輸出指向型産業化


英語ではExport Oriented Industrialisationと訳される。本を読んでいてEOIと出てきたらまずこれの略称だろう。ちなみに輸入代替はImport Substitute IndustrialisationでISIと略されることが多い。輸出指向型産業化はその名のごとく、輸出を産業化の源にしようとするものである。自国の産業を国際経済とリンクさせ、輸出を振興させることで外貨を稼ぐ。そしてその外貨が設備投資にまわる、という経済循環が想定される。が。ここで二つの解釈が存在する。

ひとつは、新自由主義者による解釈で、「貿易自由化」がその発展の源であるとする主張だ

。東南アジアの経済発展を例に取った場合、これら諸国は輸出指向型で有名なのだが、まず着目すべきは輸入代替戦略からの転換、つまり貿易規制の撤廃であると考えるのだ。貿易規制の撤廃は、外資企業の移転によって国際経済の市場競争に取りこまれ、安い労働力を武器に開発が進むはずである。もちろんこの背景には比較優位の考え方が存在する。一方で、“不当”な規制に保護されていた(=温室状態であった)自国産業も新古典派的理論によってパレート最適とウェルフェアマキシマムの実現を強制される。

次に挙げられる説は、輸出指向型戦略と貿易自由化は同一のものではないと考える。すなわち、東南アジア諸国は競争力をもった産業については、実は“選択された保護”が与えられていて、貿易の自由化はむしろ否定されたのだととらえる。実際、韓国の自動車産業においても、マレーシアの自動車産業においても完成車輸入に関して厳しい規制がかけられていて、外資企業の参入は認められなかったのだ。この説がとる有力な考え方は、自国産業の保護、あるいは国際自由市場への参入ではなく、自国産業の“競争力の保護”にあったという。競争力を維持するために必要な要素は、長期的に安定した高度の需要と、域内で育成された技術開発能力であるというのが鍵となる主張だ。輸入代替は前者の要素を欠いていたし、貿易自由化による外資企業誘致は自生の技術開発能力という側面を欠く。東南アジア諸国において、いくつかの選ばれた産業は国際的な競争力をもち得たが、それはむしろ国際市場ではなく、国内市場において、政府によって秩序付けられた競争によって発展したものとみるのが妥当であろう。



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