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徒然なる漫画たち

●BlueTipさん

 やはり我々1960年代生まれは漫画世代ということになるのでしょうか。物心ついてから今に至るまで、漫画が生活の中になかったことはありません。僕が子供の頃はまだ貸本屋というものが残っていて、手垢の付いた漫画本をあさりに毎日のように通ったものでした。「冒険王」という雑誌をご存じでしょうか。僕が一番最初に読めるよう、貸本屋のおばさんがとっておいてくれたのを思い出します。今思えば、僕のことを思ってというよりは、大量に貸り出していた父に気を使ってのことだったのかもしれません。  ここでは、ふと思い出される今までに出会ってきた漫画たちをいくつかご紹介したいと思います。

●「サイボーグ009」 石森章太郎(石ノ森章太郎) 秋田書店ほか

 名作中の名作ですね。古いものですが、作者の死によって復刻版などが大量に出ていますから手に入るチャンスは多いでしょう。時代的に「キカイダー」などよりもっと前なのでしょうか、ヒーローものでありながら主人公たちに徹底的に負の要素を取り込んでいます。ヒーローであるために主人公たちはさまざまな能力を持っているわけですが、彼ら本人はそのことを引け目に感じ、自らを「かたわ」と呼びます。近年、こういった悲しいヒーローという設定はよくあるものですが、恐らく「サイボーグ009」はその先駆けなのではないでしょうか。
 違った能力を持つ9人が集まって強大な力を発揮するという設定にも非常に惹かれました。未完になってしまった「天使篇」を書き始めていたという話もあり、とても残念です。

●「パタリロ!」 魔夜峰央 白泉社

 恐らくまだ連載中です。別冊か何かで。もうかれこれ20年以上は続いていると思われますから、「ガラスの仮面」にも迫る超大作なわけです。ただし、連載初期と現在の「パタリロ!」はまったく別のものと考えた方がいいでしょう。初期のパタリロは現在のようなただのデブではなく、漫画全体のトーンも陰謀と同性愛と魔術が絡み合うもっと根の暗いものでした。途中で人気が出始めた頃からテレビアニメ化されたりして、路線を転向せざるを得なかったのかもしれませんが、僕の意見としてはこの転向が全体の角を落としてしまい本来の持ち味が失われてしまったように思います。
 ま、いまだに続いていることを考えるとそれなりの需要はあるのでしょうが、当初の読者は失ってしまったのではないでしょうか。ちなみに、今僕は意地だけで単行本を買い続けています。

●「生徒諸君!」 庄司陽子 講談社

 中学の時、流行りましたね〜。成績が良くてスポーツ万能で大金持ちの娘で学校の人気者だけど、過去に何かあって心に傷を負っている。少女漫画の王道ヒロインですな。さすがに今読むとちょっとばかばかしいですが、あの頃はそれなりにはまりました。
 中学ぐらいのときは、男女でグループを作って集まるなどということは雰囲気的に許されませんでしたから(みんなそうだったよね?)、一種あこがれみたいなものがあったのだと思います。実際、「生徒諸君」の設定をまねて仲良しグループを作ろうと言い出した女の子がいましたが、「バッカじゃないの」とかいって逃げてしまいました。失礼。

●「包丁人味平」 ビッグ錠 集英社

 初めて単行本を全巻そろえた漫画です。近所のおねえさんが誕生日にくれたんですね〜。今どうしてるんだろう・・・。
 料理漫画にしてはなんとなく汚らしい絵柄で、あんまりうまそうにも思えないのですが、荒唐無稽な設定といかにも本当にありそうな話とがうまく混じり合って、とにかくあきさせません。アイスクリームの天ぷらとか、水の上でキュウリを切ったりとか、最後には麻薬入りのカレーまで出てきて何でもあり状態です。“包丁貴族”団英彦という登場人物には笑いました。
 この作者は最近までどっかの雑誌で「一本包丁満太郎」という漫画を連載していて、ちょっと読んでみましたが(ちなみに新宿の漫画喫茶で)、単に登場人物の名前を変えただけの包丁人味平でした。結局これしか出てこないみたい、この人。
 なんだかすさまじく古い漫画ばかりになってしまったので、わりと最近出会った漫画を紹介すると、

●「9時から5時まで」「ベル・エポック」「永遠の野原」 逢坂みえこ

 いっぺんに3本も挙げてしまいましたが、いい年をして結構はまってしまった作家なんですね〜、この人が。最近は「ビッグコミックオリジナル」という青年誌でも連載が始まりましたから、男にも人気があるのだと思います。
 前2本は仕事をする女、後の1本は両親のいない姉弟(この姉は恐らく作者本人)が主人公なのですが、共通して言えるのはどれも登場人物の感受性が異常なほど高くて、互いにちょっとこすれあったりなであったりしたその刺激が異常なまでに当人たちの内面に変化を起こさせる、というかものすごい傷つきやすいんですな。いかにも叙情的な絵柄とあいまって、とてもこの世に生きてる人間とは思えないわけ。だけど、ちょっとしたことで実は傷ついてしまっている自分をそこに見たりするわけです。30過ぎたおじさんとしても。わー、書いてて恥ずかしい。そう、恥ずかしいんです、この人の漫画は。読んでみて。
 ちなみに「ベル・エポック」はフジテレビの製作で映画化されたようです。きっととんでもないことになっているに違いないので、これは見なくて結構です。
 他にもいっぱいあるのですが(「動物のお医者さん」(佐々木倫子)とかね)、結構少女漫画が多いですね。やっぱりちょっと女っぽいのかしら。「BANANA FISH」(吉田秋生)以降、最近はほとんどこれはと思える漫画に出会っていません。やはり年をとってきたのでしょうか、さすがにジャンプはきついです。これから秋の夜長、はまれる漫画を探しています。


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