、何よりも不特定多数のオーディエンスに大ウケしたことで自分たちにはまだこんなに力があったんだと再認識、メンバーがやる気を取り戻したのは有名な話(映画「Bohemian Rhapsody」では別の作られたストーリーに改変されていたけど)。そうは言っても一度ギクシャクした音楽性の相違がそう簡単にスッキリするはずもなく、バンドとしてのやる気を取り戻したとしてもアルバムを作るための主軸を見出すことができない。そんなときにやってきた映画「ハイランダー」への曲製作のオファーは渡りに船だったに違いない。当初は1曲のオファーだったにもかかわらず6曲も提供したのは、曲のテーマが決まっている方が4人の方向性をまとめやすかったからではないかと僕は勝手に推測している。映画というテーマを見つけることができたおかげでこのアルバムには過去の焼き直し的な印象はないし、映画用というエクスキューズからストリングス/オーケストラの導入やサックス・ソロを入れたりとこれまでにできなかったことにも抵抗なくトライできた。しかし、それでもまだグループとしての一体感が戻ってこない。フレディとジョン、ブライアンとロジャーそれぞれの曲でわざわざプロデューサーを分けているのもそんなまとまりのなさの表われか。ハード・ロック・チューンの[7]と[9]は作者が違うにもかかわらず、あまり印象が違っておらず、アイディアの枯渇をも窺わせる。発売当時のアルバム・レビューに「フレディ、ロジャー、ジョンのソロ・プロジェクトにブライアンがゲスト参加しているかのよう」と書かれていたのはサウンド面では的を得ていると思うし、前作と並んでクイーンがもっとも迷っていた時期のアルバムと言える。そんな、まだまだ復活しきれていないクイーンはこのアルバムリリース後の欧州ツアーで記録的な観客を動員し、確固とした地位を確立。一方で北米と日本では見向きもされなくなっていた。尚、このアルバムに収録されている曲は映画に使われた音源ではなく、改めて録音し直したものなので映画をチェックして違いを聴きとるのもマニアックな楽しみ。[2]は映画のエンディングで流れる曲ながら、ダンサンブルなベースラインではなく普通な仕上がりになっている。以下、まったく個人的な思い出。この頃、我が家にもCDプレイヤーがやってきていよいよクイーンの新譜を高音質で聴けるようになったと喜んでいた。ところが当時はまだアナログが主流でCDは発売時期が遅れるのが普通だった。このアルバムはなんとアナログ発売から2ヶ月も後にCDが発売された。発売されているのに聴けなかった苦しみ(?)は今でもよ〜く覚えている。(2006年1月9日) ボーナスEPについて。 [1]は映画に使われたバージョンで、最大の違いはダンス・ミュージックのようなリズムではなく、平板なベースラインと、ドラムマシンではなくロジャーのドラムになっているところで、だいぶ印象が違う。[2]はイントロが短いシングル・バージョン。[3]はアメリカ、カナダ、オーストラリアでシングルカットされたという同曲のシングル・バージョンで、イントロや途中のバスドラムの入れ方など、よりダンス・ミュージックっぽい仕上がりになっている。エンディング間際のギターも少し違っていてなかなかレア。[4]は昔からCDには収録されていたもの。ピアノを弾いているのはブライアン。[5] は"A Kind Of Magic"のデモで仮の歌詞でフレディが歌っている。その歌詞に"One Vision"が入っているという珍品。つまり"One Vision"の歌詞はロジャーのアイディアが元になっていると想像できる。[6]はウェンブリーのライヴだが、これまでリリースされていた6月12日のものではなく11日の音源(11日も今はDVD化されている)。[7]も[4]と同じくもともとはCDに入っていたもの。尚、旧CDに入っていた、曲の後半部分に12インチシングルと同じ長いギターソロを収めた "A Kind Of 'A Kind Of Magic'" は2011年リマスター盤ではオミットされている。(2018年11月20日) |
Live Magic | ||
![]() 曲:★ 演奏:★★★★★ 入門度:★ 評価:★ |
Released in 1986 [1] One Vision [2] Tie Your Mother Down [3] Seven Seas Of Rhye [4] Kind Of Magic [5] Under Pressure [6] Another One Bites The Dust [7] I Want To Break Free [8] Is This The World We Created...? [8] Bohemian Rhapsody [10] Hammer To Fall [11] Radio Ga Ga [12] We Will Rock You [13] Friends Will Be Friends [14] We Are The Champions [15] God Save The Queen |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Produced by QUEEN and Trip Khalaf |
クイーン史上最大規模(そして結果的に最後)のツアーとなったマジック・ツアーの模様を収録したライヴ・アルバム。発売当時、オフィシャルのライヴ・アルバムは「Live Killers」しかなかった時代、なにはともあれ期待に胸を膨らませて入手した。しかし、なぜ2枚組でないのかという疑問を抱きつつ聴いてみるとこれがヒドイ。何がヒドイって曲がズタズタに編集されているから。[3][6][10]にわざわざ Full Live Version という注釈がついているくらい、ほとんどの曲が編集、カットされている。[9]はオペラ・セクションまるごとカットという荒業で、長すぎてシングル発売を反対されたところを押し切ったという話はなんだったのかという粗雑な扱い。欧米ではまだアナログ・レコードが主力の時代で収録時間の制約を守りつつ、シングル・アルバム商品として成立させることが何よりも優先された結果と思われる(実際収録時間はわずか47分)。これはいわばマジック・ツアー・ダイジェスト。完全主義者と言われたクイーンはどこへいってしまったのだろう? 彼等がどういう意図でこのアルバムを出したのか未だに不明。こんな作りが許されるのなら、そもそも元の曲は無駄なところだらけだったということになってしまう。フレディが鬼籍に入った後発売された、恐らく本来はリリースされる予定ではなかったはずの「Live At Wembly」がある今となってはまったくもって不要なアルバム。ただし、本来のパフォーマンスは素晴らしく異常な盛り上がりを見せる欧州オーディエンスのパワーも実感できるという側面はある。それでも尚、ディスコグラフィから消えてほしいとすら願ってしまう珍品。強いて価値を求めるならクイーン最後のコンサートとなったネブワースの音源が含まれていることくらいか。(2007年1月9日) |
The Miracle | ||
![]() 曲:★★★★☆ 演奏:★★★★☆ 入門度:★★★★ 評価:★★★★★ |
Released in 1989 [1] Party [2] Kashoggi's Ship [3] The Miracle [4] I Want It All [5] The Invisible Man [6] Breakthru [7] Rain Must Fall [8] Scandal [9] My Baby Does Me [10] Was It Worth It Bonus EP [1] I Want It All (Single Version) [2] The Invisible Man (Early Version with Guide Vocal Aug 1988) [3] Hang On In There (B-Side of "I Want It All") [4] Hijack My Heart (B-Side of "Invisible Man") [5] Stealin' (B-Side of "Breakthru") [6] Chinese Torture [7] The Invisible Man (12" version) |
Freddie Mercury (vo, p, key) Brian May (g, vo, key) John Deacon (b, key) Roger Taylor (ds, vo, key) Produced by QUEEN and David Richards |
