ガストン・ライエミーティング2001
2001/11/3〜4 長野県白馬村 SSER主催のガストン・ライエミーティングに行って来ました。 ガストン・ライエと言えば、'84、'85のパリダカールラリーにBMWワークス として参戦し、重たいツインのGSで、しかも、2年連続で 優勝を成し遂げたという伝説の人(こちらを参照)。 砂丘にあこがれるGS乗りとして、一度は会っておかなければなりません。 昨年は、このミーティングの存在を知るのが遅く、参加できなかったので、 一年越しの思いを募らせての初参加となるのでした。 § 〜1日目〜 11月3日、午前4時30分。自宅である横浜を出発。 ルートは、相模川沿いの県道を行き、中央道の相模湖インターから、高速へ。 豊科インターで降り、国道147、148と走り、白馬アルプスホテルに9時着予定。 白馬までは、約300kmの行程となるが、GSにとっては何でもない距離だ。 遠出する時の、少し緊張感のある朝の空気が心地よい。 何度味わっても、色あせる事がないのが不思議。 チョークレバーを引き、エンジンに火を入れる。一発でエンジンは目覚める。 いつもの通り、暖気をせずに一定回転(2000rpm)のまま走り出す。 しばらく走ったところで、チョークを戻す。エンジン回転はやはり、一定のまま。 厚木街道に出る頃、エンジンは暖まってくる。ここからは、普通の走りが可能。 瀬谷駅前を抜け、環状4号を横断する。そのまま相鉄沿いを走り、踏み切りを渡る。 国道246へ出た後、しばらく行き、県道に下りる。 座架依橋を渡った後、相模川沿いに北上を続ける。 左折し、山越えの道を行くと、国道412に出るので、 その後は国道20へスイッチし、一路、相模湖インターへ。 § 高速に乗り、談合坂SA着。 確か、ビックオフロードクラブの土谷さん達が、集合しているはずなのだが、 もう出発した後のようだ。 時間は、午前6時過ぎなのに、結構な数の車がいる。 みんな早起きしてどこに行くんだろう? トイレ&タバコ休憩の後、出発する。 ここからは、ノンストップで豊科へ向かうのだ。 高速の流れは速く、100km/h程度で走っていると、 後続車にどんどん抜かれてゆく。 空気は冷たい。冬装備で来て正解だった。 § 松本インターを過ぎるころ、霧がかかって来た。 何か、冷たいものも混じっているようだった。 豊科インター着。料金所を出たところで、地図を確認していると、 ブルーのラリースーツで決めたF650GSダカールが、手を振って通り過ぎて行った。 国道147に向かう途中のファミリーレストランの駐車場では、 100か、80のGS乗りが手を振っていた。 みんな目的地は一緒なんだろう。 ガソリンが心もとなくなってきたので、SSで給油する。 「寒いねー、雨も降るみたいだよ」とSSのおばちゃん。 「良かったら、暖まっていけば」との言葉に甘える事にする。 SSの休憩所の中へ。 暖かい! しばしの休憩の後、おばちゃんに礼を言い再び外へ。 寒い! でも、先を急がなければ。 § 国道147と並行して走る川沿いの道を行く。 きれいな川だった。 その後、国道147に入り、国道148にスイッチする。 時間は、午前8時30分頃なので、ちょうどいい時間に到着できそうだ。 国道148の途中で、工事で舗装がはがされている箇所があった。 早くもダート気分で、スタンディングで段差を乗り越える。 2つ目の段差は、めんどくさくてシッティングのまま通り過ぎる。 その時だった。 ガチャンという嫌な音がした直後、トラクションがかからなくなってしまった! 最初は、ギア抜けかと思い、ギアを入れ直すが、やはりトラクションはかからない。 1〜5速、どのギアに入れても、ブーンと言う嫌な空回り音がするだけで、 先に進めなくなってしまった。 仕方なく、路肩にバイクを止める。 センタースタンドを掛けて、クラッチの様子を見る。 ギアをローに入れて、リアタイアを回してみる。 ガリガリと音を立てて、タイヤは回ってしまう。 どのギアに入れても結果は同じ。 やはり、原因はクラッチにあるようだ。 ここでは手の施し様のない致命的な故障。 