24/12/2001 Lunedi' 12月24日月曜日

昨夜、寝つきは良かったのだが、深夜に目が覚めて、そのまま眠れなかった。だって、胃が苦しくて・・・。

朝、起きて1階へ下りて行くと、誰もいなかった。ついさっきまで声が聞こえていたのに。洗面所で顔を洗いながら、昨日、とんでもない過ちを犯してしまったことに気が付く。フランチェスコに体重を聞かれたので教えてあげた。でも、本当のことは言えなくて、ちょっと多い目に・・・。それでも彼は凍り付いていた。いいじゃないのねぇ。見た目通りだと思うんだけれど。あぁ、きっと、彼はおばあちゃんの家に行って、彼のお父さんやら、お母さんやら、おばあちゃんやファブリッツィオやフランチェスカに、「ハナコは○キロしかないと言っていた!僕の半分しかない!」と言って回るに決まってる。そうして、私は、家族中から、もっと食べて太りなさい!総攻撃を受けるんだ・・・。私は食べないのじゃなくて、食べられないの・・・。

11時半頃、おばあちゃんから電話がかかってきて、「お昼ご飯を食べにいらっしゃい」と。あ、分かった。フランチェスカは仕事なのか。私、自分が休みなものだから、勝手にみんな休みなものだと思いこんでいた。今日は、ファブリッツィオも仕事。

フランチェスコが、「朝、(彼の同僚の)ロレンツォから電話がかかってきて、ハナコにもアウグーリ(おめでとう)を言っておいて」って。「グラッチェ!」。わぁ、なんだか、ちょっと嬉しい。昼食の準備が出来るまで、フランチェスコとテレビを見ていたんだけれど、12時、「お腹が空いた!」と彼。私は、昨日、あなたと食べたパスタがまだ胃の片隅に残っている感じで、すごーーーく、胃が重たいんだけれど。

今日のプリモは、魚のトマトソースのパスタ。私は初めて食べた、幅が広く端が波打っているパスタだった。おばあちゃんが私のお皿に、「あら、少なすぎたわ」、「ノー!バスタ!」いえいえ、多すぎるくらいです。充分と言う意味の“バスタ”。食の細い人がイタリアにホームステイするなら、一番に覚えなきゃいけない言葉がこれである。そして、今日のソースの魚が食卓に。フランチェスコが私に説明をしながら皿に盛ってくれる。その単語は分からないけれど(そして覚えられなかった)、これはきっと干しダラだ。どれくらい食べる?と聞かないで、少しだけ取ってくれたので、ようやく分かってくれたかと安心して食べ始めると、更にその倍くらい乗せられた。わ、油断してた。どうして、自分の皿に乗せないのさ。

本当にお腹いっぱいなので(だって、食べる前からお腹がいっぱいなんだもの)、メインの魚のグリルはパスする。パスしたい!。パスさせてくれる?。手を出さずにじっとしていると、ひいおばあちゃんが「フランチェスコ、アンナ(彼女は私をこう呼ぶ)に魚をとってあげなさい」。慌てて、いらない、欲しくない、食べない、と彼に必死に訴える私。どうして?って言われたって、お腹がいっぱいなんだもの。そろそろあなただけは、私のことを理解して!(フランチェスカは分かってくれていて、「ハナコはゆっくりなのよー」と、おばあちゃん達に言ってくれる。でもそのあと、「ゆっくり食べなさい」と肉を勧めるので、もしかして彼女にも私は理解されていないのか?)。おじいちゃんも、「マンジャ!(食べなさい!)もっと食べて太りなさい!」と。おばあちゃんもひいおばあちゃんも、すごく親切に勧めてくれるのだけれど、そしてその親切には本当に心から私は感謝しているんだけれど、私は遠慮しているのではない。それにこのあと、パネットーネもあるんでしょ。

「本当に本当に食べないのか?」と、何度もみんなに聞かれながら、なんとか逃げ切ることに成功。そして、いつものパネットーネ。おばあちゃんが、「フランチェスコ!ハナコにヴィーノを注いであげなさい」。平均的な日本人の女の子である(自分ではそう思ってる)私は、ケーキや甘いものを食べると、コーヒーが飲みたくなるんだけれど、もう慣れた。ケーキにヴィーノ。そして柿を食べながらもヴィーノ。これがこの国では一般的。

仕事を終えたフランチェスカが帰ってきて、カフェを飲んで、みんなでおしゃべりして、私が分からないところはフランチェスコが通訳してくれて(通訳ってったって、イタリア語をイタリア語で通訳してくれるんだけれど、これが不思議と理解出来る)、3時半頃家へ戻る。別れ際、おばあちゃんが、「ハナコ、チャオー!また後でねぇ」って。

これはいけないこと。本当にしてはいけないこと。それは分かっているんだけれど、ちょっとだけ、ちょっとだけだから、横になってもいい?