「A Kind Of Magic」は幾分上昇気配を感じたもののバンドとしてはもうかつての創造性は望めないかとも思っていた。そして3年ものインターバルを置いてリリースされたこのアルバムにもさほど期待せずにCDのトレイに乗せてみた。[1]から何かこうやる気漲るエネルギーが出ていて「おおっ」と思っていると[2]にそのままつながって、グイグイ惹きつけられ、その期待を裏切る充実振りに驚ろかされたことをよく覚えている。これまで作曲者を明確にしてきたのから一転、クレジットを「QUEEN」に統一したという形以上に音楽に一体感があり、クイーンの完全復活という印象を強烈に受けたのは本人たちのモチベーションがそのまま出たことに由来している。その理由は、この後ツアーをしなくなったことも含めて今となっては良く知られているところではあるけれど「Innuendo」とは違って明るく、娯楽性に満ちたものであるところがこのアルバムの魅力と言える。「The Works」以降、4人の個性をむりやりひとつの器に収めてきた感じだったところから一転、ここではお互いが積極的かつ前向きにグループとしての創作に取り組んでいることを強く感じさせ、自然にまとめ上げることに成功している。だから曲がバラエティに富んでいても統一感がある。しかし 89年といえばクイーンは日本ではすっかり過去のバンド扱いでニュー・アルバムのリリースなどほとんど 無視されていたし、今でもこのアルバムを評価する声はあまり多くないのが極めて残念。80年代クイーンの最高傑作。 以下、デヴィッド・リチャーズのインタビューなどから得た各曲の作者情報。 [1][2] はバンド全体でのセッションから完成。 [3] はフレディ。 [4] ブライアン。 [5] ロジャー。 [6] フレディとロジャー。 [7] ジョン作で歌詞がフレディ。 [8] ブライアン。 [9] ジョンのリズム・パターンにフレディがメロディと歌詞を付けたもの。 [10] フレディ。 尚、ブライアンは当時プライベートに問題(アニタ・ドブソンとの不倫スキャンダル → [8]の着想へ)を抱えていたことから「ミラクルはギターをたくさん弾いたけれどあまり深く曲には関知していないんだ」と語っている。(2007年4月8日) ボーナスEPについて。 [1]はイントロがコーラスで始まり、間奏が省略されたシングル・バージョン。[2]はまだデモ・テープに近い演奏とヴォーカル。ただ、ヴォーカルの一部とギター・ソロは本テイクに採用されたものを重ねているようだ。ヴォーカルはフレディとロジャーが分け合っている。制作過程のためかドラムマシンはまだ使われておらず、ロジャーのドラムで通してある。このアルバムのボーナスEP唯一の「おっ」と思わせる発掘。[3][6][7]は旧来のCDにも収められていたもので目新しさはゼロ。[4]はロジャーのソロ・アルバムに入っていてもおかしくない、ミドルテンポでリラックスしたポップな曲。ヴォーカルはもちろんロジャー。[5]はスタジオでジャムっていたらこんな感じになりました、といリラックスした演奏で完成度は低いものの、バンドの素の姿を伝えているところが魅力。全体として[2]以外はブートレグでも聴けるし、そのブートレグにはもっと貴重な曲、テイクが入っていることを考えるとこの程度の蔵出しではいかにも物足りない。(2011年11月19日) |
Innuendo | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★ 評価:★★★★★ |
Released in 1991 [1] Innuendo [2] I'm Going Slightly Mad [3] Headlong [4] I Can't Live With You [5] Don't Try So Hard [6] Ride The Wild Wind [7] All Gods People [8] There Are The Days Of Our Lives [9] Delilah [10] The Hitman [11] Bijou [12] The Show Must Go On Bonus EP [1] I Can't Live With You (1997 Rocks Retake) [2] Lost Opportunity (B-Side of "I'm Going Slightly Mad") [3] Ride The Wild Wind (Early Version with Guide Vocal) [4] I'm Going Slightly Mad (Mad Mix) [5] Headlong (Embryo with Guide Vocal) |
Freddie Mercury (vo, p, key) Brian May (g, vo, key) John Deacon (b, key) Roger Taylor (ds, vo, key) Produced by QUEEN and David Richards |
「The Miracle」での復活ぶりに一人喜んでいた(当時周囲にクイーンを語る人は皆無だった)僕は、わずか1年9ヶ月のインターバルでリリースされたこのアルバムでさらに驚かされる。4人の結束力はさらに高まりクイーンをより素晴らしいものにしようという決意が感じられたから。芸能ゴシップネタに疎かった僕はフレディの健康状態が良くなかったことなどまったく知らず、ただただその充実振りを喜んだ。80年代に身に付けたポップさに加えて、往年のクイーン・サウンドが完璧に融合。こんな充実したアルバムが作れるのならクイーンは安泰などと呑気に構えていたのだ。今ではフレディが残された命を捧げて、そして他のメンバーも一体となって製作に挑んだことは知られるところだけれど、もともと才能に溢れた奇跡のグループが本気になって作ったアルバムの質が低いはずがない。ここでもクイーン以外の何者でもないバラエティ豊かな曲が展開され、透明感溢れるフレディのヴォーカルが独自のサウンドをさらに昇華させる。[12]を筆頭に未だに冷静に聴くことができないアルバムだけれど、その最後の輝きは他のアルバムと比べることができないほど独特かつ美しい。遺作になるとわかっていて魂を注ぎ込んだアルバムなど他にないのだから。 以下、デヴィッド・リチャーズのインタビューなどから得た各曲の作者情報。 [1] 全員の共作で歌詞はロジャーが中心。 [2] フレディ。 [3][4] ブライアン。 [5] フレディとブライアン。 [6] ロジャー。 [7] フレディとマイク・モーラン。フレディの「バルセロナ」でボツになった曲。 [8] ロジャー。 [9] フレディ。 [10] フレディとロジャー。 [11] フレディとブライアン。 [12] フレディとジョンがはじめたが頓挫、その後ブライアンが完成させた。(2007年4月8日) ボーナスEPについて。 [1] はベスト盤「Rocks」に収録されたバージョン。イントロとエンディングに趣向を凝らしているところが目立つ程度だが、解説によるとドラム・サウンドをブライアンがいじっているようだ。[2]はCDシングル「Headlong」に収録されていた曲でブライアン作のスロー・ブルース。ヴォーカルもブライアン。レコーディングして残すことを目的として作ったというよりは、録音してみたらまずまずだったからB面に入れてみたという感じがする。[3]はロジャーがヴォーカルを取るバージョンでギターソロはじめ、演奏も違う。[4]はドラム抜きでベースも軽く添えられる程度というミックス。妙な効果音も沢山入っている。[5]はブライアンがヴォーカルを取る、かなり荒っぽいバージョン。元バージョンに使われている演奏に、更にギターが加えられている。総じて「Innuendo」のボーナスEPはなかなか貴重な 曲、テイクが多い。(2011年11月19日) |
Made In Heaven | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★★☆ 入門度:★★ 評価:★★★★ |
Released in 1994 [1] It's A Beautiful Day [2] Made In Heaven [3] Let Me Live [4] Mother Love [5] My Life Has Been Saved [6] I Was Born To Love You [7] Heaven For Everyone [8] Too Much Love Will Kill You [9] You Don't Fool Me [10] A Winter's Tale [11] It's A Beautiful Day (reprise) Bonus EP [1] Heaven For Everyone (Single Version) [2] It's A Beatiful Day (B-Side of "Heaven For Everyone") [3] My Life Has Been Saved (1989 B-Side Verison of "Scandal") [4] I Was Born To Love You (Vocal & Guitar Version) [5] Rock In Rio Blues (Live,B-Side of "A Winter's Tale") [6] A Winter's Tale (Cosy Fireside Mix) |
