●曲線のサイズは半径でなく直径であらわす
 一般的に組立式線路の曲線の大小を表すには、「R610」というようにレール間中心からの半径で表記しますが、三線式Oゲージの場合は、線路の外縁から外縁までの直径で表します。これは現行の米国各社から発売されているものばかりでなく、国産旧製品の線路の場合も同様でした。
 外縁までの直径で表記しますと、その曲線を引きまわすために必要な幅員がすぐ解り、わが国ではお座敷運転がほぼ宿命的なOゲージにとっては、なかなか重宝な表記法だと言えます。
 米国はご存知のとおりフィート・インチで表記しますから、1フィート=304.8ミリ、1インチ=25.4ミリの換算をしなければなりませんが、米国式のトラックシステムは、端数線路の種類も多くなく、ポイントも分岐側が曲線1本分、直線側が直線1本分から1.5本分となっている単純明快なものが殆どですので、慣れれば線路配置にそう苦労することもなく、やさしく複雑な運転が楽しめるでしょう。


 




←ライオネル027チューブラー・トラックの曲線。手前より27インチ(φ686ミリ・8本円)、42インチ(φ1067ミリ・12本円)、54インチ(φ1372ミリ・16本円)。

北米各社トラックシステム概略表
●=有 ▲=ポイント有
 φ27inφ31inφ42inφ54in
φ72inφ81inφ120in標準直線
(長さ)
長尺直線
(長さ)
ライオネル027
チューブラー




(K-Line)
--8.75in35in
ライオネルO
チューブラー


-
(K-Line)
10in40in
MTH Real Trax
プラ道床付ソリッド
-



--10in30in
ATRAS O
プラ枕木付ソリッド

-

10in40in

【註】ATLAS Oの曲線にはこの他Φ36in、Φ45in、Φ63inが、MTHには82inがあります。

国産旧製品ガラレール曲線の種類
 12本円16本円20本円F20本円
円の直径
(単位ミリ)
1140153019103120


※以下下線付の見出しをクリックすると各トラックの接続部の写真が見られます。

ライオネル027…曲線の最小直径が27インチであることからこの名があります。元来下掲のOとは別体系の小断面の車輛を走らせる略式のものとして設計されましたが、取り扱いが手軽であること、レールの断面が細くスタイルも良いことなどから愛用するファンも多く、同社の入門用トレインセットは、最近までこのトラックシステムを採用していました。ポイントマシンが、線路と同一平面の台上に固定されているので、大型車輛がポイントで曲線側に入ると、マシンのボックスにぶつかってしまいますからご注意下さい。

ライオネルO…70年近く基本的なスタイルを変えずに生産されつづけているチューブラー・トラック(ガラレール)で、後掲のライオネル027登場後は、レールの高さから特に「ハイレール」と呼ばれて区別されている、恐らく世界でもっとも多く生産されたOゲージトラックです。ポイントマシンは平型で本体とは別に取りつけられているため、最急曲線である31インチポイントでも大型車輛の曲線側通過も問題なく、またマシンは簡単にポイントの左右どちらにも付けかえられる長所があります。
(31インチポイントを例に、トイトレインのポイントの各部の名称と仕様を説明します⇒こちらをクリック

※ライオネル027では曲線は最大54インチ、同Oでは最大72インチですが、ライオネルと同規格で線路を製造しているK-Line(ケーライン)では、027で72インチ16本円、Oで120インチ16本円を最大としていますので、参考までに表に掲げました。

MTH リアル・トラックス…トラディショナル一辺倒だった北米Oゲージの世界に新風を吹き込んだ、洋白レール、プラスチック道床の近代的トラックシステムです。曲線体系、電動ポイントの作動様式はライオネルOに準じた設計で、線路どうしの抜き差しが容易、しかも各レールの電気的接続は道床内の燐青銅接点で行うため、ピンを入れ換える手間をかけずともどちらにもつなげる構造は、最近まで三線式の世界では唯一のものでした。
各曲線に対応したポイントがあるのも、従来のトラックにはない長所といえるでしょう。お座敷運転で楽しむファンの多いわが国の事情にも合った線路といえます。
なお、既に「ギヤーブランドパイク備忘録」にも記しましたが、導電性塗料で黒く塗られたサードレールは、他の線路よりコレクターとの間でスパークを生じやすいことが判明しております。#800程度の細かいサンドペーパーで、サードレールの頭の塗料を剥ぎ取ることで簡単に対処できます。

ATRAS O(アトラス・オウ)…上記3点の、ライトユーザーからベテランまで幅広い支持層を持った製品とは一味違った、言わば通向けのトラックシステムです。お座敷運転はほとんど考慮されていないといってよろしく、固定式レイアウトか、自作の組みたて式道床の上に取りつけて初めてその真価を発揮します。曲線体系も従来の実用本位なものと異なり、表に示したものの他に36インチ、63インチと複線化を意識した寸法で、端数線路の種類も豊富、曲線ポイントやフレキシブル線路も用意されるなど、レイアウトビルダー向けの陣揃えが魅力です。ポイントマシンの構造も他のものと異なり、外部から給電する二線式と同様のもので、スプリングポイントになっていますので、二線式を取り扱った経験のある方にはかえって馴染みやすいかもしれません。スタイルの良さでは随一と言ってよいでしょう。
なお、ATLAS O、リアルトラックスとも、チューブラートラックとは違い三線とも絶縁されているため、ポイントをつけなければ手軽に二線式の線路として使用できます。
ポイントも改造してできないことはありませんが、各走行レール・フログの電気的接続を変更し、先端軌条に補助接点を設けるなどの工作が必要ですので、一般的にはあまりお勧めできません。
(ATLASのポイントを二線式専用の選択式ポイントに改造したものの見本が店内にありますので、どうしてもやってみたいといわれる方はお申し出下さい。当店お買い上げの方に限り貸し出しもしております。すでにチャレンジ、成功された方もおられます。)
★ATLAS Oのポイントを二線式専用に改造する⇒こちらをクリック
【付記】↑こんなこと書いてたら、ATLAS Oから二線式トラックシステムが発売になってしまいましたです。隔世の感があるなあ…。

