岐路のパキスタン〜ラホール(博物館、新市街)
 
Lahore(New City)
 
 
ラホール(博物館、新市街)
 

  ラホールは日本で言えば京都のようなところ。ムガール帝国の時代から造り続けられた歴史的建築物が、当時のままの姿で街のあちこちに残っており、一日や二日ではとてもすべてを見て回ることはできません。  

 
ラホール博物館
 


   
外観も美しい
そんな中、どこか一個所だけというのなら、やっぱり博物館がおすすめでしょう。パキスタン最大の規模を誇るこの博物館は、インダス文明の出土品、ガンダーラの仏教美術、シルクロードの交易品など、収蔵している品物の数々もさることながら、建物自体も美しい造りをしています。
   

     
断食する仏陀&ガネーシャ
ラホール博物館きっての目玉がこれ。ガンダーラ美術の最高峰との誉れも高いこの仏像は、断食苦行を行っている釈迦の姿をリアルに描いています。肋骨の浮き出方とか、頬のしわの寄り方とか、とてもマニアックです。70〜80cmと意外に小さいのですが、ペシャワール博物館にあるもう一体とともに、当時の仏教の隆盛ぶりをよく伝えています。一方、独立前は英領インドとして大きく見ればヒンドゥー文化圏だっただけに、ヒンドゥーの遺物も多く残されています。おなじみ象の神様ガネーシャ。
     

       
 
イスラム時代室
壁一面に掛けられているのは、ペルシャやトルコを中心として中東一円から集められた絨毯。いずれもとても細密で本当に美しい。見ているだけでため息が出ます。
 
あまりに下手
こちらはインダス文明コーナー。いったい何の動物を表現しようとしたのでしょう。インダスの人々って、少なくとも芸術的才能には圧倒的に恵まれていなかったんですね。
 
5000年前のハンコ
しかし、経済的実利には通じていたようです。ハンコからは牛の絵と文字らしきものが読み取れます。売買あるいは賃貸借の記録を付けていたんですね。
 

   
曼荼羅
ガンダーラ地方はチベット仏教とも密接な交流があったようです。密教のシンボルである曼荼羅が飾ってありました。それにしてもヒマラヤ山脈とパミール高原によって隔てられたふたつの地域を結んだルートはどのようなものだったのでしょう。
   
中国趣味
中国の王宮にでも飾ってありそうな豪華な置物。これで2m×3mくらいの大きさ。何なのかはよくわかりません。パキスタンはインドへの対抗上、戦略的に中国との関係を深めてきたので、その延長線上で比較的最近に贈られたものかもしれません。
   

       
 
鎖帷子
ドラゴンクエストファンの皆さん、これが「くさりかたびら」です。ゲーム序・中盤で重宝する、あの防具です。想像上の産物ではなく実際に使用されていたのです。
 
象牙
間近で見ると感動します。本物の象牙って、こんなに大きかったんだ。太さも人間の脚くらいは優にあります。相当重いだろうということも見てすぐわかります。
 
チェスセット
西洋のゲームであるチェスが、いつどのようにしてパキスタンにもたらされたのでしょう。さらに意外なことに、駒の服装はモンゴル風という印象を受けたんですが。
 

 
ジャハーンギール廟
 


       
 
ムガール様式
ムガール第4代皇帝ジャハーンギールは遺言によりここに眠っています。廟は伝統的なムガール様式で、デリーにある第二代皇帝フマユーン廟にそっくりです。
 
四分庭園
建材は赤砂岩と白大理石。敷地の中央に建物を置き、区画された庭園を分割するように水路を四方に張り巡らす。計算され尽くした見事な構成美です。
 
アーチ門
くぐり抜けて行くに連れ庭園の視界が開けていく、なかなかにドラマチックな展開。水路には噴水もしつらえてあり、暑い中、一服の清涼感を醸し出します。
 

   
モザイク
墓室手前の壁や天井にも繊細なモザイクが残されています。イスラムのモスクなどと比べると規模的にはたいしたことはありませんが、その丁寧さを見るとやはり皇帝の偉大さを感じずにはいられません。色彩がけっこう豊富に使われていて、絨毯の柄のようにも見えます。
   

   
象眼細工
柩はこれもムガールの伝統に従い大理石に象眼細工を彫り込んだもの。タージ・マハルに通じる美的センスを感じさせます。白地に赤や緑で手の込んだ草花の装飾があしらわれていて、こんな綺麗なお墓なら入ってもいいかな?と思ったりもして。
   
井戸端会議
100kmほど離れた街グジュランワーラーからやってきた一家と話が弾み、いつのまにやら日パ主婦による井戸端会議に。異国人同士であることを意識させない流れるように自然な日常会話の数々。ちなみに会話はお互い英語でした。よく通じたな。
   

 
シャリマール庭園
 


   
憩いの場
世界の奇才シャー・ジャハーンによって造られた、広大な敷地に水路と樹木が美しく配置された庭園。あちこちに設置された噴水が見どころです。散策の名所として、観光客のみならずラホール市民の憩いの場ともなっています。お弁当片手に家族でピクニックなんかに向いてますね。
   

   
築造理由
この庭園には、ある意味シャー・ジャハーンの神髄が表われています。何の変哲もない普通の公園じゃないかと思ったあなた、目に見えるものだけで物事を判断してはいけません。彼がこの庭園を造った理由を知っていますか。ただひとつ、「虹が見たかったから」なのです。
   

 
街角の風景から
 


       
 
目抜き通り
迷路のようなペシャワールからやってくると、ラホールがとても洗練された街に思えます。日本と同じグループというか、ようやく常識にかかった感じ。
 
吹き抜け
ラホールきっての高級ホテル、パール・コンチネンタルのロビーは、最上階まで続く吹き抜け。それを取り囲むように客室がロの字型に並んでいます。
 
ビクトリア調
ラホールにあるのはムガール建築だけではありません。古き良きイギリス植民地時代の面影を今に伝えるビクトリア調のコロニアル様式もいたるところに残っています。
 

       
 
トラクター
ばかでかい異形の車が対向車線をすれ違ったので、あわててシャッターを切りました。燃える男の赤いトラクター(by小林旭)だ。凄い迫力あるタイヤ。
 
インダス支流
ラホールの街を貫いて流れる、インダス五大支流のひとつラヴィ河。ジャハーンギール廟に行く途中に渡ります。河原では牛の放牧が行われていました。
 
スズキ
庶民の足として親しまれているオート三輪タクシーは「スズキ」という名で呼ばれています。もちろん日本の二輪・小型四輪メーカーが名前の由来です。見たまんまやんけ。
 


   

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