悔しいので、バイクにまたがり、エンジンを始動し、 もう一度、本当に走らないか確認してみる。やっぱりダメ。 絶望的な状況に、途方に暮れる。 その間にも、会場に向かうと思しきバイクが手を振って通り過ぎて行く。 手を振り返す余裕は、もはや残っていなかった。 § ミーティング会場にたどり着けないなんて、想像もしなかった事態。 ここまで、快調に走って来られたのが不思議だ。 レスキューでも呼んで、バイクを運んでもらうしかないか・・・ SSERに、今日は参加できない旨を伝えておこうと、 主催者の携帯に電話してみる。 「今日、参加予定の者なのですが・・・ブチッ」 電波状況が悪いのか、途中で切れてしまった。もう一度電話してみる。 「今日参加予定の18番の者ですが、途中でバイクが止まってしまって・・・」 「迎えに行こうか?」 「え!?、来て頂けるんですか」 「今、どの辺にいるの?・・・」 「どこですかねー・・・ブチ」 また切れた。 近くにいた板金屋のおじさんに、今いる場所を尋ねる。 ここは、木崎湖の手前らしいということが分かった。もう一度電話。 「先程のものですが・・・」 「場所分かった?」 こんなやり取りを経て、トランポで迎えに来て頂ける事に。 待つこと20分。それらしきハイエースがやって来た。 手際良くGSを車に積み込み、会場へ向かう。 安心した僕は、車中で眠りに落ちてしまうのでした。 § 白馬アルプスホテルに到着。 時間は午前10時。会場は閑散としており、すでに誰もいない。 GSを下ろした後、ハイエースはコースに出て行った。 ありがとうございました。 女性スタッフに「後で、お蕎麦でも食べに行きましょう」と、慰められる。 お気遣い感謝します。 ひとまず、ホテルにチェックイン。 ベッドに横たわると、疲れが出て寝入ってしまった。 § 電話の鳴る音で、目が覚める。 「お蕎麦食べに行きますけど、一緒にどうですか?」 急いで下まで下りて行く。 ホテルの方お勧めの美味しいところがあるらしい。 女性スタッフ4人と共に、ホテルのマイクロバスで蕎麦屋まで。 ざる蕎麦大盛りを注文する。何もせずとも腹は減るのだ。 食後、ホテルに帰ると、今度は本当にすることがなくなった。 仕方なく、ホテルの外をぶらついてみる。 Depart/Arriveの横断幕が悲しく風にたなびいている。 ロシアンラリー3日目リタイアの時を思い出していた。 部屋に戻り、再び夢の中へ・・・ § バイクのエンジン音で目が覚める。 ペースの速いエントラント達が戻って来たのだ。 ホテルの窓から、みなさんの走りを眺める。 その内、日が暮れて来た。 続々とエントラント達が戻ってくる。 ホテルに戻ってくる道は3本あり、みなさんバラバラの帰路で帰ってくる。 コマ図の読み方も人それぞれで面白い。 僕達の部屋は、3人部屋。 滋賀の80BASIC乗り柴田さん、富山のXR600乗り竹内さんが帰着。 走り終えた安堵感と、満足感からか、2人ともいい顔してる。 うらやましい限り。 § 夜はガストン・ライエ氏を囲んでのパーティーが開かれた。 氏は人気者で、ひっきりなしに写真撮影&サイン攻めにあっている。 でも、嫌な顔ひとつ見せず、丁寧に応じてくれました。 とてもフレンドリーな、いい人です。 パーティ会場の外には、ライトアップされたバイク達。 シンプルな照明に機能美が引き立つ。美しい・・・ 静かに明日の出番を待っているようだ。 とても幻想的な光景だった。
〜2日目〜 朝から、すばらしく晴れた青い空が広がっている。 バイクのない身には辛い。雨なら、まだあきらめもつくと言うもの。 朝食時、GS CLUBの澤田さん達と同席になり、 クラッチのトラブルについて話す。 「基本的なことだけど、乾式単板と言う事を考えて、走り出したらすぐに、 クラッチレバーを離す、なんてことをやってますか? 操作はちゃんと4本指で」 クラッチは4本指でスパッと切って、スパッとつなぐ。 半クラ状態はダメということか。 これについて、思い当たる節がある。 最近になって2本指での操作をしていたのだ。これにより半クラ状態(?)