Freddie Mercury (vo, p, key) Brian May (g, vo, key) John Deacon (b, key) Roger Taylor (ds, vo, key) Produced by QUEEN and David Richards |
「Innuendo」を完成させた後、余命僅かなフレディの創作意欲に衰えはなく他のメンバーにこう言った。「どんどん曲を書いてくれ。僕は歌うから」。メンバーはフレディの健康状態が良いときに、いつでもスタジオに入れるように準備していた。4人が残された時間をクイーンに捧げた結果残された音源は、しかしアルバムを完成させるまでの量には至らなかった。その残されたヴォーカル・トラックに演奏を新たに加えた曲と、既存の曲の演奏を差し替えて再編成した曲とで成り立っているのがこの最終作。最後に残された音源は[1][3][4][8]-[11]。[3]は不足していたヴォーカル・パートをブライアンとロジャーで補っている。尚、インタビュー記事などからの各曲の作者情報は次の通り。 [3] フレディ生前に1番まで完成。2番以降はブライアンとロジャーが仕上げた。 [4] ブライアン。 [8] ブライアン。 [10] フレディ。 [1][11]は情報はないけれどフレディしかあり得ないでしょう。 既存の曲は以下が原曲。 [2][6]はフレディのソロ・アルバム「Mr. Bad Guy」がオリジナル。 [5] は「The Miracle 収録のシングル "Scandal" のB面。 [7] はロジャーのソロ・プロジェクト、ザ・クロスにフレディがゲスト参加した曲。 いずれも、演奏部分はこのアルバムのために再レコーディングされている。 フレディは単に曲を書いて歌っていただけでなく、レコーディングでは演奏にも指示を出しプロデューサー的なまとまめ役をやっていた。このアルバムを仕上げたのはブライアンであり、当然サウンドの感触も完成度も他のアルバムとは異なり、ブライアンのソロ・アルバムに近い。 このアルバムが発売されたとき、CDショップでは特設コーナーが設けられ豪華な装丁のCDが山積みされていた。「A Kind Of Magic」「The Miracle」でほとんどプロモーションをしなかった東芝EMIは、ここぞとばかりに宣伝に力を入れた。なんだか悲しかった。クイーンはなんと愛情のないレコード会社と契約していたんだろう、と。その後の東芝EMIもご存知の通り、ドラマやCMソングに便乗したベスト盤を出したりと金儲けに余念がなかった。 (2007年4月8日) ボーナスEPについて。 [1]は間奏をカットするなどして54秒短縮したシングル・バージョン。編集が巧みなのでぼんやり聴いていると違いがわかりにくいくらい上手くまとまっている。輸入盤ボックス・シングル "Heavens For Everyone"に収録されていた。[2]はいろんな部分を切り貼りして1曲にまとめあげたバージョン。[3]はシングル"Scandle"のB面曲そのもの。台詞のような部分もあり、よりリラックスした演奏になっていて、これはこれで味わい深い。[4]はバックをピアノだけにしたバージョンでフレディのボックスセットに収録されていた。曲をシンプルに味わえると共に、これだけで曲として成立しているほど、骨格がしっかりした曲であることがわかる。[5]は Rock In Rio の音源でビデオではお馴染み。[6]はヴォーカルの音処理を変えてエコーを抑えたことで、曲の印象がまた違っている。(2011年11月19日) |
At The Beeb | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★ 入門度:★ 評価:★★★ |
Released in 1989 [Recording Date] 1973/2/5 [1]-[4] 1973/12/3 [5]-[8] [1] My Fairy King [2] Keep Yourself Alive [3] Doin' Alright [4] Liar [5] Ogre Battle [6] Great King Rat [7] Modern Times Rock'n'Roll [8] Son And Daughter |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Produced by Bernie Andrews |
日本での人気もかなり落ち込んでいた89年に突然「クイーン最初期のライヴ」として、正規発売元の東芝 EMI ではなくテイチク・レコードから発売された。邦題は「女王凱旋〜戦慄のライヴ・クイーン」。当時クイーンのオフィシャル・ライヴ音源と言えば「Live Killers」、ズタズタに編集された「Live Magic」のみという時代。ビデオでは82年の「ライヴ・イン・ジャパン」があったものの廃盤。あとはNHK FMで放送されたクリスマス・コンサートの録音テープを個人的に持っていたくらい。そんな時代に「クイーン最初期のライヴ」がリリースされるとあって色めき立ったのは僕だけではなかったはず。さて、その中身はというとBBC向けに録音されたセッションでライブ演奏でありながらコーラスもギターもしっかりとオーバー・ダビングされてたもの。ライヴというよりはファースト・アルバムの別テイク集といった感じ。演奏や歌い方に微妙な違いがあるけれどアレンジは基本的に同じで、録音状態やミックスのバランスもイマイチとあってずいぶんガッカリした記憶がある。強いて言えば完成度が低い分、荒っぽい仕上がりであることが魅力か。中でも特にスタジオ盤よりかなりもラフな[5]、後のブライトン・ロックのギター・ソロ部分を間奏に挟んだ[8]が聴きどころ。マニアでもない限り、それを聴くためだけに手を出す必要はない。尚、国内盤は廃盤で、輸入盤「At The BBC」でも入手しづらくなっている。(2013年11月14日) 現在は「On Air」にこの音源はすべて含まれている。(2018年11月20日) |
On Air | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★ 入門度:★ 評価:★★★ |
Released in 2016 [Recording Date] 1973/2/5 Disc 1 [1]-[4] 1973/7/25 Disc 1 [5]-[8] 1973/12/3 Disc 1 [9]-[12] 1974/4/3 Disc 2 [1]-[3] 1974/10/16 Disc 2 [4]-[7] 1977/10/28 Disc 2 [8]-[12] 1973/9/13 Disc 3 [1]-[9] 1981/3/21 Disc 3 [10]-[17] 1977/10/28 Disc 3 [18]-[24] Disc 1 [1] My Fairy King [2] Keep Yourself Alive [3] Doing All Right [4] Liar [5] See What A Fool I’ve Been [6] Keep Yourself Alive [7] Liar [8] Son And Daughter [9] Ogre Battle [10] Modern Times Rock 'n' Roll [11] Great King Rat [12] Son And Daughter Disc 2 [1] Modern Times Rock 'n' Roll [2] Nevermore [3] White Queen (As It Began) [4] Now I’m Here [5] Stone Cold Crazy [6] Flick Of The Wrist [7] Tenement Funster [8] We Will Rock You [9] We Will Rock You (Fast) [10] Spread Your Wings [11] It’s Late [12] My Melancholy Blues Disc 3 [1] Procession (Intro Tape) [2] Father To Son [3] Son And Daughter [4] Guitar Solo [5] Son And Daughter (Reprise) [6] Ogre Battle [7] Liar [8] Jailhouse Rock [9] Intro [10] We Will Rock You (Fast) [11] Let Me Entertain You [12] Im In Love With My Car [13] Alright Alright [14] Dragon Attack [15] Now I’m Here [16] Love Of My Life [17] Kind Of Magic [18] Vocal Improvisation [19] Under Pressure [20] Is This The World We Created [21] (You’re So Square) Baby I Don't Care [22] Hello Mary Lou (Goodbye Heart) [23] Crazy Little Thing Called Love [24] God Save The Queen Disc 4,5 Interviews |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Produced by Bernie Andrews (1973/2/5, 12/3) Jeff Griffin (1973/7/25, 1974/10/16, 1977/10/28) Pete Ritzema (1974/4/3) |