うとうとしていると、ドアが開いて、「あら、ハナコ寝てたの?あはは!コートを取りに来たのよーん」とフランチェスカ。そして、「アンダーモ・ジュウ?」。“ジュウ”とは、下という意味。でも、これ、私に1階へ下りよう、と誘っているのでは決してなくて、ここの家の人達は、ひいおばあちゃん(フランチェスカ達のおばあちゃん)の家を“ジュウ”と呼ぶ。丘に囲まれた町だけあって、“スゥ(上)”や、“ジュウ(下)”という単語を使うのは、神戸の住民である私にはとっても親しみを感じる。でも、最初は、本当に何を言われているのか、さっぱり分からなかった。ところで、今からジュウに行くって?。何をしに?。はぁ・・・、また晩ご飯の時間なのか・・・。

子ども達はお腹が空いた!と、キッチンをウロウロ。「ツィオ(おじさん)が来たら始めましょうね」のおばあちゃんの言葉に、私はツィオ・フランチェスコが来ないことを祈るばかり・・・。ファブリッツィオも帰ってきて、8時頃から夕食開始。ここの唯一の救いは、夕食の時間が遅いこと。でも、昼食が遅いから同じことなんだけれども。本日の夕食は魚。だって、私、お昼に冷蔵庫の中に入っているのを見ているものー。でもその前に、フライドポテトが食卓へ。頼んでもいないのに、フランチェスコが私の皿に乗せようとするので、慌てて、「いらない!」、「嫌いなの?」、「ううん、好きだけど今はいらない」、「どうして!」。だって、お腹空いてないんだもの・・・。大きな声なものだから、食べないのか?と、おじいちゃんがビックリして私を見つめているじゃない。ロレンツォが、「ハナコが食べないと言ってるから、その分を僕にちょうだい!」。「ハナコは少ししか食べないから、これだけ」とほんの少しのポテトをファブリッツィオ。私は、日本にいたって小食だと自分で認めるけれど、この家は子ども達、ロレンツォとフェデリーコが食べ過ぎなんだ!。それと私を比べてはいけない!。フェデリーコ7歳と私の体重差は2キロ(夏は5キロだったのに、いつの間にか)。ロレンツォ12歳は私の倍近い体重だ。私と比べるのは間違いだとしても、ロレンツォとフランチェスコの体重差が10キロに満たないのというのは、どう考えても、この子は食べ過ぎだろう。

最初に出てきたのは、イカを串に刺して衣をつけて焼いたもの。あぁ、こんなの日本にもあるー。美味しい。「もうひとつ食べる?」とフランチェスコ。この先、何が出てくるんだろう、と不安に思いながらも、「シー(イエス)」取ってもらう。そして、えびとイカの串焼き。これは少しだけ。あぁ、美味しい。その次は、魚のグリル。お昼のと同じものと、もうひとつ別の魚。フランチェスカが「どれがいい?」と微笑んでいるから、「メタ」と答える。“メタ”、半分という意味。これも一番に覚えるべき言葉のひとつ。とても便利なのである。ヴィーノもケーキも、“メタ”で充分。この魚は、何なのか分からないけれど、川魚の味がする。あぁ、どれもすごく美味しくて幸せ。でも、私のお腹は、もう、いっぱいだ。ひいおばあちゃんが隣で私の腕を掴み、「アンナ、遠いわねぇ。届かないわねぇ」可愛そうに・・・って食卓の中央に置かれている魚の盛られた器を私の方に引き寄せてくれる。あ、有難いんだけれど、もう食べられないよ。

はっ、驚いた!。もう1皿、出てきた。ここの人達、魚を食べるとなると徹底的に食べるんだ・・・。「これ、僕は嫌い。君は?」とフランチェスコ。始めて見る食べ物の好き嫌いを聞かれても、私には答えられない。フランチェスカが説明してくれる。マルケ州の郷土料理で、白身魚(名前は覚えられなかった)を、牛乳で煮込んだものなんだとか。うん、確かに変わっている。でも、ここでしか食べられない料理なら、もちろん、喜んでいただく!。小さく切り分けてもらって食べようとしていると、フランチェスコが「僕に言わせると、君は嫌いだと思う。だって変わった味だから」。あのさぁ、こんなにお腹いっぱいなのに頑張って食べようとしている私の耳元で、どうしてそういうことを言うんだ。うん、確かに変わった味だ。でも、「美味しいよ。私、好き」

はー、よく食べたぁ。でも、今日は魚ばっかりだったので、大丈夫。美味しかった。昨日ほど、胃は重くない。満腹感に浸っていると、フランチェスカが、私ににっこりと微笑み、「この魚が、ハナコ!食べて!。ハナコ!食べて!と言ってるわぁ」。「私には、聞こえない」。ファブリッツィオは、「ハナコ!明日は肉ばっかりだぞ」、ひいおばあちゃんは「そうよ。だから今日、魚を食べておきなさい」。え?私としては、明日、肉を食べるのなら、今日は何も食べたくないのだが・・・。私の気持ちはどうせ誰にも分かってもらえないのさ。今の私の気持ち、梅茶漬けが食べたい。「明日のナターレは、プリモ・ピアットを2、3種類食べるんだよ」とフランチェスコ。「ウソ!本当に!?」真剣に聞き返す私に、フランチェスカが「本当よー。ははははは」って、笑ってる場合じゃないだろう。それなら、本当に、今日はこれ以上何も食べたくない。

結局、その私に食べてくれと訴えているという魚を“メタ”にしてもらう。フランチェスコが「そうやって食べるの?僕達は先にここの骨を取る」。私、イタリア人に魚の食べ方を教えてもらう日がくるとは、夢にも思わなかったよ、本当に・・・。「私は、ナイフとフォークが上手く使えないの。ほら、いつも箸で食べているから」。ね、分かった?

そして、パネットーネとスプマンテを。本当に、幸せな、とっても素敵なクリスマス・イヴ。

明日はナターレ