となり、 9万キロも走ってきたクラッチにとどめを刺してしまったのかも。 その他、河原に行って、ブレーキターン、アクセルターン、フロントアップの 練習などしていた事など、その場では言えなかった。 起こるべくして起きた故障、と言う事か・・・ すまぬ、我がGSよ。深く反省。 § 朝食後、部屋で片付けをしているところにオフィシャル黒川さんからの呼び出し。 何だろうと下りて行くと、厳しい現実が待っていた。 「これから出発しますが、私たちは帰る方向も違いますから、バイクを運ぶ事が出来ません。 日本レーシングさんに頼むとなると、多少の費用が発生すると思います。 また、バイクは運べますが人を運ぶ余裕はないと思います。どうされますか?」 とても、静かな調子で、淡々と厳しい現実が告げられた。 「人間は何とでもなるので、バイクだけでも運んで頂けますか?」 と話している所に、稲毛さんが通りかかる。 「うまくいきそう? ○○さんのトランポに乗せられないかなー。聞いて見ようか」 その時、SSER代表山田さんが現れ、次のような提案。 「BMWジャパンさんが持ってきている試乗車を借りて、空いたトランポにあなたの バイクを乗せて、千葉まで運んでもらい、後日、借りたバイクを返却して、 自分のバイクを引き取る、ってのはどう? とりあえず下へ行って交渉しよう」 事態は急展開。稲毛さん、すいません。 BMWジャパン大隈さんとの交渉は、即決でOKとなる。 せっかくトランポに積み込んだのに、申し訳ありません、大隈さん。 「バイクは下ろしとくから、早く準備して!」 晴れて走れることに!うれしい!! 急いで準備し、お借りするR1150GSと対面する。 やっぱり大きい。とても重そうだ。 不安になって、BMWジャパン大隈さんに訊いてみる。 「100系とは、全然違うのですよね?」 「そうですね、全く違う乗り物ですね。でも、トコトコついて行く位なら大丈夫でしょう」 「でも最悪、転倒して、壊すなんてことになったらどうしましょう?」 「それは、そのとき考えましょう」 さすが、BMWジャパン。太っ腹でした。 § 最後尾の集団にくっついてスタートする。 ナビゲーションツール(ICO、マップホルダー)は自分のバイクに付いているが、 試乗用のR1150GSは素の状態。 僕の場合、コマ図を使い始めた頃から、マップホルダーとICOを使うことが 当たり前だったので、トリップメーターとロールしていないコマ図を前に、 どうやってナビゲーションしていいのか分からない。 迷ったけれど、慣れないバイクで、コマ図を見ながら 走るのも危険なので、コバンザメ走法で走ることに決めた。 最後尾の集団に、はぐれないように必死に付いて行く。 走り出して思ったが、1150には、意外と違和感を感じない。 これならば、大丈夫だろう。 ガソリンの残量が心もとなくなってきたところで、集団も給油するらしいので 僕もついでに1150に給油する。 § そして、道は、アスファルトからダートへ変わる。 昨日の雨のせいで、道はドロドロ、ヌタヌタである。 そのまま突っ込んで行くと、バイクはケツを振って言うことを聞いてくれない。 やはり、タイヤがT66では辛いか? 空気圧もパンパンだし。 しばらく行ったところに、カジバエレファントの土谷さんが見えた。 「待ってたよ! なかなか来ないから心配しちゃったよ!」 そう、待っていてくれたのです。心強い連れが出来ました。 土谷さんのアドバイスで、前後タイヤの空気圧を落とす。 前1.5、後1.8くらいでしたっけ? エレファント土谷さんにナビゲーションを完全に任せ、後から付いて行く。 しかし、あっという間に、距離を開けられる。 僕が見えなくなるたびに、エレファント土谷さんは待っていてくれる。 ダートはすぐに終ってしまった。 § 舗装路をしばらく行くと、道の駅(?)にみんなが溜まっていた。 しばしの休憩。 ホテルで同室だった80BASICの柴田さんが、程なく到着。 「いやー、よかったな。走れて! 1150にも乗れて。 そんなんやったら、わしもして欲しいくらいや」 「本当に、走れて良かったですよ。