5月第3週は、3校目の小学校へ。月曜日は1年生のクラス、火曜日には2年生のクラスへ。

この学校でも、今回は『着物と折り紙』を教える予定。私も、もう授業にもだいぶんと慣れてきた頃。教室に入って、「ボン・ジョルノ!」と挨拶と自己紹介をして、「誰か、“キモノ”という言葉を聞いたことある?」と。「あるー!」という子もいれば、「知らない!」という子も。そこで、着物の写真を見せて、簡単に説明をして、大人用の着物(私の着物)を先生に、そして、子ども用の着物も着させてあげて、その後、折り紙。

だいたい、このパターンで授業をしてきたんだけれども、今日のこのクラスは私が部屋に入った途端、大歓迎。自己紹介が終わったところで、私は何も言ってないのに、「はい!」「はいっ!」「はい!」と、全員が手を挙げ出す。そして、先生が子ども達を指差し、大質問大会の始り、はじまり〜。

ここの子ども達は、どうやらそう教えられているらしく、全員、当てられると立ちあがって、「エ・ベーロ・ケ」と言ってから質問をする。これは、「○○って本当ですか?」という意味。全員が全員、この言い方をするのでかわいくって(そして、これは、3校の小学校の中でも、同じ小学校の他学年でも、このクラスだけだった)。そして、ルカという目のくりっとした利発そうな男の子が、表題のこの質問。「エ・ベーロ・ケ・イン・ジャポーネ・シ・マンジャ・イル・ガット? 日本では猫を食べるって本当ですか?」。

イル・ガットと聞いて、「えー!ね・ねこぉ!?」と、私の横で、先生が思わずのけぞる。私も一瞬、目が点になったけれど、「え?猫?あぁ、犬のことね」と答えると、ルカは、「そっか、犬だったか。間違えちゃった」。てへ、って感じで、微笑んで席に付く。かわいい子だなぁ、とぼんやりと見ていると、私の隣で、再び先生が、「い・いぬぅ!?」と、たまげている。おぉっと、説明、説明。中国では犬を食べると聞いているけれど、日本では犬も猫も食べないよぉ、と言っておく。

とは言ったものの、本当に今でも中国は犬を食べているんだろうかと不安になり、勘違いだったら、中国の方に非常に申し訳ないので、友人にメールで聞いてみる。広東省あたりの人たちは、食べているのだとか。

このクラスの子ども達は、どの子もすごく、好奇心旺盛のようで、いろんな質問が飛び交う。「寿司は美味しい?」とか、「日本では、膝をついて座るって本当?(正座のこと)」など。こちらでは、たくさんの日本のアニメが放送されているので、そのせいで、皆、日本のことについて非常に詳しい。

そして、その中でも、一番、積極的に質問をするのが、先ほど登場のルカ君。他にもいろいろと手を挙げて質問したあと、教卓の私の横にやって来て「日本の首相の名前は?」と尋ねる。君には覚えられへんやろ、と思いつつ「コイズミ」と言うと、目を真ん丸くして固まっていた。もう一度、「コ・イ・ズ・ミ」と、言ってあげると、彼は目を丸くしたまま無言で去っていった。で、またまた元気いっぱいに手を挙げて、先生に指してもらうと、「日本の首相の名前は何?」と言い、自分で「コイズミ!」と叫んで、先生をすごく驚かせていた。「さっき、ハナコに聞いたの」だって。でも、私も本当にびっくりしたよ。せっかくだから、ずっと覚えておいてね。私もやっと新しいイタリアの大統領の名前を覚えられたから。

このまま、いつまで続くんだろう?と思ってしまうほど、質問タイムが続く。最後には、ルカ君、言うことがなくなったみたいで、それでも手を挙げて、「日本の窓はどんなの?」だって。先生も笑ってたよ。「イタリアと同じだよ」と、答えてあげておく。このまま質問タイムで今日の授業を終えても良かったんだけれど(予定は2時間)、それも何なので、『着物と折り紙』をする。

