●柿渋を塗る

柿渋は、一番安全で、塗装も簡単で、値段も高くない木部保護塗料と言えるのではないでしょうか。乾燥するのも早いです。
柿渋は、まだ実が青い状態の渋柿をつぶして発酵させ、3年程熟成させた“渋柿発酵ジュース”です。
血圧降下、二日酔い防止などに服用する民間薬であり、やけど・しもやけや、ヘビ・ハチ毒の中和にも使われてきたそうです。また、木・布・紙などの補強や防水、防腐、染色にも用いられています。防虫、抗菌作用もあります(水虫でお悩みの方、どうぞお試しあれ)。日本酒の清澄剤としても利用されています。
柿渋を口に入れてみたところ、モジョモジョとした感覚が口の中から伝わってきました。そう、渋柿をかじった時に、口の中に広がる、あの感触です。

【におい】

発酵臭がします。「くさい」という人もいますし、「お酒のにおい」と言う子供もいます。木部に塗った場合、1〜2週間で臭いは消えると考えていいと思います(原液を厚塗りした場合は、もう少し時間がかかる)。
現在、臭いの少ない『マイルドタイプ』や『無臭タイプ』が製品化されています。『マイルドタイプ』はほんの少しにおいが軽くなっている程度ですが、『無臭タイプ』は発酵臭の元となる成分を取り除いているので発酵臭はありません。
クリア仕上げタイプの『生渋(きしぶ)』は、発酵臭は少なく、フルーティな香りがしました。

【色・色の変化】

赤褐色の原液を水で薄めて塗りますので、はじめは、ほんの少し赤みがかった感じになるだけですが、日ごとに色が濃くなっていきます。
床に塗った後、家具などを置き、2〜3日後に家具をどけてみると、そこだけ色が他よりも薄い状態です。でも、家具をどけたままにしておけば、その部分も色が濃くなっていき、まわりとなじんでいきますから、心配することはないと思います。
何年(何十年?)もすれば、昔の民家の柱や床などのように、深いこげ茶色になっていくみたいです。

はじめから、古代色を求める方のための『柿渋カラー』も製品化されていますが、色の経年変化を楽しむゆとりとおおらかさがあっていいのではないかと思います。

三枡嘉七商店から、クリア仕上げタイプの柿渋『生渋(きしぶ)』が製品化された時、早速買って試してみました。日ごとに少し色が濃くなっていきますが、クリア仕上げ用と言ってさしつかえない・・・と思っていましたが、数年後には結構色が濃くなりました。あえて、『生渋(きしぶ)』を使う意味がないと、私は思っています。

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【防水効果】

木部に塗った場合、完全な防水性が備わるわけではありません(オイルフィニッシュの場合も同様)。柿渋で防水機能を持たせるには、昔の番傘づくりと同じように何度も何度も塗り重ねる必要があります(調湿機能がなくなると思います)。
はっ水性をどうしても高めたい場合は、乾性油あるいはワックスを上塗りすればいいと思います。

【塗った表面を固くします】

柿渋を木部に塗ると、表面が少し固くなったように感じるはずです。木部表面の補強という効果もあるわけです(オイルフィニッシュの場合も目地の中の油が固まることで、補強効果が出ます)。
また、布の切れ端を柿渋に漬けてしぼった後、乾かしてみると、布地が固くなりました。無臭柿渋でも試しましたが、同様に固くなりました。

【外部用の製品も出ています】

屋外の木部には、防腐剤入の保護塗料を塗るのが常識となっていますが、安全で環境にもやさしいものを使いたい人向けに『柿渋ペイント(トミヤマの製品)』という製品が出されています。カラーもいろいろあり。
「撥水性があり、耐久・耐光性に優れ、外部や水回りに使用できる安全無害の塗料」とのこと。
5〜6年前に1本購入しましたが、耐久性に疑問を感じました。先日、トミヤマのホームページを見ると、『ウッドコート』という液体を上塗りする形で『柿渋ペイント』が販売されていました。

【柿渋の塗り方】

柿渋原液を水で2〜3倍に薄め、ハケで塗ります。短時間で乾燥します。これを2回、あるいは、それ以上くり返します。塗り重ねるほど色は濃くなります。
水で薄めるのは、木部への浸透をよくするためと、塗りむらによる色むら防止のため。
一回塗って乾燥した後、表面に触れてみて、トゲトゲした感じがした場合、「サンドペーパーを軽く当ててから2回目を塗る」と説明書には書かれています。乾燥材のフローリング材に塗布したとき、その必要はないと思いました。『カンナがけ』されているからだと思います。
サンドペーパーで表面を研磨した桐材(やわらかい木です)に塗ったときは、木の繊維が毛羽立った状態で乾燥し、表面がざらざらした状態になりました。桐材で引き出しを作ったときのことですが、この手触り感がよかったので、研磨せずに重ね塗りして仕上げました。

【保存方法】

空気に触れないようにすれば長く保存できると思います。余った柿渋は、密閉できる容器に満杯になるようにして移し替え、きっちりふたをして、光の当たらないところに保存。容器の中に空隙があると、その空気に反応して固まっていきます。できるかぎり容器内の空隙を小さくなるようにすること。早めに使い切るにこしたことはありませんが……。

【入手法】

「柿渋」でインターネット検索すると、3〜4つ、代表的なメーカーがすぐに見つかります。値段はいろいろです。値段と性能が比例しているとは思えませんが・・・。
なお、「無臭柿渋」の値段は「柿渋」の2倍くらいです。