年季の入ったファンならご存知の通り、クイーンはBBCに計6回のセッションを残している。ブートレグでは「Complete BBC Sessions 1973-1977」などのタイトルで世に出ており、いずれも熱心なマニアにはよく知られた音源。 Disc 1。 上記「At The Beep」で書いた通り、Disc 1のセッションはコーラスもギターもオーバーダビングが施されており、完成一歩手前のスタジオ盤別テイク集のような趣。ヴォーカルの歌い回し、コーラスのかけ方、微妙なアレンジの違い、部分的なリード・ヴォーカル違いなど細かいところでいろいろとアルバム・バージョンと違うところがあり、熱心なマニアにとってはなかなか興味深いところもある。Disc 1 [8] の"Son And Daughter"は初期の彼らのステージの通り、後の"Brighton Rock"ライヴの原型が挿入されるスタジオ・ライヴ演奏になっている。 Disc 2。 1974年4月3日収録曲はわずか3曲ながら、スタジオ盤とは演奏が明らかに違っていて初期のステージでの演奏そのままをBBCのスタジオで披露している印象。従って、こちらは「ライヴ」と呼んでも差し支えな生々しさがある。ライヴで演奏されたことがないはずの"Nevermore"もオーバーダビングは控えめでシンプルに仕上がっている。尚、この日は"The March Of The Black Queen"も放送されたことになっているものの、放送ではアルバムの音源を流したとされており、セッション音源としては残っていない。1974年10月16日収録[4]は、リード・ヴォーカルとギターソロが少し違っているだけで演奏とコーラスはスタジオ盤と同じ、[5]は演奏とコーラスはスタジオ盤と恐らくは同じ、ヴォーカルだけが別テイクで歌いまわしもそれほど大きく変えていないため、ファンでない人にはわからない程度の違いしかなく、あまり価値は高くない。聴きどころは[6]で全く異なる(しかしあまり格好良いとは言い難い)ギター・ソロが聴けるところくらいか。77年収録の[8]-[12]は、他の日のセッション同様に多少のオーバーダビングがありつつも驚きの連続。"We Will Rock You"は通常バージョン(ヴォーカルは異なる)で演奏され、続けて後にステージのオープニングを飾るFastバージョンに繋げるというレアなメドレーが聴ける。"Spread You Wings"も後の「Live Killers」の雰囲気が漂うスタジオ・ライヴ演奏で後半にテンポを上げて盛り上げるという他では聴いたことのないレア・バージョン。[11] "It’s Late"、[12] "My Melancholy Blues"もアルバム・バージョンとは異なるスタジオ・ライヴで、前者は"Get Down Make Love"の中間部を挿入する珍バージョン、後者はブライアンのオブリガートと渋いギターソロが入るレア・バージョンが聴ける。6回のセッションの中では一番面白い内容。 Disc 3。 BBC音源ということでは、実際のステージを捉えた73年9月13日のライヴ音源が良好な音質のブートレグとして良く知られていて、スーパー・デラックス・エディションにはそれも収録。音質はもちろん向上。ブライアンのギターがヘヴィに捉えられていてベースやドラムとのバランスも良好、ただし、ヴォーカルがかなり遠いのはフレディ・ファンにはちょっと辛いという特徴があり、残念ながらそうした音のバランスは今回のオフィシャル化でも改善されていない(技術的に困難?)。また、ブートレグではこのステージの最後に2曲(合わせておよそ約7分)のロックンロール・メドレーを聴くことができるのに、恐らくは実際の放送時のまま”Jailhouse Rock”が1分程度でフェードアウトしてアナウンスが被って終わってしまうのは残念。マスターテープはあるはずなので、実際に電波に乗った音源かどうかにこだわらずにすべて収録してほしかった。スーパー・デラックス・エディションはその他に、81年3月20日サンパウロ公演から(モノラル)、86年6月21日ドイツ公演からのライヴ音源も収録されている。前者は粗悪な音質が多い南米ツアーにしてはまずまず良好な音質、後者は「Live At Wembley」と同等の音質ではあるものの、こちらも放送音源をそのまま収録(故にタイトルが「BBC Sessions」ではなく「On Air」ということらしい)しているようで、それぞれ8曲ずつと少ないためボーナストラックに近い扱い。インタビュー集はおまけの更におまけ的なもの。(2018年11月20日) |
Live At Wembly '86 | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★☆ 入門度:★★★ 評価:★★★☆ |
Released in 1992 [Recording Date] 1986/7/12 Disc 1 [1]. One Vision [2] Tie Your Mother Down [3] In The Lap Of Gods [4] Seven Seas Of Rhye [5] Tear It Up [6] A Kind Of Magic [7] Under Pressure [8] Another One Bites The Dust [9] Who Wants To Live Forever [10] I Want To Break Free [11] Impromptu [12] Brighton Rock Solo [13] Now I'm Here Disc 2 [14] Love Of My Life [15] Is ThisThe World We Created [16] (You're So Square) Baby I Don't Care [17] Hello Mary Lou [18] Tutti Frutti [19] Gimme Some Lovin' [20] Bohemian Rhapsody [21] Hammer To Fall [22] Crazy Little Thing Called Love [23] Big Spender [24] Radio Ga Ga [25] We Will Rock You [26] We Are The Champions [27] God Save The Queen |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Wembley Stadium, England |
DVDでも発売されているウェンブリーのライヴ。有名なこの日の公演はまず何曲かをカットしてビデオで発売された。次に完全版のこのCD、最後が完全版のDVD、ダメ押しで前日11日のライヴも追加したスペシャルエディションという流れ。このCDはフレディの死に便乗した感もあったものの、マジック・ツアーのステージ完全版として初めて聴けるアルバムとしてありがたかった。音だけでも楽しめるけれど、できれば映像を観ていただきたいところ。(2006年9月16日) |
On Fire: Live At The Bowl | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★★ 評価:★★★★★ |
Released in 2004 [Recording Date] 1982/6/5 Disc 1 [1] Flash [2] The Hero [3] We Will Rock You (Fast) [4] Action This Day [5] Play The Game [6] Staying Power [7] Somebody To Love [8] Now I’M Here [9] Dragon Attack [10] Now I’M Here (Reprise) [11] Love Of My Life [12] Save Me [13] Back Chat Disc 2 [14] Get Down Make Love [15] Guitar Solo [16] Under Pressure [17] Fat Bottomed Girls [18] Crazy Little Thing Called Love [19] Bohemian Rhapsody [20] Tie Your Mother Down [21] Another One Bites The Dust [22] Sheer Heart Attack [23] We Will Rock You [24] We Are The Champions [25] God Save The Queen Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Milton Keynes Bowl, England |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b, g[6]) Roger Taylor (ds, vo) Milton Keynes Bowl, England |