ライオネル ファストラック…平成15年、ライオネルより発表された道床付トラックシステムです。プラスチック道床と、ピンを入れ換えずにどちらにもつなげる構造はMTHリアルトラックスと同様ですが、レールを一種のガラレールとし、レールから突き出た平型のピンと道床のクリックで、線路同士の接続をより堅固なものとしているところに違いが見られます。特にMTHではウィークポイントだった接続突起が磨耗したり、少々折れやすかったりする点が解消されているのは、使う側から見ても大きな進歩と言ってよろしいでしょう。
また、上に掲げたトラックシステムとの一番の違いは、いずれのシステムも基本的な曲線(複線を意識したものや、大直径はさておき)をライオネルOに範をとり、31、42、54in…としているのに比べ、ファストラックは36、48、72、84inと、従来製品とは違った系列の直径としていることです。
ここで取り上げた中では最も新しいトラックシステムですが、最近は高架橋脚、踏切、リレーラーも発売され、ラインナップが充実してきました。

カツミ/エンドウ旧製品ガラレール…現在でもわが国の三線式ファンの間で大いに愛用されているのはご存知の通りです。昭和30年代末まで生産され、わが国の模型用線路として空前の普及を成し遂げました。レール頭部が逆三角形をしており、低いフランジの車輛を走らせるようになっているのが、丸頭レール・ハイフランジ車輪が標準の北米製品との違いです。(北米にもロス・カスタム、ガーグレーブスといったメーカーからセミスケール車輌向けの高級ガラレールが出ており、角頭になってはいますがこちらはあくまでハイフランジ車輪対応です。)
 t0.3という薄いブリキで作られていますので、取り扱いに注意を要し、またスズメッキが剥げると赤サビを生じやすいという点はありますが、セミスケール車輛のラインナップに合わせた直径の大きな曲線を揃えているのが魅力でした。現在でも探しているファンの多い通称“Fレール”20本円の直径は3120ミリに及び、その名のとおりF級電機が唯一通過できるガラレールの最高級品で、少年たちの憧れでした。なお、エンドウの他に、北米規格のトイトレインを盛んに輸出していた東京の酒井製作所も、同規格で国内向けガラレールを生産していました。
ちなみに「ガラ」とは、今ではほぼ死語になってしまいましたが、「中が空洞である品物」の意で、反語として「ムク」があります。パイプやプレス部品などは「ガラ」であり、挽き物や鋳物の部品は「ムク」であります。



●三線式の長所を生かしたレイアウトとは?

トレインセットには、大抵小判型か、円型のエンドレスにに組める線路が入っています。それに飽き足らなくなると、ポイントを組みこんで引込み線や待避線を…というのがごく普通の模型鉄道の発展のパターンと思います。
確かに小判型エンドレスは、限られたスペースで大きい直径の曲線を使うことができ、走らせる車輌を選ばないということもあって、ゆったりと運転したい向きには良い線路配置といえますが、もしあなたが、三線式の長所を生かすことに関心がおありなら、ぜひ以下の「リバース」という線路配置に目を向けてみてください。


リバースとは、ご覧の通り、列車がもといたところにぐるりと戻ってくる線路の敷き方を指します。直流二線式の鉄道模型では、線路の左右が逆になってポイントでつながりますと、当然ショートしてしまうため、線路にギャップを切ったり、区間逆転スイッチを設けたりといろいろと面倒な配線をしなければなりませんが、三線式でしたら普通のエンドレスと同じく、ロックオン(フィーダー)を線路の好きな場所に設置するだけで、簡単に運転することができます。ことに左のような配置にしますと、自動ポイントの効果もあって楽しさはいや増すことでしょう。
列車が進入すると、車輪により通電してマシンを作動させてパチンと開く、トイトレインファンならお馴染みの自動ポイントは正にこのリバースtoリバースのためにあるのです。最初は手前から出てきた車輌が、次は向こうから来る、そしてまた手前を…といった動作を手放しで、しかも既製品で安心して楽しむことができるのは、正にトイトレイン、三線式だけの特権といって良ろしいでしょう。
特に催事など、展示運転の機会があるときは、ぜひこのリバースtoリバースをお試しになってみてください。お子さんやお母さんたちは「不思議だなあ」と興味津々ですし、模型をかじっておられる人からは「方向検知はどうやっているんですか?」という質問をいただいたこともたびたびです。他のギミックとあわせて、トイトレインがいい意味で見世物としても優秀であることを認識されることうけあいです。
こちらは上の配置をさらに発展させ、リバースを二つ折りにして本線の延長をかせいだ上、左のリバース内にデルタ線を設けたものです。デルタ線もリバースと同様、二線式では面倒ですが三線式ではたやすくできる配置の一つです。北米のトラックシステムにはYポイントを製造しているところが少ないので、図のようにリバースを天地方向に直線を入れて伸ばし、ターンアウト(普通のポイント)を入れてデルタ線を作ります。これによって左のリバースにはエンドレスが形成されることになり、ぐるぐる回しで列車の走行する姿を愛でるのも、リバースで帰ってくるまでの時間差を楽しむのも自在になります。


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