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アルマリャテ:コスタ・デル・ソルの静か(?)なキャンプサイト

Almayate

スペイン南部コスタ・デル・ソルの中心都市マラガから地中海に沿って東へ30kmほど、アルマリャテという村の海岸に、Naturistのために1998年夏に開設されたキャンプ場「Almanat(アルマナット)」があります。前もって電話で聞いてみると、そこにはキャンプ以外の宿泊施設は無いが、隣接した海岸は一般のNaturistのために開放されている、とのことでしたので、連日澄み渡ったアンダルシアの青空がひろがる2月の某日、まずはアルマナットから東に約2kmの所にあるトレ・デル・マールという町にバスで向かいました。

 トレ・デル・マールは国道340号線に面し、海沿いにはリゾートマンションが建ち並ぶ典型的な中規模のリゾートタウンで、町の中心にある観光案内所で教えてもらったオスタル(Hostal。スペインの小規模なホテル。たいていはビル内の1フロアないし数フロアだけで営業し、家族経営のところが多い。従ってホテルよりエコノミーである。バス・トイレ共同のところもある)を訪ねると、シーズンオフなので難なく部屋を取ることができました。

さて、さっそく目的地に向かって出発。海岸から数100m内陸を走っている国道を西に歩いてアルマリャテに向かい、そこから南へ入って海岸に出るコースが一番近いようなのですが、私はそれよりもここからずっと海岸沿いに歩いて西に向かったほうが道に迷わずたどり着けるだろうと考えました。

 トレ・デル・マールの海岸は砂浜沿いに小ぎれいな遊歩道が続き、午後の日差しの下そこかしこで寝そべって読書をする人、ボール遊びをする子供達などが見受けられます。それにしても面白いのはビーチバレーをしている少年たちで、彼らはついついボールを手でさわらずに足で扱ってしまうのです。どの子もバレーボール自体は大してうまくないのに、足でボールをさわると自由自在、さすがはサッカー王国スペインです。

 おっと、よそ見ばかりしていられない、歩みを速めるとやがてトレ・デル・マールの町外れで遊歩道は終わり、その先は延々と続く砂浜を歩かねばなりません。人影もほとんどなくなり、枯れ川の河口を渡り、視界に開けてきた広大な風景をながめながら思いのほか砂に足を取られて汗ばんできたころ、ぽつ、ぽつと全裸で寝そべっている男性が見えてきました。やっと到着だ、と思いましたがまだキャンプ場らしきものは見えません。さらに砂浜を進むとやがてビーチバレーコートと小さなレストランらしきものが見えてきました。

 レストランの入口近くには看板に海水パンツに赤く×印がはいったマークが描かれています。奥にはキャンピングカーが何台も見えます。アルマナットに到着!。宿を出てから約40分、急に空腹におそわれた私は、まず服を脱ぐ前に空腹を満たしたい、と思い、念のためレストランの従業員らしき服を着た男性に「ここはキャンプ場利用者でなくても食事ができるのか?」と訊ねました。すると、「奥のキャンプサイトをぬけた反対側の入口に事務所があるからそこで訊いてくれ」との返事。言われた通りにキャンプサイトを通っていくと、浜辺にはほとんど人がいなかったのにここのキャンピングカー周辺には裸の人達がけっこういます。目が合うたびに「ハロー」と声を掛け合いながら進んでいくと、正面入口のゲートの脇に事務所がありました。

 事務所には細身のハンサムな青年、彼がアルマナットのマネージャーでした。「レストランはどうぞご利用下さい。ただしキャンプサイトは、セキュリティーの問題があるので利用者以外は入らないで欲しい、脇の道を通ってくれ」との事、またさらに話を伺うと、ここの海岸でヌーディストビーチとして認められているのは、東はトレ・デル・マールとの境の河口から西はここに隣接した乗馬クラブとの境まで、ということはかなり広大な範囲です。そして、日本からここを訪れたのは、私が初めてだということでした。