DVD「Queen On Fire」の音源だけを CD 化したもの。もちろん映像の方が断然楽しめるけれど、なにしろ素晴らしいパフォーマンスなので音だけでも十分楽しめる。(2006年9月16日) |
Rock Montreal | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★★ 評価:★★★★★ |
Released in 2007 [Recording Date] 1981/11/24, 25 Disc 1 [1] Intro [2] We Will Rock You [3] Let Me Entertain You [4] Play The Game [5] Somebody To Love [6] Killer Queen [7] I'm In Love With My Car [8] Get Down Make Love [9] Save Me [10] Now I'm Here [11] Dragon Attack [12] Now I'm Here (reprise) [13] Love Of My Life Disc 2 [14] Under Pressure [15] Keep Yourself Alive [16] Drum and Tympani Solo [17] Guitar Solo [18] Flash's Theme [19] The Hero [20] Crazy Little Thing Called Love [21] Jailhouse Rock [22] Bohemian Rhapsody [23] Tie Your Mother Down [24] Another One Bites The Dust [25] Sheer Heart Attack [26] We Will Rock You [27] We Are The Champions [28] God Save The Queen |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo,) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Motreal Forum, Canada |
DVDの「Rock Montreal & Live Aid」と同時にCDもリリース。映像なしで音楽だけでも楽しみたいという人向け。音だけを聴いてみるとブライアンのギターがやや引っ込み気味のバランスでちょっと迫力不足に感じる。不思議なことに映像があるとこれがあまり気にならない。このCD、侮れないのはDVDには収録されていない[18][19]が含まれていること。オフィシャル音源として初登場でもある。一説には映像に問題があったからDVDには収録されなかった言われているけれど、こういう商売のやり方はあまりうれしくない。そういった諸般の事情を抜きにすれば充実期のライヴ音源として質は十分なレベルなので、クイーンのライヴ最初の1枚として初心者にもお勧めできる。余談・・・「伝説の証」という邦題はカンベンしてほしい。クイーンはカリスマティックな存在とは対極の娯楽バンドであり、伝説という言葉は最も似合わない。クイーンの本質を理解していればこんなバカげた邦題は付けられないはず。とにかくテキトーなタイトルを付けて売れればいいやというレコード会社の姿勢にはウンザリする。(2007年11月10日) |
Live At The Rainbow '74 | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★ 評価:★★★★★ |
Released in 2014 [Recording Date] 1974/11/20(Disc 1,3,4) 1974/3/31 (Disc 2) Disc 1 [1] Procession [2] Father to Son [3] Ogre Battle [4] Son and Daughter [5] Guitar Solo [6] Son and Daughter (Reprise) [7] White Queen (As It Began) [8] Great King Rat [9] The Fairy Feller's Master-Stroke [10] Keep Yourself Alive [11] Drum Solo [12] Keep Yourself Alive (Reprise) [13] Seven Seas of Rhye [14] Modern Times Rock 'N' Roll [15] Jailhouse Rock/Stupid Cupid /Be-Bop-A-Lula [16] Liar [17] See What a Fool I've Been Disc 2 [1] Procession [2] Now I'm Here [3] Ogre Battle [4] Father to Son [5] White Queen (As It Began) [6] Flick of the Wrist [7] In the Lap of the Gods [8] Killer Queen [9] The March of the Black Queen [10] Bring Back That Leroy Brown [11] Son and Daughter [12] Guitar Solo [13] Son and Daughter (Reprise) [14] Keep Yourself Alive [15] Drum Solo [16] Keep Yourself Alive (Reprise) [17] Seven Seas of Rhye [18] Stone Cold Crazy [19] Liar [20] In the Lap of the Gods... Revisited [21] Big Spender [22] Modern Times Rock 'N' Roll [23] Jailhouse Rock [24] God Save the Queen Disc 3 is DVD, Disc 4 is Blu-ray |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Rainbow Theatre, England |
74年11月20日の映像は、92年に「Box Of Tricks」という英国限定ボックス・セットに含める形で正規発売され、ファン・クラブのコンベンションでも配布されたとされている。つまりは限られた形ではあるとはいえ、実は既にオフィシャル・リリースされていたものである。そして、それをソースにコピーしたものがブートレグで出回っていたので熱心なファンにはすでにお馴染みのものである。今回のリリースにあたってのトピックはまずは当然のことながら映像も音(DTS-MAで収録)も大幅に向上していること。オフィシャル・ビデオからダビングされたと思われるブートレグとのクオリティの差は歴然としている。低音(フロア・タムの音域あたり)がボンボン響いてロックらしい厚みのあるサウンドを聴けるのは嬉しい。旧オフィシャルものでは、"San And Daughter"のエンディングカット、"Father To San"のエンディングでフェードアウト、"Keep Yourself Alive"のドラムソロ前の大幅カットから"Liar"、再びの"San And Daughter"の流れが複雑に組み替えられたり、アンコールのロックンロール・メドレーが部分収録だったりという編集が施されていた。それも今回のリイシューでは無編集(なぜだか"Now I'm Here"のエンディングが少しだけカットされていたのはそのままだけど)で収録されていること、アンコールの"Big Spender" "Modern Times Rock'n'Roll" が追加されていることが大きなトピック。ちなみに、旧版もオフィシャル・リリースだったためコーラスは後からオーバーダビングしてあることがわかるくらい手が加えてあり、そこは今回もそのまま採用されている。そして普通のオーディオ環境でのリスニングも考慮してかCDも付属しており、DAPなどでも簡単に聴けるようになっていて商品として抜かりはない。さてメインは11月20日公演であることは映像コンテンツから分かる通りだけれども、ブートレグを持っていた人にとってはある意味編集の違いがあるくらいでソースとしてはあまり目新しさはなく、むしろ3月31日の方に狂喜しているはずだ。この3月31日のライヴは古くからブートレグで初期クイーンほとんど唯一のサウンドボード音源として知られていた(「Sheetkeeckers」などのタイトルで有名だった)もので、音質だけでなく演奏も素晴らしいことから初期ブートレグの決定版の座を揺るぎないものにしていた。今回、音質やバランスを更にオフシャル・クオリティに磨き上げ、大幅に曲も追加されて(たぶん)1ステージのコンプリート・ライヴ盤として生まれ変わったのがデラックス・エディション収録のCDというわけである。11月20日のライヴと合わせて、初期クイーンのライヴは長らくブートレグのみの状態が続いていたけれど、ついに最上の状態で誰でも手にできるようになった。(2015年1月4日) |
