反中間子フィールド

   中間子とは、電子と核子(陽子と中性子の総称)との中間の質量を持つ素粒子である。μ(ミュー)中間子、π(パイ)中間子、K(ケイ)中間子があり、寿命は短く不安定で、崩壊してさらに軽い素粒子になる。
   原子の構造が解明された時、そこに一つの不可解な点があった。確かに原子を総体としてみれば、陽子と電子の電荷は釣り合っており、その構造に疑問はない。だが、原子核を単体で考えた時、そこには同じ+の電荷を持つ陽子同士が原子核という究めて小さな領域に閉じ込められた状態になっているのである。陽子の電荷は弱いものとはいえ、互いが究めて近い距離にあるために同じ電荷同士で生じる反発力、クーロン力は強いものとなる。本来なら+の電荷を持つ者同士、陽子と陽子ははじきあい、原子核を維持していられなくなるはずである。
   日本の物理学者、湯川秀樹は原子内でクーロン力以上に強い、しかも陽子のごく近くでしか働かない力が作用していると考え、中間子の存在を理論的に予測、中間子を陽子と電子が相互に受け渡しをすることで、互いに強く引き合う力が生まれ、原子核が維持されているとした。後に実験によってこの理論は妥当性を証明されている。
   では、この中間子が無くなれば物体はどうなるであろうか。まず、これによって結合を保っていた陽子同士が反発して飛び散り、原子核が崩壊する。これにより原子核内の陽子と電荷的に均衡を保っていた電子も離散する。つまり、中間子の喪失は物体の崩壊を意味しているのである。この崩壊はベータ崩壊に類するもので、これにより高速の電子からなるβ線と中性子ビームを放出する。
   GGGがこの理論を下に完成させたのが反中間子フィールドである。反中間子フィールド内では、原子中の中間子は全て対消滅し、陽子は全て中間子となって飛散してしまう。これらはミクロの世界の出来事であるため、人間の目には把握しきれず、まるでフィールド内の物体が「消滅」してしまったかのように写る。物質の硬度や性質などは全く無関係に、理論上ありとあらゆる物質を「消滅」させることができるのである。
   しかし、この反中間子フィールドは、技術的にも使用する際の安全面を考えても、究めて狭い範囲にしか展開することができない。そこでGGGはこれをGBR−1専用の決戦ツールに組み込み、近接戦闘の切り札としたのであるが、までも完全消滅させるこのツールは対機界文明の戦闘には不適切と判断され、同様の理由でオービットベースへの配置を見送られたディビジョンX物質瞬間創世艦フツヌシの艦内に封印されることとなった。これが後にバイオネットパリ破壊作戦を阻止することとなるハイパーツール、モレキュルプラーネである。