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現代史が好きな人にお薦めの漫画

●康さん
●「虹色のトロツキー」 安彦良和 1990〜 1996年 潮出版社(全8巻)

 作者は、あのアニメーション「機動戦士ガンダム」のキャラクター設定や、漫画「アリオン」で有名な安彦良和氏(最近は、明治時代の北海道の原野を舞台に、アイヌ、和人などを主人公にした漫画「王道の狗」をミスターマガジンに連載中)。
 題名に“トロツキー”とありますが、漫画にトロツキーは全くと言っていいほど登場しません(トロツキー:ロシア革命の指導者の一人。1879年生まれ。革命後、一国社会主義を掲げるスターリンと対立、1940年亡命先のメキシコで、スターリンの刺客によって暗殺。トロツキーについては「生きているトロツキィ、佐々木力、1996年、東京大学出版会」などを参照)。
 漫画の主人公は、日本人の満鉄職員とモンゴル人女性の間に生まれた日蒙二世のウムボルト。舞台は、日本軍の政治的陰謀うずまく1930年代の旧満州(満州国:日本が政治的植民地としてつくった傀儡国家)。石原莞爾(満州事変の立役者)の構想「五族協和の実現」によって設立された建国大学に、ウムボルトが編入する(させられる)ところから物語は始まります(建国大学にトロツキーを講師招聘する話は実話としてあったらしい。トロツキーと物語との関係は略)。その後、反日統一戦線の共産主義者ジャムツとの再会と離別、義賊となっての反乱などを経て、モンゴル人部隊を編成して対ソ連戦(日本軍への組込み)へと突入していく。激動の中国を、煩悶しながらも生き抜いていく姿が描かれてます。
 作者の丁寧な取材と、それに裏打ちされたストーリー展開。日本の現代史において、満州国とは何だったのか、あの時代はどういう時代だったのか、などを考えさせられる、「人間の条件」や「大地の子」などの文学にも匹敵する漫画です。


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