これで、今日乗れなかったら、 何しに来たんだか分からないですよねー」 写真を1枚撮ってもらう。 なんだか、自分のバイクのような気がしてきた。 § バイクにも慣れてきたので、トリップメーターとコマ図で、 ナビゲーションを試みるが、やっぱりうまくいかず断念。 再び、エレファントにくっついてゆく。 林道に入ると、すぐに土谷さんは見えなくなった。 さっきの林道よりも道は乾いていて、ペースも上がって行く。 でも、借り物のバイクなので、オーバースピードにならないように、 轍にはまって転ばないように、慎重に路面を選びながら走る。 前方に、停車している土谷さん発見。 「ガストンの走ってるところ、撮りたいんだけどさー」 という訳で、コーナー入り口の山に僕が登り、ライエ氏が来たら、 コーナー出口にいる土谷さんに合図を送る算段となった。 待つこと5分、複数のバイクの排気音が聞こえて来る。 来た! 手を振って土谷さんに合図を送る。 ガストン叔父さん達は、いいペースで駆け抜けて行った。 いい絵が撮れたようで、土谷さんも満足げだ。 しばらくは、通過するエントラント達の姿を撮影し、再スタート。 § 舗装路に入り、しばらく行くと、雪化粧した樹々に出会う。 昨日の雨も、この辺りでは雪となっていたようだ。 美しい光景だった。 走ることの出来る喜びを感じていた。 § さらに行くと、白い道に出くわす。 軽い登りで、バイクがケツを振る。 凍結路だ! バイクを止め、しばらく思案するが、 リアブレーキだけをかけながら、そろそろと通過する。 その後も、日陰となっている箇所は、凍結しており、 ビビリながら、通過する。転ばなくて良かった! 借り物のバイクなので、本当に気が気じゃなかった。 でも、最後の凍結路では、ABSを作動させてしまった。 § 高ボッチ山の展望が開けた広場に着いた。 富士山がきれいに見えているところで、気分爽快! 下の方には、諏訪湖もその姿を覗かせていた。 ガストン叔父さんも到着。 ここでも、ライエ氏はサイン&写真撮影攻め。 みんなで、集合写真に納まる。 「ゴール地点に移動して下さーい!」 スタッフの方の一声で、三々五々移動開始。 § ゴール地点では、ガストン・ライエ氏のライディングスクールが始まった。 体はリラックスして、ニーグリップはせずに、くるぶしだけで バイクをホールドし、基本的には、スタンディングで乗ると、疲れる事もない。 さっき現れた凍結路のような道でも、体を強張らせることなく、 リラックスし、「行ける、行ける」という気持ちで走ることが大事。 コーナーでは、スキーの外傾ターンと同じ要領でステップに 荷重をかけると、もっとグリップする。などなど・・・ 初めて聞くこと、どこかで聞いたことがあるようなことも含めて、 非常にためになる、濃い内容だった。 実績のある人のレクチャーには、重みがある。
このような走り方は、モトクロス出身のライエ氏が、 初めてパリダカールラリーで走っているときに見出したらしい。 ラリーが始まって、しばらく走った時のこと。 もう、何百キロも走っただろうと思って、ふとメーターを見たとき、 わずか数十キロしか走っていない現実に愕然としたという。 クローズのモトクロスコースでの、ショートレンジの走りでは とても乗り切れないと考えた氏は、とにかくリラックスした疲れない 走り方に変え、見事に完走、そして優勝を成し遂げたのだ。 § ここで、現地解散。みな思い思いに帰路に向かう。 今回参加したエントラント達は、きっと来年も来るだろうなと、なんとなく思った。 僕は、余韻を楽しむためにも、中央高速ではなく、下道(国道20号)で帰ることにする。 § 今回のガストン・ライエミーティング2001は幕を閉じた。 日本レーシングマネージメントさん、 SSER代表山田さんをはじめとするスタッフのみなさん、 BMWジャパン大隈さん、 その他、今回のイベント関係者のみなさん・・・ 大変お世話になりました。 そして、ありがとうございました。 来年も是非、参加させていただきます。
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