2006年6月における「大異動」はGGGの体制に大きな変化をもたらした。即ち、創生期における非常時体制から平時を想定した全地球規模の治安維持活動継続体制に向けて、変化を余儀なくされたのである。初期の段階において、GGGは日本内閣直属の非公式防衛組織であり、自衛隊との関係性のみを見ても、その立場は極めて曖昧かつ特異なものであった。全地球規模化することを予測された機界文明に対するいずれの国家の主権にも拠らない防衛組織の設立の前段階として、その存在を各国に承認されたGGGは(恣意的な基準はあったにせよ)世界各国へのGストーンとそれに伴うオーバーテクノロジーの無償供与を行うことで、かろうじてその突出した戦闘能力の行使を承認されていたのである。しかし、その予算は全額が日本国内で賄わねばならず、弱体化しつつあった日本の財政はいくつかの超法規的な措置を必要とした。
またかねてから国際防衛組織の主導権を握りたいと企図していたアメリカ合衆国、中華人民共和国、EUなどからGGGへの人材派遣が相次いだ。激化する機界文明の攻勢から人類を防衛するために優秀な人材が必要ではあったが、同時にGGGがより世界的な組織になったとき、その技術や防衛のノウハウを自国のために確保しておきたいという各国の意図があったことは否めない。結果的に対機界文明戦の後期において、GGGには優れた人材が多数集結し、人類の勝利に貢献することとなる。
だが、GGGの第一黄金期とも呼べるこの編成はZマスターおよび機界新種が殲滅されたことにより終わりを告げる。機界文明という強大な外敵が消滅した後、GGGには優秀な人材が集まりすぎている、換言すれば能力の供給過剰ともいえる状態となっていた。またGGGの主任務が外敵からの地球防衛から、バイオネットなどの武装組織に対抗する治安維持に変更されたことによりガオファイガープロジェクトが本格的に始動し、全世界での防衛戦力の整備が進められるに至って、GGGに集結したスタッフも各々に帰国しプロジェクトに参加することが求められた。壊滅したディビジョンフリートの再建や新たな主戦力の建造と並行してGGGの組織改変は進み、2006年8月にはいわゆる新体制がほぼ確立した。獅子王雷牙博士、ホワイト兄妹、マイクサウンダース13世がアメリカGGGへと去り、風龍、雷龍も中国本土防衛任務に復帰、代わってパピヨン・ノワール、高之橋両輔博士が本部たるオービットベースに赴任した。そして長官たる大河幸太郎が日本の宇宙開発公団総裁を専任することとなり、後任としてGGG第二代長官となったのが先ごろ防衛庁を退職したばかりのキャリア官僚、八木沼範行であった。
八木沼のGGG長官就任に際しては、いわゆる「天下り」が行われたとするのが一般的な論評である。庁内でも異色のハト派である彼がGGG長官という戦闘組織の最高指揮官に就任することに異論が全く存在しなかったわけではない。実戦経験の豊かな大河前長官を遠ざけてまで、素人である八木沼を起用することはGGGの指揮系統に決定的な障害をもたらしかねない。それでもこの人事が強行されたのは、やはりGGGオービットベースの突出した戦闘力に歯止めをかけたいとする各国の思惑があったからに他ならない。強力な外敵が存在しない今、世界レベルでの戦闘力(あえて軍事力とは言うまい)の均衡は、21世紀初頭におけるアメリカ合衆国の単独覇権を短期間のうちに解消し新たな世界秩序を構築する意味からも必要とされたのである。国連からの辞令に対し、八木沼は諾々と従ったといわれている。
就任後、八木沼は周囲の補佐を受けながら堅実に職務を果たしてきた。迅速果断な大河とは比べるべくもないが、それでも決定的な判断ミスや決定の遅延は存在しておらず、各国関係各省庁との折衝には精力的に取り組み、組織間の意志連携が極めて円滑となったことは特記すべきであろう。しかし大河の勇猛な指揮ぶりを懐かしむ声はオービットベースに根強く残っており、八木沼もそれを自覚しつつもより堅実な指揮を心がけていたようである。
その八木沼が2007年のいわゆるGGGクーデターに際して、長官として全く抑止力とならなかったことは、ある種必然であったと言えるかも知れない。国連最高評議会の自重命令に対しGGGの強硬派が反発、指揮権を強奪しディビジョンフリートを不法占拠して三重連太陽系へ進発した。またGGGの旧メンバーたる大河幸太郎、獅子王雷牙らがこれに同調したことでクーデターはその深刻度を増したが、八木沼は自発的に指揮権を大河に譲渡、GGGの太陽系外への排除を後押ししたと言われている。GGG追放処分後、八木沼は国連最高評議会より直接査問を受けている。罪状は依然確定していない。
老齢の域に達しつつある矮躯の紳士で、表情同様その精神も温和そのものである。世界最高の戦闘組織の長官というよりは町役場の一職員といった風情である。官僚時代は事なかれ主義一辺倒とも言われてきたが、GGGの「クーデター」に際しては長年秘めてきたものか、GGG隊員に感化されたものか、勇気ある行動を見せてくれた。高之橋博士とは茶飲み兼将棋友達。
声優はなんと真殿光明さん。必殺技は息(笑)