アベル

   [Abel] Jアーク戒道少年を遺した赤の星の主導者の名。個人名なのか、一種の称号のようなものなのかは不明である。自身を原型とした生体兵器アルマやJアーク級万能戦艦、ソルダート師団、生体コンピュータ・トモロなどを短期間のうちに開発し、紫の星で発生した機界31原種に対抗させようと企図していたが、間一髪、システム起動が間に合わず、Jアークやアルマは殆ど戦うことなく壊滅し、起死回生を狙って白兵戦を挑んだソルダート師団もごく僅かな生き残りを除いて全滅した。抵抗力を失った赤の星は瞬く間に機界昇華されてしまい、その指導者であったアベルもそれに前後して死亡したものと思われるが詳細は不明である。
 その人格等も不明だが、原種と確実に対消滅させるために、あるいはそれは軍事的冷徹さや自戒性の表れであったのかもしれないが、いわば「特攻」目的で人格ある生体兵器を、自らを模して造る等、我々の倫理観や価値観では推し測ることの出来ない部分があったことは確かなようだ。しかし一方で誇り高き戦士であるソルダート・J−002をして、自らを「アベルの戦士」と言わしめるほどの人望も有していたらしく、一種カリスマ的な支持を得ていたと考えられる。
 対機界31原種用対消滅兵器群の起動が遅れた原因のひとつとして、三重連太陽系再生計画があげられるだろう。機界文明の侵攻を待つまでもなく、滅びの危機に瀕していた三重連太陽系を救うべく進められていたこの計画において、緑の星の指導者カインとの対立が表面化し、計画の遅延が深刻となっていた、正にその時、紫の星でマスタープログラムの暴走が始まったのである。三重連太陽系の再生という壮大な計画のために、多くのシステムを動員していた赤の星では、対機界31原種用対消滅兵器群の開発、建造が思うように進まなかったのではないだろうか。三重連太陽系を救うための計画が、結果としてはその滅びの、間接的な原因の一端を担ったことは、正に皮肉という他ない。
 なお、三重連太陽系再生復元プログラムシステム、ソール11遊星種はアベルを模した計画進行統括プログラム、パルス・アベルをリーダーとしており、機界昇華によって完全に滅びた三重連太陽系の復元を開始する。アベルの執念が、プログラムを、機界昇華さえも超えて生き長らえさせたのであろうか・・・。
 アベルを元にした遊星主パルス・アベルが幼い少女のような容姿をしていたことから、アベル本人もまた同様の容姿をしていたものと思われる。
   キリスト教の第一聖典である旧約聖書『創世記』中に同名の人物が登場する。最初の人間であるアダムとイヴの二人目の子で牧羊に従事していた。ヤハウェ(神)が兄、カインの供物を受け取らず、彼の供物のみを受け入れたためカインの怒りを買い、殺される。