簡単にできる企業改革


おそらく自分の会社について不満、希望、ささいな疑問点すらも持っていないという人はいないだろう。もしあなたが現状に満足して、これ以上の改善を望まないというのなら、あなたはダメ社員だ。完璧な企業などありえないのである。仮に現時点で問題が表面化していなかったとしても、周囲の環境は常に変化していく。それにしたがって自分の会社も変化していかなくてはいけないのであって、改善努力を怠った場合即刻のうちに凋落していくことだろう。

今回のテーマは、イントラネットを導入している企業ならどこでも可能であって、比較的容易に上司の認可が下りると思われるものである。そして、その効果は容易さにくらべて強大であろうことをあらかじめ言っておく。

確かソニーは社長宛のメールアドレスを社員全員に公開して意見があったら何を書いてもいい、という習慣をとり入れていたと思う。今回のアイデアはそれを拡張したものだと思えばいい。実はそんなに目新しいものじゃなくて、すでにどっかの中規模企業はとり入れてるかもしれない。

イントラネット内に掲示板を置く。それだけのことである。その書き込み内容は、『休憩室に電子レンジを置いてほしい』いうものから、『こんな商品はどうだろう』という開発アイデアまで幅広いものとする。必要は発明の母という言葉がある。普段の不満や愚痴を公に発表していくことが、企業の改善にとって有意義であることは言うまでもない。しかも、製品開発は開発部だけの独占ではない。実は販売部門においても『今後こういう商品があったら売れるのに』とかいった感想はあるのである。だって市場に一番近いところにいるのが販売部門なのだから。あるいは小さな一言が行き詰まった現状を打破することもある。

新規アイデアの宝庫であると同時に、もう一つ重要なことがある。中規模以上の大企業になれば、社員間のコンセンサスは意外と取りにくい。しかしBBSの設置によって集団としての結束力を高めることができる。おそらくこれは毎朝社歌を歌わせるより遥かに効果的であるような気がする。社歌なんか歌ったり社訓を叫んだところで毎日やったら効果はほとんどないような気がするのだがいかがだろう。ルーチン(=決まりきった習慣的業務)と化した社歌・社訓には、小学校の校長先生の長い話と同じ価値しかない。

実はこの理論は「おもちゃ箱」あるいは「ごみ箱」理論と呼ばれて、結構古くからあるものなのだ。一見役に立たないようなものでも、状況次第では充分に活用しうるものとなりうる。一見即カネにはならないけど、いずれ役に立ちそうなものを大事にとっておく、ということだ。子供のおもちゃ箱を考えてみよう。この中にはたくさんのおもちゃが詰まっている。それらは一度にすべて遊ばれるものではない。しかし明日か明後日には手にとって遊ばれるものとなりうるのだ。そしてその遊ばれ方は無限である。超合金と怪獣、あるいはリカちゃん人形を同時に遊ぶことは普通は考えられないことかもしれない。しかしその方が楽しいこともある。これを企業活動にあてはめて考えた場合、従来から存在するアイデアや製品であったとしてもまったく違う種類のものを併せることによって三倍以上の価値をもつ製品やアイデアになりうるのだ。

一般に、開発部門や販売部門は独自の価値観や視点を持ってしまうものだ。しかし共通のBBSを設置することで意見交換や目的意識の共通化を果たすことができ、従来のアイデアを掛け合わせた新規アイデアを生み出すことができる。ちなみにこのパターンの新規アイデアは経済学的に言うと『シュンペーター的新規結合』という。



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