A Night At The Odeon | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★ 評価:★★★★★ |
Released in 2015 [Recording Date] 1975/12/24 [1] Now I'm Here [2] Ogre Battle [3] White Queen [4] Bohemian Rhapsody [5] Killer Queen [6] The March Of The Black Queen [7] Bohemian Rhapsody [8] Bring Back That Leroy Brown [9] Brighton Rock [10] Guitar Solo [11] Son And Daughter [12] Keep Yourself Alive [13] Lair [14] In The Lap Of The Gods ...Revisited [15] Big Spender [16] Jailhouse Rock /Stupid Cupid/ Be Bop A Lula / Shake Rattle & Roll / Jailhouse Rock [17] Seven Seas Of Rhye [18] See What A Fool I've Been [19] God Save The Queen Disc 2 is DVD, Disc 3 is Blu-ray |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) Rainbow Theatre, England |
昔からBS、CS、そしてFMなどで何度も放送されてきた(そして数々のブートレグでも)有名な映像・音源。ブートレグで何度も買い換えてきた身にはよくぞここまでここまでがんばって修復してくれたという感じ。音質はギターの低音域、ドラムのフロアタムあたりを強調して音の厚みを持たせて、今聴いても違和感のないように仕上げたのは良いものの、逆にこれまでクッキリ聴こえていたジョンのドライヴ感あふれるベースの音がかなり埋もれてしまった。この音のバランスは好みが別れるかもしれない。ただし、当然全体の音質はこれまでよりも圧倒的にクリアなのはさすがオフィシャル版といったところ。尚、ブルーレイの5.1chのリアは残響的に少し補足しているだけなのでサラウンドの臨場感はあまりありない。また映像は元が元なので修復されたと言ってもDVDで十分足りるようなSDクオリティ。それでもこれまでブートレグで観たきた身には感涙モノのクオリティアップ。このクリスマス・コンサートがオフィシャル化されてこなかった原因のひとつが、大きなミスが2つあったからだと思っていた。ひとつはメドレーで演奏されている"The March Of The Black Queen"の歌の入りを思い切り間違えているところ、"Liar"のエンディングでこれまたフレディが外しているところ。これがもう見事なまでに巧く(映像でも!)編集して修正されている。何度も繰り返して聴いてきた身には逆に違和感ありすぎだけれども、作品として残すのだからまあこのような処置は当然でしょう。総じて、記録として見ると失われた部分もあるものの、長くファンをやっていたファンにとって、そして新しいファンにとっても嬉しいアーカイヴ発掘だと思う。この日はフレディの声の調子はそれほど良くなく高音域はだいぶフェイクして歌っているところが多いし、前述の通りミスもあったりでパフォーマンスじたいは最高というわけではないけれど、「Don't be Sh〜y」なんてまだ客を煽らなきゃいけない時期の映像が「Live At The Rainbow」に続いてこうしてオフィシャル化されただけでもありがたい。(2016年10月4日) |
Greatest Hits (Japanese Edition) | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★★★ 評価:★★★ |
Released in 1981 Side-A [1] Bohemian Rhapsody [2] Another One Bites The Dust [3] Killer Queen [4] Fat Bottomed Girls [5] Good Old Fashioned Lover Boy [6] Don't Stop Me Now [7] Save Me [8] Under Pressure Side-B [9] Crazy Little Thing Called Love [10] Somebody To Love [11] Now I'm Here [12] Teo Torriatte (Let Us Cling Together) [13] You're My Best Friend [14] Play The Game [15] Flash's Theme [16] We Will Rock You [17] We Are The Champions |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) |
中学生のとき、友達から借りた「Hot Space」でクイーンの魅力に取り憑かれた僕が初めて買った洋楽のレコード。購入は82年。当時はそれこそ大げさでなく擦り切れるほど毎日聴いた。力強く、そして美しくもゴージャスなコーラス、独特のヘヴィさを持ったギターが特に印象に残ると同時に、ロックと相容れないと思われがちなアコースティック・ピアノの重要性も思い知らされたもの。また、音楽を聴いて鳥肌が立つという経験を初めてさせてくれた[1]は思い出深い。このアナログ盤は、国ごとに選曲が異なっていて日本ではこの選曲、この曲順だった。尚、アナログ・レコードでこれだけの曲(約60分)を収録するのは音質的に無理があることから、なんと全曲ピッチを速くするという恐るべき荒業が使われていた。おかげで、後にオリジナル・アルバムを聴いたときに曲のテンポが遅くて慣れるまで大いに困ったことを覚えている。見ての通り、現在日本で発売されているCD(最後が「手を取りあって」という曲順がイマイチ)とは曲目が異なっているけれど、CDのベスト盤だけでも彼等の音楽性の幅広さを知ることができるし81年までのクイーンを知る第一歩としては最良だと思う。もし気に入ったらオリジナル・アルバムを聴いて、さらに幅広い彼らの音楽性やアルバム志向と言われる彼らの本領に触れて欲しいところ。(2006年10月8日) |
Rocks | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★ 評価:★★★ |
Released in 1997 [1] We Will Rock You [2] Tie Your Mother Down [3] I Want It All [4] Seven Seas Of Rhye [5] I Can't Live WIth You (1997 "Rocks" Retake) [6] Hammer To Fall [7] Stone Cold Crazy [8] Now I'm Here [9] Fat Bottomed Girls [10] Keep Yourself Alive [11] Tear It Up [12] One Vision [13] Sheer Heart Attack [14] I'm In Love With My Car [15] Put Out The Fire [16] Headlong [17] It's Late [18] No-One But You (Only The Good Die Young) |
Freddie Mercury (vo, p) Brian May (g, vo) John Deacon (b) Roger Taylor (ds, vo) |