このクラスの子は、本当に人懐っこい子たちで、授業終了後、全員で、ドラゴンボールGTの主題歌(イタリア語)を大合唱してくれた。皆、すごく楽しそうに、2番まで歌ってくれたの。ドラゴンボールだよぉ〜、と、ちょっと感動してしまった。あの光景を見たら、鳥山明氏も感動すると思うな。どの学校でも、よく「アキラ・トリヤマを知っているか?」と子どもたちに聞かれる。

帰宅して、ステイ先の奥さんフランチェスカが、いつものように、「ハナコ、今日はどうだった?」と聞くので、「2年生の男の子に、日本では猫を食べるの?って聞かれたよ」と言う。すると、彼女、「えっ!ね・ねこぉ!!」と、先生と同じ反応をするので、ちゃんと説明をして・・・。後日、フランチェスカの弟が家に来た時、マニラでも犬を食べるよ、と教えてくれた。どうして、この人はそんなことに詳しいのだか。他にも、スイスではハリネズミを食べるとか、カエルを食べたことがあるが美味しかったとか。せっかくイタリアに来てるんだから、どうせならイタリア料理の話を聞きたいんだけどな。

注)さて、ここから先の文章は、かわいい、かわいい、我が家のうさこ(友人の飼っていたウサギの名前は本当に「うさこ」だった)がいる方は読まないでください。ウサギに関する話なので。

そして、この授業の日から、数週間後のこと。帰宅した私に、キッチンでフランチェスカが、「ほら、ハナコ。明日の昼食は、猫よぉん」と、肉の塊を掲げてくれた。一瞬、ぎょっとしたけれど、フェデリーコ7歳の口癖を真似して、「ノン・ネ・ベーロ(嘘だ!)」と言っておく。実際は、ウサギの肉。でも、ちょっとだけ、本当にびっくりしちゃった。とはいえ、私の中では、ちょっと抵抗感という意味では、猫の肉もウサギの肉も大差ないんだけれど。

翌日の昼食は、ウサギの丸焼き。そう、『丸焼き』なのである。オーブンで焼けてしまえば肉なんだけれど、昨夜、キッチンに置いてあった、4つ足つき、毛をむしられて、目をぎゅっとつむっているビニール袋に入っている肉の塊は、ちょっと正視できなかった。姿のまま、オーブンで焼き、はさみでぱちぱち切って、食卓へ。レバーも頭も、テーブルに乗っかってる。食卓では、骨のついた足の部分に、お兄ちゃんのロレンツォ11歳がかぶりつこうとしているところ。「頭は私が食べるわぁん」と、フランチェスカ。やっぱり、頭も食べるのか・・・。私は、骨の少なそうな腿の辺りを選択。アバラの骨がね、どうも、ウ○ギを思い浮かべてね、少し抵抗感がね。味は、鶏肉と似たようなもの。

聞いてみると、イタリアではほぼ全国で、ウサギを食するらしい。そして、ここマルケ州ではウサギの郷土料理があるらしく、他より食べる機会も多いのだとか。

食後、フランチェスカが、骨が山と積まれた皿を前に、「ハナコ、食べ過ぎちゃったわぁ」と言うから、「頭も?」と聞いてみると、「エッコ・ラァー!(これよぉ!!)」と、頭蓋骨を目の前に掲げて見せてくれた。勘弁してください。

全部は食べきれなかったので、夕食も引き続き、ウサギの丸焼き。私の隣で、フェデリーコ7歳が、どうしてだか、「ポッロ(鶏肉)」と呟きながら、骨付きの足にかぶりつこうとしているので、耳元で「猫よ」とささやいてやった。すると、彼、「マンマ〜!」と、叫んで、隣の部屋にいたフランチェスカの所に走って行っちゃった。あらあら。ノン・ネ・ベーロ。