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 ラジオ技術2000年7月号 野呂伸一 氏発表による
  D-NFB (NFB for Distortion only)アンプの考察

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野呂伸一氏が発表された基本構成図を下図に示します。
図中の表記で、Aは初段の電圧増幅度です。また、Gは終段の電圧増幅度ですが反転増幅器であるため-Gとなっています。αとβはそれぞれ帰還回路の電圧帰還率です。+に丸枠のシンボルは信号の加算個所です。

この数式が意味することは、F式の通りα=1/AであればVo=Vin/βとなり、出力に終段の歪みは発生しないということです。

式はβ=0であっても終段の歪みは発生しませんが、現実にそんなことはあり得ず、βが小さくなるほど歪みの検出精度が低下すると考えられβ=1で最高精度が得られます。

Gが変化しても歪みに影響なく、Voを外部から変化させようとしても、回路がVoを戻すので、出力インピーダンスはゼロとなります。

終段の歪みを無くすにはα=1/Aの条件を満たすだけで良いのですが、更にβ=α/Gとするならば、Vo=Vin・A・Gとなり、これは無帰還アンプと同様に出力信号成分の帰還は無く、NFB for Distortion onlyという通り歪み成分だけが帰還するように見えます。

エクセルを使ってシミュレーションしてみました。ここdnfb.xls)をクリックして、ファイルをダウンロードしてご覧ください。
Microsoft Excel 2000で製作しましたので、Excelの下位バージョンではファイルが正しく開かない場合もあります。

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以上の図と数式から下図の実験アンプの回路の動作が読める人はかなり頭がいいと思います。盆暗な私は理解に苦しみました。

なぜなら基本構成図と実験アンプの回路との相関関係がよく解らないからです。また基本構成図の原理ではGに影響なく動作するはずなのに、実験してみるとGに影響されますから、これは違う原理の回路ではないかと考え、実験アンプの回路図をもとに、基本構成図を下図のように描き直して見ました。基本的な相違点は加算個所がαの後になるか前になるかです。

β=1/Gであれば、終段の歪みDがない場合は、終段の入力電圧-V1と、βを介した終段の出力電圧Voとは、正負逆極性でレベルは等しいために、両方を加算するとゼロになり帰還電圧は発生しません。Dが有る場合はβ・D即ちD/Gが加算後の電圧となります。このD/Gをそのまま終段の入力電圧に加算してやれば終段でDを打ち消すことができますが、ここでは初段非反転入力側に1/Aに設定されたαを介して電圧e=α・β・D=D/A・Gを帰還して、このD/A・Gを初段でA倍に増幅することで終段の入力にD/Gを与えています。

実験アンプでαはR1/(R1+R2)であり、βはおよそV2の1/μに相当し、この基本構成図の原理が実験アンプに妥当であると考えます。

実験アンプの回路では負荷インピーダンスや周波数によってAとGが変化するので難しいところです。
β<1/GではDにDを加える形になり歪みがゼロとならないだけでなく、-V1が初段非反転入力側に帰還するため初段が正帰還状態となって、直結回路ならラッチアップし、CR結合回路ならCRの時定数で発振します。
β>1/GではDに、より大きな-Dを加えるため、これも歪みがゼロとなりません。またVoの信号成分が初段非反転入力側に帰還することになりますが、これは通常のNFBループと変わりなく、-V1だけ帰還量が減っているのでその分安定です。しかし出力インピーダンスが負性になることで動作が不安定になります。
α<1/Aでは終段に入力されるD/Gが減少するため、歪みがゼロとなりませんが動作は安定です。
α>1/Aでは逆に終段に入力されるD/Gが増加するため、Dに、より大きな-Dを加える結果となり歪みがゼロとなりません。また出力インピーダンスが負性になることで動作が不安定になります。それにGが低下して-V1が帰還されるとより不安定になります。

したがって、通常動作でGが最小の時β<1/Gとならないように余裕を取って、β>1/Gの状態にしておくべきと考えます。β>1/Gの状態ではα<1/Aの範囲内で出力インピーダンスをゼロにできます。
Gが大幅に変動しないように終段にマイナーループの帰還を掛けておくことも安定な動作を得るために必要です。

実験アンプで打消しできる歪みは終段に発生する成分だけで、初段管V1と検出管V2の歪みは、終段で-V1の成分と見なされて増幅され出力に現れます。
実験アンプの歪み検出ポイントが終段管V3のプレートであるため、プレート側の出力インピーダンスはゼロでも、出力トランスを介した出力端子側では出力トランスの伝達損失の分だけ出力インピーダンスが高くなります。そのため出力端子側で出力インピーダンスをゼロにした場合、プレート側の出力インピーダンスは出力トランスの伝達損失の分だけマイナスのインピーダンスとなります。

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その後の考察

その後更に考えて、次のように理解することができました。

上図に示すD-NFBの原理の説明に使われた基本構成図のeは以下のようになります。

これは下図に示す実験アンプの回路図をもとにした基本構成図でも同じです。

従って実験アンプの回路でも、D-NFBの原理通りに動作すると考えられます。

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