高校生のころ、クイーンが大好きであるのと同時にハード・ロック少年(苦笑)だったこともあってクイーンのハードな曲を集めてマイ・ベスト・クイーンをテープで作ろうと思ったことがある。どの曲を入れようかなどと楽しく考えていたものの、なかなか満足できるものができない。まず難しいのは選曲で、もっと難しいのが曲順。曲調をよく考慮してつながりを考えて十数曲をうまくまとめる、言い換えると既存のアルバムとは別のストーリーで構成するというのは意外と難しい。このアルバムはブライアン自らそんな企画を実行してしまった特殊なベスト盤。クイーンは、幅広い音楽性を持った4人がそれぞれの持ち味を出して無限の広がりを持つ娯楽ロック・バンドだったわけで、このような一面的な部分を抽出した企画は本質を捉えたものとはなり得ないんだけれど、ロック色の強い曲だけを集めて違和感なくまとめたこのアルバムはなかなか良くできていると思う。[5]は従来の曲に若干手を加えてヴィヴィッドさを増したテイク、[3]はシングル・バージョン、それ以外は既存のアルバム・バージョンと変わらない(と思う)。[18]は当時の新曲でジョン・ディーコンがクイーンとして残した最後の録音でもある。(2006年3月18日) |
Singles Collection | |
VOL.1 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() VOL.2 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() VOL.3 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() VOL.4 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
[VOL.1]2008 remaster Disc 1 [1] Keep Yourself Alive [2] Son And Daughter Disc 2 [1] Seven Seas Of Rhye [2] See What A Fool I've Been Disc 3 [1] Killer Queen [2] Flick Of The Wrist [3] Disc 4 [1] Now I'm Here [2] Lily Of The Valley Disc 5 [1] Bohemian Rhapsody [2] I'm In Love With My Car Disc 6 [1] You're My Best Friend [2] '39 Disc 7 [1] Somebody To Love [2] White Man Disc 8 [1] Tie Your Mother Down [2] You And I Disc 9 [1] Good Old Fashioned Lover Boy [2] Death On Two Legs (Dedicated To....) [3] Tenement Funster [4] White Queen (As It Began) Disc 10 [1] We Are The Champions [2] We Will Rock You Disc 11 [1] Spread Your Wings [2] Sheer Heart Attack Disc 12 [1] Bicycle Race [2] Fat Bottomed Girls Disc 13 [1] Don't Stop Me Now [2] In Only Seven Days [VOL.2]2009 remaster Disc 1 [1] Love Of My Life (Live) [2] Now I'm Here (Live) Disc 2 [1] Crazy Little Thing Called Love [2] We Will Rock You (Live) Disc 3 [1] Save Me [2] Let Me Entertain You Disc 4 [1] Play The Game [2] A Human Body Disc 5 [1] Another One Bites The Dust [2] Dragon Attack Disc 6 [1] Flash's Theme [2] Football Fight Disc 7 [1] Under Pressure [2] Soul Brother Disc 8 [1] Body Language [2] Life Is Real (Song For Lennon) Disc 9 [1] Las Palabras De Amor (The Words Of Love) [2] Cool Cat Disc 10 [1] Calling All Girls [2] Put Out The Fire Disc 11 [1] Back Chat [2] Staying Power Disc 12 [1] Radio Ga Ga (Single Version) [2] I Go Crazy Disc 13 [1] I Want To Break Free (Single Version) [2] Machines (Or Back To Humans) [VOL.3]2010 remaster Disc 1 [1] It's A Hard Life [2] Is This The World We Created ? Disc 2 [1] Hammer To Fall (Edit) [2] Tear It Up Disc 3 [1] Thank God It's Christmas [2] Man On The Prowl [3] Keep Passing The Open Windows Disc 4 [1] One Vision (Single Version) [2] Blurred Vision Disc 5 [1] A Kind Of Magic [2] A Dozen Red Roses For My Darling Disc 6 [1] Friends Will Be Friends [2] Princes Of The Universe Disc 7 [1] Pain Is So Close To Pleasure (Remix) [2] Don't Lose Your Head Disc 8 [1] Who Wants To Live Forever [2] Forever (Piano Version) Disc 9 [1] One Year Of Love [2] Gimme The Prize (Kurgens Theme) Disc 10 [1] I Want It All (Single Version) [2] Hang On In There Disc 11 [1] Breakthru [2] Stealin' Disc 12 [1] The Invisible Man [2] Hijack My Heart Disc 13 [1] Scandal [2] My Life Has Been Saved [VOL.4]2010 remaster Disc 1 [1] The Miracle [2] Stone Cold Crazy (Live From The Rainbow, London 1974) Disc 2 [1] Innuendo [2] Bijou Disc 3 [1] I'm Going Slightly Mad [2] The Hitman Disc 4 [1] Headlong [2] All God's People Disc 5 [1] The Show Must Go On [2] Queen Talks Disc 6 [1] Bohemian Rhapsody [2] These Are The Days Of Our Lives Disc 7 [1] Heaven For Everyone (Single Version) [2] It's A Beautiful Day Disc 8 [1] A Winter's Tale [2] Rock In Rio Blues (Live 1985) Disc 9 [1] Too Much Love Will Kill You [2] I Was Born To Love You Disc 10 [1] Let Me Live [2] We Will Rock You (Live At Wembley, 1986) [3] We Are The Champions (Live At Wembley, 1986) Disc 11 [1] You Don't Fool Me (Edit) [2] You Don't Fool Me (Album Version) Disc 12 [1] No One But You (Only The Good Die Young) [2] We Will Rock You (The Rick Rubin 'Ruined' Remix) [3] Gimme The Prize (Instrumental Remix For 'The Eye') Disc 13 1. Under Pressure (Rah Mix) (Radio Edit) 2. Under Pressure (Mike Spencer Mix) 3. Under Pressure (Knebworth Mix, 1986) |
