2月15日 北限調査紀行Part4(完結編)

アマガエル
↑何を見つめているのか!?
 そして、ついに北限調査最終目的地、新潟へ。
 現地では、Yさん、Fさんが助っ人に来てくださった。ありがたい。

 まずは文献の報告に基づき、日本海側の北限である
寺泊町へ。「この辺ですよ」というYさんの声に従い、4人で手分けして捜索することにした。

 「ここからここまで順に見ていって貰えますか。」と指示した後、一緒に現場に向かったのだが、ふと向こうのオギの茂みから引っ張られるような感じがした。
 皆から離れてふらっと土手の草を分け入り、しばらく歩いた時。
 あった!!!目の前に紛れもないカヤの巣!!!

 携帯を押す手がふるえる。「巣を発見しました。」「えーっ!ホントですか!?」

 ぞろぞろとみんなが集まって来るのが待ち遠しい。FさんとYさんは初めて巣を見たとあって、「これがカヤの巣ですかー。こりゃぁ、もし見てても判りませんね。」「オギで作ってるんですねー。うまいもんですねー。」としきりに感心していた。

 しかし、今までの苦労はなんだったんだ・・・というくらい、あっさり見つかった。この辺は農耕地帯で、いかにもカヤがいそうな雰囲気。でも、これだったら宮城でも山形でも幾らでもあったよぉ。


 その後、聞き取り調査でも出雲崎市で巣を見たことがあるとの情報を得、少なくとも寺泊以南には確実にカヤが生息していることが判った。

 最終日は村上市から国道沿いに南下。一気に北限を見極める作戦だ。しかし、さすがに北限ラインの突破は難しい。良さそうな茂みはあるのだが・・・。

 そして、村上市からやや南下した、A村でのこと。

カヤネズミの巣
ついに発見!これが北限のカヤネズミの巣だ!!!
調査中の作者
調査中の作者。
   「すみません。私たち、野生動物の調査をしてる者なんですが、この辺で、田んぼのイネに付いている、丸い鳥の巣みたいなもの、ご覧になったことありませんか。」
 「ああ。見たことあるよ。地面の低い所にあるやつだろ。稲刈りの時にある。」
 「ええっ!ホントですか!!
それ、カヤネズミっていう、ネズミの巣なんです。」

 私がそういうと、おじいさんは驚いた様子で、


「え!ホント!知らなかったよ。まさかネズミの巣なんて思ってなかったから、昔は豊作の御礼に神様にお供えしたもんだ。」

 早速おじいさんに承諾を得て、近辺を探させて貰ったが、残念ながら巣は見つからなかった。おじいさんの話では、2、30年前には見たけれど、今はもう見ないとのこと。でも、少なくとも30年前には寺泊よりさらに北のこの地域にカヤネズミがいた。それは確実だ。

 カヤネズミにとっての北限の意味。探れば探るほど、わからなくなることばかりだった。これから、帰ってその意味づけをしなければならない。未熟な私の知見が寄与出来ることは微々たるものだろうが、それでもそれを果たすことは研究者としての義務だと思っている。

 そしてまた、今回の旅で得た苦労や経験や人のありがたみは、何物にも代え難い財産になった。

 最後になりましたが、お手伝いいただいた皆様、本当にありがとうございました。

 いろいろあったが、貴重な旅だった。マル。


追伸:帰京後、宮城でお手伝いいただいたHさん、Tさんから連絡があり、何と宮城県でカヤの巣と成体を発見したとのこと!写真も送って下さり、確認したところ間違いなくカヤネズミの巣だった。発見場所は、現状の北限に近接していて、事実上、北限ラインの再確認が出来た。貴重な情報感謝します。
 詳細はカヤマップに掲載していますので、是非ご覧下さい。