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最後の「神様」の言葉に妙にひっかかっていた漫画

●康さん
●「キラキラ!」 安達 哲、1989〜1990年少年マガジン、講談社

 漫画は、物心ついた頃から読んでいました。「冒険王」とかいろいろ。近くの貸本屋では「おばけのQ太郎」とか「おそ松くん」などを借りていたのを覚えています。その後、各種週刊誌を経て、今では「マガジン」と「ビッグコミック」4誌に落ち着いています。いまは、単行本では「カムイ伝第二部」「王道の狗」「デビルマンレディー」「オムライス」「フラグメンツ」「ゆんぼくん」「おっとり捜査」などを購入するだけです。過去のいろんな作品を入れるとかなりの量になってきましたが。
 まず最初に紹介するのは、あの「お天気お姉さん」で有名な安達哲が、少年マガジンに連載した漫画「キラキラ!」です。大学を卒業した直後だった私は、漫画の中では手塚漫画の購入に力を入れていた時期で、単行本はいつか買えばいいやと思っていたら、書店から姿を消していました。その後「さくらの唄」「お天気お姉さん」などがヤングマガジンに連載されているのを知り、無性に手に入れたくなったのす(1995〜96年にかけてスコラから全6巻で刊行された)。
 内容はといえば、私立青晶高校を舞台に、芸能科存続のために芸能科から進学科に移され常にトップに居続けることを義務づけられた杉田慎平と、あれよあれよいう間にトップアイドルになってしまう戸田恵美里の2人を主人公に物語は展開します。
 この漫画は、最後のシーンが印象的で、慎平が夢の中で太陽の形をした神様と対話するのです。少々長くなりますが、引用します。
 神様『あきらめたまえ、杉田君。名残惜しいのはわかるが、ものごとには全て終わりがあるんだ。高校ももう終わりだねえ。楽しい学園生活だったかね?』
 慎平「ああ、疾風怒濤の3年間だったよ。思い残すことは何もねえ。いろいろ血のにじむ苦労も背負わされたけどな。体制側の仕打ちにはもうちょっとで骨抜きにされるとこだったぜ」
 『キミは春から東大生だね。将来はお役人かな?』
 「冗談じゃねえよ。東大でた奴らがみんな官僚になるわけじゃねえよ。可能性はたくさんあるんだ。仲間とロックに陶酔して、週末は人生と芸術を語り、寝たいときに寝て、金が要りゃテレビ出たり、小説書いたり。オレの友達連中みたいな自由気ままな生き方だあ!今から先行き決めつけらちゃあつきあってらんないわけよ!」
 『戸田恵美里との将来もかい?』
 「恵美里! 恵美里!」
 『卒業式に友人と話した言葉『おれぁ恵美里といっしょにいれりゃいいの』。きみは一生という言葉を言えなかった。一生いっしょにって言えなかったね。いくら好きな相手でもその言葉は言えなかった。言うのがこわかったんだね。杉田くん、きみはあせっている。実は毎日非常に不安でいる。東大に合格し、美しい彼女は手に入れた。すべては順調だ。しかし、そうして人生は一つ一つ決定されていく。可能性という甘くて魅惑的で無責任な言葉は一つ一つ消え去っていく。君はそれを恐れている。この若さでもう、自分の人生に先行き大きな変化はないのだろうかとね。かといって恵美里と別れるなんて考えたくない。煮つまっている』
 「や、や、やろ〜。人が幸せで心がおだやかなとき狙って、いいたいこといいやがって。こんちくしょ〜・・・・・」
 『こんなことならつき合う前の方がよかった。朝あいさつを交わすだけでドキドキして、手と手が触れただけで一日中ハッピーだった。まだ彼女が天使だった頃の方がね・・・天使を手に入れてしまったら、後はつまらないものなんだよ。まあでも心配することはない。彼女とキミの仲は四年後の春大学を卒業する頃、彼女の心変わりによって終わりとなる。片桐友也らあの辺の仲間とは来年あたりまでつき合いはあるが、それ以降は二度と合うことはない」
 「な、なんだよ、やめろよ。聞きたくねえよ、そんな話」
 『最初にいったろう。ものごとには全て終わりがあるんだ。それをはっきり自覚してこそ新たな始まりがある。いまのぬるま湯状態から抜け出して前向きに生と向き合えるんだ。君の母上は今から20年後の夏心臓でこの世を去る』
 「やめろ〜〜〜っ」
 『そして君自身が死ぬのは今から・・・』
 ここで慎平の目が覚める。最後に、恵美里「あたしと神様どっちを信じるつもり?」で、漫画は終わります。
 当時(大学をようやく卒業して、働き出した頃)は、妙にこの神様の言葉に引っかかっていたのです。


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