キャンプサイト脇のサトウキビ畠にかこまれた駐車場をぬけて海岸に戻った私はすぐに脱いだ服とリュックをを砂浜に置き(人は少ないし全く防犯上危険がなさそうだったので。私の経験上、南ヨーロッパの都市部はかなり盗難が多く危険ですが、地方とくにあまり観光地でない所は想像以上に安全です)、タオル一つ持って空腹とノドを満たすため改めてレストランに入っていきました。

 まずは、とカウンターで飲み物を注文していると隣でちょっとコワモテの腹の出たおじさんがビールを飲んでいます。勇気をもって声をかけてみるとこのおじさんは一転、陽気にしゃべりだしたら止まりません。それから1時間、そして「明日もぜひここで会おう」と言うので翌日も数時間、結局私がアルマナットで過ごした時間の大部分を、彼とのおしゃべりが占めることになってしまったのです。

 このおじさん、ぺぺ氏はスペイン北部の出身ですが仕事で事故に遭って以来年金生活を送ることになり、トレ・デル・マールに住んで毎日のように自転車でここへやって来ては裸で過ごすのを楽しみにしているそうです。「酒も食い物も気候も人の気質も女も、ここアンダルシアが世界で一番」と断言し、この地を離れる気は全くないとの事。時には下ネタ話も混じって、裸の腰を前後に振るジェスチャーがはいるのには、全裸姿には慣れている私もさすがに面食らってしまいました。彼はこの日も翌日も数時間ビールを飲んでしゃべった後「ワイフが待っているから」と言ってそそくさと帰っていきます。「奥さんはいっしょに来ないのですか?」と訊いてみると、「彼女はヌーディズムが嫌いなんだよ。だから俺一人の楽しみなんだ」と、妻は妻、私は私といった様子。

さて、ぺぺ氏が「ここのレストランのお奨めはパエーリャだよ。ぜひ食べてみなさい。」と言うので注文してみたシーフードパエーリャの味はおっしゃる通り、折りからの空腹と青い海の眺めと素っ裸の体に心地よく触れる微風も相まって、これまで食べた中で文句なく最高のパエーリャでした。

 浜にはちらほらとキャンプ場外から来た人たちが寝そべっているほかに、キャンプ場からはいく組かの人たちが入れ替わり立ち替わり、レストランや海辺にやって来ます。ヌーディスト達はお互いに「オラ」「ハロー」と声を掛け合うフレンドリーな雰囲気です。ここは東西に10km以上も延々と続く砂浜の一部なので水着や服を着た人も時おり通り過ぎていきますし西隣の乗馬クラブから馬に乗った人もやって来るのですが、彼らともお互いに自然な雰囲気で挨拶をかわしています。

ここで見かけた裸の人たちはカップル、家族連れ、もしくは男性単身で、スペイン人以外は私が聞いたかぎりではドイツ、スイス、イギリス、スウェーデンからやって来ていました。20代以下の若い人は子供を除き、全く見かけません。「なにしろ今はシーズンオフだからね。夏になると地元をはじめ、ヨーロッパ各地からバカンスで若者たちがいっぱいやって来るよ」との事。私が食事中に隣り合ったスウェーデン人の30代らしきカップルは、「キャンピングカーを運転してここまでやって来た。1年のうち3分の2は働いて金を稼ぎ、あとの3分の1はこうやって南ヨーロッパのヌーディストキャンプを巡っているんだ」と言ってました。「うらやましい!」と私。

