対人社会社会動機検出法 (寺岡隆著) から

[ ページ 3 ]



3.性差比較

実施状況

 前項の例では、いずれも被験者の男女差はあまりなく、差があっ ても、それほど大きいものではなかったが、どのような場合でも男 女差は小さいというわけではない。ここでは参考までに性差がかな り顕著に出現した実例を示そう*4。  被験者は米国キャリフォルニア大学サンタ・バーバラ(UCSB) の学部学生69名(男子20、女子49)であり、やはり通常の心 理学講義時間内で収集したものある(寺岡、1984)。被験者は すべて米国籍かどうかは不明であるが、少なくとも日系人は1人も いない。検査の形態は「標準IF-T宜EN法」の「基本型」に対 応する手続き、すなわち、不特定の別々の相手に対する反応を要請 したものである。なお、この実験では、教示は十分に打ち合わせを した学位取得直前の米国人大学院学生があらかじめ用意した教示用 紙を被験者に配布した上で行っている。

分析結果

 結果はFIG.4-6に示されている。簡単にまとめれば、最も 出現率が高いのは、男子では「優越動機成分」(D+)で51%、 ついで「平等動機成分」(D0)が21%であとはぱらぱらである のに対し、女子は「平等動機成分」(D0が5O%で「優越動機成 分」(D+)が24%、「単利動機成分」(A+)が11%であと はぱらぱらという結果であった。同じ教室で同時に実施しているの で、いちおうそのほかの条件が介入してくるとは考えられない状況 で得られたものである。  男子被験者は必ずしも多いとはいえないので、この結果を一般化は できないが、もしも、この結果が米国男子学生の典型的な一般傾向 をそれなりに反映しているとするならば、男子は前項の北大医学進 学学生以上に競争事態におかれている印象を受けるような結果であ り、逆に、女子の平等志向の強さに改めて感心したものである。実 は、この実験を計画したとぎには、一般的反応傾向でも条件差に関 しても、男女差や人種差や文化差といわれるような違いは基本的に はほとんどないであろう、多少あったとしても、この検査で検出で きるほど大きなものではないであろうと予想していたのであるが、 それまでに得られた日本人被験者によるデータではみられなかった ような、多少オーバーにいえばいわば強烈ともいえる差を見せつけ られたことにより、もしかしたら、この結果もこの「IF-THEN 法」がかなり鋭敏な検出力をもっていることを示唆しているのでは ないかと考えるようになって、このことが後述する「IF-THEN 法」による国際比較という交差文化的研究への道を開くきっかけに なったといえるのである。 [もどる] [次を表示]

(寺岡隆 『対人社会動機検出法』から。 北大路書房, 2000)