2008年〜2010年にかけて、4つに分けて発売された歴代シングルのボックス・セット。シングルB面でしか聴けなかった曲をすべてカバーできるという点でコレクターには悪くない企画だったけれど、その後の2011年のリマスター版ボーナスEPにもそれらがほとんど収録されてしまい価値が下がってしまった。曲名に(Single Version)(Edit)とコメントが入っているものは、もちろんシングルでしか聴けないバージョン。それ以外のハイライトは以下にコメント。 VOL.3 Disc 4 [2] Blurred Vision One Visionの中間部拡張バージョン。 Disc 5 [2] A Dozen Red Roses For My Darling 実際には"Don't Loose Your Head"の変形インスト・バージョン。 Disc 11 [2] Stealin' アルバム「The Miracle」はジャム・セッションをして曲を仕上げていったと思われる曲が多く、アルバム未収録曲にはそのの雰囲気が残っている(言い換えると仕上げきっていない)ものがいくつかあり、この曲もそのひとつ。リラックスした軽快な曲で途中からセッション風に展開して行く。この時期のこうしたスタジオ・ライヴのような演奏(基本的には一発録りのように聴こえる)が残っているのは嬉しい限りで、一方で、ブートレグには11分44秒デモ・バージョンもある。 Disc 12 [3] Hijack My Heart "A Human Body"のようなミドルテンポのリラックスした、いかにもロジャーという感じの曲でリード・ヴォーカルもロジャー。The Crossの雰囲気に近い。 VOL.4 Disc 5 [2] Queen Talks インタビューなどの音声を組み合わせただけの1分43秒。 Disc 12 [2] We Will Rock You (The Rick Rubin 'Ruined' Remix) リック・ルービンによってラップ調に仕立てられた珍バージョン。US(ハリウッド・レコード)盤に収録されていたボーナス・トラックと同じもの(だと思う)。 [3] Gimme The Prize (Instrumental Remix For 'The Eye') インストゥルメンタル・バージョンでパソコン・ゲーム「The Eye」用の曲。コンピューターに支配された近未来で主人公が「音楽」を発見するというミュージカル「We Will Rock You」に似たストーリーだったらしい。 Disc 13 [1] Under Pressure (Rah Mix) (Radio Edit) クイーンのファンにはあまり受けるとは思えない、ダンス・ミュージック風のリズム(ドラム)に差し替えられた珍バージョン。 [2] Under Pressure (Mike Spencer Mix) イントロからボウイのハミングが入り、キーボードの音、ギターの音が少し変えられている。エンディングのベースリフレインが多い。 [3] Under Pressure (Knebworth Mix, 1986) クイーン最後のコンサートであるネブワース公演での音源。 ディスク枚数の割にはレアな音源は少なく、各国で発売されたシングルのジャケット・コレクションを楽しむ意味合いが強いとも言えるかもしれない。しかし、実はこのボックス・セット、2011年の全アルバムがリマスターされる直前に出た、もうひとつのリマスター版であることが一番の特徴で、2011年リマスターよりも低音が厚く、全体にメリハリのある音作りになっている。(2018年11月20日) |
The Cosmos Rocks / Queen + Paul Rodgers | ||
![]() 曲:★★★★☆ 演奏:★★★★☆ 評価:★★★★ |
Released in 2008 [Recording Date] 2007/Nov〜2008/Aug [1] Cosmos Rockin' [2] Time To Shine [3] Still Burnin' [4] Small [5] Warboys [6] We Believe [7] Call Me [8] Voodoo [9] Some Things That Glitter [10] C-lebrity [11] Through The Night [12] Say It's Not True [13] Surf's Up...School's Out! [14] small reprise |
Paul Rodgers (vo, b, p) Brian May (g, b, vo) Roger Taylor (ds, vo) Produced by Brian May, Paul Rodgers and Roger Taylor |
実に困ったユニットである。解りきっていることをあえて書くと、フレディ・マーキュリーあるいはクイーンの華々しさとポール・ロジャースのシンプルな男臭さは対極にある。2004年11月に3人で3曲(「We Will Rock You」「We Are The Champions」「All Right Now」)だけ競演したときに多くの人が感じたのは「ポール・ロジャースが歌うクイーン・ナンバーも意外性があってなかなかいいじゃないか」というものだったように思う。本人たちもそう感じたのか後にワールド・ツアーまで敢行することになり、ファンは生のクイーンの曲が聴けることを喜んだ。もちろんクイーンのそれとはまるで違う個性に拒否反応を起こした人がいたのは仕方がない。ないものねだりをして過去にしがみつく輩には付ける薬がないので放置しておこう。フレディはもういないのだから違う形でクイーンの音楽を継承していくことで十分意義があると受け止めるのが柔軟な考えではないだろうか。 しかし、すべて新曲のニュー・アルバムとなるとまた話が違ってくる。クイーンの名前を使う以上、聴き手は新曲にクイーンの曲調やサウンドをどうしても求めてしまう。そして完成したこのアルバムは華やかなクイーン・サウンドとはある意味対極にあるポール・ロジャース色が濃厚な男臭いロック・アルバムに仕上がった。まるでポールのソロ・アルバムにブライアンとロジャーが全面協力したかのようなサウンド。クイーンの幻影を求めた人は例外なく失望しているだろうと思う。しかし聴きどころはある。どこを切ってもロックであるところだ。クイーンは普通のロック・グループでないところに価値があったことを考えるとこれはネガティヴな要素になる。しかし、ソロ・アルバムでも柔軟で幅広いサウンドを聴かせるブラインとロジャーがここまでストレートにロックしているというのは珍しい。「Hot Space」以降、ドラマーとしての主張をやめたロジャー(どのアルバムにもドラム・マシンを使った曲が必ずあった)が、往年の勢いは求めるべくもないとはいえ全編で力強い、そしていかにもロジャーらしいドラムを聴かせているのも嬉しい誤算。ブライアンの、やはりロック色濃厚なギターワークがここまで全面に出ているのも初めてだ。しかも、一部ピアノが入るところを除いてキーボードは排除されている。これはポールが引き出した功績と言えよう。一方で、ソロ・アルバムを作らせるとこれ以上の地味さはないだろうという骨っぽいロックに仕立ててしまうポールにとって、ブライアンとロジャーの曲やサウンドは大衆性やシャレっ気、センスの良いアレンジがあり、アルバム「Now」以来の最高の共演者になったと言える。そう、まさにポール・ロジャースのファンこそが聴くべき完成度の高いロック・アルバムになっているということ。クイーンという名に囚われて純粋に3人の音楽として聴けない世間の多くのリスナーは、この内容でスッキリするかというと多分そうはならない。 このアルバムは恐らく売れないし評価もされない。特にクイーン・サウンドに固執している人には総スカンを食らう可能性もある。だが、この3人は共演することに充実感を得ているように見える。だからこそ3人だけ(他のミュージシャンは基本的に参加していない)で、すべて新曲で、クイーンのサウンドを出さねばということなどハナから考えずに自分たちらしく素直に音楽を作れたのだろうし、そんな3人の個性の融合がこのアルバムの価値になっている。それは、ブライアンとロジャーが久々に前向きに音楽に取り組んでいることを意味するし、本当にクイーンの音楽を愛してきた人ならば、ここでのパフォーマンスにクイーンの大事な部分があることにも気づくはず。3人のグループとして個性を見出したことは良いものの、そうなるとこのユニットの名義に対する疑問も湧いてくるのも事実で、しかしだからと言って出発点からの流れを考えると今更名前を変えるわけにもいかない。困ったユニットである。(2008年9月30日) |