 せっかく海岸に来たのだから少しは泳いでみたい、しかし体感温度は澄み切った日差しのおかげで砂浜に裸でいるには快適ではあるのですが、地中海の水温は足を突っ込んでみるとかなりの冷たさです。砂浜に寝そべりながら躊躇していたその時、海の方から歓声が聞こえてきました。スウェーデン人とイギリス人のカップル達が声を上げながら海でバシャバシャやっています。さすがに彼らも1分ほどで上がってきました。どんな感じか訊いてみると、「冷たいけれどそのあと陸に上がって日差しを浴びた時がすごく気持ちいいよ。レッツトライ!」と言います。つられて私も泳いでみましたが、30秒が限界でした。やはり北ヨーロッパの寒さに慣れている人たちにはかないません。一方長年アンダルシアに住んでいるというスイス人男性は、「そんなばかなことをすると危険だぞ」と真顔で忠告してくれます。

 延々と続く砂浜と海原、フレンドリーな人々、おいしい料理。ここは裸をリラックスして楽しむには最高の場所でした。おしゃべりなペペ氏をはじめいろんな人たちとの会話が進みあっという間に時間が過ぎてしまいましたが、もちろん一日寝そべってゆっくりとした静かな時をすごすのにも最適のビーチです。

(99年冬 訪)

 

アルマナットへのアクセス

 トレ・デル・マールまではマラガから東方面行きのバス(ネルハ行、ベレ・マラガ行等)に乗って約40分。アルヘシラス−マラガ−アルメリア間を結ぶ長距離バスでも行けるが中には高速道を走り、停車しないものもあるので注意。トレ・デル・マールからアルマナットまでは本文中に前述の海岸伝いルートの他、国道を西に歩き橋を渡った後、左側の看板を見て左折していくとやはり徒歩約40分。またこの看板近くの国道にバス停があるらしくてここで降りると便利だが、私は利用していないのでどのバスが停まるかは未確認。

ネット上のアクセスは、こちら

 

周辺の見どころ

マラガ

 (Benalmadenaのページを参照)

ベレ・マラガ

 トレ・デル・マールの北方約4km、バスで20分の山麓にある町。ある英語のガイド本に「見栄えのしない」町と書いてあるのであまり期待しないで行ってみたらなんのなんの、魅力にあふれたところでした。

 町の一番高い所にある丘の上には中世のムーア人が建てた城跡があり、現在は塔だけしか残っていませんが、そこからの眺めは南は地中海から北ははるかグラナダ方面へと連なっていく山々まで360°に近いパノラマ。ごくたまに犬を連れた近所の住民が登ってくる他は全くの静寂で、ゆったりとした雲の動きが眼下の家々や野の上に影を移動させていくのをぼんやり眺めていると、私の体まで大気に溶けていくような気がします。

 城のふもとの丘の中腹には白い壁の家々が立ち並んでいます。アンダルシア地方に点在する、いわゆる観光スポットの「白い村」同様の光景なのですが、ここには土産物屋や観光ロバが見当たらないかわりに、現地の人たちの普通の生活が聞こえてきます。

 さらに下って古い教会や修道院などの地区をぬけていくと現在のベレ・マラガの中心地域。スペインではどこの町でも午前中に市場を訪れるとあふれる活気に触れることが出来て楽しいのですが、この町でも同様。市場の規模はさして大きくないものの、場所柄海の幸と山の幸の両方とも豊富で見飽きません。おまけに市場内のバルでつまんだ生ハムは、思わずマスターに「記念に写真を撮らせて下さい」とたのんでしまった美味さ。

 スペインやイタリアでは、ガイドブックに載っていないか、載っていても小さく記されているような町が、実際に行ってみるととても魅力的なことがよくあります。歴史の重みと現在の普段着の生活とが自然に溶け合ったおもむきと言えるでしょうか。上述の英語ガイド本の執筆者には、この町にはいわゆる観光施設がほとんどないことが気に入らなかったのでしょう。

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アルマリャテ海岸の湿地帯

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アルマナット
右手奥がキャンプサイト

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アルマナット
キャンプサイト ビーチ側の入口

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アルマリャテ・ビーチ

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アルマナット

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アルマリャテ・ビーチ

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ベレ・マラガ

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ベレ・マラガ

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Viaje por las Playas Naturistas

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